やはり俺が護廷十三隊隊士なのは間違っている。   作:デーブ

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第二話  比企谷八幡は雪ノ下雪乃と仕事をする。

俺・比企谷八幡は、六番隊隊舎の一室で仕事をしていた。

しかし、俺は六番隊所属ではない。

大事な事なのでもう一度言おう、俺は六番隊ではない。八番隊だ。

では、何故八番隊隊士である俺が六番隊にいるのか・・・。

それは、同隊五席の平塚先生の手によって、六番隊第五席・雪ノ下雪乃が行っている奉仕活動の手伝いをさせられる嵌めになったからだ。ついさっきの出来事である。

故に、俺は今、自分の仕事を持って、雪ノ下がいつも活動に使っているという仕事部屋にいる。

二人っきりで。

 

恐らく、この光景を男性隊員に見られれば、俺は確実に敵認定されるだろう。

十三隊屈指の美人隊員と一緒にお仕事をしているのだ。野郎どもが羨ましがるのも仕方ない。

完全に王道ラブコメ展開である。このままウッウキャッキャして、何故か一方的にヒロインに惚れられるのもやぶさかではないが・・・。

しかし、残念な事に、今俺の横にいるのは氷の女王こと雪ノ下雪乃。恋愛など下らないを地で行く毒舌女である。

彼女が相手では逆立ちしてもそんな甘い展開にはならないのだ。ほら見てよ、雪ノ下の俺を見る目。ゲテモノを見る目だろ?

だから、俺にとってこの状況は息苦しくてたまらなかった。ただでさえ、女子と話した経験の少ないのに、いきなり美人と二人っきりにされるのだ。

そりゃ、息苦しく感じて当然だろう。

全くどうして、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている・・・。

 

 

・・・なんて事を思っていた時期が、俺にもありました。

 

いや、正直ここでの業務割と快適でしたわ。確かに雪ノ下は怖いけど、静かだし、それに思った程キツくない。

ぶっちゃけ最初は、通常業務に加えて奉仕活動なんて忙し過ぎて過労死すんじゃねえのとビビりまくっていたが、そもそもからして、この部屋の戸を叩く依頼人の数が少ない。というか、今の所皆無だ。

つまり、俺の現状は、ただ単に仕事をする場所が八番隊から六番隊に変わっただけなのである。

ちょっと、何だよこの肩透かし感。これでも俺、怒涛の毎日に泣かされる日々を想像してたんだぜ? まあ良いんだけどさこっちの方が。俺も忙しいの嫌だし。

でもやぱり、少し拍子抜けだと思ってしまうのだ。それに、予想に反して変化が異常に少なかった所為で、些細な特異点が嫌に気になる。

俺は書類に立ち向かうふりをして、チラッと隣に座っている少女を見た。

・・・・てか、コイツちょっと俺から距離取りすぎじゃね? あれ、隣ってなんだっけ?

まあいいけどよ。女子に避けられるのはいつもの事だし。

横にいるこの少女が俺にとっての特異点である。

彼女、雪ノ下雪乃は、名門雪ノ下家の次女だ。そして、俺等の同期で一番の実力を有する天才隊士でもある。

当然、今まで俺の側にそんな凄い奴がいた事などなかった。つーか一人だったしな。

故に、スーパーボッチワーカーことこの俺が彼女に気を取られるのは仕方ない事と言えるだろう。

 

「・・・何か?」

 

やべ、見過ぎてた。

雪ノ下の刺すような視線が俺を貫く。

 

「あ、いえ別に」

 

見ていた事に気付かれた気恥ずかしさから繕う様にそう返したのだが、氷の女王様はそれが気に喰わなかった様だ。

 

「言いたい事があるならハッキリ言いなさい」

 

怖っ! ちょっと見ただけじゃん! そんな邪険にしないでよ!

 

「いや、ただ単純に仕事早いなって思っただけですよ。他意はありません」

 

実際、コイツはもう持参して来たであろう本を悠然と読んでる。仕事が早いと思ったのは事実だ。まだ昼ちょい過ぎぐらいの筈なんですがねえ・・・。

すると、業務的な言葉を吐いたからか、雪ノ下の視線が和らぐ。

 

「・・・そう。一応いつ依頼人が来ても良い様、前倒しで終わらせる様にしているのよ」

 

俺は、「へぇ」と、素直に感心した。

五席は当然八席より多忙である。

正直、直ぐに終わる依頼ならともかく、手間のかかる奉仕の依頼が舞い込んで来たら八席の俺でも仕事のペースが乱れるだろう。

 

実際、他の隊のお手伝いが入った時は、前日か後日にその日の仕事を回してたし。

つまり、昨日十番隊の仕事手伝った俺は、今まさに絶賛しわ寄せ対処中というわけである。マジ死ねよ葉山。

 

なのにだ。俺よりも遥かに忙しい筈の雪ノ下は、奉仕活動によって通常業務に支障をきたさぬよう前倒しで仕事を終わらせているのだと言う。

俺ならその前倒しの作業だけでテンテコ舞いになりそうだ。

 

「やっぱコイツ、バケモンだわ・・・」

「バケモノとは随分な言いぐさね。ゾンビガヤ八席?」

「あ、やべっ!」

 

声に出てた! 比企谷八幡一生の不覚。

脳内会話をうっかり外部に漏らすとは・・・、エリートボッチにあるまじき失態だ。

・・・つーか、ゾンビガヤって誰? 俺の事?

てか、自分より階級が3つも上の上官にタメ口効いた上バケモノ呼ばわりとか何やってんだよ俺! 今すぐ数秒前の自分をぶん殴ってやりたい・・・・!(切実)

と、とにかく、誤魔化さなくては・・・。

 

「いや、その、えーっと・・・」

 

そう言葉に窮する俺に、雪ノ下はヤレヤレと言う感じで溜息を吐いた。

 

「平塚五席の言っていた通りね。そこですんなり謝罪の言葉が出てこないなんて、対人能力に重大な欠陥があると言わざるを得ないわよ」

 

お、おう、酷い言われようだな。先生、あの後雪ノ下になに言ったの?

 

「でもまあ良いわよ。ここは誰でも気兼ねなく、階級の垣根さえ超えて悩みを相談できる場。そうね、現世の学校の部活動と言えば分かり易いかしら」

 

いや全く分からん。八幡現世の事マッカンしか分かんない。

 

「部活動は学年が同じならばその部員達は対等。私達は同期入隊なわけだし、見た所、歳もそう変わらないでしょう。だから別にタメ口でも構わないわよ」

 

ああ、そう? じゃあ遠慮なく。

 

・・・・・とでも言うと思ったかァ!? 出来るかそんな事!

 

こちとら、同じ隊の女子ともまともに喋れないんだぞ! それなのに、よその隊の上官で、おまけに美人のお前となんかタメ口で話せるかボケェ!

 

つまり、俺の取るべき行動は一つだ。

食らいやがれ! 必殺! 『敬語で恭しく断る』!!

 

「いや、それは流石に・・・」

「だめ、部長命令。貴方に拒否権はないわ」

「部員はお互い対等なんじゃなかったのかよ。早速命令してんじゃねえか」

 

・・・あ、今普通にタメ語で突っ込んじまった! やばい、こんな命令にすら従っちゃうとか、俺の社畜精神尊敬に値するレベル過ぎる・・・。

つーか、なんで雪ノ下はちょっと誇らしげなんだよ。 殴りたい、そのドヤ顔。

俺は拳を握りながら歯を食いしばる。が、雪ノ下はどこ吹く風で、馬鹿らしくなり拳を開いた。

 

「はぁ・・」

 

ああ、なんかもの凄い不毛なやり取りに労力使った気がする・・・。

仕方ない、俺も大人しく仕事に取り掛かるとしますかね。全然騒いでないけど。

 

 

 

 

暫くして窓を見ると、もう日が傾き、夕日が差し込んできていた。随分仕事に集中していた様だ。

書類に顔を戻すと、もう今日の分の仕事を終えてしまっている事に気が付く。あら嫌だ、時間忘れる程仕事に没頭するとか順当に社畜街道突っ走ってるよ俺。

 

「出来たのかしら?」

「ひゃい!?」

「・・・・何よ、気持ち悪い声出して・・・」

 

知らぬ間に雪ノ下が直ぐそばにいた。俺はビックリして変な声を上げてしまう。

おいやめろ、急に話し掛けたお前も悪いんだから、そんな変質者見る様な目で見るんじゃねえ。

 

「あら、意外と早いじゃない。思ったより仕事は出来る様ね」

 

あ、でも、出来たらちゃんと褒めてくれるのね。ヤベ、ちょっと嬉しいとか思っちまったよ。何この高度なツンデレ。俺じゃなかったら惚れてんだろ。

 

「ま、まあ、依頼が来た時のこと考えたら確かに早めに終わらしといた方が良いですからね。いつ来るのかは分かりませんけど」

 

今日一日、未だに一人として依頼人が来ないこの現状を皮肉ると、雪ノ下はぷいっとそっぽを向いた。

 

「依頼が来ないのであれば、それは悩みを抱えている人が少ないと言う事よ。結構な事じゃない」

 

まあ確かにな、その方が俺等も楽できるし。でもそれ、奉仕部の存在意義全否定しちゃってるからね。

 

「因みに、今まで何件ぐらい依頼来たんスか?」

 

なんとなしに尋ねる。やや沈黙を伴って、

 

「・・・四件よ」

 

二桁行ってないのかよ。いや待て、始めたのが最近なら寧ろ多い方・・・。

すると、雪ノ下はまるで思考を読んだかの様にこう告げた。

 

「始めたのは半年前よ」

「それ圧倒的に認知度足りてませんって」

 

実際俺も平塚先生に連れて来られるもで知らなかったしな。

 

「別に構わないわ。私だって、誰これ構わず手を差し伸べるつもりはないから。本当に困っていて、ここを見つけてくれる人だけに手を貸したいの」

 

おいおい、随分上からモノを言うな・・・。

奉仕なんて慈善事業してるくせに滅茶苦茶傲慢じゃねえか。

多分、その考え方改めない限り依頼者なんて来ないと思うが、まあ、俺としてはそっちの方がありがたいか。無償で静かな仕事部屋手に入れた様なもんだからな。

なんて相変わらずな事を思っていた時だ、突如無遠慮に戸が開いた。

オイ嘘だろ? 遂に依頼者登場? 八幡働きたくないよ。

 

「オーッス、雪ノ下いるかー」

 

入室して来たのは赤い髪の毛を面白い形に結わえ、特徴的な眉毛を持った男性死神だった。

・・・・え? つーか、え? この人って・・・、

 

「入るのならノックをして下さい―――」

 

雪ノ下は注意しながら本を閉じ、ビシッと立ち上がってその死神に向き直った。

そして、彼女の口からとんでもなく高位の死神の名が発せられる。

 

「―――阿散井副隊長」

 

ブッ!! やっぱり! やっぱりこの人、阿散井副隊長なんだ!? てか、なんで六番隊副隊長がこんな所に? え? 何? コイツこんな上の人に目を掛けて貰ってんの?

ちょっとそれは流石に凄すぎるぞ、雪ノ下。

 

どうも二人はそれなりに親しい様で、ある意味自分を責めているともとれる部下の言葉にも、阿散井副隊長は「わりいわりい」とフランクに返している

つーかこの人悩みなんかあんの? 仮にあったとしても自力で解決できそうなんだけど・・・。

 

「急で悪いが任務だ」

 

おっと、記念すべき今日初の依頼人かと思ったらただ仕事持って来ただけだった。俺関係なさそうだしステルスヒッキーしとこ。

 

「虚ですか?」

 

雪ノ下が真剣な声音で問う。

 

「ああ、西流魂街の外れで虚が大量発生してるっつう情報が入ってな。このままだと夜には近くの村が襲われる。部下何人か連れて、早急に向かってくれ」

 

詳しい事はこれに書いてある。そう言って手渡された指令所に雪ノ下は目を通す。そして、読み終えると顔を上げ、

 

「了解しました。直ぐ部隊を編成します」

「頼んだぜ」

 

力強い雪ノ下の返事に、阿散井副隊長は頷いて踵を返した。

すると、そんな副隊長の背中に、雪ノ下が声を掛ける。

 

「副隊長。今回の任務、この男を加えてもよろしいでしょうか?」

「あん? この男?」

 

胡乱そうに振り返る副隊長。ほんと、この男って誰なんだろうね? え、俺? そんなまさか~。

 

「ああ、そこの死んだ魚みてえな目ェした奴か。誰なんだ、そいつは?」

「平塚五席の紹介で私が預かっている、八番隊の比企谷八幡です。階級は八席」

 

あ、俺なの? 俺なんだ・・・、そうかそうか・・・ってちょっと待て!?

 

「ひきがや・・? 聞かねえ名だな。まあ、八席なら実力不足って事もねえだろ。好きにしろよ」

 

いや、好きにしろよじゃなくて、もうちょっと縄張り意識とか持とうよ! んなホイホイ他隊の任務に駆り出さないでくれよ頼むから!

 

そんな必死の抗議も虚しく・・・。まあ、声に出してはないんだけど。

あ? 当然だろ? 八席風情が副隊長に口答えなんか出来っかよ。

結局、俺は雪ノ下の独断と偏見で、六番隊の虚討伐隊に編成されてしまった。なんだこの理不尽。

 

 

 

ああ、やだなあ・・・。働きたくないでござる。

 

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