雪ノ下陽乃が、よく眠れますように   作:my茸

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お久しぶりです。

本当に長らくお待たせしました。
コメント返信できなかった方すいません。
無い時間の合間を縫って何とか書きましたが、あまり長くは…ないですね…
今回はいろはす回です。

陽乃さんいねえじゃねえかこの野郎!って方、俺が言いてえわ畜生!でもいろはす可愛いだろ可愛いは正義だろ!いろはすのいろはすをいろはすしたいだろ!みんな思ってるだろ知ってんだぞ!!
と言うわけで、どうかご勘弁。


4話/もう一つの再会

ところで、春にはいろんなことが始まる。

千葉のカマクラは安楽地(コタツ)を離れ、冬眠から目覚めたチーバくんは大きな伸びをし、魔王も千葉からやって来るし、村人Aは犠牲になる。

 

あの後輩と再会したのは、そういうことが関係しているのかもしれないし、全然関係ないかもしれない。

 

 

…………関係ないな。あってたまるか。

 

♢♢♢

 

とにかく、魔王と遭遇する少し前、春休みの俺は札幌市某店で小悪魔に出会った。

北海道というこの地にやって来てはや四年。

一年の時から始めたバイトは、意外にも続いている。

敢えて大手を避けて地元チェーンにしたのが良かったのかもしれない。

 

しかし、まあ、アレだ。

四年もバイトを続けていたからか、気付いたら店長から他のバイトの指導的な立場にされていた。

 

ふざけんな、それ俺の仕事じゃねぇよ!

…とは思いつつも通帳の数字が増えているのを見ると断れない。

 

あゝ哀しきかな、これも人間の性だ。

 

 

「ヘイ比企谷クン、今日から新しい子入るからヨロシク!」

 

 

「何ですかそのテンション。やめて下さい辞めますよ」

 

「斬新な脅しだねぇ…いや、すまないね、新人のバイトの子の面倒、見てもらえるかな。給料には反映しとくから」

 

 

これが店長。コレが……

 

いや、不満な訳じゃない。不安なだけ。

労働を給料にちゃんと反映してくれるあたりいい人ではある。

ただこの人と話してると俺の堪忍袋にダメージがな。

 

「…時給+150円で手を打ちましょう」

 

「乗った!…よし、じゃあ紹介するよ。こちらが新しく入った一色さん、一色いろはさんだ」

 

 

…割に合わねぇ。

 

♢♢♢

 

店長に連れられてスタッフルームに入ってきた新人は、おかしな敬語を俺に使った。

 

 

「これからお世話になってあげます、一色いろはです」

 

 

新人バイトは一色いろはと名乗った。

 

 

よろしく(・・・・)お願いします」

 

 

一色は最後に『よろしく』というところにアクセントをつけて言う。

 

逃がしませんよ、という言葉が瞬間脳裏に張り付いた気がする。

いろはすこわい。

 

 

「…比企谷と申します」

 

 

比企谷と名乗ったその男は、挙動が全体的に不審な感じで、過剰にへり下るような態度を取った。

敬語とか新人の小悪魔系後輩バイトとか、もっと言うと社会そのものを苦手としているような男の姿が其処にはあった。

 

…っていうか、俺だった。

 

 

「うわっ…どうしたんですかなんで敬語なんですかもしかして本州からわざわざ先輩を追っかけてきた健気な美少女にときめいて動揺しちゃったんですかもっと男らしくやり直して下さいごめんなさい」

 

「久しぶりに聞いたなそれ…」

 

 

久々だというのに容赦がない後輩だ。別にダメージなんてないけど。……ほろり。

 

いやこれは涙じゃない。流した数だけ強くなれないから。

坂井さんも言ってるだろ。

それは兎も角…アスファルトに咲いてる花って、大抵雑草なんだよなぁ…。

そのセイヨウタンポポ率は異常。

 

 

♢♢♢

 

意外にも、一色は真面目に仕事をした。

 

時間5分前には準備を終え、素早くレジを打ち、イレギュラーな客にも愛想よく対応した。

 

…いや、意外でもないか。一色はあの頃と同じように一色らしく仕事をこなした。

それだけだ。

一色は休憩時間になると、わざわざ人の少ない倉庫の方にある俺のレストプレイス(ベストではない。何故なら段ボールが所狭しと置いてある)へやってきた。

 

しかし、特に話しかけて来ることはなかった。

 

時折話しかけようというそぶりは見せるものの、すぐに口を噤んで俺の隣に座るだけ。

 

……アッちょっと一色さん近いです、あ──っ!困ります一色さん困ります!!あ──っ!!

 

 

♢♢♢

 

そして時は流れ、春休み終了3日前からはぐーたらする為に休みを入れている俺が(フルタイムで)出勤する最後の日、一色はいつものように俺の隣に座り込むと、不意に口を開いた。

 

 

「先輩。先輩の名前ってなんていうんでしたっけ」

 

「……は?」

 

 

正直、今日は何か言って来るのではないかとは思ってはいた。

だが忘れていた。

 

一色(こいつ)が俺の推測なんぞ超えて来ることは明確で、明晰で、明瞭で、明白だという、そんな簡単な事を。

 

こいつは他の誰でもない一色いろはなのだ。

 

 

「…比企谷だよ。忘れたのかよ。病院行くか?」

 

 

若年性健忘症こわい。

 

 

「いやいや、先輩、ちゃんと私の話聞いてます?名前ですよ。な、ま、え!」

 

 

一色はため息をつきながら人差し指を左右に振る。

 

俺の堪忍袋が小破。

…頭にきました。

 

一色は続けて言う。

 

 

「因みにですね、私は"いろは"って言うんです」

 

 

うんうんそうか。

 

 

「言ってみろよ。わざわざ事前申告しなくていいから」

 

 

おかしな奴だな。

 

 

「いろは〜っ!って違います!馬鹿なんですか先輩は馬鹿ですね!」

 

疑問系かと思ったら断定だった。

全くこれだから先輩は、と、

 

 

「先輩の下の名前ですよ下の!」

 

 

…ああ。いや、そうだろうとは思ってたけ

 

ど。

 

 

「八幡だよ…お前忘れたのか?」

 

 

「まさか、忘れるわけないじゃないですか」

 

…即答だった。しかも真顔で言い放った。

いや、なら何故聞いた!!

 

 

「『いや、なら何故聞いた!』みたいな顔してますね、は・ち・ま・ん」

 

幻聴だろうか、「ん」の後にハートが付いていたような気がする。

 

 

「やめろ一色、鳥肌立った。いやお前熱でもあるのか?本当に病院行くか?」

 

 

 

 

 

 

「私は、いろはですよ」

 

 

彼女は笑ってそれだけ言った。

 

 

 




読了ありがとうございます。

次の陽乃さん回でまたお会いしましょう!

※ご指摘ありがとうございます。改行修正しました。
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