雪ノ下陽乃が、よく眠れますように   作:my茸

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ちょっと書いてみたくなって書いちゃいました。
ヒロインをいろはにするか陽乃さんにするかどうかでギリギリまで悩みました。
亀更新ですが、どうか楽しんでもらえればな、と思います。



prologue/0話/再会

高校を卒業した後、俺は故郷である千葉から離れ、北海道にあるとある大学へと進学した。

俺は現在、その大学の研究チームに所属している。

俺が愛する千葉を離れたことには理由があるのだが、それを人に言いふらす趣味は無いので今の所は割愛させてもらう。

…あ、そもそもそんな事話すような友達も知り合いもいなかったわ。

まあそんな訳で大学でも安定のぼっちである俺は、当然留年などするはずもなく、そのまますんなりと大学院へと進み、研究室へと入った。

大学お約束の恋愛騒動は当然、ない。

つまりオカルト研究部に入ってこよみちゃんとホーンテッドなキャンパスラブコメをする事も当然なく、ただ研究をして、古びたアパートに帰って、アニメを見て、大学へ行って、研究をして、帰る。

その繰り返しの日々だ。

 

そんな中、ゲスト研究員が千葉からやって来ると聞いた。

しかも噂で聞く限り相当の美人だそうだ。

まあ、研究室でも最低限の会話しかせず、ぼっちを貫ぬいているこの俺にはあまり関係の無い話だろう。

この時の俺は、そう思っていた。

 

そうして、ゲスト研究員がやって来る日になった。

その人物は、研究室の全員と教授に、お土産の千葉ミルフィーユと、何故かMAXコーヒーをくれた。

マッ缶を持ってくるとは。

流石は千葉県民、分かってるな。

珍しく仲良くなれそうだ。

そのセンスある千葉県民のゲスト研究員を見る。

視界で、艶のあるセミロングの黒髪が揺れた。

 

「…ありゃ?比企谷くんだ?」

 

 

♢♢♢

 

簡潔に言おう。

…ゲスト研究員として千葉から魔王がやってきた。

間違えた。あねのんこと雪ノ下陽乃がやってきた。

彼女はこの春、雪ノ下宅という名の魔界から出ると、我が愛しのカントリー千葉から、ライト兄弟が発明した人類の翼、立体機動…じゃない飛行機に乗って飛び立ち、東北の山々を飛び越えて新千歳空港へと降り立ったのだ。

そして──

 

「…比企谷くん?…話聞いてる?」

 

「…ちゃんと聞いてますよ」

 

現在俺は、陽乃さんと大衆居酒屋に居る。

2人だけで。もう一度言っておく。2人だけで。

……どうしてこうなった。

落ち着け、深呼吸だ。ヒッヒッフー。

 

「ぷぷっ!落ち着きなよ比企谷くん、それラマーズ法だよ」

 

し、知ってるし!わざとだし‼︎

 

「誰の所為だと思ってるんですか」

 

うわぁこの人楽しそうだなーと思いながら責める様に目を向ける。

もちろんそんな視線をしてもこの人には効かないってことは知ってる。

でもね、八幡はそういう素振りをキチンと見せることが大事だと思うの。日本の政治家にも見習ってほしいレベル。

…まあこの人には無意味だけど。

 

「つれないなー。私は愛しの比企谷くんと2人で飲みたいなぁーって言っただけだよ?」

 

「そうですね、言いましたね。よりによって歓迎会の最中に」

 

しかも一言一句違わずにそのセリフを。

独身男性陣からの視線が辛かったです。まる。

明日のこと考えると今から頭痛い…。

 

「まぁまぁ、今はそんなこと置いといてさ、おねーさんに積もる話とか無いの?」

 

「無いすね。じゃあ俺はコレで失れいたたたたた‼︎」

 

何コレ⁉︎腕ってこんな方向に曲がるのん⁉︎

 

「あるよね?」

 

ニコニコしてるのに眼だけが一切笑ってない…

ふえぇ…この人怖いよぅ…。

 

「わか、わかりました!わかったので離して下さい!」

 

「よろしい」

 

お許しの言葉と共に腕が解放される。

 

「べ、別に俺の大学生活なんて面白いことなんか無いですよ、布団と俺のラブストーリー聞きたいですか?」

 

噛んだ…恥ずかしい。

 

「田山花袋じゃないんだから…つまんないなー」

 

「や、さすがに本とか書いたりしないっすよ…」

 

俺には彼の文豪の様に自分の性癖曝け出すなんて羞恥プレイは無理だ。

現代であんな話書いたら黒歴史じゃ済まないだろ…

お巡りさんコイツです!なんて御免です!

ぶーぶーと文句を言う陽乃さんを無視して梅酒の入ったコップを傾ける。

い、言っておくが照れ隠しじゃないからな!

 

「そういえば、北海道って大晦日にクマが玄関にアラマキジャケ置いてってくれるんだって?」

 

唐突に陽乃さんが話しかけてくる。

…と言うか…なにそれ。

 

「…いや、なんすかそれ。初耳ですよ。少なくとも俺のとこには来てないですね。そのクマ兵十にでも撃たれたんじゃないですか?」

 

「あはっ!ごんぎつねだね?その返しは嫌いじゃないけど兵中も同じ間違いはしないんじゃないかな?」

 

「そっすか、まあ俺は要らないですけど」

 

例えシャケをくれるとしても俺は会いたくない。

本州のツキノワグマなら兎も角、北海道(こっち)はヒグマだからな。

シャケの代わりにタマ取られたんじゃ割に合わない。

 

「代わりに美人のおねーさんがやって来てあげたよ?あっ、これ陽乃的にポイント高い?」

 

「ヒグマの方がマシですね。あと小町の真似はやめて下さい。俺がホームシックになったらどうするんですか」

いつも思うんだけどその謎のポイント制度なんなの?貯めると何か貰えるの?

 

「うわぁ…相変わらずのシスコンだねぇ」

 

その苦笑した表情に違和感を覚える。

 

「…どうかしたんですか?」

 

「…何がかな?」

 

が、その違和感も一瞬で、すぐにいつも通りの強化外骨格が装着される。

まあ聞かれたくない内容なら無理に聞く必要もないだろう。

 

「いえ、俺の勘違いみたいですね」

 

「…うん。そうだよ」

 

何故か、そう答えた時の彼女の表情が頭にこびり付いて離れなかった。




陽乃さんが一番好きなキャラなのに書くのは一番難しい気がする…
口調に違和感があれば是非教えてください。

感想、まってまーす!

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