これはある少女の恋物語である!(多分ね!!)

※ネタ提供、ヘブンズドアー氏

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この世界に咲く燃える一輪花

 

「好きです!付き合ってください!」

 

「ごめん!俺彼氏いるから、あいつを裏切るわけにゃいかねぇから、すまねぇ!!」

 

橘美咲(たちばなみさき)、人生初の告白をした相手はまさかの同性愛者でした。

 

 

 

そこから数年の時が流れた。

中学二年生だった橘美咲は現在高校二年生で新たな恋に生きている。

競争率高いし、まな板とか言われるくらい真っ平らなボディラインなので勝ち目は薄いが、それでも女には勝たねばならぬ時がある!!

 

「いってきまーす!」

 

今日も元気に家族に出発の挨拶を終え、学校へ向かう。

今日は平日、公立だろうが私立だろうが国立だろうが学校はある。

 

「今日も頑張るぞー!」

 

うぉー!と通学路のど真ん中で一人メラメラと燃え上り(物理的に)奇異な目を向けられるも、そのままボッチで登校を開始する。

もちろん、炎はそのまま消えることなく纏いながら。

 

橘美咲を始めとするこの世界の人間達にはちょっとした超常が当たり前となってしまっている。

世界人口の九割、特に橘美咲のような若い世代によく見られる現象であり今となっては当たり前である。

炎を纏ったままの登校はやはりというか、悪目立ちしてしまったようで周囲の視線を集める結果となってしまった。

まぁ、本人はそんなこと微塵も気にしてないんだけどね。

 

−−−公立晴夢高校。

総生徒数2256人というそこそこデカイ高校である。

偏差値はそこまで高いわけではない中堅的な高校で交通手段がいいと評判である。

近隣にはバスから電車、モノレールに何故か空港まで近くにある。

ちなみに野球部が強いことでも有名である。

 

美咲が猛ダッシュで校門に向かっていると親友の姿を発見する。

早速標的に設定し、背後から凄まじい速度で接近する。

 

「ユッキー!おはよー!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!熱い暑い厚いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

ジュゥゥゥ、と湯気を立てながらタプンと豊満な双丘は揺れる。

解せぬ。

 

「ちょ、美咲!死ぬわ、離れろ!」

 

「もう、ユッキーはいつも大袈裟なんだから」

 

「割と本気で死活問題だから!!」

 

ゼェーゼェー、と息を荒げながら頬を紅潮させている巨乳少女ユッキーこと、水瀬雪恵(みずせゆきえ)の保有する能力は橘美咲と対の位置にある雪の能力。

なのでただでさえ温度の高い美咲が近づくことで雪恵は大ダメージを受けてしまう!

しかも美咲は無自覚で悪意もないため余計にタチが悪い。

 

「ホント、何であんたと友達やってて未だに生きていられるかが不思議でしょうがないわよ」

 

「そこはあれ、気合?」

 

「.....相変わらず能天気な人」

 

ま、そこがいいんだけどね、と雪恵が小さく微笑む。

これが世に言うツンデレである。

 

「−−−ていうかあっちの方なんか騒がしくない?」

 

「そうね、美咲が燃えながら全力疾走してきたからじゃない?」

 

「もうユッキー!否定はしないけど、それは酷いよ!」

 

「否定しなさいよ」

 

そう、先ほど美咲と雪恵の通過した校門の辺りからやけに甲高い黄色い歓声が聞こえる気がする。

まるでジャ○ーズがやってきたかのような騒ぎである。

 

「アギト様よ!」

 

「キャー!アギト様ー!」

 

「うぉぉぉ、アギトー!」

 

「アギトちゃーん!」

 

「アギト!」

 

「アギトッち!」

 

「「「ア・ギ・ト!!ア・ギ・ト!!」」」

 

.....もうアイドルだとかジャ○ーズだとかの騒ぎではなくなってしまった。

生徒はもちろん、近所のおばちゃん、犬の散歩をしていたお姉さん、教師、人妻、未亡人、コスプレイヤー、メイド、チアガール、オカマ、男の娘、バニーガール、ドM、ドS、人魚、大学生、アイドル、ナース、女医、校長先生、そして美咲と。

 

「−−−って美咲!?」

 

「あぁ、アギト先輩っていいよね」

 

「そうか、あんた今はそうだったんだよね」

 

雪恵はハァ、と片手を額に当てて小さく溜息を吐く。

神城亜欺人(かみしろあぎと)、晴夢高校三年で学校一モテてる男。

キリッとした瞳、高身長、荒々しくカットされた長いようで短い髪、耳に残る美しくも力強い声、鍛え抜かれた体、優秀な成績とモテたい男子の要素を集約したような人物が神城亜欺人である。

その上この世界では一番のモテ要素となっている強い「能力」も彼は保有している。

 

−−−晴夢高校最強、それは能力だけに限らずあらゆる方面でそう呼ぶことができるだろう。

そして橘美咲も彼の魅力に取り付かれてしまった恋する乙女なのである。

ちなみに雪恵は競争率が高い上にあまりにも理想通りすぎるためがゆえに混ざる気はない。

というか彼氏なら既にいるし。

 

こんな感じで晴夢高校の朝の時間は流れていくのだった。

 

 

 

そして放課後、橘美咲と水瀬雪恵はどこかに出かけようと二人並んで歩いて公園の前を通りかかると何やらおかしな格好をした男が倒れていた。

 

「.....どうする?」

 

「スルーで」

 

コンマ一秒すらも必要としない雪恵の返答に質問した美咲が戸惑ってしまう。

かなりドライな性格の雪恵は基本こんな感じであるがため、たまにやってくるデレは大変貴重で可愛らしいものである。

 

「だって見るからに怪しいじゃん。じゃあ美咲、あんたはコレをどうしたいわけ?」

 

「知らない人でもコレは流石に失礼だよ!!こんな人でも生きてる(?)んだから!」

 

「でもねぇ、私そんな親切な人じゃないし」

 

「自分で言っちゃったよ!」

 

とりあえず遭遇してしまったのも何かの縁、橘美咲はポケットから携帯電話を取り出してピ、ポ、パとボタンを押して耳に当てる。

 

『もしもし?』

 

「あ、警察ですか?実は−−−」

 

「ちょ、警察はシャレになんないわよ!!」

 

雪恵の声ではない、ていうか大分野太い声だった。

この男の声か、それにしては目を覚ました様子はない。

ならば通行人か、いや、何故か通行人は全くいない。

 

では、一体.....

 

「ちょっと、聞いてんの!?とりあえずその通話切ってちょうだい!」

 

ボゥゥゥゥ、と倒れた男の背中から緑色の狼のような生物が現れた。

しかも、半透明、いわゆる霊体とかいうやつである。

 

「.....幽体離脱??」

 

「ちょ、いきなりそれはないんじゃないの!?ていうか翔太、何倒れてんのよ!?」

 

「「今更!?」」

 

倒れた男の耳元で緑色の狼が大声で叫ぶ。

どうやら男と狼は別物だと考えた方が良さそうだ。

 

「ていうかあんたらもちょっとは、っていないし!?」

 

−−−面倒事に巻き込まれると第六感を働かせた二人はさっさとその場を後にしていた。

 

 

 

その後、二人は日が暮れるまでショッピングに行ったり、カフェに行ったり、ゲーセンで暴れたり、カラオケ行ったりとお前ら一体いくら持ってるんだというくらい遊び尽くした。

時間もどういう配分でわけたとかそういう細かいことは決して気にしてはいけない。

 

そして、二人は今ベタな展開というかよくあるシチュエーションに遭遇していた。

 

「君たちくぁわゆぃねー!」

 

「俺たちと遊んでいかね?奢るよ」

 

「ぬーん、ぬーん」

 

そう、俗に言う絡・ま・れ・TAのである。

なんかチャラチャラした金髪でさらに能力なのか何だか知らないが髪がLEDみたいに発光したやつと強面で両腕が岩のようにゴツゴツになっている肌黒ニット帽を被ったボーイと頭を上下左右に動かし続け立っているのに貧乏揺すりも止めようとしないサングラスのチャラ男である。

.....明らかにヤバそう(色んな意味で)なので今すぐ帰りたいのだが、器用に道を塞がれてしまっている。

 

こうなったら、と美咲は既に臨戦態勢(片手に炎を纏わせる)を取ってしまっているので雪恵は少し距離を置く。

今朝の全身火達磨で抱きつかれるよりはマシだが、下手したら溶ける。

 

「Oh!そういう遊びでもいいYO!」

 

「ぬーん、ぬーん!!」

 

「後悔しても知らねぇぞ」

 

ゴキゴキ、と一番やる気を見せたのは両腕が岩になった男だった。

雪恵は単純バカな男達と美咲を交互に見て小さくため息を吐く。

もう早く帰りたい、ていうか今日は彼氏の家に泊まる予定で楽しみにしてた日でもあったのだ。

なので水瀬雪恵の機嫌は最高に悪い。

 

気がつけば雪恵の能力の影響が周囲に現れ始めていた。

 

「雪?」

 

「ぬーん」

 

「ホワイトなラッキーデイ!楽しいナイトにパーリィー!」

 

「ゆ、ユッキー!?」

 

美咲だけが雪恵の影響だと気がついた、それは当たり前だ。

水瀬雪恵は負の感情、つまり心が冷え始めると能力が露出してしまう。

しかもその効果範囲は広大で町の天候を変えてしまうほどである。

 

「ったく、さっさと帰りてーんですよ。なのに、邪魔ばっかしやがって、許される道理はねーっすね」

 

フフフフフ、と雪恵は一人笑みを浮かべ始める。

その笑みに思わず美咲と男達は引いてしまう。

冷え切った目で四人(なんで!?by美咲)を睨みつけ雪恵はスッと右手をかざす。

 

ズォォ、と水瀬雪恵の右手に小規模な雪雲が発生し四人に向けて吹雪を放つ!

もう周囲の被害とかそんなものは気にしちゃいけない。

 

「どわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「クーーーーーーーーール!!!」

 

「ぬーーーん!?」

 

「ちょ、何で私まで!?」

 

誰かが助けてくると思った?

残念、雪恵ちゃん一人で十分でした!

 

 

 

翌日、晴夢高校。

橘美咲と水瀬雪恵のクラスに転校生がやってきた。

担任の鏑木亜美(かぶらぎあみ)のHRが終わると同時に発表された。

ガラッと教室の扉が開かれる。

 

「ども、山崎翔太(やまざきしょうた)です。適当によろしく」

 

目に隈を作った黒髪のおかしな格好をした少年がやってきた。

 

((あ、昨日倒れてた人だ))

 

まだ制服ではなく昨日と同じボロボロの服装だったためすぐにわかった。

あの緑色の狼の姿は見当たらなかった。

 

「それで、聞きたいんですけど、神城亜欺人って人知らないですかね?」

 

その言葉と同時に教室は色んな意味の殺気が転校生、山崎翔太へ向けられた。

 

「え、なに?」

 

「まさかアギト様狙いじゃないよね?」

 

「アギト先輩は男子NGだよ?」

 

「ていうかこれ以上ライバルを増やすわけにはいかねぇ!」

 

ゴゴゴゴゴゴ、と何故か温厚な鏑木先生までもが山崎にガンを飛ばしている。

神城亜欺人は晴夢高校にとって、高嶺の華。

同じ男でも嫉妬と羨望を向けるような人物、異常なほどにモテるまさにアイドルなのだ。

 

「はぁ」

 

一人、彼氏一筋の雪恵は小さくため息を吐く。

これが勝ち組の余裕である。

 

 

 

昼休み、何故かその転校生と神城亜欺人が決闘をすることになった。

事の発端は橘美咲にある。

 

今朝の出来事が発端で神城亜欺人に好意を向けている人物がクラスだけでも相当だとわかった美咲は彼に想いの丈をぶつけたのだった。

わざわざ屋上に呼び出して、ベタだね!

 

「何か用、橘さん?」

 

「は、はい。あの、アギト先輩!」

 

「ん?」

 

「その、す、好きです!私と−−−」

 

 

 

「その男はやめておけ」

 

 

 

「え?」

 

「は?」

 

美咲と亜欺人の声が被った。

二人だけの空間のはず、なのにそこにはいつの間にかフェンスの上に腰掛けて牛乳を飲む転校生、山崎翔太が座っていた。

 

「や、山崎君!?」

 

「君、橘さんの勇気ある行動を無下にしようというのかい?ていうかいつからそこにいたんだ?」

 

「答える必要はねぇ。ていうかその勇気ある行動に対して誠意を見せない上に弄んできたのはどこの誰だ?」

 

「はっ...!?」

 

「アギト先輩?」

 

山崎は牛乳を飲み干すとフェンスの上から飛び降りる。

着地に失敗して尻餅をついていたことに関してはこの際スルーする。

 

「.....神城先輩よぉ、あんた過去何度告白を受けた?」

 

「過去?何言ってやがる、告白なんてそんな簡単にされやしな−−−」

 

「なら、あんたに対して好意を抱いてる女子の数はわかるか?」

 

「な、何が言いたい?」

 

「簡単だ、自称鈍感ハーレム主人公。テメーの前世がどうかは知らんが、お前の行動は許容範囲外だ」

 

(前世?)

 

「テメェ、何でそのことを...!?」

 

「オイオイ逆上していいのか?認めることになるぞ、自分自身の私利私欲のために女の子にモテたいがためにチートな能力もらってこの世界で好き勝」

 

山崎の言葉が続くことはなかった。

神城亜欺人の掌から放たれた閃光が直撃したからである。

 

夢幻乖離。

 

神城亜欺人、晴夢高校最強の能力者の能力。

物理法則もへったくれもない常識を逸脱した能力。

この世界にあるものならば自在に創造し、相手の能力を奪うこともできるデタラメな能力。

今の一撃は光と太陽熱、原子力を混ぜ合わせ周囲に被害を及ぼす有害な物質が発生しないよう設定した一撃である。

屋上の一部は崩壊したが、焼け焦げたではなく消滅したというレベルの破壊力であった。

もちろん対象は山崎翔太のみ、他の人間に被害はない。

 

「いいだろう」

 

それでも、山崎翔太は生きていた。

傷一つ付くことなくケロッとした様子で粉塵の中から現れた。

 

「校庭に下りろ、めんどーだが審判を下させてもらう」

 

 

そして、現在に至る。

二人の周囲にはこの学校の生徒、近隣の住人、この世界で神城亜欺人に好意を抱く全ての人間がこの場に集結していた、どうやってかは知らんが。

 

「アギト様ー!頑張ってー!」

 

「やっちゃえ、アギト先輩ー!」

 

「フレ、フレー!ア・ギ・ト!!」

 

「エー、ジー、アイ、ティー、オー!A・GI・TO!!」

 

「.....すげー人気だな。羨ましい」

 

「山崎翔太って言ったか、一体何者だ?」

 

「晴夢高校転校生、これじゃ不満か?」

 

「大いに不満だ。お前ほど怒りを覚えたクソ野郎はいない」

 

「俺が初めてか。最初で最期になるといいな」

 

山崎の挑発にギリッと神城亜欺人は歯を噛み締めた。

一方、そんな群衆に混じる橘美咲は歓声を水瀬雪恵は今すぐ人混みから抜け出したい気持ちでいっぱいとなっていた。

 

先取したのは亜欺人、右手をかざして山崎に向けて一撃を放つ。

無数に放たれた光の矢は重量を宿した黒い光、その速度は常人では目視できずに気がつけば山崎翔太の体は粉々に砕け散る。

 

−−−はずだった。

 

「代行者権限発動、絶対防御」

 

山崎翔太はそう呟いて平然と立っていた。

違いがあるとすれば彼の背後に緑色の狼が唸り声を上げているくらいであろう。

 

「やるぞロゥ」

 

「えぇ、やってやりましょう」

 

ザッ、と山崎翔太が一歩神城亜欺人に近づく。

それだけ、それだけなのに神城亜欺人は背筋をゾクりと震わせ、次なる攻撃に移っていた。

 

「こ、のヤロォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

無数の隕石、レーザービーム、太陽光線、重量のある雷、説明不能の力、今までは全て自分の能力を振るうことで一瞬で全て片付けてきた神城亜欺人にとって全てを防ぐ山崎翔太は脅威でしかなかった。

そして、自分の全てを知っている。

この男は一体何者でどこまでを知っているのか、得体の知れない恐怖が亜欺人を精神的に追い詰める。

 

−−−気がつけば山崎翔太は神城亜欺人の目の前にまでやって来ていた。

 

「なっ」

 

「顔面パンチ、それで全てが終わる」

 

瞬間、呆気に取られていた亜欺人を置き去りにして山崎は緑色の狼を拳に纏わせて一撃、顔面にパンチを叩き込んだ。

 

「がっ!?」

 

「発動条件は満たした、俺の能力は発動する」

 

衝撃に耐えた亜欺人は違和感を感じていた、それほど強い一撃でない。

それも、本当に平凡な学生レベルの何ともないパンチだった。

 

「あ、アギト様?」

 

場が沈黙した。

 

「能力だと?」

 

「そうだ。まず、お前の特典は無効になった」

 

「なっ...!?」

 

その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。

そして、先ほどの一人の少女の呟きも理解することができる。

 

そう、そこにはキリッとした瞳、高身長、荒々しくカットされた長いようで短い髪、耳に残る美しくも力強い声、鍛え抜かれた体、優秀な成績とモテたい男子の要素を集約したような人物はそこにはいなかった。

小太りした低身長の手入れのなってないボサボサの髪をした眼鏡の男がいたのだった。

 

「まさ、か」

 

「あ、アギト様?」

 

ざわざわ、と周囲がざわめき始める。

まずい、と神城亜欺人は頭の中が真っ白になっていた。

山崎翔太はそんな彼の内心を知ることなく解説を始める。

 

「神城亜欺人、能力は理想変身。自分と自分の触れたものを理想の形に変える能力。化けの皮がはがれたな」

 

もちろんこれは山崎の嘘である。

しかし、これで大衆は納得してしまうのだから恐ろしいものである。

 

「おまッ!?」

 

「俺の能力は一夫多妻殺し、ルビを振るとハーレムキラーだ。お前のようなクソ野郎を相手にするときのみに使えるクソみたいな能力だ」

 

大衆がざわめく中、山崎翔太は神城亜欺人にだけ聞こえる声で話す。

 

「お前を慕ってる奴は多い、けど嫉妬と羨望を向けてる奴も例外なくいる。俺は世界にいるその人物に対する感情で強くなる。そして」

 

コホン、と山崎は咳払いして残酷な真実を告げる。

 

「お前の性器は機能しなくなる!!」

 

「え」

 

これ以上ない残酷な宣告!

そしてここで試すな神城亜欺人、女子ドン引きしてるぞ!

 

「サイテー!」

 

「帰れ!」

 

「お前に貢いだ金返せー!」

 

「女子の心を弄びやがって!」

 

ついには野次が飛び始めた。

頃合いか、そう思った山崎翔太はその場を後にしたのだった。

 

誰にも気づかれることなく!

 

 

 

そして、数ヶ月後。

 

「ごめん、お待たせユッキー!」

 

「いいよいいよ、私は私でイチャイチャしてたし。ねー」

 

「あ、う、うん。そだね」

 

ははは、と雪恵の彼氏が苦笑いを浮かべる。

なんだかんだでお似合いなのだが雪恵の態度の変わり様には未だに美咲も慣れなかった。

 

「それで、美咲の相手ってその人なの?」

 

「うん!もうラブラブなの!」

 

「ま、まぁ、何だかんだで」

 

その人物とは二人に絡んできた両腕が岩の男だった。

二人がどのようにして仲良くなったかは別の話だが、今となってはいいカップルとなっている。

 

「で、山崎君見つかったの?」

 

「それが全然で、あの日のお礼したかったんだけど」

 

「.....オイ、浮気はすんなよ」

 

「ごめんって、別にそんなんじゃないし!もうだーりん以外の男には目移りするつもりないから!」

 

「「だ、だーりん!?」」

 

そう、あの後山崎翔太は姿を消してしまった。

今はどこで何をしているのかわからない。

でも、今があるのは彼のお陰であると美咲は思っている。

 

ちなみに神城亜欺人も退学し、今はどこで何をしているかはわからない。

 

それでも、橘美咲は今この幸せを噛み締めている。

彼という心の支えを持った彼女の心が揺らぐことはもうない。




続かない!!


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