ぼっちな俺はとある理由で田舎で暮らす。   作:ちゃんぽんハット

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第14話です!

今回は陽乃のびっくり発言と生徒会室に新たな来訪者が来たところから!

それではどうぞ!


田舎暮しその14

「おつかれさまで~す☆」

 

俺と三浦の間の抜けた声にかぶせられる、甘ったるい声音。

 

俺は陽乃の発言に半分は意識を取られながらも、残り半分の意識を彼女に向ける。

 

扉を開けたまま固まっている少女は、パット見「ザ・男の理想の女子高生」だった。

幼さを感じさせる可愛らしい容姿と少し大きめの制服が庇護欲を掻き立て、化粧っけの少ない整った顔は、三浦とはまた違った感じでとても魅力的だった。

三浦が綺麗系なら、こいつは可愛い系。

そんでもっていかにも男受けしそうな感じがした。

え?じゃあ陽乃はどうかって?

そんなの……いや、言わないよ?

 

「えー、気になるなー♪」

 

「……だからお前はな」

 

「あの~はるるん先輩、こちらの方は?」

 

もはや俺と陽乃のお決まりとなったやり取りを遮って、彼女から質問が投げられる。

ほう、あだ名呼びってことはこいつも何かしら陽乃と関係があるのか。

もしかしたら生徒会の一員かもしれない。

てか「はるるん先輩」って、あだ名のくせに余計に長くなってるけどそれいいのん?

 

「このキモい不審者はね、今日転校してきた2年生の比企谷八幡っていうんだよ」

 

「おい、その説明はおかしい」

 

「ほよよ?だって八幡、キモい不審者なんでしょ?」

 

「だからお前どこの無敵ロボット少女だよ。それに、それはそこのヤンキー生徒会長が勝手に言ってるだけで」

 

「ああん?今なんつったヒキオ?」

 

「……なんでも、ありましぇん、三浦様」

 

適当な事しか言わない陽乃と怖すぎる三浦。

いやあの、陽乃はともかく、一応俺先輩なんですけど……

 

ふと、今の会話においてけぼりであろう彼女を見てみると、数回目をパチクリとした後、はっと我に返り何やら考え事を始めていた。

 

「はるるん先輩が下の名前呼び……それに今のゆーちゃんの感じは……ふむふむ、なるほど、これはこれは……使える!」

 

どうやら独り言のようだが、俺にはそれがはっきりと聞こえていた。

 

こいつ今、完全に使えるって言ったよな。

おいおい何が使えるんだよ。

いや、話の流れ的に予想は簡単につくんだけどね。

 

ニコニコと可愛らしい笑みを浮かべながら、その少女が入り口からこちらにトテトテと歩み寄ってくる。

歩き方ひとつとっとも非常に可愛らしい。

 

「あの~初めまして比企谷先輩、わたし~1年生の一色いろはって言いますぅ」

 

「お、おう」

 

「転校してきたばかりで大変だと思いますけどぉ、よろしくお願いします☆」

 

「……こちらこそ」

 

「それにしても、はるるん先輩もゆーちゃんもひどいですねぇ、こんな素敵な先輩をキモい不審者だなんて。わたしは全然そんなこと思ってませんからね~比企谷先輩☆」

 

軽い挨拶を交えて話しかけてくる一色。

会話の内容的に、陽乃と三浦とは違ってしごく真っ当で好意的だが、俺はそれに妙な違和感を覚えた。

男心をくすぐるような容姿も、甘ったるい喋り方も、ひとつひとつの可愛らしい仕草も、何というかその……

 

「あざとい」

 

「…………え?」

 

「…………あ……」

 

思わず本音が漏れてしまう。

突如訪れる静寂。

時計の針が刻む音だけが……ってここの大きなのっぽの古時計は、すでに100年休まずに働いた後だった。

ただただ、ひんやりとした冷気だけが教室を漂う。

 

そして、その静寂を破るのは、毎度お馴染み彼女の笑い声である。

 

「ぷっ、あははははははははは!!」

 

お腹を抑えて遠慮なく笑う陽乃。

いやお前笑いすぎだろ。

よく見ると、三浦も口を手で抑えて小刻みに揺れていた。

いや、あの、そんなに笑われると……

 

すると、先程まで固まった笑顔のままでいた一色もようやく再起動しだした。

しかしその顔は、少しだけ驚きと怒りを含んでいるような顔だった。

 

「あ、あのぉ~比企谷先輩?あざといってぇ~どうゆうことですか~?」

 

「あははは、くっはははははははは!!」

 

「はるるん先輩笑いすぎです!!」

 

「ぷっ、ふふ、くふ、ふふふ」

 

「ゆーちゃんも笑わないで!!」

 

話を続けようにも、笑う二人が気になってなかなか進まない。

俺は二人を無視して、一色の問いに答えることにする。

 

「いや、なんだ、その……あざといってのは、まあ、見たまんまの感想なんだが……」

 

「「ぶふっ!!あっははははははははは!」」

 

俺の答えにいっそう笑う二人。

どうやら三浦も笑いを堪えるのをやめたようだ。

一色は、軽く顔をひきつらせている。

 

「み、見たまんま、ですか~、そうですか……」

 

「「あはははは、ははははははは!!」」

 

「…………」

 

「はは、あはははは、くっふふ!!」

 

「…………」

 

「ぷっは、はは、ふははははは!!」

 

「……二人とも……」

 

「「あはは、はは、ははははは!!」」

 

「……いい加減にうるさいです~~!!!」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「全くも~、先輩ってばひどいですよ。こんなに可愛い後輩をあざといだなんて」

 

プリプリと頬を膨らませて怒る一色。

 

「いやだから、そういうのがあざといんだって」

 

「むむ~、先輩の癖に生意気です!」

 

「あのな……もういいわ、なんでもない」

 

「ちょっと先輩!?何でそんな可哀想な人を見る目でこっちを見るんですか!てか先輩の目って何か死んだ魚の目みたいですね」

 

「何さらっと悪口混ぜてんだよ、こわい」

 

「わたしが怖かったら、ゆーちゃんはもっとこわいですよ?」

 

俺のあざとい発言があったにも関わらず、なおもあざといままの一色。

どうやら開き直ったらしい。

こいつ順応するの早いな。

てか、あざとさの中に俺への嫌悪を混ぜるとか本当にこいつ中々やるでござる。

まあ、俺的にはそっちのが好印象ではある。

俺に好意的な女子とかいるわけないし、こっちのが変に期待しないで済む。

 

すると、先程まで笑っていた三浦が一色を睨み付けた。

 

「ああ?なに、いろはあーしに喧嘩売ってんの?」

 

どうやら、一色のゆーちゃんは怖い発言が気に入らなかったらしい。

いや、あの三浦さん?あなた様の方が余裕で怖いんですけど。

てかゆーちゃんってのはこいつのあだ名か。

全く、どこの潜水艦ですって!

あ、こっちはろーちゃんか。

 

「ええ~、喧嘩なんか売ってないよ~?」

 

すまし顔の一色。

こいつ、あーし様にこの態度とか度胸あるな。

 

俺が感心している間も、1年生同士のバトルは続いた。

 

「ふん。ヒキオに猫かぶってんの見抜かれたからって、八つ当たりしないでくんない?」

 

「別に猫なんかかぶってないけど~?ゆーちゃんこそ、先輩に化けの皮剥がされないように気を付けてね?あ、化けの皮じゃなくてただの厚化粧か☆」

 

「はあ?あーし別に厚化粧してないんですけど?つーか化粧なんかしなくても、あんたより可愛いし」

 

「え~、でも~、わたしの方がラブレターたくさんもらってるし~、モテてるし~」

 

「その分女子から嫌われてんじゃん」

 

「っう……そんなことないよ~?ゆーちゃんだって、皆から怖がられてるじゃん!」

 

「はあ?そんなことないし?」

 

「やーいヤクザ生徒会長~」

 

「ああん?」

 

「きゃーっ、ヤクザが怒ったー☆」

 

どっちもどっちの口喧嘩が繰り広げられる。

何というか……こいつら仲良しだな。

にしてもこの様子だと、一色もやはり生徒会の一員なのだろうか。

てかこいつと陽乃の関係は一体……

 

「いろはちゃんはね、うちの副会長だよ♪ついでに彼女に副会長をすすめたのも私♪」

 

……もう、心の声を常時読んでることにツッコムのはやめよう。

しかし、副会長か………

 

「なあ陽乃」

 

「なに?」

 

「どうしてこう、1年生ばっかを生徒会役員にしたんだ?」

 

「その言い方だと、私がわざわざそう仕向けたみたいじゃない」

 

「いや実際そうなんだろ?何でこんなことしてんだ?」

 

「ふふふー、それはね……ヒ、ミ、ツ♪」

 

「……だと思ったよ」

 

陽乃の回答に小さなため息をつく。

こいつは俺に本音で話せと言う割に、自分の事は全く喋ろうとしない。

 

「だから八幡も力使えばって言ってるのに」

 

「……俺は絶対に力を使わない」

 

「というより」

 

「コントロールできないだけだよ。文句あるか?」

 

「……ふふっ、分かってるじゃない♪」

 

「うっせぇ」

 

はあっと、先程より大きなため息が出てしまう。

本当に俺って、陽乃の手のひらの上で踊ってる感じだよな。

 

俺が1人たそがれていると、隣の口喧嘩がふと止んだ。

 

「そういえばはるるん先輩、どうしてこの先輩が生徒会にいるんですか?」

 

新たな疑問を口にしたのは一色。

そして三浦も、ふと前のやり取りを思い出したようだ。

 

「陽乃、ヒキオが生徒会の一員ってどゆこと?」

 

二人の質問にニヤリと笑う陽乃。

 

「てか先輩生徒会の新メンバーなんですか!?」

 

「いや……こっちが聞きたいんだが」

 

3人の視線をぶつけられ、ようやく陽乃は口を開く。

 

「その通り♪今日から八幡は生徒会の新メンバーなのだよ!」

 

「ちょ、あーしそんなの聞いてないんですけど?」

 

「それはそうだよ、昨日思いついたんだもん♪」

 

「は?昨日?」

 

「あの~役職的には?」

 

「一応記録及び雑務ってことで♪」

 

「そんな勝手に……」

 

「なになに優美子ちゃん、もしかして嫌だった?」

 

「別に嫌ってわけじゃないけど……ヒキオはいいわけ?勝手に生徒会に入れられて」

 

「いや、まあ、出来ればごめんこうむりたいが……」

 

チラッと陽乃を見てみる。

にこやかに笑ってはいるものの、その笑顔は有無を言わせないものだった。

つまり俺には選択権がないということ。

……なんだ、いつものことじゃん。

慣れってこわいよね、慣れって。

 

「……まあ仕方ないだろ」

 

「ほら八幡もこう言ってるし、ね?」

 

「……ヒキオがいいなら、別にいいけど……」

 

しぶしぶといった感じで了承する三浦。

なんだこいつ、もしかして俺の事心配してくれてんのか。

ふむ、意外とこいつはいいやつなのかもしれん。

すまねえな、ヤンキーとか言っ……

 

『ちっ、ヒキオじゃなくて葉山先輩がよかったし』

 

あらやだびっくり、全然俺の事心配してなかったわ。

むしろ安心したまである。

てかその葉山先輩って、おそらく3年だろ?

生徒会入るとか不可能じゃねえか。

そして再び聞こえてくる心の声、ってまたかよ。

 

まあ三浦が何と言おうが陽乃の決定が変わることはない。

さて、一色の反応はどうだろうか。

 

「いろはちゃんはどう?八幡が生徒会に入ることについて」

 

「わたしはスッゴく賛成です!いやー、さすがに二人ではキツかったんですよね~。それになんだか先輩って使え……頼りになりそうですし☆」

 

「そっか、ならよかった♪」

 

「いや、何もよくねえだろ」

 

今一色、俺の事使えるって言おうとしたよな?

気のせいか?気のせいなのか?

 

『本当に使えそうな先輩来て良かった~。超便利そう☆』

 

気のせいじゃねえよ。やっぱり気のせいじゃねえよ。

完全に俺の事使いっぱしりにしようとしてんじゃねえか。

てかまた心の声が聞こえてきたよ!

 

……一旦落ち着こう、少し興奮しすぎてる気がする。

その証拠に二人の心の声が聞こえてしまった。

三浦に至っては、朝のやつも合わせて3回目だ。

うーむ、おかしいな。

クラスでは全く聞こえて来なかったのに、ここでは普通に聞こえてきてしまう。

気が緩んでんのか俺?

ったく、早くコントロール出来るようになんねえとな。

 

「……ふふ、やっぱり大丈夫みたいだね♪」

 

「あん?何か言ったか?」

 

「ううん、何にも♪」

 

陽乃の呟きはまたもや聞こえなかったが、まあいつも通りスルーだ。

 

とまあ何はともあれ、俺はこれから生徒会で記録雑務として活動しなければならないらしい。

……本当に、どうしてこうおかしな方向に進んで行くのだろうか。

それもこれも全部はこいつのせいだ。

 

「さてさてそれじゃあ、本来の目的に戻るよ八幡!スタディ!スタディ!スタディ!」

 

「お前はどこの米軍将校だよ」

 

「わたしも勉強しに来たんだった!ゆーちゃん勉強教えて~」

 

「はあ?何であーしが……ったく、さっさと準備しな」

 

こうして、ヤンキー生徒会長と、あざとい副会長で構成されていた生徒会に、転校生のぼっち記録雑務が加わった。

新生徒会、果たして今後どのような活動を見せてくれるのだろうか。

乞うご期待!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……てか今まで二人だけって、お前は生徒会じゃないの?」

 

「え?私は……総督?」

 

「何それ怖いくらいぴったりなんだけど」

 

 

 

つづく




いろはす~。

生徒会が、完全に私の好きなキャラで埋まってしまいました(笑)

前回も言いましたが、本作品は、キャラの学年が本編とは大幅に異なっております。
混乱させてしまったらごめんない。
キャラのイメージを崩さないように頑張りますので、ご理解下さい。

さて話は変わりますが、前回でUA数が50000を突破しました!ありがとうございます!
お気に入りも、もうすぐで500を突破しそうで、本当に感謝してもしきれないです!
また、感想や評価もありがとうございます!!

今後とも更新は週一くらいになると思いますが、お付き合い願います。

それでは今日はこの辺で。

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