習作……なんかゆるふわな感じの文にしてみました。ご意見、ご感想ください。
「ふぅ、ちょっと疲れたね」
「そうですね」
「ああ……」
ココアは頬についた汗をハンカチで拭う。チノとリゼもココアの言葉に同意しながら、空を見上げる。
夏特有のギラギラとした太陽光が、体を容赦なく熱している。夏の時期に合わせて涼しめの格好をしているというのに、それでもまだ暑い……いつもは元気なココアでも、今日は流石にグッタリとしている。
福引に当たり、“この街”に喫茶店ラビットハウスの店員である三人は観光に来た……のは良いのだが、ココアとチノは二人共同じ感想を抱いていた。“──暑すぎる”と。
それも仕方がないだろう。この街は、彼女らが住まう街のように、木造りの家と石畳などのようなものが立ち並んでおらず、地面はアスファルトで舗装されている。
天より降り注ぐ太陽光の熱を、アスファルトは暑い、という人々の思いを知ったこっちゃあない、と言わんばかりに反射させ、天と地の両方から熱が出る一種の焦熱地獄のような環境を作り出していた。
お陰で、観光は楽しかったと言えども、こんな夏真っ盛りの時期に来るのは止めておきたかった。歩くだけでも、体力と水分が奪われていく……
「お腹減ったね」
ココアは汗を流しながら呟いた。確かに時計を見てみれば、もう時針が12の数字を指す直前の場所にある。
実際、ココアのお腹からもきゅぅぅ~、とお腹の虫が哭いた。その事にココアは「うぅっ!」と顔を赤らめる。
周りに何かいいお店はないだろうか、と三人はキョロキョロと見回す。
そして、三人の視線は全く同時に、全く同じところを見定めた。
「しろくまカフェ……?」
道に置いてある看板には、そう書かれていた。
「ここにしますか?」
「そうだね」
「だな」
チノの言葉にココアとリゼが同意する。文句無しの満場一致であった。
早速そのお店に入ろう、と決めて敷地内に入ると、
『うわぁ……』
三人は感嘆の声を漏らした。
カフェは敷地内の道を少しした所にあるが、その道のりが見事なものであった。庭は手入れの行き届いた植物や草花によって彩られており、この夏だというのにこの空間だけは涼しく感じる。テラスでキンキンに冷えたクリームソーダなどを飲むと、それだけでも一気に涼しくなるだろう。
……最も、それはただの錯覚というかそんな雰囲気なだけで、実際はクッソ暑いのだが。
だがココア達はテンションが上がり、これまでの疲れなどは消え去っていき、暑さによって会話などはしなかったのだが一気に饒舌になり、お喋りを始める。
「こういうのいいねー!」
「そうですね、
「ラビットハウスも、植物でいっぱいにすれば……」
ココアはラビットハウスに植物を置いた光景を想像する。
店の中にいくつもの植木鉢が並べられ、カラフルな花で彩られた店内を思い浮かべる。その光景たるや、さぞ気持ちのいいものだろう。花の香りと色を楽しみながらコーヒーを飲む……
それだけでは物足りない、とココアは動物たちを追加する。何故かウサギではなく、ゴリラやグリズリー、虎といった動物達が思い浮かび、更に何故か壁や天井には緑色の太い蔦が這いずり回り、ラフレシアやウツボカズラなどといった食虫植物も設置されている。
「ジャングルッ!?」
「? どうしたんですか? 急に」
ココアは自身の想像に思わず突っ込む。第三者からはココアの脳内など覗けないので、突如叫んだココアに驚くも、チノが首をかしげる。ココアはそれに「う、ううん。何でもないよ!」と手を振る。
「ほら、二人共そんな所でボヤッとしていないで、とっとと入るぞ」
「あ、うん!」
リゼは店の前で騒いでいては迷惑だろう、とココアとチノに言いながら店の入口の前に立つ。
ココアとチノは、リゼのもとに小走りで移動して、いよいよその扉に手をかけようとする。
「どんなカフェなんでしょうね」
「しろくまカフェ、っていうぐらいなんだから、きっとしろくまがいると思うよ!」
「ウサギなら兎も角、しろくまなんて居たら真っ先に
「そういえば、ココアさんはラビットハウスの名前を見てウサギがいると思ったんですね」
「えへへっ」
などと、冗談を交えながら扉を開ける。
「いらっしゃいませー」
カフェのマスターの声だろうか、ドアを開けた瞬間にココア達に挨拶をする声が聞こえた。
「確かにラビットハウスには、
ココア、チノ、リゼの三人は店内に入り、体を硬直させる。クーラーによって冷えた店内は、先程まで猛暑の中にいたココアたちの体を冷やし、体を快適なものにするがそれすらも気にならない。
内装は丸テーブルが幾つか並んでおり、店内を飾り立てる小物や観葉植物なども、見事なほどにさり気なくカフェの落ち着いた雰囲気を醸し出していた。……だが、それすらも目に入らずに、カウンター席の向こうにいる人物を凝視する。
恐らくは彼がマスターなのだろう。慣れた手つきでコーヒーを入れている。その手際は熟練のそれである。だが、その容貌が問題であった。
体を包む
そう、彼は……この“しろくまカフェ”のマスターは、問答無用でしろくまであった。
「? どうしました? そんな所に立っていないでどうぞ、くつろいでください」
「あ……ハイ」
ココアはしろくまの言葉に従うとおり、取り敢えずはカウンター席に座る。チノとリゼもまたココアに引き摺られるかのように、カウンター席に座った。
「な、なぁ……チノ、あれしろくまだよな……?」
「……ですね」
リゼは自身の目がおかしくなったのではないか、とチノに小さく囁く。チノもリゼの言葉にうなづく。
「しろくまさん、それは着ぐるみですか?」
だが、そんな二人などは知ったこちゃない、とココアは遠慮なく目の前のしろくまに問いかける。その目は何故だか好奇心に光り輝いていた。
「着ぐるみ……?」
と、しろくまは首をかしげる。
そして突如毛糸と編み棒を取り出し、ぬいぐるみをせっせと作り出した。それにココアもリゼもチノも訳が分からずに、しろくまがとことん編み棒を動かすだけの微妙な空気のまま硬直する。だが、そんな最中
扉がベルを鳴らしながらも勢いよく開いた。そして店内に入ってきたのは、漆黒の流線型の体に、その種族特有の短い羽をパタパタさせ、ヒレのついた足をペタペタと動かしながらも、その嘴のように鋭いツッコミを入れる。
「それは編みぐるみ!」
彼は、ペンギンであった────。
「え、えぇ!?」
ココア達は突然の事になにがなんやらで、戸惑っている。
ペンギンはしろくまに何時ものことなのか、
「ちょっと、お客さんが戸惑っているでしょ。いきなりのダジャレはやめたら?」
などと言いながら、カウンター席特有の高めの椅子(ペンギンの大きさでは見上げるほどに高い)に、どうやったのか分からないが、何時の間にか座っていた。
「そうだね。ごめんごめん」
「い、いえ……」
「それで、ご注文は何にしますか?」
メニューを受け取ったココア達は、どんなものがあるんだろうか。と眺めながら、ヒソヒソと会話をする。
「ね、ねぇ! 凄いよ! 本物のペンギンさんだよ!」
「そうですね……」
「もしかしたら、あのしろくまさんも本物かも! だって背中にチャックとかついていないし!」
「……そんな馬鹿な」
声を小さくしながらも、興奮気味に話すココア。リゼはそんなココアの言うことを否定するが、あながち否定できない自分がいた。
しろくまという巨大な図体をしているモノならば、着ぐるみで済ますこともできるが、ペンギンという子供よりも小さいその体には、人間は入らない。……つまり、彼らは人間の言葉を話しながら、人間のように生活している。という事になる。……常識的に考えれば、そんな事はありえないのだ。
だが、チノ──その頭の上に乗っかているウサギは、元人間……チノのおじいちゃんなのだ。
何故かウサギになってしまった、という摩訶不思議な現象にあっている為、彼らも元人間なのではないか? とかそんな荒唐無稽なことを考えている。
「いや、待て。確かパンプレットに、この街の動物たちは話せると書いてあったぞ」
「……そうなんですか? 私は見ていないので……」
「ああ。この街はそれが特色なんだと」
成る程、とどんな原理なのかは分からないが、リゼの言うことが本当ならばありのままを受け入れるしかないだろう。動物たちが人語を話す原理などが気にはなるが、そんな事はティッピーの時点でもう何かアレなので頭の隅に追いやり、改めてメニューを眺める。
コーヒー各種に、ケーキやパンなどのサイドメニュー各種……メニュー自体は、ラビットハウスやそこらのカフェと変わりない普遍的なものであった。……たった一つを除いて。
『竹』
と、メニューの隅っこにはそう書かれていた。
「こ、これは一体どんなものなのでしょうか?」
「うーん? きっと料理のランクかなにかじゃないかな?」
「……そう、ですよね」
チノはココアに意見を求める。ココアの答えは確かに納得できる、と少々解せはせぬが、的を得たものであった。
三人は取り敢えず各々の好きなものを注文する事にした。
「私はサンドイッチとコーヒーを」
「私はチョコレートケーキをお願いします」
リゼとチノの二人は取り敢えず無難なものを注文することにした。
……だが、基本的にアホの子であろうココアは、元気な声で
「私は竹をちょうだい!」
「ええっ!?」
などと宣う。もしもこの竹が梅松竹などというようにランクを表すものではなく、もしも本物の竹だったらどうするんだ、などというチノの心配は一切皆無! とでも言わんばかりだ。
「竹、ですか?」
「はい!」
しろくまはココアをジッと見つめる。ココアは直ぐに即答する。
「わかりました」
と、しろくまは品物の準備を始めた。一体全体、どのようなメニューが出るのか────!?
途中から面倒臭くなったので、切り上げます。
次回に続くかどうかは知らない。