全部恋姫Xがわるいんや・・・
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どれくらいの時間、泣いていたのだろう。
夕日が照らす荒野の中で、僕はようやく顔をあげた。
皆ももう泣いてはいなかった。悔しそうな、悔いるような顔をして立ち尽くしていた。
顔を上げた僕を見て言葉をかけられた。
「少年、もういいのかい?」
「はい、もう大丈夫です」
本当は大丈夫なんかじゃない、今も冷静な振りをしているけど、何も考えないようにしてるだけだ。
「そうかい、なら今すぐ選んでもらわなきゃいけないことがある」
フーガさんが少し怖いような、まじめな顔で僕の正面に立つ。
「俺たちと一緒に王都まで行くか、一人で・・・ここに残るか、オラドゥールまで戻るかだ」
その言葉に皆が顔を上げる。
「フーガ、それは酷というものです。この子は今しがた全てを失ったのです、それを」
「だからだろうが。いいか、逃避をするな、そして考えろ。もうこの世界に無条件でお前を守ってくれる奴はいない、これからは自分で、自分の足を動かして進んで行かなきゃいけない」
フーガさんの硬い手が僕の顎をつかんだ。
「これはあまりにも酷な選択だ。あぁ、俺もそう思うさ。だが俺たちには時間が無い、こいつをオラドゥールまで届けるのも、こいつが立ち直るまでここで一緒にいてやるような時間も」
その形相に顔を背けようとして、すぐ真正面に向きなおされる。
「お前はどうしたい、ここで町の人たちを弔って生きるのか、オラドゥールまで行けばお人好しのマルコが面倒を見てくれるだろうよ」
その力強い目を真正面から受ける。
「フーガ、それ以上は」
リリアさんが止めようとしてくれる。フーガさんは一瞥もせず僕を真正面から見続けている。
「ちょっと黙ってろ!選択肢を提示されるのを待つな、考えろ。お前はどうしたい、これから先どうやって生きる。それともここで死ぬか!」
あぁ、僕に力があったなら。
僕には英雄のような凄い力はない。
魔物を倒せる力も、魔法士様のみが使える魔法も、英雄譚の策士のような頭脳も。
でも、それでも。
「僕は・・・悔しいです・・・」
「あ?聞こえねえな」
僕は、今の気持ちをそのまま、目の前の人にぶつける。
「悔しいです!何もできなくて・・・魔物と戦うどころか、自分一人で生きていく力も無いのが悔しくて・・・つらいです!!」
僕はどうしたらいい、レオンさんやフーガさんのような強い力は無い、リリアさんやリプトさんのような魔法の力もない。
それでも、僕は生きたい。
「だから・・・一緒に、着いていかせてください!貴方達から・・・学ばせてください!!」
もう枯れたと思った涙を流しながら、でも、もう二度と情けない涙をみせない用に。真っ直ぐに、絶対に目を逸らさないように。
僕の顎をつかんでいた手が解かれ、力強く僕の頭を掴み撫でられた。
「よく言った!それでこそ男だ!!」
二カっと笑いぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。
「いいのかい?僕らについてくるってことは魔王と戦うってことだ、辛く厳しい道だ。その覚悟はあるか?」
皆が僕のことを見ている。
「はい。正直、今は何も役に立てないと思います。今後役に立てるかも分からないです・・・でも、僕は皆と一緒に行きたいです・・・それに」
僕は今、冷静になると同時に暗い考えを抱いている。父に、母に戒められた暗い考え。
「それに、なんだい?」
その意思を感じ取ったのかレオンさんが僕の瞳を覗き込んでくる。
「僕は魔王が憎い、出来ればこの手で殺してやりたい。でも僕にはそれが出来ない・・・から。それが出来る人についていきたいんです。そして魔王が死ぬところをこの眼で見たい」
人には優しくしろ、人を憎むな。両親に言われた言葉だ。でも、あいつはその優しかった両親を奪った。僕は・・・絶対に許せない。
「ヨアン君、その考えはいけない。それは・・・」
「まぁまてレオン、それでもいいじゃねぇか。旅は長くなる、そこでゆっくり解決していけばいい。今は口論してる時間はない」
真剣な眼差しのまま二人が言い合いをしている。
正直に言い過ぎただろうか、でもこの人たちには嘘をつきたくない。きっと偽ってはいけない、僕の旅の動機。
「私は、ヨアンの気持ち・・・少し分かる。私も親を魔物に殺された孤児だから」
リリアさんからそんな言葉が漏れた。
「しかし・・・!」
「旅の目的は魔王を倒すこと、それさえ間違えなければ動機は人それぞれ・・・私はそれでいいと思う」
その言葉にレオンさんは顔を背ける。
「そう・・・だな。分かった、とにかく今は急いで王都に向かおう」
レオンさんのその言葉と共に、皆行動を開始する。
「馬車も無くなっちまったし、こっから徒歩かぁ・・・ったく、面倒くせぇなぁ・・・」
「まったくフーガは、仕方ないでしょう?ヨアン君、徒歩でしかも急ぎの旅になりますけど疲れたらちゃんと言うんですよ?」
「はい。皆さんには及ばないと思いますけど、僕だって商人の息子として日々走り回ってましたから、体力はそれなりです!」
「おいおい、リプトはヨアンに甘すぎんだろ!ほらみろ、俺はこんなでっけぇ剣担いでんだぞ?もちっと心配してくれてもいいんじゃねぇの?」
「僕たちは旅に慣れている、それとヨアン君を一緒にしちゃ可愛そうだ」
「ま、しかたねぇなぁ・・・ヨアン、ちゃんとついてこいよ?」
「はい!よろしくお願いします!」
僕たちは一路、王都を目指して歩き始めた。