もしSKYRIMの世界にはくのんと紅茶が召喚されてしまったら 作:ヤステル
色々区切ってしまって申し訳なかったです。
区切りのいいところで切るっていうのがなかなか難しいですね。
ああ、これは……。
知っている。この感覚を……。
いつか昔の事……わたしは、ここで何かを願った。
とても当たり前のことを、命がけで戦い、勝ち進んで、妨害されて、四肢を失ってでも進み、諦めずに、そして勝ち取り、叶えた願い。
わたしの中に潜んでいたノイズが鮮明になっていく。絵が見えてくる。声が聞こえてくる。
ああ……そうだ。
多くの物を手に入れた。多くの物を失った。そして、その果てに手に入れたもの。
時に切なく、時に寂しく、時にうれしく、時に怒りに震えた。
命を削り、命が削られ、命が消えた。仲間も、友人も、敵も、何もかもが。
それは絶望とも希望とも言える――この世界にまだ残っていたかけがえのないもの――。
わたしはその為に戦ったのだ。
だけど、それでもまだ……それでもまだわたしは知らないのだ。
それだけが自分の世界の全てではないことを。
わたしは溶けていく。
溶けて、
わたしは
まだ、知りたい。わたしの世界の一旦を。どんな形のものであれ。分かっていないものを分かりたいのだ。
*
そうだ。
分かっていないのだ。
何も分かっていないまま、ここで終わりを迎えるなんて、そんなの無意味すぎる。
これは帰結ではない。始まりなのだ。
中途半端な人生は、中途半端に筆を止めた書きかけの大作に等しい。それを読まずして本当の終わりとは言えないだろう。
世界は描ける。筆もある。あとは人だ。
そう、わたしにはまだ、足りていないものが一つある。
わたしの傍にいてくれた。
わたしの事を守ってくれた。
わたしと共に戦ってくれた。
彼が傍にいなければ、わたしはわたしで始まることはできない。
だから、とわたしは手を伸ばす。
もう一度、わたしと始めよう? わたしたちの物語が終わるのは、まだまだ遠い未来のようだ。
ムーンセルを知っただけで、これで終わりだなんてわたしは嫌だ。たとえ、わたしがこれで終わっても、そっちは違うのでしょう? だって、あなたはあなたの夢をまだ叶えきっていないのだから。
どうせ、わたしと同じことを思っているのでしょう? だったら、また一緒に行こう、とわたしは『彼』を呼ぶ。
――――記憶の再構成
わたしの体はここにある。わたしの心はここにある。わたしの想いはここから向かって行く。わたしの戦いはまたここから始まる。
わたしは今、ここにいる――。
では、そこにいる『彼』はどう考える?
わたしは問いかけた。
そうでしょう? 『アーチャー』?
「聞くまでもないな。オレの体も、心も、想いも、戦いも、君と同じく、ここから始まっていく。オレは……ちゃんとここにいるぞ、マスター」
眩い光が目蓋を透過して、わたしの目に降り注いでくる。
手にはしっかりと握られた感触が宿っている。
大きく――頼りがいのある手。その手は、しっかりとわたしの手を握り締めてくれている。
ああ……これだ。これを待っていた。
わたしが求めていたもの。わたしが待ち望んでいたもの。
それが今、この瞬間――手に入った。
思い出していく。わたしとアーチャーと共に戦ったあの時を。
そして紡いでいく。これからの戦いの日々を。
足りないものは、これで揃った。
わたしは目を開ける。
そこには、幾度も見慣れた光景が――呆れてはいるものの、安堵してわたしに微笑んでくれるアーチャーがいた。
「やれやれ。月の聖杯戦争も、月の裏側の一件も全て終わって物語は大団円かと思いきや……よもやまた
アーチャーの声がわたしに響く。
ああ……この声だ。その姿だ。わたしと共に戦ってきたアーチャーは、今、ここに戻ってきてくれた。
「ん? どうしたマスター? 何だか嬉しそうな顔をしているな。これから厄介ごとが起きようとしているというのに」
アーチャーは、そう問いかけた。
ええ、本当に、と答える。自分でも分かるくらい顔がにやけついているのが分かった。
だが、それでいいのだ。
どんなに大きな厄介ごとだろうと、どんなに困難な道だろうと、そんなものは知ったことではない。わたしとアーチャーとならどんな障害をも越えて、歩んでいけるだろう。その歩みを止める者なんて、決していないのだから。
アーチャーはわたしを引き上げる。目線を同じにして、遥か彼方に見える始まりを見つめた。
「ムーンセルがどうしてこのようなことを起こしたのか……私には分からない。だが、君の言う通りだ。私たちの歩みを止める者などいはしない。半端者が始めるには最高のスタートだ。また、ここから始めていこう、マスター」
うん、とわたしは頷いた。
そして光が差す方へ、導かれるように進んだ。
そう。
これが『わたしたち』が『再び』を刻むための第一歩。全てを知るために必要な一歩。
そこに鬼が出るか蛇が出るかは分からない。
でも進めば、自ずと道は開けてくるはずだ。今はそれを信じて、二人で、歩みを進めて行こう。
オープニングお疲れさまでした。
これから自由に書かせてもらいますので、どうぞよろしくお願いします。