meet again   作:海砂

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御頭でござる!

 翁の後を追う操ちゃんを、俺は追わなかった。

 俺だけじゃない、葵屋の面々を含め誰も止めようとはしなかった。

 結末がすでに予測出来ていたからである。

 翁はその頑強な体力から、一命はとりとめた。

 しかし全身を百三十八針も縫い、今も命は風前の灯火であった。

 

 一番愛する人が、一番親しい人を殺そうとする瞬間を目の当たりにした。

 操ちゃんは横になっている翁に向かって座り込み俯いたまま微動だにしない。

 翁が書き残した書置きも、未だ封を開かれることなくそばに置いたままだ。

 

「泣いてるのかな」

 

「うん、多分」

 

 俺も含め、みんなして部屋の外から様子をうかがっている。

 

「いーや、あいつはそんなヤワなタマじゃねェさ」

 

 まだ短い付き合いながらも、俺も弥彦も操ちゃんの芯の強さはよく知っている。

 だからこそ弥彦からこういう言葉も出てきたんだろう。

 

「いや泣いてる!! 操ちゃんはまだ16の女の子だぞ!!」

 

「そうよ、普段はガサツでも本当は繊細なんだから!!」

 

「だいたい女の子に向かって「タマ」とは何よタマとは!」

 

 ちょっと前から感じてたけど、翁含む葵屋の面々は操ちゃん溺愛だよなあ。

 前の御頭の一粒種だっけ? 子供のころから知ってるってのもでかいんだろうな。

 

「うるさい! 静かにしろ!!」

 

 今は放っておくしかない。

 翁の書置きを読んだ操ちゃんが御頭になるって言いだすことを俺は知ってるからな。

 確かにヤワなタマなんかじゃない。強い女の子だ。

 

 

 

 そしてすったもんだあり、剣心を待つ日常に戻る。

 俺もタダ飯食らいは気が引けるので、薫さんや弥彦と共に葵屋のお手伝いをするのだ。

 飯炊き、掃除、洗濯に買い物。何でもしちゃうよー。

 

「お増さーん、あと何すればいい?」

 

「洗濯終わった? じゃあ井戸から水汲んできてもらおうかな」

 

「りょうかーい!」

 

 平和な日常。終わるのは剣心の手紙でだっけ?

 剣心たちは煉獄を止めに行く。

 俺らは手紙で京都大火を知り、それを絶対阻止。

 つまり手紙が来るまでは、操ちゃんに「あたしは御頭!」と怒鳴られながら平凡な毎日を過ごすしかない。

 俺はお増さんの言いつけ通り、水を汲みに行く。

 桶二つくらいなら抱えられるようになったよ!

 まぁ念を使わないとめっちゃフラつくんだけどね!

 

 ……京都大火嫌でござる。戦いたくないでござる。

 雑魚相手ならともかく十本刀相手とか無謀にもほどがあるでござる。

 でもやるしかないんだよなあ……。

 

「ちんたら歩いてんじゃないわよ!」

 

「わぁ!?」

 

 井戸から戻る途中の中庭でいきなり後ろから押され、水がこぼれる。

 振り返ると予想通りの操ちゃんが腕組みをして仁王立ちしていた。

 

「何だよもう……水こぼれちゃったじゃん」

 

「何よその程度で、だらしがないわね。あたしたちはこの京都を守る御庭番衆なのよ!」

 

 俺は御庭番衆じゃないです。

 

「まあまあ、細かいことは気にしない。何ならあたしが稽古つけてあげようか?」

 

 薫さんより手厳しそうなので遠慮します。そもそも俺は戦闘に向いてないもの。

 

「そう? それなりに強そうに見えたけどな、筋肉はないけど」

 

 どうせ俺はヒョロガリですよ(´;ω;`)

 

「とはいえ本気で戦力アップはしときたいのよねー。回転式機関砲(ガトリングガン)も手に入らなさそうだしさあ」

 

 確かに、(俺が危険な目に合わないためにも)戦力アップできたらいいな。

 ……念能力、教えてみるか。駄目か。理解してもらえないか。

 でも操ちゃんは纏状態なんだよな、それすなわち念能力に目覚めてるということ。

 オーラを見ることはできないんだろうか。

 

「ねえねえ操ちゃ「御頭!」……御頭、人の周りに水蒸気みたいなのって見える?」

 

「何それ」

 

 見えてない。るろ剣の中でもそういう描写はなかった。

 つまり見えてるのは俺やシュートだけ、ということか。

 そいやパームはどこ行ったんだあいつ?

 うーむ。能力(発)を教えるのは無理だけど、まだ目覚めてないお増さんたち葵屋メンバーを叩き起こすのはありかもしれないな。

 でも俺、ウイングさんのデンジャー念能力開花方法しか知らないぞ。

 あれは危険だ。でも他に思いつかない間に合わない。

 

「御頭御頭、手のひらを胸の前で近づけてみて」

 

「ん? こう?」

 

 いただきますのポーズの、少し手のひらを離した状態。

 

「んー、もうちょい近づけて。それで、なんかあったかいもの感じない?」

 

 俺の目に見える操ちゃんのオーラの端の部分まで手のひらを近づけさせる。

 

「感じるような、感じないような……ねえ、これ何?」

 

「ほら、剣心の師匠のところに行った時に剣気を見せろって言われたでしょ俺。その剣気の、最初の一歩。それ感じられるようになったら、レベルアップすると思う」

 

 多分ね。知らんけど。

 オーラを把握できるようになれば修行もはかどるでしょ、知らんけど。

 

「……拓さんだっけ。アンタ、何者? 見た目は弱そうなのにタダモノじゃない雰囲気持ってるし、実際普通の人じゃないでしょ」

 

 普通のオッサンですがな。

 

「翁さんとか剣心やそのお師匠さんほどじゃないけど、それなりに力を持ってるっていえばいいのかな? 言っとくけど期待されても困るからね? そこまでの実力者ってわけでもないんだから」

 

 ハンター世界で鍛え上げた筋肉は見事に消えちゃったもんな、もう鍛える気もしないし。

 キツいの嫌でござる。ダラダラしてたいインドア派でござる。

 

「ふーん。でもここに居るってことはいざとなったら助太刀してくれるんでしょ?」

 

 そだね、そのくらいはするよ。あんまり力にはなれないかもだけど。

 

「あ、そうだ。この修行法、他のみんなにも教えていい?」

 

 もちろん、ていうか俺が教えようと思ってたくらいだし。

 京都大火や十本刀との決戦に間に合うかどうかは知らんけど。

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