充電器が来るまでに犠牲にしたアイデアが無駄でなかった証明のために
ハーメルンよ! 私は帰ってきた!!
「まずは選別だ、足掻け」
一誠は高速で両腕を動かす。
指先で目に見えない魔法陣を描くように動かし、最後に片手を天へと向ける。
「―――っ!?」
その場にいる誰もが驚愕した。
いきなり渦巻く曇天が空を覆ったかと思えば、その場に無数の隕石が降りそそいだのだ。
「『
無数に降りそそぐ隕石は容赦なく超常の存在を押し潰し、吹き飛ばす。
十万もいた連合軍は地獄絵図となっていた。
「なんだこれは!?」
「や、やめ―――」
「助けてくれ!!」
悪魔が、天使が、堕天使が、その他にも戦乙女やドラゴンがまるで車に潰されたカエルの様に潰されていく。
しかし、その程度でやれるほど、連合軍は甘くは無い。
「兵藤一誠!!」
「シネェェェェィ!!」
「この化け物がァ!!」
神仏や魔王クラスの一部が隕石を迎撃し、その間に近接型が高速で一誠に攻撃をしかける。
最上級悪魔クラスの強者が数十人規模で波状攻撃を仕掛けてくる。
しかもその中の殆どが速度を武器とした達人ばかりだ。
普通の人間なら瞬きする間もなく膾斬りにされる事だろう。
しかし、相手は普通の人間などでは無かった。
それこそオーフィスやグレートレッドと同じく、単独で世界を滅ぼせる、生物としての枠から外れたような存在なのだから。
「オラオラオラァ!! どうしたどうした? もちっと気合入れろ!! じゃねぇと暇つぶしにすらならねえだろうがァ!!」
一誠は光速、神速の攻撃を全て防ぎ、逆に魔力で創りだした槍で切り裂いていく。
そこに繰り広げられているのは只の暴力だった。
一誠が繰り広げる攻撃に優雅さなど存在しない。
ただただ、目の前に存在している敵を斬り殺すだけ。
それこそ型もなにも無い、子供のチャンバラのような出鱈目さで槍を振るう。
しかしそこに込められた速度と力は圧倒的で、一誠に襲い掛かった戦士達は踏みつぶされた蟻のように吹き飛ばされ、その命を刈れていく。
ドガァァァァンッ!!
「っは、ちったぁ面白くなってきたなァ!!」
だが、一誠に敵対する者達も普通ではい。
誰もかれもが百戦錬磨の手練ればかりだ。
後方に控えていた遠距離主体の者達が各々の放てる最高の火力を一誠にぶつけた。
しかし爆風を払いのけ、無傷の一誠がそこから出てくる。
「生温いなぁ。やるんなら、これぐらいはやれよ」
そう言って、一誠は薙ぎ払うように腕を振るう。
それだけ、ただそれだけで大地が裂けた。
地平線の端から端へと、天へと昇る巨大な『壁』とも言える火柱が後方にいた魔法使いや神仏達を焼き払っていく。
火柱が消えた後には地割れにも似た、巨大な渓谷がその姿を見せる。
余りにも出鱈目。
ならその攻撃を防ぎ、大多数の味方をまもったオーフィスもまた、一誠に準ずる化け物と言えよう。
「オラァ!!」
「ぬん!!」
雷光をその身に纏ったインドラ、破壊神シヴァ、黄金の剣を振りかぶるウルスラグナ、草薙の剣を構える素戔男尊、そして強大なオーラを纏った槍を構えるアスラ、『勝利の剣』を抜き放つフレイ、穂が五つに分かれた槍『ブリューナク』を構えるルー。
他にも強力な武具を各々に構える一騎当千、万夫不当の神仏達が一誠へと襲い掛かる。
しかし、その全てが無駄だった。
「邪魔だ」
槍から炎剣へと変え、それを一閃。
ただそれだけで周りの大地も、山も、神仏も、その斬線上にそんざいしたありとあらゆるものが消し飛ばされた。
破壊力だけなら、魔王ですら凌駕する神仏たちが為すすべなく斬り殺された。
「い、いやだ……死にたくない!」
それは誰が叫んだかは分からない。
しかし、たった一人の脱走者が前線を崩壊させる。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「に、逃げろ!!」
最初の一人に続くように、次々と逃げ出すものが続出する。
「お前ら、逃げるな!」
アザゼルがそう叫ぶが、残念ながら遅かった。
「やる気のねェ奴が来るんじゃねぇよ、白けるだろうが!」
不機嫌そうにそう怒鳴る一誠は、炎剣をそのまま大地へと突きつけた。
「まずい」
本能的にそう感じ取ったサーゼクス。
しかし、やばいと思いながらもどうすることもできなかった。
一誠が炎剣を大地へと突きさしだけで、大地が大きく脈動する。
そして、間欠泉のように巨大な火柱が大地から燃え上がり、逃げようとしていた者達を灰すら残さずに燃え散らした。
「そろそろ半分以下に減ったか? オイオイ、もちっとやる気出せよ、お前ら」
半分どころか、二割以下までに数を減らした連合軍。
殆どの者の心が折れかける。
だが、そんなことなぞ関係無いと言わんばかりに一誠に攻撃を仕掛ける者が居た。
「えい」
オーフィスは莫大なまでのオーラを拳に籠めて、それを一誠目掛けて振るう。
一誠は凶悪な笑みを浮かべながら、オーフィスの拳を無雑作に受け止める。
「ハハハ、まさかお前まで来るとは思わなかったぞ、オーフィス」
「皆、グレートレッドを倒すのに必要。だから、殺されたら困る」
一誠はオーフィスをそのまま引き寄せ、そのまま蹴り飛ばした。
木々だろうが、山だろうがおかまいなしに粉砕しながら、オーフィスは数十キロもの距離を吹き飛ばされる。
しかし、オーフィスは周りの大地を岩盤ごと吹き飛ばしながら一誠へと迫り、その小さな拳を振るう。
その見た目とは反対に、オーフィスの一撃は全盛期の二天龍すら簡単に撲殺する程の威力がある。
だが、一誠はまるで子供のパンチを受け止める様に、その全てを態々受け止めながら防ぐ。
最後に、オーフィスの蹴りを掴みながら、一誠はがっかりしたようにオーフィスに話しかける。
「お前は十年前と変わらないな。……相変わらず弱いままだ」
「……っ!」
一誠はオーフィスの脚を掴んだまま、手刀でオーフィスの首をはね飛ばし、足を掴んでいた腕に力を籠め、残っている体もろとも首を跡形もなく吹き飛ばす。
オーフィスの体を消し飛ばした影響で、周囲に巨大なクレーターができあがる。
「もう飽きた」
一誠は右手を上、左手を下に構え、その間に魔力を集束させていく。
そしてそのまま、まるで祈る様にその魔力を潰す。
「『
『妖精の法律』
術者が敵と認識した者のみを攻撃する超魔法。
一誠を中心に光が広がっていき、そしてサーゼクスを除いた全ての敵が行動不能になった。
サーゼクスはボロボロになりながら、周りで倒れ伏している眷属を見渡して呆然とする。
「なぜだ……なぜこんなことをするんだ!?」
ピクリとも動かなくなったグレイフィアを抱えながら、サーゼクスは涙を流しながらそう叫ぶ。
そんなサーゼクスを見下しながら、一誠は答える。
「言っただろ? 只の暇つぶしだって。それ以上でもそれ以下でもねェよ」
余りにも無機質なその声音を聞いて、サーゼクスは愕然とした。
本当に……本当に何も感じていないのだ。
オーフィスを殺したことも、世界を滅ぼそうとしていることも、そして―――グレイフィア達を殺したことも。
「そんな……そんなくだらない理由でグレイフィアを殺したのか? そんなくだらない理由でミリキャスを殺すのか?」
「そうだ」
相変わらず何も感じさせない無機質なその答えを聞いて、サーゼクスは我慢の限界を迎える。
「何の権利があって……」
「俺が人間だからだ」
サーゼクスの怒号を途中で遮り、一誠はそう言う。
「お前ら異形の存在ってのは、どいつもこいつも神話や物語で出てくるような存在だ。なら、その神話や物語はなぜできた? それは人間にとって都合のいい様に人間が創りだしたからさ。例えば宗教なんかは人を纏め、国家や王を絶対にするために。物語なんかだと人が楽しんだり、子供の教養のために。お前ら異形のバケモノは『人間』に生かされてる玩具に過ぎない。なら、人間である俺が死ねって言ったら、黙って死ねばいいんだよ」
余りにも傲慢に、余りにも残酷に、何処までもふざけたことを至極真面目に言う一誠。
温厚なサーゼクスも、流石にその言葉には理性の限界が訪れた。
「ふざ―――」
「遅ぇよ」
強大な滅びの魔力を一誠に叩きつけようとしたが、それよりも速く、一誠がサーゼクスと抱えられていたグレイフィアを肉片一つ残さずに消し飛ばした。
「大体の奴らは殺したな。飽きたし、そろそろ終わりにするか。―――禁手化」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』
一誠の体を赤い鎧が包み込む。
一誠は鎧を纏い、首をコキコキ鳴らしながら調子を確かめる。
一誠は拳に魔力を籠めながら、
「存外つまらないものだな。ドライグ」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!』
合計35回の倍化。
元の力が1だとしても、倍化される力は三百四十三億五千九百七十三万八千三百六十八倍だ。
そして倍化される前の魔力は、大陸くらいなら簡単に砕く位の力が籠められていた。
それだけ出鱈目な魔力をさらに出鱈目なまでに増幅する。
一誠はやろうと思えば素の力だけで冥界を消し飛ばせる。
一誠が態々『赤龍帝の鎧』を纏い力を倍化したのは、面倒くさかったからだ。
「いよっと」
そんな軽い掛け声と共に、一誠は大地を殴りつけた。
たったそれだけで冥界は塵一つ残さずに吹き飛んだ。
◆TS一誠×ヴァーリの続き◆
「バカーーーー!!!」
「ちょ、まっ―――」
ドガァン! という爆音と共に吹き飛ばされながら考える。
ああ、なぜこうなってしまったのかと。
◆
遡ること数時間、日本の某所。
住宅街にある一軒家。
外見を見る限り普通の住宅であるそこには、
「どういうことか説明してくれる? ヴァーリ」
十人見れば、十人が美少女と言いきれるほどの美人が満面の笑みで銀髪の青年を見下している。
腕を組み、青筋を幾つも浮かべる彼女の迫力はものすごく、まるで背後で『ゴゴゴゴゴ』と音が鳴っていそうなほどである。
少女に見下されている青年は、冷や汗を全身から流している。
「いや、落ち着いてくれ、一誠。これは―――」
「一誠、うるさい。ここ、我のお気に入り」
青年―――ヴァーリ・ルシファーの膝の上に座っている少女がそう言った瞬間、
「へぇ……」
状況が更に悪化した。
それはもう、最悪な程に悪化した。
少女から放たれる重圧に耐えきれなかったように、カップは割れ、ガラス窓にひびが入る。
先ほどよりも更に青筋を浮かべる少女の瞳は……なんというか、もはや視線で人を殺せるレベルである。
ヴァーリは先ほどよりも表情を青くしながら、どうするべきか必死に頭を回転させる。
(無理だな。うん、諦めよう)
(ヴァーリ!!?)
しかしすぐさま諦めるヴァーリ。
彼の中に宿る『白い龍』がツッコムが、既に諦めの境地に達してしまった彼は脳内花畑を楽しそうに駆けまわっていた。
まるで少女漫画の様に、楽しそうに脳内花畑をアハハと駆けまわるヴァーリ。
そんな彼の中で、巻き込まれたが故に死の危機にあっているアルビオン。
なお、ドライグは沈黙している模様。
「ヴァーリの……変態、ロリコン、尻フェチのバカーーーー!!!」
「ちょ、まっ―――」
流石にそれは心外だと言い返そうとしたヴァーリだが、一誠の攻撃で数十キロも上空に吹き飛ばされる。
なお、ヴァーリの膝の上にいた少女―――オーフィスはちゃっかり一人だけ逃げ切っていたりする。
キラーンという効果音がつきそうな感じに、ヴァーリは星となった。
急ピッチで書きあげたので、これで勘弁してください。
あ~、次の更新はなにになるか自分にも分かりません。
それではノシ