骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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最終話 

 国が出来上がるよりも昔より存在していたプレイヤーで、ゴーレムクラフターのプロフェッサーが引き起こした世界を揺るがす大事件は思わぬ結果を生み出した。

 

 ひとつはアインズ達が元居た世界とこの世界を繋がってしまった事。

 繋がったといっても誰でも来れる訳でなく、【ユグドラシルのプレイヤー】限定で【異世界】に所属していた【ギルド】が転移している事が条件らしい。これはデミウルゴス主導で調べた結果だ。つまり当てはまるのはアインズ・ウール・ゴウンのメンバーぐらいだろう。

 異世界に行き来できるアインズ・ウール・ゴウンのメンバーはとある選択を迫られた。リアルの世界で生きてたまに異世界に来るか、リアルを捨てて異世界で生きるかをだ。

 真っ先に食いついたのはブルー・プラネットさんだ。大自然を愛し、焦がれており即答だった。最初のうちはギルドを中心に自然と触れ合っていたようだったがいつの間にか何処かに消え去り行方不明。捜せば見付かるんだろうけどたまに送られてくるメッセージで生存の確認が出来るからみんなが放置している。

 たっちさんみたくリアルで家族を持っている者はリアルを取った。それでもたまに自身が作ったNPCに会いに来たりはしている。特にコキュートスと武人建御雷は来るたびに闘技場で斬り合いを行なう度に大勢のギャラリーが集まり、管理する側のアインズとしては業務が著しく止まって困ってしまう。が、我侭をいう事の少ないNPC達の数少ない楽しみを奪う事はさすがに出来ず、アルベドと調整に勤しむのであった。

 意外だったのがヘロヘロさんがリアルに戻った事だ。身体も精神もボロボロで初日は「異世界で暮そう」と意気揚々と答え、一般メイドの至れり尽くせりの生活を満喫していた。

 

 何をせずとも絶品の料理が運ばれ、肩がだるいなと呟けば本当に嬉しそうに肩をマッサージしても宜しいですかと聞かれ、お風呂に入れば背中を流しに来てくれる。何とも贅沢な生活を満喫していたヘロヘロさんだったが二日目になると何もしないことに違和感を覚え、最終的にそわそわと仕事を探し出す始末。最終的にリアルで働き、休日などに異世界で癒されに来る流れになった。

 

 

 

 もうひとつ思わぬ事があり、リ・エステーゼ王国とバハルス帝国、スレイン法国の三ヶ国が同盟を結んだことだ。

 リ・エステーゼ王国とバハルス帝国はアインズの力を知っており、それと同格が41名居る事でアインズ・ウール・ゴウンを中心に同盟を結ぶ事を宣言。するとスレイン法国の神官達が満面の笑みで私達も同盟に参加すると申して来たのだ。

 スレイン法国は人間種以外には厳しい国であったが絶望的な状況下でこの世の者とは思えぬ金色に輝く鎧を着たペロロンチーノが降り立って法国を救った事で考えが変わったのだ。圧倒的な強さに曇っていた太陽が降り立ったペロロンチーノを照らすという偶然の産物によりスレイン法国の信徒のほとんどがザーバが持ち込んだ本へ飛びつき、神々として崇め奉ったのだ。神官達は同盟を組むにあたってアインズ・ウール・ゴウンの信徒となって接点のあるニグン・グリッド・ルーインが大神官と新たな役職と共に代表の席に着けたのだ。

 カルネ村は一時独立自治区となったがすぐにアインズ直轄領としてアインズの加護を受けることになったりと、世界は大きく変わることになったのだが………。

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓 アインズの執務室

 ここでは三ヶ国を纏め上げて各国からの問題点や改善点を協議している真っ最中である。

 といっても何十人も集めて会議を行なっているわけではなくアインズとアルベド、デミウルゴスの三人で話が進んで行く。傍らにはセバスにツアレが控えていた。アインズとアルベド、そしてセバスにツアレとそれぞれが薬指に真新しい指輪をつけていた。

 これは帰る事が出来たタブラさんがアインズとアルベドに個別で話を聞き、いきなり式を挙げようと言い出したのだ。別段設定を変えたことへの怒りはなく、本人の意思を尊重しようと言う結論に至ったのだ。そこでたっちもセバスに彼女が出来たとモミから聞いており、セバスも式を行なう事に。勿論神父はザーバが行なった。

 

 兎も角ナザリックの頭脳派三名で粛々と話し合いを進めている執務室にドタドタと足音が響いてくる。アインズがまたかと思いつつ呆れたようにため息をつくと、アルベドは微笑みながら肩を竦める。

 勢い良く開け放たれた扉から法国を救った神として崇められているペロロンチーノと第11階層守護者であるモミ・シュバリエが入ってきた。

 

 「モモンガさん!モモンガさんはどう思いますか!!」

 「あった方がいいよね!!」

 「同意を求める前に何のことか説明を求めても?」

 

 この二人が一緒に居る事は別段不思議じゃない。

 なんでも趣味のひとつが合うらしい…。

 

 「こいつがある方が良いって言うんだよ!」

 「じゃあいらないって言うんなら見なきゃいいじゃん!」

 「プレイするに当たって全シーン一度は見るべきじゃないか!」

 「使命感の話ではなく見たいか見たくないかの話だって!」

 「見たいがあれはそういうシーンが無くとも成り立つだろって話!」

 「確かにストーリーだけでもかなりグッと来るよ。けど無くて良い理由にはならないでしょ」

 「本当に何の話をしているんだお前ら…」

 「「エロゲだよ!!」」

 

 息の合った回答に頭を抱える。

 何故かこの二人、一緒にエロゲをするらしいのだ。

 別段付き合っているなんて関係ではなく、友達の関係と本人が答えるのだが遊び内容が一緒にエロゲのプレイてどうなん?

 モミの遠慮の無い話し方にデミウルゴスはヒクヒクと眉間のしわに力を込めているが、至高の御方より「そのほうが楽で良い」とか「そっちの方が良い」など言われており、不敬だぞと怒る事も出来ない。

 っと、言うかペロロンチーノはエロゲをする必要はないとアインズは思う。

 

 「エロゲの話を持ち込まれても困るんですけど……それよりペロロンチーノさんは法国に行けばする必要なくないですか?」

 

 思った事を率直に述べてみた。

 ナザリックにアインズ・ウール・ゴウンのメンバー全員が集まった時、一日遅れて到着したペロロンチーノは生き生きと「俺、卒業したよ」と宣言してきたのを鮮明に覚えている。女性陣男性陣両者が呆気に取られてたっけ…。

 アインズの一言を聞いたペロロンチーノのガタガタと震えだし、本気で頭を抱えて脅えだした。

 

 「法国は嫌だ…っていうかあの国こえーよ!」

 「え?と、とりあえず落ち着いて…」

 「誰だよ俺をエロスの神て教えたの!しかもあの状況で救ったもんだから法国で俺…超が付くほど人気になったよ!でもさぁ、行く度に千を超す女性陣に追いかけられるってどうよ!?それも全員が俺との子供を求めてだよ!?怖いわ!怖すぎるわ!!軽い気持ちで行ったら搾り取られるかと思ったわ!!」

 「私の執務室でエロゲの話してくるぐらいだったら搾り取られて来いよ!」

 「なんて事を言うんですかこのリア充がッハァア!?」

 「喧しい馬鹿弟!!」

 

 入り口に飾られていた花瓶がペロロンチーノの後頭部に直撃して鈍い音を立てる。開けっ放しになっている扉にはぶくぶく茶釜さんがのそりのそりと歩いてきた。茶釜さんに気付いたモミの表情が急変し、涙を瞳に溜めながら抱きついた。

 

 「ちゃがまお姉ちゃん!」

 「んー?どうしたのモミちゃん」

 「ペロロンチーノさんがいやらしい話ばっかりしてくるの!」

 「ファ!?ちょ、待っ――」

 「おいこら。女の子にそうゆう話するのはどうなのよ?」

 「いやいやいや!冤罪だって!俺悪くねぇって!ねぇモモンガさん?」

 「・・・・・・」

 「そこは何か言って!」

 「O☆HA☆NA☆SIしようか?」

 

 怒気を漂わす実の姉を前にペロロンチーノは後ずさる。

 弁解しようとも女性相手に男性の弁解は中々通らないものだ。審判が姉である事と今までが今までだけに勝ち目は無い。退路は姉に塞がれ、頼みであった友人には目線をそらされる。援軍も救援も望めない状況でリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで転移して離脱する事を決意。のちに怒り狂った姉が実家までやってくるとは予想だにせず…。

 ペロロンチーノが転移し、怒気にまみれるアインズは少しで感情を和らげようと口を開く。

 

 「そ、そういえば茶釜さん。なにかご用があったのでは?」

 「ええ、ぼっちさん知らない?これから女子会を開こうとも思ってさぁ」

 「女子会ってぼっちさんは男性ですよ」

 「カーミラって名乗って女性でいたって聞いたけど?」

 「確かにありましたね…」

 「それにミィちゃんにアウラやマーレが会いたがってるし…私も最近姿見ないし」

 「あの人は忙しいですからね……」

 

 呆れながら息をついたアインズは何処かへ出かけたままの友人の事を想う…。

 

 

 

 

 

 「……クシュン!」

 

 くしゃみ一つ漏らしたぼっちは鼻の辺りを擦りながら目を細める。

 馬に跨るぼっちの後ろには同じく馬に跨る騎馬隊が並んでいた。場所は雪山で皆が皆、防寒着を着込んでいるがぼっちだけはいつものスーツにもう一枚上着を着ているだけ。アイテムで寒さを和らげれば良いものをいつもしていなかったために自室に忘れてきてしまったのだ。

 

 「ぼ…アルカード様!寒いのでしたらすぐに暖を取る準備をするでありんすが?」

 「待たれよシャルティア殿。何をする気か皆目検討がつかぬが止めたほうが宜しいかと…」

 「あぁ!?人間風情が私に意見するでありんすか!」

 

 くしゃみした事で心配そうにシャルティアが駆け寄り、前回の教訓を得たガゼフが止めに入ろうとするがいつも通りの騒ぎに。

 現在ぼっち達は法国の尻拭いに奔走していた。三ヶ国同盟はメリットもあったがデメリットも大きかった。特に人間種以外を敵のように捉え、法国が行なっていた戦争まで引き継ぐ事になったのだ。エ・ランテルで普通に神々とされたギルド:アインズ・ウール・ゴウンの面々と普通に会話をしてしまったぼっちは元々の関係性を疑われ、最終的に軍略と商業の神の座に付けられたのだ。軍略の神とかぷにっと萌えさんだけで良いじゃないかと思ったりもしたがあっちは軍神の肩書きを持っていた。とりあえず軍略に秀でた二人は参加国の要望で引きついだ戦争の指揮に追われている。

 シャルティアが堂々と後ろに居るのはこれ以上敵で居る必要はないとアインズが判断し、ならば戦場へ向かうぼっち様の供回りをしたいと訴えた事で。【神々を前に屈服して傘下に入った】と言う事で一緒に居るのだ。

 

 ちなみにガゼフが得た経験とは戦で勝利した後にぼっちが鍋を振舞うと言い出した事があり、肉類補充をシャルティアが買って出たのだ。近場の森の生物が激減してしまい、今では保護区域となって立ち入りが制限されている。

 

 「・・・・・・ん~、シャルティア」

 「なんでありんしょ――ふぁ!?」

 

 呼ばれて近付いたシャルティアの手を引っ張って馬に乗せ、抱き締めるようにして手綱を引く。

 暖を取るとなると目的地まで時間が掛かる。しかし寒いのは和らげたい。ので、シャルティアを抱き締めて温まろうと思ったのだがアンデットゆえかそれほど温かくない。寒さを凌げてはいるんだが…。

 いきなり抱き締められた事で、喋る余裕も無くなったシャルティアは頬どころか頭が真っ赤になり湯気を噴出し始めていた。

 

 「・・・温かく・・・なった」

 「それわざとですか?いや、わざとですよね師匠…」

 「・・・?」

 「天然でしたか……うっ!?」

 

 渇いた笑みを浮かべるマインだったが、すぐに顔色を悪くして胃の内容物を吐き出した。音だけで理解したレイルが大きなため息を漏らす。

 

 「なんで俺がこんなクソ寒い所まで荷馬車を引いて、マインが吐くところを聞かなきゃいけないんだ?」

 「…ごめん。やっぱり乗り物には弱くて…ウプッ」

 「こっち向くな!一人歩けば良かったんじゃないのか!」

 

 プレイヤーの血を覚醒させて60レベル越えを果たしたが乗り物酔いの耐性だけは付かなかった様だ。

 ふふっと笑みを浮かべながら馬を進める。

 本当ならこの隊列にビオ達も加わる予定だったがぷにっと萌え側の戦力が足りないためにあちらに付いて行って貰ったのだ。ビオが行くという事はビオが監視対象であるプロフェッサーとゴーレム軍団も追従する。

 大騒ぎを起こしたプロフェッサーだったが数回のデスペナでレベルダウンさせる事でとりあえず許した。とりあえずというのはプロフェッサーの作り出せるゴーレムの数には大きな魅力があり、損害を受けた街々の復旧、農業予定地の開拓、建築現場の重機として活用が期待される中で手放すのは得策ではない。それに悪さをしたが死傷者はゼロで元ギルメンを殺すことはぼっちには出来なかった。

 人間とゴーレムを混ぜた者が確認されたが、アレは犯罪組織ズーラーノーンのメンバーと判明した。何でも不老不死にする代わりにゴーレムを大量に作る材料集めや拠点探しを手伝えと吹っかけ、それに乗ったきたズーラーノーンをゴーレムと融合させたそうだ。

 

 雪山を登りきったぼっちの眼下には断崖絶壁と言って良いほどの急斜面が姿を現した。岩場と雪で覆われた斜面を見つめてぼっちは大きく頷いた。

 

 「・・・行こうか」

 「な!この斜面を降りるというのか!?」

 「・・・?」

 「不思議がってますがこれを降りるのは容易じゃないのは分かるでしょう!」

 「・・・すぅ…コホン。私が知っている武将も同じ状況で降りれる筈もない崖を降りて行き、敵の背後より奇襲を果たしたのだ。分かるだろう?法国と戦争をしていたエルフの本陣はこの麓…ここを駆け下りれば背後を取れる!」

 「この状況がその者と似ているのではなく、わざわざ同じにする為に山を上がりましたよね!?」

 「・・・雪山の行軍もとある皇帝が…」

 「絶対無理です。特にマイン殿はどうなさるおつもりか?」

 「後ろに乗せる」

 

 言っても聞いてくれなさそうなぼっちに頭を痛めるが不可能な命令を部下に聞かせるわけにも行かない。そんなガゼフにぼっちは斜面を指差す。そこには一頭の鹿らしき生物がゆっくり飛び跳ね崖を移動していた。

 

 「・・・あの動物の足の数は?」

 「4本です」

 「では、我々が跨っている馬の足の数は?」

 「……4本です。はぁ、分かりました。アルカード伯の指示に従います」

 「では!いざ行かん!!」

 

 ぼっちの号令と共にやけに近い形で騎馬隊が崖を駆け下りて行く。

 これからもこの異世界に良い意味でも悪い意味でも変革をもたらすであろう。とりあえず今は泣き叫びながら崖を駆け下りる騎士団を連れて駆けて行くのだった…。




 これまで読んで下さりありがとうございました。
 本当に…本当にありがとうございました。
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