俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

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第90話

『試合終了ぉぉっ!! 2-1!! 江ノ島高校準々決勝進出ぅぅっ!! 天才GK遠野の神懸かったセーブに苦しみゴールの遠さにもがき続けた江ノ高でしたが、チーム全員の闘志が、遠野から2点も奪うという結果をもたらしました! 守護神・李も、PKで1点を取られてしまったとはいえ、それ以外のシュートを全て防いで見せました!』

 

 うーむ……やはりこの試合の立役者は李先輩と駆だろうか。

 PKでこそ失点してしまったものの、四実の攻撃はすべてシャットアウトしていた。駆はあの遠野から待望の先制点を奪った。それこそ遠野が想定していなかった新技で得点だとしても、あの時遠野から得点したっていう事実は途轍もなくデカい追い風になっていた。

 ……まぁ、あれだ。決勝点を決めたのは確かに俺だが、そこまでのプロセスだけを見れば江ノ高の攻めと言うのは凄かったって事だ。

 

『いやぁ……それにしても不知火選手が決めたヘッドシュートは凄まじいの一言に尽きます。逢沢選手のシュート性のクロスに反応してのヘッド。これに反応できるGKが果たしてこの世界にいるのでしょうか。そう思わされるようなシュートでした』

 

 褒めるな褒めるな。

 褒められると恥ずかしくなるって言ってんだろうに。

 

 試合が終わり、緊張から解き放たれた選手たちはお互いに健闘を讃えあっていた。そこには負けて相手を恨んだりするような事を口にしている選手は誰一人としていなかった。

 

「ヤス……やっぱお前は凄い奴だぜ。完敗だ」

「いや、あんだけうちのシュートを止める奴なんて今まで相手にしたことなかったから、うちのメンバーにゃ良い経験になっただろうさ」

「はは、そりゃそうだ! 李さんも凄かったし、駆の成長も驚いた。けど、一番はやっぱヤスだよ」

 

 それから遠野は駆に声を掛けられ、その頭をガシガシと掻き回していた。その際遠野は笑顔を浮かべていたが、やはり負けたのは悔しいのだろう。去り際に寂しそうな表情を浮かべていた。

 このまま俺たちが勝ち進んだら、順当にいって蹴学と決勝で当たるだろう。鎌学よりも強い相手なのは間違いない。なんたってあのレオがいるんだから。

 

 さて、帰りの移動バスに揺られている俺たち江ノ高メンバーだが、そのほとんどのメンバーが疲れから眠りに落ちていた。なんてったって二日連続での試合だ。初戦こそ静名学園を相手に圧勝していたが、さすがに2戦連続は疲れも溜まるだろう。

 しっかしこのチートボディ、昨日に引き続いてピッチ上を駆け回ったってのに一切疲れが残ってる感じがしない。今日もまた、ベッドに潜り込んで一日経ったら綺麗さっぱり消えてるに違いない。

 

「――明日は試合はありませんが、明後日には準々決勝です。移動中に入ってきた情報によれば、次の試合相手は千葉県代表の八千草高校と決まったようです。八千草高校は今大会四実と並ぶ守備力を持つチームです。しかし、その攻撃力は四実以上のものです。一回戦は3-0、そして今日の試合では4-0のスコアで勝ち上がってきています」

「……また無失点チームかよ」

 

 八千草高校と言えば島さんがいるところじゃないか。

 島さんがDFとして出てるんだったら無失点っていうのも頷ける。しかし……スコアを耳にして思ったのは、そこまで攻撃力のあるチームだったのかという事だ。

 

「2年生の島亮介くんは天才肌のDFで、攻撃参加も積極的にこなします。そして攻撃の中心は千葉県のナンバーワンMF、瀬古勇太くん。パス・ドリブルと、すべてにおいて一流の選手ですが、最大の武器はその左足が放つ変幻自在のフリーキックです」

 

 なるほど。

 島さんも攻撃に参加する上に、千葉で一番のMF選手が攻撃の中心ときたか。前のU-16に参加してなかったのは年齢的な問題だったのか。

 それにしても無回転シュートをマスターしているかもしれないってのは良い情報だ。最初から無回転でくるかもしれないと思っておけば、DFとしても動きやすいし、李さんも守りやすくなるだろう。……まぁ、GKにしてみれば前に弾いて落とすぐらいしかできないかもしれないが、そこはすぐ反応して対応できるよう心積もりはしておこう。

 準々決勝まで勝ち進んでくるチームだけあってタレント揃いのチームなんだろうが、チームの中心となって動いているのは島さんと瀬古選手の2人だろう。ま、どんな雰囲気のチームなのかは実際に戦ってみないと分からない。

 

 ――なんて考えているうちに今日は解散になった。

 体力的には問題なくても、さすがに精神的には疲れを感じているような気がするんだなこれが。それが褒められる事による恥ずかしさで気疲れしているってだけって所に違和感を感じるが、まぁ、今更か。

 

「ヤス、一緒に帰ろ!」

「あ、私も!」

「おぅ」

 

 最近になって駆が子犬のように見えてきた件。

 仕事でしばらく家を空けていたご主人が帰ってきて嬉しそうに駆け寄ってくる犬、みたいな印象を駆に抱いてしまっているんだが……ほのぼのとした雰囲気を感じさせてくれることは感謝してるが、同時に一緒に帰ると言ってくれている奈々にも気を遣った方が良いんじゃないかな?

 と、その時ポケットに入れていた携帯がプルルルと鳴り響いた。

 画面に映っている着信相手は舞衣だった。一体何の用だろうかと疑問に思いつつも、駆と奈々に一声かけて出る事に。

 

「もしもし?」

『あ、ヤス? 江ノ高勝ったんだね、おめでとー!』

「お、ありがとう。蹴学は?」

『もちろん――勝ったヨ、ヤス』

「あん? レオか?」

 

 舞衣と話をしていたと思ったら急にレオが割り込んできやがった。しかも声の感じからしてあまり悪い結果じゃなかったんだろう。しかし、何故舞衣が話しているのに急に割り込んでくるんだ?

 

「で、結果は?」

『7-2だヨ。前半で5-0にして後半は僕とリッキーが引っ込んダ。きっと勝ち上がってきてくれ。決勝で戦うことを楽しみにしているヨ。もちろん、駆がどれだけ成長してるかも気になるところだけどネ』

「おぅ……ま、なんとか勝ち上がってみせるさ。なんせ、江ノ高には俺がいるからな」

『ハハッ! 自分に自信を持つのは良いことだ。それでこそヤスってことかナ』

 

 何やら嬉しそうに声を上げてるから、こんな返事で良かったんだろう。

 正直、駆が一緒に練習(レオが付き合ってただけにも見えたが)してた時に偶然出会ったってのが初めての出会いだし、それから何ら交流があったわけじゃないから、俺的にはそこまで親しくない知人って認識なんだが、異様に気にかけてくれてる気がする。

 ……そこが日本人と外国人のコミュニケーションの違いってやつなのか?

 

「……えっと、レオって言ってたけど」

「あぁ、なんか急に代わってな。蹴学も勝ち上がってるらしい。それも7-2、レオとリッキーって言う奴の二人は前半しか出てなかったみたいだけど、それで5-0だったらしい」

 

 レオから聞いた事実をそのまま奈々と駆の二人に話してやる。

 淡々と事実を言っただけだったのだが、二人から息を呑む音が聞こえてきた。

 

「5って……」

「まぁ、俺たちだって他のチームに5点とか6点決めたりしてるんだ。何もおかしい事じゃないだろ?」

「いやいや!? そもそもそんな攻撃力のあるチームなんてそこまで無いからね!?」

 

 奈々が慌てた感じで否定してくるが、江ノ高でサッカーを始めてこの方、対戦相手には基本的に大差をつけて勝ってきた記憶しかない。国際試合でもそうだし、練習試合だってそうだった。……いや、チートボディの御蔭と言えばそれまでなんだが。

 

 あ、これは俺の認識が可笑しいのか。

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