ベートはロキファミリアに向かった。中にはもちろん、ロキがいる。
「あ?何でも屋か?どしたん?」
「よう、ロキ」
「馴れ馴れしいなぁ、うちとお前はそんな仲良いわけやないやろ?」
「ダメ元で言うけど、俺はベートだ」
「…………ぷっはははは!何言ってるんや、自分!」
「ほらこれだ……。頼むから話を聞いてくれ。お前しか頼れる奴がいないんだ」
「頼れるも何も、何度も言うけどうちとあんたはそんな仲良いわけやないやろ?……あんまうちの子なめんなよコラ」
「……やっぱ信じねぇか。まぁいい、論より証拠だ。俺、お前と一緒に地下道みたいなとこ行ってお前を花から守っただろうが」
「はぁ?なんの話……ああ、あったなそんな事」
「それと、あの後はあのナントカっつー神があの花のところにいたところを暴いたし、さらにその後にギルドまで送ってやったろうが」
「………ほんまにベートか?」
「だからそう言ってんだろ」
「な、何があったん⁉︎ていうか、遠征中なんじゃ……!」
「遠征には、俺の体に入ってる何でも屋に行かせてる。実はな……」
と、ベートは何があったか話した。
「……ぶつかって入れ替わるなんてそんなアホな……」
「てなわけで、なんか過去にそんな事があったーとか、そういうのはないか?」
「うーん……もう一度ぶつかってみたとかしたんか?」
「頭突き喰らったけど戻んなかったよ」
「………なるほどなぁ。ま、うちの方で調べてみるわ」
「頼むわ」
そんなわけで、ベートはロキに正体をバラした。ちなみに本心は、
(リリに追いかけ回されて家に帰れん)
と、いうところだ。
○
それから1週間ほど経った。最近、自分の名前で呼ばれる事もなくなったリアムは、遠征を終えて引き返してる最中である。
「あー……肩痛ぇ。てか筋肉痛痛ぇ……」
「そ、そう……」
リアムの独り言にティオネが引き気味に反応した。そのリアムの肩をフィンが掴み、岩の間に引っ張り込んだ。
「うおっ?」
「お、おい。何でも屋!君はどういうつもりだ⁉︎」
「あ?何が?」
「ベートのように振るまえと言ったろう!それにステイタスに影響するから余り暴れるなとも言ったはずだ!ほぼ独力で階層ボスを倒すなんてベートでは無理だ!」
「うるせーな。仕方ねぇだろ。倒しちゃったんだから」
「このままじゃお前は間違いなくレベルが上がってしまうんだぞ!」
「ベートから金もらうか」
「払わないと思うぞ。とにかく!ここからは戦闘は控えろ!いいな⁉︎」
「へいへい……ったく、チビのくせにうるせーな」
「チビは関係ないだろ!お前元の姿に戻ったらマジ相手してやるからな!」
「覚悟しろよ」
「そう、覚悟し……お前がするんだよ!」
などと話してからみんなの群れに戻る。そして、しばらく歩くこと数分、
「ベート♪」
「あ?」
ティオナがベートの腕に飛びついた。
「なんだよ」
「ねぇねぇ、最近どうしたの?超強くない?」
「普通だよ。つか離せ。歩きにくい。胸が硬い」
「胸のことは言うな!良かったらさぁ、地上に戻ってから私とどっか行かない?」
「あーそれ無理。地上戻ったらベー……何でも屋に行くから」
「へっ?なんで?」
「なんでって……」
返答に迷ったものの、なんとか誤魔化した。
「し、仕事の依頼に……」
「あんな胡散臭いハゲより私が解決してあげるからさぁ!」
「禿げてねーよ。マン禿げ」
「は、生えてるもん!」
「逆に生えてるのにそんな胸ないの?」
「んがっ……!こんのっ……!」
と、ティオナの怒りが爆発しそうになった時、二人の頭をガンッゴンッとティオネが殴った。
「大きな声で喧嘩する内容じゃないわよ」
「あん?クソ巨乳」
「アアッ⁉︎殺すぞ駄犬が!」
「やってみろよオイ」
と、睨み合うリアムとティオネ。その後ろでフィンは顎に手を当てて考え事をしていた。
(ベート……いや、リアムだったかな?あいつの戦い方、まさか……髪の毛の色や顔立ちも変わっていたから気付かなかったけど……)
「何か考え事か?フィン」
隣のトトロ……じゃねぇや、リヴェリアに声を掛けられた。
「リヴェリア、三年前の冒険者狩を覚えてるか?」
「………ああ、我々が討伐したあのメチャクチャ強かったガキか。まぁ、冒険者狩というよりは、ダンジョンで生きるためにモンスターも冒険者も殺して食ってただけらしいがな」
「そう、冒険者なら確実にレベル9だーとか騒がれてたあれだ。そいつの戦闘に、今のベートは似ていると思ってな」
「考え過ぎだろう。ベートが冒険者狩だとでもいいたいのか?」
「いや、そうじゃないんだけど……」
フィンは言葉を濁し、ただリアムの後ろ姿を眺めた。
○
何でも屋。リリはベルとヴェルフとダンジョン。なのでベートは家でゆっくりできた。
それにしても、とベートは思うのだった。誰もいない空間とはいいものだと。たまにはゆったりとこうしてボーッとするのも良いものだと。何も考えずに、ただ屋根の上で空を眺める。このままボーッとしていれば、身体が浮く気がすると。そして、宇宙の、銀河の彼方へ浮いていける気がすると。
「起きろベートぉ!」
浮くどころか蹴り落された。頭を地面に直撃させたものの、すぐに起き上がった。
「いってぇな……!」
「いやったでベー……リアムー!」
「俺は所詮、飛べやしないのか……」
「おい、ベート!」
「いや、諦めるな。俺は鳥だ」
「起きんかー!」
ロキがベートの腹に起きてきた。
「ゴッファアッ!」
「ベート、分かったで」
「て、テメェ……ロキぃ、何しやがんだ……」
「見つかったで。元に戻る方法!」
「………マジで?」
「ああ。とりあえず、頭突きしなきゃいけないらしい」
「結局か⁉︎」
「ただし、ただ頭突きするだけじゃダメみたいなんや。何も考えずに、特に『元に戻ろう』なんて考えずにたまたま偶然頭をぶつけないと無理や」
「どんな確率⁉︎そんなん一生戻れるか!」
「まぁ、そゆわけや。頑張り」
「何をどう頑張れと⁉︎」
なんてやってるときだ。
「何でも屋さん、少しいいかな」
声をかけられた。そこには、ヘスティアが真面目な顔で立っていた。
「あ?」
「どチビィ⁉︎なんでここに……」
ロキはそう言いかけたが、ヘスティアは無視した。
「頼む。ベルくんを助けてくれ」
「………は?」