高校二年生となった桐ヶ谷和人は進学した総武高校でぼっちだった。

これは一人のゲーム好きの少年と二人の優しい少女との青春の物語――――。



※俺ガイル×ソードアート・オンラインのクロスです。
ただし俺ガイル主軸。しかしヒッキーは出ません。
俺ガイルとSAOのクロスでヒッキーがデスゲームに参加するのはたくさんあったのにキリト君が総武高校に入学するってパターンがないなぁ、と疑問に思っていたので自分で書くことにしました。

※本作のキリト君はただのぼっちの高校生なので原作より多少卑屈です。
そこら辺注意してお読み下さい

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あらすじでも書きましたがヒッキーがデスゲームに参加するSSはあるのにキリトが総武高校に入学するSSないなぁ、と思って書きました。
※本作品は俺ガイルが主軸となっておりますがヒッキーが出ることはありません
その辺りご了承いただきましてからお読み下さいませ……。


とにかく桐ヶ谷和人はゲームずき

 冬が過ぎて春。太陽は西に沈みかけ淡い橙の光が夜の常闇へと移り変わろうとしていた。放課後、廊下を歩きながらふと目を向ける壁時計の針は四時を少しばかり過ぎている。

 いつもならとうに家へと帰宅し、自室のパソコンを開いてネットゲームに勤しんでいる頃だが今俺が居る場所は自宅でもなければ通学路でもなく学校の、しかも職員室の前である。

 何かしたのか、と問われれば首を傾けるばかりだ。問題事を起こした気はないしそもそも人と関わらない俺がここに呼ばれる謂れはない。

 最近あっためぼしい出来事といえばクラスで『高校生活を振り返って』というテーマの作文を書かされたことくらいなものだが、あんなものを真面目に書く人間なんて居ないだろう。

 ――いや、これ以上考えても仕方ないと、僅かな逡巡の果てドアを軽めにノックした。

 

「入れ」

 

 返ってきたのは短い女性の声だった。どうして職員室というものはこうも緊張するのだろう。恐怖(フィアー)のデバブにかかりつつ、しかしいつまでもこうして竦んでいるわけにはいかないのでおずおずと扉を開く俺を迎えたのは喜色満面とこちらを見据える国語教師の平塚静(ひらつかしずか)女教師の姿だった。

 

「遅かったな。待っていたぞ、桐ヶ谷(きりがや)

 

 まるで勇者を待ち構えていた魔王のような台詞で平塚先生は側にくるよう俺を促す。

 

「……何かやらかしましたかね。俺」

 

 内心恐々としながら俺はそう問い掛ける。平塚先生は深々とため息をつくと俺の前に一枚のプリントを提示した。B4サイズのそれは『高校生活を振り返って』という題の作文用紙だった。末尾には桐ヶ谷和人(きりがやかずと)と俺の名前が記入してある。間違いなく俺の書いた作文だった。

 

「なぁ、桐ヶ谷。私が授業で出した課題は何だ」

 

「えぇと……『高校生活を振り返って』というテーマの作文ですが……何か問題でも?」

 

 首を傾けた俺に平塚先生は頭を掻きながら眉根を寄せた。眼光鋭く俺を睨み付ける。

 

「では、この舐めた作文は何だ? ゲームのことしか書いてないじゃないか」

 

「…………本心で書け、と言われたので」

 

 視線を逸らしながら俺がそう答えると平塚先生は口角を吊り上げて嗜虐的な笑みを浮かべた。

 

「……君、友達居ないだろ」

 

「うぐっ!」

 

 思わず喉を詰まらせる。前々から自覚して、しかしあえて自分から進んでその傾向にあったことは重々承知していたが他人から真正面にそう言われると少々くるものがあったのは否めない。

 

 そんな俺の渋面を見て満足したのか、うむ。と頷きながら平塚先生は微笑んだ。その姿は整った容姿も相まって実に様になっている。

 

「とりあえずレポートは書き直しとして。――さて、ここからが本題なんだが、」

 

「え?! これが本題じゃなかったんですか!?」

 

 思わず大声で抗議すると平塚先生は俺の頭を軽く小突く。

 

「私に余計な時間を取らせた罰、だ。――確か君は部活をやっていなかったよな?」

 

「はい、そうですけど……」

 

「なら君には奉仕活動をしてもらう」

 

「き、拒否権は――」

「ない」

 

 きっぱりとそう言われ、俺は意気消沈と肩を落とした。ずいぶんと面倒な事になったなとげんなりしている俺を他所に平塚先生は椅子から立ち上がると扉の前に立ち、

 

「ついてこい」

 

 有無を言わさずくいっと親指でついてくるようジェスチャーで促してくる。

 

「早くしたまえ」

 

 一連の出来事にぼぅとしていると切れ長の眼に睨みつけられ俺は慌てて彼女の後を追い掛けた。

 

 

 

 

 * × *

 

 

 

 

 そうして平塚先生に案内されたのは人寄り付かない特別棟。我が校ながらこの辺りは俺もよくわからない。特別棟に用があって訪れたことはないし興味もなかった。

 どこまで行くのだろうと前方を歩く平塚先生の後ろ姿を眺めていると、不意に彼女は一つの教室の前で立ち止まった。

 

「着いたぞ」

 

 言って戸を開く。空き教室か、はたまた倉庫として使われているのか。端に椅子や机が無造作に積み上げられた室内は俺の通うクラスと内装という点に置いてはなんら変わりない。

 

 しかし、そこにぽつんと佇んでいた少女の姿はあまりにも異質であった。

 流れる髪は艶やかに、俺の手入れされてないボサボサの黒髪とは質が違う漆黒。

 切れ長な瞳は刃物の如く鋭利。見る者を凍えさせる冷気を含んでいるように思えた。

 あまりにも一般から外した凄絶な美貌に俺は一時目を奪われる。

 ――雪ノ下雪乃(ゆきのしたゆきの)

 この総武高校に通う、同年なら知らぬ者は居ないだろう学年一の美少女。

 世間に、こと学校に興味のない俺ですらその名を知っているほどだ。学校一とも言っていい有名人だろう。

 

「――平塚先生。入るときにはノックを、とお願いしていたはずですが」

 

 凛と、鈴の音を鳴らしたような涼やかな声で彼女を顔を持ち上げた。

 未だ呆然とする俺に気が付いたのか、彼女はこちらに不審な視線を向けると冷めた瞳で俺を捉える。

 

「――そちらの彼。いえ、彼女……? は何ですか?」

 

「うぐっ!?」

 

 悪意はないのだろう。彼女の一言は確実に俺の心に直撃、クリティカルヒットした。

 ほっそりとしたスタイルに男にしては長い黒髪。柔弱そうな両眼と線の細い顔は中性的で妹たちと買い物に行った時など三姉妹に間違われることは多々あったが高校生となりそれも減ってきたと思っていた矢先の一言だ。

 ふと目を向けると横で肩を小刻みに揺らして難とか笑いを堪えようとしている平塚先生の姿があった。

 

「ぷっ。くくく……雪ノ下。彼、桐ヶ谷はれっきとした男だ。そしてここの新入部員でもある」

 

 平塚先生にポンと背を押されて彼女――雪ノ下の前に出る。たぶん自己紹介をしろということなのだろう。俺に訝しげな視線を注ぐ彼女に向けてお座なりな会釈をする。

 

「二年F組の桐ヶ谷和人です。よろしく――って、入部?」

 

「君にはここで部活動をしてもらう。しばらく頭を冷やせ、先も言ったが拒否権はないからな」

 

「そ、そんな滅茶苦茶な……」

 

「という訳で、こいつを置いてやってくれ。悪い奴ではないんだが少々人付き合いが悪い。彼の他者を遠ざけようとする孤独体質、孤立願望……。等の性格を改善。矯正してやってくれ」

 

 唖然とする俺を他所に話は勝手に進んでいく。

 不意に雪ノ下は面倒たらしいような顔をすると首を横に振った。

 

「お断りします。そこの女々しそうな男を見てるとこちらの精神にも害が及びそうなので」

 

 ずいぶんハッキリした物言いがあったものだ。氷魔法でも使っているのでは? と錯覚してしまうほどに冷徹な言葉も一周回って逆に清々しい。

 

「安心したまえ雪ノ下。確かに桐ヶ谷は軟弱そうな見てくれだが案外、肝の据わった男だ」

 

「とてもそうは思えませんが……」

 

 悩むように頤に手を当て、黙考する雪ノ下はやがて結論を出したようで一度頷き。

 

「まぁ、先生からの依頼ならば仕方ありませんね……。承りました」

 

「そうかそうか! なら頼んだぞ!」

 

 満足したのか、うんうんと頷いて平塚先生はさっさと教室から出て行ってしまった。ぽつんと俺は取り残される。

 

 静寂。カチカチと設置された時計の秒針の音がやけに明瞭に聞こえる。

 やがて無言に耐えきれなくなった俺は手近な椅子に目を向けると、

 

「えっと……雪ノ下、さん? ここ、座っていいかな……?」

 

「………………」

 

 おずおずと、彼女に向けて問い掛けるが返答はない。

 短時間でここまで嫌われるのか、それともこれが彼女の他人に接する時のデフォルトなのか知らないが俺は肩を竦めて椅子に腰掛けた。

 

 再び無言が辺りを支配する。居心地は悪くはないが決していいともいえない。初対面の、しかも学内一の美少女とどんな経緯であれお近づきになれたのは凡庸な一、男子学生としては歓喜乱舞とすべき部分なのであろうが俺としては今すぐ帰ってネトゲしたいというのが本音だったりする。脳内では既に明日のアプデの内容に対する思案へと飛んでいた。

 

「……ねぇ」

 

 ふと呼び掛けられて俺は目を瞬かせた。我に返ると読書に耽っていたはずの雪ノ下が本を閉じ、俺を睨むように見据えていた。

 

「あなた、平塚先生に無理矢理連れて来られたにしてはずいぶん落ち着いているわね。事前にこの部活の内容を知っているのか……あるいは憐れなほどの楽観的思考の持ち主なのか……成る程、後者ね」

 

「いや、俺まだ何も言ってな――」

 

「その間の抜けた顔を見ればわかるわ」

 

 俺が言うより先に彼女は続ける。ただ指摘があながち的外れではないのが腹立たしい。

 

「――そうね、ではゲームをしましょう」

 

「ゲーム?」

 

「そうよ。ここが何部か当てるゲーム。……さて、あなたに分かるかしら」

 

「うーん……」

 

 腕を組んで俺は黙考する。推理ゲーはあまりしてこなかったが挑戦を受けた以上、正解はしたい。

 

「……文芸部、ではないんだよな?」

 

「えぇ、そうよ」

 

 頷く彼女に更に思案を続ける。空き教室で、女子一人。できることも限られるはずだ。文芸、は先ほど却下された。手芸? いや、美術?

 

「ヒント。私が今、こうしていることが活動内容よ」

 

 うーんうーんと唸っているとしばらくしてそんなヒントがもたらされる。

 ますます分からない。こうしていることが部活? 彼女は先ほどまで何をしていた? 読書だ、しかし文芸部ではないという。

 ……いや、観点を拘り過ぎているのかもしれない。最初、平塚先生は何をするといって俺をここに連れて来た?

 

「部活動……依頼……性格矯正……相談部?」

 

 そこでちらと彼女を見遣るとぴくっと眉が動いた気がした。

 

「……成る程、まぁそのラムレーズン並の矮小な脳にしてはよく考えたんじゃないかしら? 概ね当たってはいるけど正確には――」

 

「――相談? 相談……いや、違うか……」

 

 雪ノ下が何か言っていた気がするがさっぱり耳に入っていなかった。思考の渦深くに嵌まり、俺は黙考を続ける。

 

「ち、ちょっと。桐ヶ谷くん」

 

「――――へ?」

 

 ポンポンと肩を叩かれ、我に返るといつの間にか雪ノ下が俺を見下ろすように立っていた。その表情は何やら険しい。

 

「さっきの、相談部が違うって何を根拠にそう決め付けたのかしら」

 

 気のせいか多少怒気が混ざった声で雪ノ下はそう言った。俺はぽりぽりと頭を掻きながら何と解答したらいいかと視線を迷わせる。

 

「い、いや、気を悪くしないでほしいんだけど。……その、そもそも雪ノ下さんって人の話を聞くのに向いてなさそうっていうか……」

 

「な……」

 

 これでもずいぶんオブラートに包んだつもりだったが彼女からすると寝耳に水の一言だったらしい。唖然とばかりに眼を見開いて硬直している。

 ……もしかして俺は何か選択肢を間違えてしまったのだろうか。先ほどの十割増しで眼光鋭くなった雪ノ下を見ていると即座に【LOAD】ボタンを押して以前までのセーブポイントからやり直したいという衝動にかられるが、こと生き辛い現実世界でかよう便利なボタンがあろうはずもない。

 

「……こほん。持つ者が持たざる者に慈悲の心をもってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。途上国にはODPを、ホームレスには炊き出しを、初対面の女子に無礼な言動を働く男にも寛大な精神で手を差し伸べる。それがこの部の活動よ」

 

 雪ノ下は眉と口をヒクつかせながら俺に向かい、

 

「ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ。……ゲームの答えはハズレよ。残念だったわね」

 

 歓迎する。と言っているのにとても歓迎的とはいえない敵対心むき出しの表情で雪ノ下は俺に右手を差し出した。

 

「……あ、あぁ」

 

 呆気に取られつつ反射的にこちらも手を出して彼女の手を握る。すると思いっきり強い力で握手、というより握り絞められ、離し際には手の甲をつねられた。

 

「平塚先生の言った通りね。あなたのその尊大な態度と無礼な言動は問題アリよ。私が責任をもって矯正してあげる。感謝なさい」

 

「…………うへぇ」

 

「――何か?」

 

「い、いえ何でもないですハイ」

 

 俺が肯定することで多少機嫌も直したのか雪ノ下は、ふふんと勝ち誇った笑みを浮かべると椅子に座り直す。

 ……俺より雪ノ下の性格を先に改善した方がいいんじゃないか?

 再び読書を再開する彼女見て、割りと本気でそう考えた。

 

 




自分で書いてて思った。
これはちょっと……どうなんだ?

それにしてもキリトさんって案外闇が深いんですよね。
子供の頃に親を事故で亡くして従妹の家に引き取られるって原作ではさらっと流してるけど普通に病みますよ。

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