『果たして、この世に神様というものは存在するのだろうか』
もしもの話だ。
そんな言葉を問いかけられることがあれば、僕はこう答える。
「え、神様? いるんじゃない? 多分」
投げやりだとか答えでないとか、そういう発言は一切聞かない。僕はそんな質問に何か意図を感じることは出来ないし、重要なことのようにも思えないのだから。
そもそも神とは何だ。
神様と崇められる定義とは何だ。
僕としては神も悪魔も違いがあるとは思えないし、正直そんなこと僕には関係ない。人間は自分の都合よく操れるものを神と呼び、そうでないものを悪いものとして封じているのだ、という極論を持っていた僕が、崇める対象を持っているわけもない。
困った時の神頼み、という言葉が地球の日本には存在していたが、僕はそれに否を唱える。
神様は何もしてくれない。
こんな矮小でちっぽけな人間という一種族に、世界単位を管理しているのだろう神が干渉してくるとは思えない。その辺に打ち捨てるか、気まぐれを起こす程度だろう。
そんな存在に祈ったところで何になるというのか。
僕にはわからない。
……わからない。
嗚呼、でもその神様とやらに感謝できることが僕にもあるだろうか。
『最初』がぼやけて思い出せなくなってくる程に回数を重ねた生の中、ひとつだけ変わらないもの。
「――――おにいちゃんっ!」
少し張り上げた声で呼べば、こちらを振り返って薄く微笑むイタチ兄様。その兄様が、必死に兄様と父様の修行を凝視して声に気付かなかった比較的小さな影に声をかける。兄様が口を動かしたのが確認できた瞬間、小さな影は慌てたようにこっちを見た。
大きな黒い瞳が僕……違った、私の視線とかち合う。
非力な腕を精一杯張って身体を起こし、柱を支えにして立ち上がろうと足を踏ん張った。一人では立ち切れないだろうが柱の支えがあれば大丈夫だと判断し、心配そうに様子を伺うサスケ兄様に手を振る。
戸惑いがちに小さく振り返してくれた事が嬉しくて上体が前のめりになった瞬間、バランスを崩した身体がぐらりと揺れた。
慣れた調子で上体を後ろに引き、縁側にしゃがみ込むような形で転けた私の様子に、今にも駆け出そうとしていた兄様と父様が息をつく。
パタパタと小走りに私のもとへ駆けて来るなり怪我はないかと確認してきた二つ上の兄様を見上げながら、愛されているな、と今更ながらに思った。
「移動するときは、オレか兄さんを呼べって言ったじゃないかイミナ」
「ごめんなさい……でもおにいちゃんたちのしゅぎょーをみたかったの…」
しゅん、と落ち込み気味にお兄ちゃんぶって説教をするサスケ兄様に返せば、狼狽えながらもダメなものはダメなのだときっぱり言われる。
イタチ兄様や父様も止めに来るつもりはないらしい。少し離れた位置で微笑まし気に私達を見ていた。
――――いわゆる前世と呼ばれる生を終え、意識が戻った時、僕は転生していた。
この生で与えられた私の名は、うちはイミナ。二人の優秀な兄を持つ、生まれながらの障害児である。
名前から分かる通り火の国木ノ葉の里に存在する名家のひとつ、うちは一族に産まれ、死亡フラグと生存クラグが同等に成立した立場……うちはイタチの妹となった。その際生き残れるかの判別がつきにくいのは、サブ主人公うちはサスケも同時に兄として存在しているということだろうか。
今までの生の中で、他の転生者とこの『NARUTO』の世界に転生していた場合について話したことも有ったが、どう修行するかとか誰に関わりたいとか、うちはに生まれたらどうやって生き残るか、ときいたどれもこれもが私にとって絶望的すぎる。
なら自分で考えろとか言われそうだが、私はこの漫画は途中までしか読んでいないのだ。あとはネット内に流れていた情報の一部を読んだことがあるだけである。
そんな私がうちは兄弟の妹に生まれるとか…………無理ゲーというものでしょ。
短い生だと諦めて、私はしたいことをする。
そう、つまり――――お兄ちゃんに甘えますっ!
ブラコンといわれようと構わない。これだけは何度繰り返しても変わらない私のアイデンティティ。
例え修行の出来ない、忍びには成れないと言われている身体であったとしても、それを武器にしてまで全力で甘えるのが真のブラコンというもの。
……神様が存在していたら、毎回兄がいる環境にしてくれることは感謝するよ、本当。
▼
――――うちは虐殺から四年、原作開始です。
どうも。
不思議な事に何故か生き残ってしまったうちはイミナ、今年で十一歳です。
……なんて、何の努力をしなくとも生き残ることが出来た理由なんて、まぁ簡単に想像が出来るのだけれども。
アカデミーの卒業を終えて、下忍になってしまった兄様に、私は微笑みかける。
額当て似合ってるよ。なんて一緒に喜ぶようなことを言っているけど、本当は嘘だ。……本当の試験とやらに落ちて、ずっとそばに居てくれたらいいのに。
――――あの日、イタチ兄様を引き止めたかったのに私は失敗した。
板挟みになって苦しむであろう兄様を助けたかったのに、うちはの虐殺は原作通りに終わってしまった。
違ったのは、たったひとつ。
小さな小さなことだけれど、多分きっとこの先重要な意味を持つかもしれない事実。
サスケ兄様は、イタチ兄様を恨んでいない。
現場を目撃してしまった。
私を万華鏡写輪眼で気絶させた後に、来てしまった。
けれど、何故だろう。
私という存在が居たからかもしれない、それとも、原作での木ノ葉の里と、今の兄様を取り巻く環境が大分ズレていたからかもしれない。
イミナを守りたいなら強くなれ、とイタチ兄様は言ったらしい。それに、サスケ兄様は頷いた。
恨みというよりも、困惑。
本来よりも広い視野を持った兄様は、自分の兄がどうしてこんなことをしたのかと、ただ真実を求めるために力を求めた。強さを求めた。
「――――複雑、です」
複雑な気持ちだと、私はひとり小さく呟く。
兄様は演習に行ってしまった。確か原作では朝早くから、お昼くらいにかけて行われていたような気がする。担当上忍の言葉に従って、素直に朝食を抜いて出掛けた兄様を笑顔で見送ってから私は憂鬱であった。
同じ班になった二人に対し「足手まといに成らなければいい」とか言ってたけど、何気に少し楽しそうだったことには気づいていた。
……男のツンデレは一部にしか受け入れられませんよ。私はお兄ちゃんなら歓迎ですが。
嗚呼、原作とは違い随分と真っ直ぐに育ってくれたと母親のようなことを思いながら、不快感に眉をひそめる。
「不快、です…」
まるで、自分のものに手を出されたような、気に入らない気分だ。
確かに兄様は、物語の中でも重要な役目。サブ主人公であり、読者の人気を掻っ攫うような立場を持つ主人公のライバルキャラである。
それは解る。
理解できる。
そんなキャラクターが傍に居たら仲良くなりたいと思うし、出来るなら捻くれてしまうことを阻止しようと努力してしまったりもするだろう。
それは、転生者の特権だ。
この世界に存在するものとして産まれてきた者達とは違う、だからこそ解る価値。
一見その他のミーハーな女子達と紛れてしまうことも多いが、彼等は自分の正義を信じて原作改変を目指す。
一人の力では、小さな波しか起こせないだろう。
けれど、一人ではなかったら。
原作の過去から、そうやって未来を変えようとする相手がいたなら。
これから先も、そうやって未来を作ろうとする転生者達が居たら。
――――少しくらいは、原作から遺脱してしまうだろう?
その結果が、兄様。
周囲を見て、自分の殻に籠もること無く、遺憾なく天才性を発揮する私の自慢のお兄様。
「…………あぁ、気持ち悪い」
主人公でさえも、原作とは変わってしまっている。
”その年”に産まれた転生者も数人いたらしい。彼等はナルトを独りにすることは決して無かったし、あの数々のいたずらにも手を貸して、見事な問題児として一緒に卒業していった。
気持ち悪い。
私のお兄ちゃんに手を出されたことが、気に食わない。
――――嗚呼、私は本当にどうしようもない程のブラコンであると自覚した私は内心自嘲し、庭の方に現れた二つの影に声をかける。
彼等は私のつぶやきが聞こえていたみたいで、若干呆れているようにも見えた。
「おはよう御座います二人共、今日は早起きなんだね」
一瞬どうしようかと悩んで、いかにも何でも無かったように猫を被った笑顔でそう言った私に対し、二人の反応は早かった。
「――――いやいやいやいや、誤魔化されないからな!?」
「どうしましょうモエミ、あの笑みには恐怖しか感じません」
本当に仲いいな、この二人。
良いタイミングで突っ込む一人と、そろそろその子中での私の扱いが気になる一人。
同じクラス同じ学年の、数少ない私の友人。春野モエミと風座シト。
――――二人揃って、私と同じ転生者である。
……………………力尽きた←
書きたいことは色々あるのに、書く前に疲れた…。
変な切れ方しましたが、かるーく設定。
オリ主なイミナは、独占欲のある、お兄ちゃん達の前ではちょっといい子ぶっている猫かぶりちゃんです。
色々、多重転生の設定だけは考えているような子。多分性格は悪いかもです。
ありがとうございましたー。