ちんじゅふを つくろう!   作:TNK

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サブタイトルの通りです。
元よりこの作品については気が向く時に書くつもりでしたが、この度筆を完全に置く事に決めました。
しかし中にはどう終わるのか気になる方も居るかと思い、作っていたプロットと書きあがっていた要所要所を丸ごと投稿する事に致しました。
半ばSSでは無いとは思われますが、ああ、大体こうなるはずだったんだな、と少しでも楽しんでいただければ幸いです。
それでは、このような様の悪い終わり方になってしまいましたが、ご愛読ありがとうございました。


未完結決定とそれに伴い終了までのプロットと文章をごちゃ混ぜた物の公開

・2013年春イベント

補給艦一隻、ヘリコプター搭載艦一隻、ミサイル護衛艦三隻、護衛艦三隻の八隻でハワイへ。

ヘリコプター搭載艦に主人公及び艦娘は待機。

イベント海域換算で四つの海域のうち二つを海軍の独力で攻略。

三つ目の湾内突入……作戦的にはヘリコプターによる索敵のち速やかな奇襲で湾内を制圧する物だったが、泊地棲鬼が突如艦隊の後方に、湾に艦隊を封じ込めるように出現。

殲滅したものと想定し、湾内に深海棲艦が居たことを鑑みてハワイにアメリカ軍は居らず、ハワイの通信網が破壊されているか確認して速やかに撤退しようとしていた艦隊は湾内へ接近していた。

泊地棲鬼の射程に全艦が入っている事を湾に最接近しており、棲鬼より最も離れていた護衛艦が一撃で撃沈された事で認識し、突破口を開くべく艦娘を出撃させる。

泊地棲鬼を撃沈せしめるも、島風以下四隻大破、金剛中破、天龍小破。

艦娘をヘリコプターで回収し、ヘリコプターの着艦を確認次第撤退しようとしている艦隊。ヘリコプターが高度を取り切り搭載艦へと帰還しようとした時、湾に突如泊地が現れた。

泊地棲姫。2013年イベント最後のボス旗艦が、泊地棲鬼の第二形態として登場。

登場した直後手に持った徹甲弾を投げつけミサイル護衛艦一隻を撃沈せしめ、現れた泊地の飛行場より戦闘機・爆撃機が発進しようとしているのを見やり、主人公は金剛へ問いかける。

賭けに乗らないか、と。

泊地全てが深海棲艦の艤装であるならば、例え艦娘の攻撃でも攻撃範囲が狭すぎて、針を刺すがごとく碌なダメージにならないだろう、と。

故に主人公が提案したのは史実の艦船状態での体当たり。ヘリに乗って直上にいる今ならば泊地諸共大ダメージを与えられる。

無論轟沈並みのダメージは出るだろうが、北上の例を見れば、艦船を艦娘の艤装に戻して帰還すれば望みはある。何せ地上だ、沈んではいないのだから。

この提案に金剛は提督が共に体当たりするならばと提案するが、その提案を主人公は間髪入れずに呑む。

体当たりは決行され、目論見通り大ダメージを受ける金剛と泊地棲姫。だがボロボロの状態ながら泊地棲姫は泊地状態から艤装を戻し、至る所から噴煙を上げながらその艤装にあるカノン砲を主人公と金剛に向ける。

……が、ここで天龍登場。主人公と金剛に無断で、こっそり共に降下していた天龍は超至近距離とその艤装にある剣を生かし、泊地棲姫に止めを刺した。

作戦後、天龍は自身以外揃ってボロボロの主人公と艦娘から褒められながら怒られた。

 

・艦娘派と艦船派と拍子抜けの結末。

作戦による悲惨な現状確認という成果と艦隊の大規模な損耗という醜態を隠すためか、艦娘の存在は大々的に広められた。

それまでも特に不便はしていなかったが、それでもあからさまに変わる境遇に艦娘たちは驚く。天龍は調子に乗って怒られる。

その頃、主人公は新しい派閥である艦娘派を立ち上げ、現状の艦隊派を切り崩すべく工作を始める。

……が、現状の海軍の総親玉、元帥の"土御門"(ここ重要)五右衛門が工作をしていないにも関わらず艦娘派に。

釈然としないものを感じながらも政治闘争は勝利に終わり、主人公は艦娘の研究と新たな司令官を育成する為の人材の育成、教導隊の養成を依頼される。

諸々の功績を認められ、建造中だった大型護衛艦を艦娘搭載艦として仕立て直された新造艦を受領する。

その新たな新造艦に、主人公は『鎮守』と命名するのであった。

 

・転移者登場。

この中で出さなければならなかった設定は次の三つ。

・教導を任された者の中に転移者が。節々の言動と行動によって露見し、転移者も主人公の事を認識する。

それこそSSの主人公に出来るレベルで ・気配り良し・イケメン(顔・精神共に)・艦娘第一主義・艦これガチ勢 の設定で書くべし。

このプロットもどきを書いている時点では決めて無かったので、暫定的に池 面太郎とでも命名する。

・艦娘はオカルト側の存在である事を示す。"この事実は転移者も知られるように書く"。

・人から艦娘になれる事を表す。可能な限りギャグ調で、さも大事な事ではないように表現する。

この短編集はかなり尺を取って、転移者とかなり仲良くし、艦娘達との信頼関係を築く。

 

・転移者の思い、怪しき主人公。

ここで書かなければならなかったのは次の二つ。

・転移者とその艦娘の交流。

ただ可愛かった艦娘達を指揮してイチャイチャを……グフフ から接していく内に画面の中のキャラクターから現実の女の子として見るようにし、この戦いを終わらせて女の子として過ごさせてあげたいという思考に至るまで描写する。

この描写はイケメンの一人称で書き、もうお前が主人公で良いんじゃないかな?という所までしっかり描写する。

 

・怪しき主人公

さも怪しい施設を、たった一人で、何か知っているようなそぶりで確認していく主人公を第三者視点で描写する。徹底的に主人公の思考を描写せず、怪しく感じるように描写する。

ここで最低限描写するのは ・なんでもない住宅街の一軒の家。物陰から平和に暮らしている一家を見つめている。 ・怪しげな研究施設。人型の何かが筒状のカプセルに浮かんでいる……。 ・大きな西洋風の家。勝手知ったる、とでも言うような行動をさせる。

の三つ。上げた順番で描写する。

 

・明かされる真実と懺悔、そして最初からあった狂気

ここは実はすでに書いていたのでSS調で書く事に。

上記にある「怪しい主人公」の西洋風の家に居る所からの描写。

 

 

 

――夜の帳は既に下り、彼方に見える水平線は凪いでいる。

家を取り囲む木々は揺れず、ただ静寂が包んでいる。

ただ、僕は"あの日から何も変わっていない、僕の部屋"で、窓から見える水平線を見つめていた。

 

……唐突に。

一台の車の音が遠くより近づき、そして家の前で止まった。

一人分の生活音が響く、一人分の足音が響く。

その足音はやがて僕の部屋へと近づき……扉が、開かれた。

 

「やあ。

久しぶり、ですかね、お爺様」

 

僕は……いや、土御門 暁は、自分の祖父にそう問いかけた。

 

「……帰っておった、のか」

 

元帥としての厳格な風格ではなく、祖父としての柔らかい表情で五右衛門は漏らす。

 

「そうだ……そうだな、良く帰った。

腹が空いたろう、晩飯でも作ろうか。

ちょうど良い物が「いいえ、それには及びません。土御門五右衛門」……そうか。そう、か」

 

土御門五右衛門は……祖父は悟ったろう。

何のために来たのか、何を問われるのか。

 

「……どこまで、気づいた?」

 

「さて。

艦娘と"土御門"の関係、と言えば良いでしょうか?

……大体は、分かっていると思います」

 

「確認、か。

……分かった、全てを話そう」

 

「元凶はこの儂だ。

全ては日本と古巣の……かつて日本海軍と呼ばれ、自衛隊へと移り変わり、そしてまた日本海軍と呼ばれるようになった所の為だ」

 

「人を相手取れば、必ず恨みを買う。

だが軍が人から守る為に相手取るのは押しなべて人だ。

それも世界情勢などで敵だったものが味方になったり、味方だったものを敵にしなければならなくもなる。

……そうとも、儂は平和の為に戦うというただの面目を、本当にしたかった。

故に、人ならざる人の敵を……深海棲艦を作った」

 

「否、作ったというのは少し違うな……そういうシステム、だろう。

ありとあらゆる呪法を調べ、科学と融合させ、人間という種族の息の根を止めず、しかし人の生活には致命的になる物を作った。

そして、その敵に向けるべき矛となる存在のシステムも、だ。

……まさか、他ならぬお前が見つけ出すとは、思わなんだが」

 

「そしてシステムを作り上げて、欲が出た。

艦娘は不死身だ、呪いより生まれ出でた存在に寿命など無い。

いつまでも健康で、怪我をしてもすぐに治せる。

だから……だから、"お前を艦娘にしてやろうと考えた"。

そして、お前は逃げた」

 

そう、だから僕は提督になる事を諦めていた。

"僕が逃げたせいで、艦娘が誕生しなかったのだと思っていたから"。

でも、僕は艦娘ではなく、提督になりたかった。

絶対に。

 

だけど、それは取り越し苦労だった。

 

「……言葉にしてしまえば、短い物だな。

……後、何か聞きたい事はあるか」

 

「ええ、三つ。

まあ、これは確認も兼ねてですが。

一つ目……"深海棲艦の停止キーは、ありますか?"」

 

「……ある」

 

「では二つ目。

それを、いつ、どういう時に起動するつもりですか?」

 

「……いずれ……いずれ、人同士が争わなくなるほどに、深海棲艦によって人間同士の関係性が改善された時、秘密裏に起動させる。

時間はかかるだろうが……ともすれば、お前ならば、簡単にやってのけるやもしれんな」

 

「……最後です。

停止キーの存在を知っている者は、外に居ますか?」

 

「……いいや、居ない。

恐らく真実にたどり着いたのは、お前くらいだろう。

いや、辿り着く者は居るやもしれんが……"あれが現存している事を知る者は、最早儂一人だ"」

 

「そうですか」

 

炸裂音、四つ。

 

土御門五右衛門の四肢を、僕が放った銃弾は的確に破壊する。

 

「……儂が憎いか」

 

「いいえ」

 

「……機など見ずに、今すぐに平和が欲しいのか?」

 

「いいえ」

 

「……"あれ"を独り占めにし、地位や権力を得たいのか?」

 

「いいえ」

 

「では何故」

 

炸裂音。

 

まるで五芒星を描くように、四肢と頭部に弾痕を残した土御門五右衛門は絶命した。

 

「簡単な話ですよ。

僕は提督になりたかった。

それだけです」

 

「……一つだけ。

一つだけ、謝罪を。

僕は、ついに最後まで……あなたを祖父だと思う事が、出来なかった」

 

 

 

号外! 土御門五右衛門元帥、殺害される! 艦船派による物か!?

 

号外の新聞が、青空を舞っていた。

 

 

 

・終戦の鍵と、転移者と、転生者と。

これも文章は出来ていました。

 

 

 

土御門五右衛門の所有するある邸宅。

その書斎兼物置に僕は居た。

 

立ち並ぶ本棚を縫いながら物品を物色し、目的の物を見つける。

同時に書斎の扉が開かれた。

目的の物を小脇に抱えながら、僕は声をかける。

 

「……奇遇だね、面太郎」

 

「こちらこそ、と言った所か?

……やっぱり、お前も気づいてたんだな。

深海棲艦との戦いを終わらせられるかもしれない、それに」

 

「かもしれない、じゃなくて、終わらせられるんだよこれは」

 

僕は傍らに抱えたそれをレコードに掛ける。

 

『朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ……』

 

深海棲艦とは、オカルトの存在である。

恨みつらみを利用して、尽きぬ物量を実現させている。

それだけではない、現代兵器への耐性はそこにも起因している。

 

ある意味では、単純なロジックなのだ。

怪異物語にある怪異への対処法のように、正解にさえ答えれられるなら、あっけなく対処できる。

 

それこそが深海棲艦の対極である艦娘と。

 

"元となった第二次世界大戦の終わりを告げた玉音放送、そのレコードの原板だ"。

 

「良かった、ちゃんと鳴るんだな!

……じゃあ行こうぜ、全てを終わらせよう」

 

「終わらせる?

……馬鹿な事を言っちゃいけない」

 

炸裂音、快音。

 

「……何の、つもりなんだ」

 

炸裂音、炸裂音、炸裂音。

快音、快音、快音。

 

「……四発、全て切るとか。

君は一体何なんだ?」

 

炸裂音、炸裂音。

快音、快音。

 

物陰に隠れ、弾切れになった拳銃をリロードする。

面太郎も恐らくは刃こぼれして使い物にならなくなった軍刀を投げ捨てたのであろう音が響き、拳銃の安全装置を解除する音が聞こえる。

 

「何のつもりなんだと聞いている!

お前は……お前は、戦いを終わらせたくはないのか!

艦娘が大事じゃないのか!?」

 

「艦娘は大事だよ。

前世の時のように、命に掛けても沈めるつもりはない。

君こそ、艦娘が大事ではないのかい?

深海棲艦という理由がなくなった艦娘が、社会的に受け入れられるか。

分が悪い賭け、ではないかな?」

 

「……そうかも、知れない」

 

「朝潮かい?

言っていたものな、彼女に平和な日常を送らせてやりたいって。

でもそれは退役制度を使えば叶う話だ」

 

「それじゃあ駄目なんだ!

……俺も、前同じ事を言ったんだ。

だけど、退役しない、って。

なんでかって聞いたよ。

……戦友や俺を"見捨てて"、私だけ平和を貰っても嬉しくないって。

みんな……みんな一緒に、平和に生きたいんだって!

確かにお前の言う通りだ、人は艦娘達に恐怖するかもしれない。

それでも、俺は皆を守って見せる!

だからァっ!」

 

僕と面太郎が同時に躍り出る。

 

「え?」

 

炸裂音、一つ。

 

僕の放った銃弾は面太郎の臓腑を射抜き。

 

驚愕の表情を湛えたまま、面太郎は"僕の膨らんだ乳房"を最後に視界に入れて、即死しただろう。

 

「悪いな。

僕は……俺はそういう奇麗な理由じゃあないんだよ」

 

 

『……堪え難きを耐え、忍び難きを忍び……』

 

 

その日、土御門五右衛門の所有していた一つの邸宅が燃えた。

中の物は全て灰と化し、見つかった一人の遺体も誰だか分からないほどに焼けていた。

 

それと同時期、池 面太郎中佐が行方不明となった。

捜索しようにも、まるで彼は突然この世界に沸いて出たかの如く、過去の経歴も身体データも何も無かった。

故に捜索は早々に打ち切りとなった。

不幸中の幸いと言うべきか、面太郎中佐とは竹馬の友であったかの最初の提督が尽力し、彼の艦娘達は不自由なく各々が望む道を歩む事が出来たという。

 

 

 

・エピローグ

これもまた既に書いていました。……というよりも、このエンディングになるように書いていた、とでも言いましょうか。

 

 

 

月が綺麗だった。

防波堤で、ぼんやりと月を見ていた。

 

 

「……提督、夜おっそーい」

 

「……島風こそ」

 

 

少しの間、沈黙が辺りを包む。

 

 

「……ねぇ、提督。

何があったか、聞かせて」

 

「……いや、別に何も「提督」」

 

「……提督。

今だけ、今だけで良いから。

嘘の嘘、付こうとしないで。

全部、隠そうとしないで。

……一人で、抱えようとしないで……」

 

「……うん」

 

「……なあ、島風。

前世って、信じる?」

 

「信じるよ。

だって、私にもあるもの」

 

「……そうだったな、そうだった。

……俺には前世の記憶があってさ、その世界では艦これってゲームがあった。

丁度、島風とか色んな艦娘が出てきてさ、提督になって色々管理するんだ」

 

「そうなんだ。

……ねぇ、私はそれだとどうだった? 強かった?」

 

「ああ、強いとも。 困った時はいつも頼ってた」

 

「なら良い!」

 

「良いのかー。

……まあ、それでな。

俺は、気が付いたらおぎゃあ、おぎゃあって泣いてた。

ああ、とても怖かった。

土地も歴史も、ほんの少しだけ自分の知るものと違ってて。

間違いなく腹を痛めて生んだのであろう母親にも父親にも全く見覚えが無くて。

男だったのに、女になってて。

……体裁だけ取り繕いはしていたけれど、半狂乱だった。

いや、狂ってるのかもな、今も」

 

「それで、この体の祖父が深海棲艦を作り出して、俺を艦娘にしようとしてたんだ。

俺は逃げた。怖かったから逃げたんだが、それ以上に希望が芽生えてた。 執着と言ってもいい。

提督だ。 俺は提督になりたかった。

提督に、艦娘の提督にさえなれば、それだけは俺と一致する。

この体じゃない、前世の俺が消えない気がした」

 

「……なあ、知ってるか?

深海棲艦を停止させる為の物、有ったんだぜ。そして俺はそれをぶっ壊したんだ。

元帥を殺したのも俺だ。

面太郎を殺したのも……俺だ。

全部、提督で居続けたくて、やったんだ」

 

「俺は……俺は、狂ってるんだよ」

 

「……それで、全部?」

 

「ああ……全部だ」

 

 

俺は目を瞑っていた。

裁かれると思っていた。

 

背中が暖かくなった。

良い匂いがした。

 

抱きしめられていた。

 

 

「……なん、で……?」

 

「……私ね、今の話を聞いても、正直ピンと来なかった。

提督がやった事でどうなるか、色々考えたんだけれど。

うん、私達はずっと戦い続ける事になる。

もし提督のやった事が露見したら、私達も良い扱いはされないのかもね。

……でも、それでも、怒りとか、恨みとか、そういうのは沸いてこないんだ。

私が思い出すのは、提督と一緒にいた時間なんだ。

ねぇ、提督。

私、最初に会った時、提督と一緒に海を走るの、楽しかったよ。

一緒に色々悩んだり、試行錯誤するの楽しかったよ。

心配してくれた時は嬉しかったし、提督がすべて終わらせて帰って来た時からずっと心配だったよ」

 

「多分ね、私、提督の事が好きなんだ。

最初に会った時から、今まで。

ずっと、ずっと」

 

「俺も、俺も……ずっと、好きだったよ。

最初に会った時から知っていたよ。

ずっと、ずっと死のうと思ってて、でもいつか会えるかもって、ずっと」

 

「……ねぇ、私、提督がやった事、全部覚えておくよ。

提督がやった事は、とても悪い事だけど。

でも、誰にも言わないよ。

だから……この罪は二人の物」

 

「……俺は、俺に勿体無いくらい、いい艦娘を持ったんだなぁ」

 

「何、今更気づいたの? おっそーい!

……提督、頑張ったね」

 

 

頭を抱えて撫でてくれるその手が、とても優しくて。

初めて、俺は泣いたように思う。

 

 

 

「……これより、横須賀鎮守府の開庁を祝し、初代提督よりの訓示がある! 心して聞くように!」

 

「あー、あー、マイクテスト、マイクテスト。

……まずはおめでとう。 君たちこそが、この新しく開かれる鎮守府に所属する初めての提督になる。

そして、人類の防人たる、艦娘を管理する先駆けでもある。

……まだまだ、艦娘については謎が多い。 そしてそれ以上にその扱いも定まっていない事ばかりだ。

だから、艦娘との付き合い方は、自ずと君達を礎にして決まって良く事だろう」

 

「考え方はそれぞれだろう。

ただの兵器として扱おうとしている提督も居るかもしれない。

あるいはただの女性として扱うつもりの提督も居る事だろう。

どちらとも決められない提督もまた、多い事だろう。

――好きにしなさい。

確かに僕は君達の先達だが、強制するつもりはない。

上の人間から言われた事だから、ではなく。

君達自身が、自身の眼で艦娘の事を知り、そして判断すると良い。

中には、女性のように扱うつもりだったが兵器として扱うようになる者も居る事だろう。

逆に兵器として扱っていたが、女性として扱おうとする者も出るだろう。

どちらでも良い。

そうして、艦娘について理解を深めていって欲しい。

艦娘は、これから人類と長く付き合っていくパートナーなのだから。

……長くなったけれど、最後に一言だけ言って締めさせてもらう」

 

「鎮守府を、作ろう」


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