もしSKYRIMの世界にはくのんと紅茶が召喚されてしまったら   作:ヤステル

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オープニングはこれで終了です。

色々区切ってしまって申し訳なかったです。

区切りのいいところで切るっていうのがなかなか難しいですね。


オープニング④ ―終わりの始まり―

 ああ、これは……。

 知っている。この感覚を……。

 いつか昔の事……わたしは、ここで何かを願った。

 とても当たり前のことを、命がけで戦い、勝ち進んで、妨害されて、四肢を失ってでも進み、諦めずに、そして勝ち取り、叶えた願い。

 わたしの中に潜んでいたノイズが鮮明になっていく。絵が見えてくる。声が聞こえてくる。

 ああ……そうだ。

 多くの物を手に入れた。多くの物を失った。そして、その果てに手に入れたもの。

 時に切なく、時に寂しく、時にうれしく、時に怒りに震えた。

 命を削り、命が削られ、命が消えた。仲間も、友人も、敵も、何もかもが。

 それは絶望とも希望とも言える――この世界にまだ残っていたかけがえのないもの――。

 わたしはその為に戦ったのだ。

 だけど、それでもまだ……それでもまだわたしは知らないのだ。

 それだけが自分の世界の全てではないことを。 

 わたしは溶けていく。

 溶けて、熾天の檻(もとのばしょ)で眠る岸波白野(わたし)の元へ行く。

 わたしは岸波白野(わたし)と混ざり合い、欠けたものを繋ぎ合わせ、そして知っていく。

 まだ、知りたい。わたしの世界の一旦を。どんな形のものであれ。分かっていないものを分かりたいのだ。

 

 

   *

 

 

 そうだ。

 分かっていないのだ。

 何も分かっていないまま、ここで終わりを迎えるなんて、そんなの無意味すぎる。

 これは帰結ではない。始まりなのだ。

 中途半端な人生は、中途半端に筆を止めた書きかけの大作に等しい。それを読まずして本当の終わりとは言えないだろう。

 世界は描ける。筆もある。あとは人だ。

 そう、わたしにはまだ、足りていないものが一つある。

 わたしの傍にいてくれた。

 わたしの事を守ってくれた。

 わたしと共に戦ってくれた。

 彼が傍にいなければ、わたしはわたしで始まることはできない。

 

 

 だから、とわたしは手を伸ばす。

 

 

 もう一度、わたしと始めよう? わたしたちの物語が終わるのは、まだまだ遠い未来のようだ。

 ムーンセルを知っただけで、これで終わりだなんてわたしは嫌だ。たとえ、わたしがこれで終わっても、そっちは違うのでしょう? だって、あなたはあなたの夢をまだ叶えきっていないのだから。

 どうせ、わたしと同じことを思っているのでしょう? だったら、また一緒に行こう、とわたしは『彼』を呼ぶ。

 

 

 ――――記憶の再構成

 

 

 わたしの体はここにある。わたしの心はここにある。わたしの想いはここから向かって行く。わたしの戦いはまたここから始まる。

 

 

 わたしは今、ここにいる――。

 

 

 では、そこにいる『彼』はどう考える?

 わたしは問いかけた。

 そうでしょう? 『アーチャー』?

 

 

「聞くまでもないな。オレの体も、心も、想いも、戦いも、君と同じく、ここから始まっていく。オレは……ちゃんとここにいるぞ、マスター」

 

 

 眩い光が目蓋を透過して、わたしの目に降り注いでくる。

 手にはしっかりと握られた感触が宿っている。

 大きく――頼りがいのある手。その手は、しっかりとわたしの手を握り締めてくれている。

 ああ……これだ。これを待っていた。

 わたしが求めていたもの。わたしが待ち望んでいたもの。

 それが今、この瞬間――手に入った。

 思い出していく。わたしとアーチャーと共に戦ったあの時を。

 そして紡いでいく。これからの戦いの日々を。

 足りないものは、これで揃った。

 わたしは目を開ける。

 そこには、幾度も見慣れた光景が――呆れてはいるものの、安堵してわたしに微笑んでくれるアーチャーがいた。

 

「やれやれ。月の聖杯戦争も、月の裏側の一件も全て終わって物語は大団円かと思いきや……よもやまた始まる(リスタート)とは思わなかった」

 

 アーチャーの声がわたしに響く。

 ああ……この声だ。その姿だ。わたしと共に戦ってきたアーチャーは、今、ここに戻ってきてくれた。

 

「ん? どうしたマスター? 何だか嬉しそうな顔をしているな。これから厄介ごとが起きようとしているというのに」

 

 アーチャーは、そう問いかけた。

 ええ、本当に、と答える。自分でも分かるくらい顔がにやけついているのが分かった。

 だが、それでいいのだ。

 どんなに大きな厄介ごとだろうと、どんなに困難な道だろうと、そんなものは知ったことではない。わたしとアーチャーとならどんな障害をも越えて、歩んでいけるだろう。その歩みを止める者なんて、決していないのだから。

 アーチャーはわたしを引き上げる。目線を同じにして、遥か彼方に見える始まりを見つめた。

 

「ムーンセルがどうしてこのようなことを起こしたのか……私には分からない。だが、君の言う通りだ。私たちの歩みを止める者などいはしない。半端者が始めるには最高のスタートだ。また、ここから始めていこう、マスター」

 

 うん、とわたしは頷いた。

 そして光が差す方へ、導かれるように進んだ。

 そう。

 これが『わたしたち』が『再び』を刻むための第一歩。全てを知るために必要な一歩。

 そこに鬼が出るか蛇が出るかは分からない。

 でも進めば、自ずと道は開けてくるはずだ。今はそれを信じて、二人で、歩みを進めて行こう。

 




オープニングお疲れさまでした。

これから自由に書かせてもらいますので、どうぞよろしくお願いします。
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