ソードアート・オンライン《三人の勇者》   作:ホイコーロー

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12話《初めての決戦》

 ついに、ボス攻略の日がやってきた。

 集まったプレイヤーは合計47人。カイトたちのパーティが五人で、他は六人パーティが七つだ。

 先日決められたように、総指揮はディアベルが行う。そのディアベルのパーティがボス班のリーダーを、そして、俺たちが取り巻き班のリーダーをそれぞれ務めることになっている。

 

 ボス攻略に当たる前に、俺たちの戦力をざっと見直しておこうと思う。先に言っておくと、SAOでのステータスは《筋力》《敏捷》《感覚》の三つで、レベルが上がるごとにいくらかのステータスを割振ることができる。

 戦闘において、スキルや装備以上に重要な要素だ。プレイヤー個人の特徴が最もよく出る部分とも言えるな。

 

 

 

 

 プレイヤー名:カイト

 レベル:13

 スキル:《槍》《隠蔽》《武器防御》《投剣》

 ステータス:《敏捷》先行、次点で《筋力》

 戦闘スタイル:

 簡単に言うと器用の一言に尽きる。敵の攻撃に当たらないことを第一とし、隙間隙間に中ぐらいの攻撃で相手のHPを削っていく。難点としてはどうしても戦闘時間が延びてしまうこと。逆に足止めや、多対一の戦闘が非常に得意。

 

 プレイヤー名:ハチマン

 レベル:14

 スキル:《索敵》《隠蔽》《短剣》《投剣》

 ステータス:《敏捷》《感覚》特化

 戦闘スタイル:

 非常にセンスのいい戦い方をする。”早く終わらせること”を目標とし、リスクに見合うと判断すれば危険な橋も平気で渡る。スキルスロットの増加に伴いようやくソードスキルを手に入れ、難点だった火力不足が解決。

 最小限のリスクで最大限のリターンを得る。

 

 プレイヤー名:キリト

 レベル:13

 スキル:《片手剣》《索敵》《武器防御》《戦闘時回復》

 ステータス:《筋力》先行、次点で《敏捷》

 戦闘スタイル:

 一撃のダメージ量で言うなら、五人の中でもトップ。相手の攻撃を受けてもそれ以上のダメージを与えればいいという、所謂”肉を切らせて骨を断つ”戦法。それほど器用な戦い方はできないため、多対一は苦手だが、相手が単体で強ければ強いほどその真骨頂は発揮される。

 

 プレイヤー名:コペル

 レベル:11

 スキル:《片手剣》《隠蔽》《盾》

 ステータス:《筋力》《敏捷》先行

 戦闘スタイル:

 とにかくよく動く。ヒットアンドアウェイを狙うが、状況判断がお粗末なので攻撃には当たりがち。パーティ内ではヘイトを集める盾役としてそれなりに貢献している。

 なお、決して彼が弱いのではなく、他の四人が別格なのだということを付け加えておく。

 

 プレイヤー名:アスナ

 レベル:14

 スキル:《細剣》《索敵》《投剣》《武器防御》

 ステータス:《敏捷》先行、次点で《感覚》

 戦闘スタイル:

 強い。一撃の威力も高く、しかもとても疾い。しかし、どこか戦闘を恐れている面があり、早めに終わらせようと焦りがち。それでも強い。

 

 

 

 

 アスナの戦闘スタイルが適当に見えるのはきっと気のせいだな、うん。これを見ても、俺たちが十分に強いのは分かってもらえるだろう。

 ちなみに、ユキノはコペルよりも強いが、ユイに付き添うために、基本攻略なんかには不参加となっている。

 

 そして、ついに俺たちは第一階層の迷宮区最奥、ボス部屋の前へとやって来た。

 これから、SAO史上初となるボス攻略作戦が開始される……!

 

 

 

 

「みんな! よく聞いてくれ! ここから先は前人未踏の領域だ。きっと、自信よりも不安の方が勝っていることだろう。

 でも、恐れることはない! 今日、諸君の持つ武器が未来を切り開き、諸君の歩む道が歴史を刻む礎となる!

 さぁ、その一歩を踏み出せ! 誰一人欠けることなく、ここに戻ってこよう!」

 

『おおぉぉぉーーー!!!』

 

 おーおー、張り切ってるな。ディアベルの奴も思ってた以上に人を勢いに乗せるのが達者なようだし、連中も相当やる気だ。これマジで誰も死なずに攻略できるんじゃないか。

 

「やってやるぜーー!!」「おぉーー!」

 

 その中心にいるのが俺のパーティメンバーだと思いたくはないな。コペルなんか遠足に来た小学生みたいになってるし。他人のふり他人のふり。

 

「やっぱ、みんな気合の入りようが違うな。」

 

「お前は参加しなくていいのか、キリト。」

 

「あ、あぁ。ああいうのはあまり得意じゃないんだ。」

 

 お、意外な弱点だな。

 

「私もよ。」

 

 お前は言わなくても分かるっての、アスナ。

 

「お前は言わなくても分かる。」

 

 おいこら、リピートすんじゃねぇよ。

 

「あ、もう行くみたいだぞ。遅れんな、ハチマン。」「行きましょ、ハチ君。」

 

 はいはい、行きますよ。行けばいいんでしょ。あと、会って四日目の人間を渾名で呼ぶのはどうかと思うんですが。

 

「あら、ヒャチマン君の方がいいかしら?」

 

「ハチ君でお願いします。」

 

「(こいつら、いつの間にこんなに仲良くなったんだろう……?)」

 

 こんな他愛ない話をしながらも、些か厳かに過ぎる扉は徐々に開かれていく。周囲を見回しても、笑っている者は誰一人としていなくなっていた。

 さっきの話も無意識の内に緊張を紛らわそうとしていたのかもしれないな、とか考えながら、その部屋に俺たちは飛び込んでいった。

 

 

 

 

「よーし、まずは俺たちからだ! 取り巻き班、かかれぇーー!!」

 

 部屋に入ると同時に部屋の奥で静観を決め込んでいた巨大なエネミーが動き出し、その周囲に中型のエネミーが三体ポップアップする。

 《イルファング・ザ・コボルド・ロード》と《ルイン・コボルド・センチネル》。どちらもネズミをモチーフにしたエネミーであり、前者は全身が紅い毛に覆われている。

 

 先に三体の《ルイン・コボルド・センチネル》が突進してきて、17人の取り巻き班と衝突する。その間に、残りの30人が奥の《イルファング・ザ・コボルド・ロード》へと向かっていった。

 

 

 

 

「キリト! スイッチ!」「おう!」

 

 カイトが敵の攻撃をはじき返し、ノックバックしている隙にキリトが止めのソードスキルを放つ。

 それにより《ルイン・コボルド・センチネル》のHPは0となり、青く光りながらドット状の塵となって霧散していった。

 

「よーし、他のところも終わってるな。」

 

「さ、流石すぎるッス! 師匠!」

 

 コペルがそういうのも無理はないかもしれない。ここには俺とキリトとコペルの三人しかいないのだ。ハチマンとアスナは、それぞれ他の取り巻きの討伐援助に行っていた。

 つまりは、だ。他のところが六人ですることを俺たちは二人でできるってことになる。やはり、トッププレイヤーの集団にあっても規格外の戦力と言えるだろう。

 

「あっちも順調そうね。」

 

 見ると、ボス班の方も手筈通りの動きを十分にこなせているようである。ボスのライフゲージもすでに半分ほどまで削れていた。

 

「カイト、じゃあ俺たちも。」

 

「あぁ、ダメ押しと行きますか!」

 

 

 

 

「はあぁ!」

 

 アスナのソードスキルが見事にヒットし、ボスのHPゲージがまた数ビット削れる。ったく、相変わらずなんてソードスキルだ。青いエフェクトを纏ったそれはほとんどビームだぞ、ビーム。

 

 アスナの武器は《細剣(レイピア)》。フェンシングなどで見るような、刺突を主な攻撃とする武器だ。……まぁ、武器なんだが……アスナがそれを扱うと刺突がまるで視認できない。”見えない”。それだけで、その攻撃は必殺の一撃へと変貌を遂げる。

 なぜそんなことが起こるのか。

 ソードスキルは、プレイヤーのステータスとスキルの熟練度、及び武器の性能が加味されることでその威力が()()決定する。ほぼ、というのは、もちろん他にも要素があるということ。

 

 それは、タイミングだ。

 ソードスキルは一度発動すれば、その後の動作をシステムが誘導するが、その動作に合わせて自らも動きを加えることで攻撃としての質が格段に上昇するのだ。

 トッププレイヤーともなれば、これもある程度ならこなすことは可能だ。ただ、アスナの場合、そのタイミングが既にほぼ完璧なのだ。これにより、《敏捷》先行のステータス、そして《細剣》という武器の特性と相まって神速の攻撃を生み出しているのである。

 

 そして、相も変わらずの捨て身気味な攻撃だし……。カイトに言わせると、大分ましにはなったらしいが。マジ怖い。いや、マジで。

 

「よーし、そろそろ第八班は下がって休憩だ! 第六班と交代してくれ。みんな! もう少しだ! 気を引き締めろ!」

 

 はいはい、後退して交代(笑)っと。

 ディアベルの指示に従い、俺たち第八班は休憩だ。アイテムウィンドウからポーションを取り出す。別に攻撃なんか喰らっちゃいないが、防御した反動なんかでもダメージはあるからな。

 

「いやー、なかなか上手く連携できてるんじゃないか。」

 

「基本はね。まだ甘いところはあるわ。特に、コペル君。もう少し余裕をもってスイッチできない? もっとスムーズに前衛と後衛を交代したいの。」

 

「う、うぅ……。頑張ります……。」

 

 《スイッチ》はSAOの基本的な連携技術だ。エネミーとソードスキルをぶつけあったりした時、一対一ではその隙を突くことはあまり得策ではない。こっちもノックバックしてるからな。

 しかし、二対一以上の時なら、前衛がエネミーをノックバックさせて後衛がその隙を突くことが可能だ。ついでにさっき言ったローテもすることができることは言うまでもない。

 コペルはそのスイッチが(他の四人に比べて)下手なのだ。

 

「おいー、アスナ。あまり俺の弟子をいじめてくれんなよー。」

 

「じゃあ、しっかり指導しておいてよね。」

 

「それはかたじけない。」

 

「慰めになってないぞ、カイト。」

 

 ちなみに、ローテーションを組んで戦闘を行うのには二つほど理由がある。

 

 一つ、レイド故の連携の難しさ。なんせ、47人の大所帯だ。ローテでも組まなければお互いが邪魔でしょうがない。

 二つ、回復手段の貧しさ。SAOには魔法という概念がない。アイテムなんかはあるが、後方から攻撃や回復を支援する方法は皆無だ。また、そのアイテムですら、回復にある程度の時間がかかるポーションのみという悲惨さ。βテスト時には《回復結晶(ヒールクリスタル)》なるものがあったらしいが……現時点ではまだ確認されていない。

 

 以上がローテをする大まかな理由だ。決してサボってる訳じゃないのでくれぐれも悪しからず。

 

「第二班、第八班と交代だ!」

 

 えー……。あと五分……あ、ダメすか……。

 

 

 

 

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