何もできない僕の物語   作:必殺うぐいす餅

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第20話

旅立ちの朝、僕は買ってもらったばかりの皮の鎧にピカピカのショートソードを腰に下げ宿舎の前に立つ。

皆ももう揃っておりよく手入れされた装備をまとっている。

「おはよう、ヨアン。昨日はよく眠れたかい?」

そうレオンさんが声をかけてくる。

「はい、睡眠はばっちりです。疲労もありません!」

そう元気よく答え皆の横に並ぶと、大きな手にぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。

「んじゃ行こうか」

と短く、しかし頼もしく微笑むフーガさんが馬車に入っていく。

フーガさんに続いて他の皆も一緒に乗り込む。

最後に御者台にレオンさんが乗り込み馬車は走り出した。

王都の景色が過ぎ去っていく。僕は、無事に魔王を倒せるようにと祈りを込めて目を閉じる。

 

簡単な祈りを終えて僕はまたまた街の景色を眺める。そしてふと疑問に思ったことを聞いてみることにした。

「そういえば、勇者の旅立ちなんて言ったら、本来は国を挙げての一大事業になるんじゃないですか?」

そう、今世界は魔王の出現によって混乱している。サザラント王国内でも屈指の街を一度に二つも落とされたのだ、これから先貿易にだって支障が出るだろう。

そんな情勢を纏め上げるのに勇者という肩書を利用しない手はないと思う。国を挙げて盛大に行えば街の人たちの不安もだいぶ取り除けると思う。

そんな風に思っていると御者台から声がかかる。

「ヨアン君の考えはわかるよ。正直、今の混乱を収めるには僕らが前に出たほうがいいとも思う。だけど陛下はそれを望まないんだ」

王様が望まない?

「え?王様が望まないって・・・国民の不安が広がれば王国にもなにかしら不利益があるんじゃ・・・」

あくまで、僕はそう思う。国王様には何か別の考えがあるんだろうか。

「そうだね、確かに今の混乱を収めるのには使えるだろう。ただ、このたびは非常に困難な旅だ。僕たちが成功する確率も正直現時点では高くないだろう。そして、勇者として送り出した者たちが旅の途中で倒れたとなったらどうする?もし国を挙げての事業となっていれば僕たちは全国民の希望を背負っていることになる。陛下は今の混乱よりもその時の混乱を嫌ったんだ」

「そういうこった。正直に言えば、この中でここに帰ってこれないやつもいるかもしれない。もしかしたら全員だな、これはそういう旅だ」

二人にそう言えあれ、僕は旅の認識を新たにする。そうだ、フラングから今までだって何度か死にかけた。これは、そんなものよりももっと危険な旅なんだ。

僕は全員が無事に旅を終えられるようにと新しく祈った。

 

 

 

 

 

門を潜り街の外へと出る、その瞬間から皆の気配が変わった。

もちろんちょっとした雑談をしながらではあるがピリピリと、周りを警戒しているのがわかる。

「あの・・・まだ街を出たばかりですしそんなに警戒しなくても大丈夫なんじゃないですか?」

「ば~か、つい最近王都の手前まで魔物に落とされたんだ、この辺もどうなってるかわからない。人を襲う魔物がこの辺にいるかもしれない。その辺の魔物の動向調査も俺たちの任務だ」

人を襲う魔物・・・あの森にいた魔物のような存在が近くに・・・

「それって一大事じゃないですか!あんな魔物が近くにいたら人や荷物の移動もできないし・・・」

「ば~か、だから俺たちが調査してるんじゃねぇか。まぁ、後から騎士団の部隊が魔物の掃討に出るからな。ぶっちゃけ本当に危険な魔物がいた場合に魔法で位置や強さを送るくらいだな」

それを聞いて、僕も外を睨み周りに異常がないか警戒することにした。

 

 

しばらく走った後にまるで子供がふてくされて外を見ているようだったとフーガさんに笑われた。

フーガさんがこっそり荷物にお酒を忍ばせていることをリプトさんにばらし、本当にふてくされてやることにした。

 

フーガさんの悲鳴と恨み節を聞きながら景色は進んでいく。

 




大変遅くなり申し訳ありませんでした・・・
まさか1か月以上放置することになろうとは自分でも思っておらず、期待してこの作品を読んでいらっしゃる読者の方には大変申し訳ないことをしました。

一つ言い訳をさせてもらえるなら・・・
仕事の都合上、皆様が夏休みの間というのは非常に忙しく正直執筆の余裕が取れません、そして次の見せ場はできているのですがそこまでのつなぎが大変難しく・・・
この子もものすごく難産でした。(字数も少なくて申し訳ないです)

世間様での夏休みが終わり次第私のほうにも多少の余裕ができると思われます。その後しばらくの間更新頻を落としましてストックを貯めようかと考えております。
更新頻度を落とすと言いましても今より遅くなることはないと思いますが・・・隔週くらいでの投稿を考えております。

このような適当な私の作品ではございますが少しでも皆様に楽しみを提供できればと考えております、ぜひ今後ともお付き合い、御意見御感想をお願いいたします。

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