――――織斑一夏という男性はこの世界で
最も屑な男性である――――現代の女性はそう思っている。
――――真実を知らない者は真実を知ろうともせず、目先の情報を信じる。
―――――織斑一夏・中学一年生の記憶。
「付き合ってくれませんか?」
今、俺――――織斑一夏はありきたりな告白スポットの学校の裏手で告白されている。
相手は隣の地区の学校でも美人だと噂されている金城水木さん。
黒色が混ざっていない完全な茶色の髪を腰の辺りにまで伸ばし、制服の
上からでもスタイルがいいと評判の子だ。
そんな子が俺に告白をしてきた。
「え、えっとい、いきなりっすね」
当然だ。だって今日に入学式が行われたんだぞ?
「ええ、貴方の噂はかねがね聞いております。なんでも、お強いんだとか」
まあ、そうだな……俺の姉で霊長類最強の異名を持つ姉の織斑千冬の
格闘術をコピーして、家庭教師としてあのISを生み出した天才科学者の
束さんを迎えてるからな。
とりあえずは小学校の頃は神童と呼ばれてた。
格闘術に関しても俺は実戦で調整を繰り返してきたからそこら辺の
ヤンキーのごろつきどもなら20人かかって来ても俺からしたら二対一に等しい。
実戦調整は俺に絡んでくるヤンキーどもで済ました。
案外、俺は世の男からは嫌われておりちょくちょく喧嘩を申し込まれる。
この前なんか金属バットを持ったヤンキー25人と戦ったし。
「お、俺なんかでいいんですか?」
「はい……覚えていませんか? 私のこと」
そう言われ、俺は金城さんをよーく見てみると確かに見覚えがあった。
というより、昨日助けた子だ。
「昨日の」
「はい。そ、その……戦ってらっしゃる貴方を見ていると
心臓の鼓動が激しくなるのを感じたんです」
うぅ……ま、まあ可愛いし……良いよな。
「よろしくお願いします」
俺の言葉を聞き、金城さんは満面の笑みを浮かべた。
―――――これが間違いだった。
―――――織斑一夏・中学一年の記憶。
金城さんから告白を受けてから早数か月。
俺はもう、あの女の顔も声も聞きたくない状態だった。
付き合い始めた当初はどこにでもいるカップルみたいだったけど、
数日が経てばすぐにその本性を露わにした。
あのバッグを買ってだとか、あのアクセサリーを買ってだとか……
しかもその値段は中学生でお小遣いをもらってるやつがギリギリ買える値段
だったから俺は気付かずに千冬姉から前狩りなどをして買っていた。
あいつの目的は俺じゃなかった……姉と金だった。
姉が家にいる時は無理やり家に入って来て、俺に会いに来たかと思えば
俺など放置して姉にベッタリくっついている。
そんな状態が二カ月ほど続いた状態で、俺はもう確信した。
『この女は金と姉目当てだと』
でも、一瞬だけ見せる笑顔が俺を縛っていた。
『まだ金城さんは俺のことが好きなんだ』
そんなバカみたいな妄想を抱いた俺は親友の弾に言われるまで
ずっと洗脳されていた。
そして、付き合ってから四ヵ月目の日、俺は別れを言うために
彼女を屋上に呼び出した。
「なに? 忙しいんだけど」
出会った当初は丁寧なものの言い方も今では
完全に俺を見下した言い方になっている。
「別れてくれ。お前の顔を見るのも嫌になったんだ」
本当ならもっと優しく言うべきなんだけど俺はもう、思っていることを
そのまんま彼女に言い放った。
「な、なんでよ……いやよ! 別れたくない!」
彼女は嘘泣きをしながら俺に抱きついてきたから、俺は彼女を押して突き放した。
「俺の姉と金目当てなんだろ! もう分かってるんだよ!」
そう言うと彼女は黙って静かになった。
ハァ……最初の恋がこんなにも残酷だとは……また、作ればいいや。
「だったら」
俺が屋上から去ろうとしたときに彼女はポケットから
刃物を取り出して自分の手首に当てた。
「な、何してんだよ!」
――――――このときに気づくべきだったんだ。
―――――屋上の声は下の階の教室にまる聞こえだって。
「嫌! 離して!」
俺は必死に彼女から刃物を奪い返そうとするがなかなか、彼女は刃物を離さなかった。
「悪い!」
――――ドッ!
「うっ!」
俺は力を最低限にまでに弱めて、腹パンをして刃物を取り上げるが
その際に彼女の手首に擦れたようで手首を斬ってしまった。
「だいじょ」
「きゃぁぁぁぁ!」
俺が彼女に近寄ろうとしたときに後ろから叫び声が聞こえてきた。
慌てて振り返ると屋上へとつながるドアが開いていて、そこに数人の
学生がいた。
「人殺し!」
「ち、ちが」
「織斑ぁ!」
「金城さん!」
女子は金城のもとへ、男子生徒は俺に殴りかかってきた。
そのまま俺は遅れてやってきた教師に拘束されて、職員室にまで連れてこられた。
必死に俺は抗議するが目撃証言と金城の手首の傷が決定的となって
俺の意見など無視して人殺しの烙印を押された。
それがまだ、ただの男ならよかった……でも、俺は霊長類最強の
織斑千冬の姉ということもあり情報は凄まじく偏向を加えられた上で
全世界に発信された。
これにより俺は姉の権力を使って女を誑かした最低男、自分の言うことを
聞かなかったから刃物で切りつけた、無理やり彼女を犯して脅迫した上で
金を無理やり奪っていたなど凄まじく偏向報道をやられた。
女尊男卑―――――俺には関係ないと思っていたものが牙をむいた瞬間だった。
それだけでは済まなかった。
俺の友人が金で買収されたか分からないが俺の住所と電話番号、
携帯のメールアドレスを暴露して、ネットにコピペされ、毎日毎日、
俺の携帯や家の固定電話に誹謗中傷の電話が殺到し、家の前には
マスコミ関係者が殺到した。
「はい。もしもし」
『死ね!』
これで何回目だ……学校にも行けないし、テレビをつければ俺の事が
ボロクソに言われ、ネットもろくに出来ない!
外出すれば指を差され、女性からは嫌がらせをされ、恐喝される。
「あぁ……絶望ってこんななのか……アハハハハハハハハハハ!」
もう笑うしかなかった。
電車に乗れば痴漢の冤罪をかけられた。その時は千冬姉に助けられたけど
それのせいで姉の権力で法を破りたい放題といわれた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! これが絶望か!
これが人の闇か! アハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「絶望を知りましたか」
突然の声に、俺は笑うのをやめてその方向を見ると見知らぬ女性が立っていた。
「……誰だ」
「私はユキノ。束様によって制作された自己進化プログラムを
植えられた人間に準ずる存在……簡単に言えばサイボーグです。以上」
「束さんが……何故、ここに」
「束様に言われました。いっくんの傍に居てあげてと。ですから
私は貴方の傍に居続け、貴方の言うことを絶対として行動します。以上」
つまり……心をもたないサイボーグで、俺の傍から絶対に離れない、
絶対に絶望させられないってわけか……。
「なら、女を全て絶望させるといえば」
「それに従うまでです。貴方が殺せというならば確実に
ばれない様に殺すこともできます。以上」
「……決まりだ。俺の傍にいて、女が絶望する様を見届けろ。ユキノ」
「畏まりました。一夏様」
――――――俺の生きる目的。
―――――それは女どもを絶望させること。
最近、思いついたものを試しに投稿。