会議でやらかしたヨシノンは元帥に呼び出されてピンチに、しかしそこで待ち受けていたのは関東炊きの熱き洗礼という、そんな救えない結末であった。
それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。
2018/05/21
誤字脱字修正反映致しました。
ご指摘頂きましたリア10爆発46様、K2様、有難う御座います、大変助かりました。
大本営施設群と横須賀鎮守府が入る横須賀海軍施設。
そこは様々な施設を共有する為他拠点よりも一つ一つの施設が大型化された拠点であった。
戦時徴発によって周囲の土地は軍管轄の物として再整備され、今も残されている三笠公園より北側にせり出した部分全ては横須賀鎮守府管轄、そこから湾を挟み旧海上自衛隊艦隊司令部があった辺りの一帯は大本営施設群が設置されている。
そして対岸にある富津岬周辺も海軍が管轄する事により、東京湾に至る海路を蓋をする形で東京湾に至る航路は軍が掌握、首都周辺海域は強固に防衛される状態になっていた。
また逗子以南の三浦半島は軍が再編成されてから以降、深海棲艦からの脅威を理由に住民の殆どが首都圏へ疎開、現在は一部民間の管轄する工場や生産プラントが点在するものの、海、又は陸が管轄する施設や拠点が殆どを占めるエリアとなっている。
嘗ては相当な数の人が住んでいたその半島は、首都の盾となる位置で海に突き出した形に位置していた為、深海棲艦へ対する力が日本に無かった当時は相当な犠牲者を出し、また疎開先の首都圏も人的被害が多かった為、人口が東京近郊へ密集しても特に問題にならない形で住環境は収まっていた。
故に戦乱がある程度落ち着いた現在にあって、疎開した人達がそのまま定住しても首都圏は問題が無い程の人口密度にあり、また当時の恐怖からか、周りを海に囲まれたこの半島付近へ戻ってくる者は殆ど居らず、結局は三浦半島=軍の本拠地という認識で今は存在していた。
その半島の根元にある大本営施設群は、元々の宅地周辺も一旦更地にして基地機能を配置してはいたが、元々あった丘や森林の一部は残された状態にあり、適度に緑に囲まれた、また一般人が周囲に居ないため割と静かなエリアとなっていた。
そんな大本営北側第三駐車場。
主に軍関係の要人が利用する事を想定した割と警備が厳重な一角には、大坂鎮守府所属、移動要塞「KOS-MOS」が停車されており、諸々の用件を済ませた髭眼帯一団が車両に乗り込む処であった。
先頭に神通、そこから天草と続き、榛名と時雨が髭眼帯の左右に就く、そして雪風と夕張が後ろにという形で其々は駐車場を横切っていた。
普段は割りと和気藹々が常の大坂鎮守府の関係者であったが、何故かこの時は無口……と言うよりは、張り詰めた空気が漂う状態で移動している。
「あきつ丸君、周囲の様子はどう?」
『ぱっと見特に何も無い様に見えるでありますが、大っぴらに電探を使用する事は出来ないでありますし、臭いポイントも多過ぎて正直嫌な事この上ない場所であります』
「まぁそうだろうねぇ、ここ周辺で使用許可が出てる電波帯って正直ちょっとした装備で聞けちゃう感じだったりするし、本来移動車両は施設棟に横付けするモンだから」
『この車両ではそれは難しいでありますよ……』
侵入者対策の為に敢えて出入り部分のみを強固に、そして内部が複雑化したその駐車場は、軍用車両辺りならまだ建屋に車両が横付けが可能な状態にあったが、流石に観光バス染みたボディのKOS-MOSでは奥までの侵入が難しい。
そんな色々とアレな事情に苦笑いしつつ、トコトコと移動する一団であったが、丁度KOS-MOSが見えてきた辺りで突然左側を歩いていた榛名が髭眼帯に背中を預ける様に立ち止まり、右手を横に振り上げた。
瞬時に他の者はその場へしゃがみ、時雨、神通はハカセと髭眼帯の隣で其々を庇う様に身を寄せる。
そのまま変らず立ったままの榛名。
右手は真横に振り出したままであったが、左手は何かを掴む形で顔の前にあり、握られたそこからは血の筋が垂れていた。
「北北西……距離480」
『旧浜見台、ポイント参番』
榛名が測距した呟きに反応し、あきつ丸が瞬時に周辺位置の特定を終え報告を返す。
瞬時に時雨と神通が駆け出し、同時に榛名が吉野と天草を脇に抱えてKOS-MOSへと駆け込んだ。
流れる様な動きと、凄まじい速さで車内に放り込まれた髭眼帯は投げ出される様に椅子へシュートされ、天地逆さま状態でそこへセットされてしまう。
「榛名も出撃しますっ!」
「んぉぉぉって待ったぁっ!」
外へ飛び出そうとしていた榛名に髭眼帯が待ったを掛ける。
そしてその言葉に振り向いた榛名からは、ポワポワした平時からは想像が付かない程に冷たい殺気が向けられる。
普通の者ならそんな殺気を当てられたなら身を固くし動けなくなっていただろう、しかし髭眼帯は慣れているのか、それともやせ我慢しているのだろうか、割とのほほんとした表情で苦笑を浮かべつつも、己の左手を榛名へ見える様に上げ、右手の人差し指でチョンチョンとつつく仕草を見せる。
未だ殺気がダダ漏れながらも榛名はその仕草に眉根を寄せ、次いで自身の握られたままの左手に視線を落とす。
そこからは未だ出血が止まらず、床にポタポタと血が滴っている。
「夕張君ファースト・エイド・キット出して、榛名君もほら、こっちに座るっ」
「はいはーい、えっと救急箱救急箱!」
慌しく奥へ駆け出す夕張、その脇では強引に髭眼帯が榛名を引っ張って椅子に座らせる。
「ほら手開いて、ぅーわ、結構やっちゃってるねぇ、はいはい握ってる弾はこっち、救急箱来るまでタオル握ってほら!」
「艦娘に傷を与えるって事は特殊弾かい? へぇ? コイツは貰っておくよ? 後で分析結果は知らせてやるからさ」
「いやそれはいいからハカセ治療してあげて!? 何で提督が率先してメディックしてるの!?」
「いやお前だって応急処置くらい出来んだろ?」
「それでいいの本職!? てか堂々と職務放棄はどうかと思うんですけど!?」
「私ゃ研究者だバーカバーカ」
血で汚れる事も厭わず世話を焼き、ハカセにいつもと変らぬツッコミを入れる髭眼帯を見た榛名は毒気が抜かれ、思わず吹き出してしまった。
一歩間違っていれば死んでいてもおかしくは無いという場、更には無意識とはいえ本気の殺気を向けたにも関わらず飄々とし、あまつさえ自身の治療を率先して行いつつも、何事も無かったかの如く漫才染みた会話をする男を目の前にして。
「提督は優しいのですね。榛名にまで気を遣ってくれて」
もう何度目になるかも判らない、割と頻繁に口にする言葉を漏らしつつも榛名は満面の笑顔を浮かべるのであった。
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「取り敢えず身柄は憲兵隊に預ける事になりますね、襲撃は海軍施設へ向けてですが、狙撃位置は外部ですし」
「て言うか提督が事前に臭い位置をリスト化してなかったら、
「寧ろ海軍の総本山だっつーのに、脇が甘過ぎやしないかい? ええ?」
「徴発して軍用地として運用はしていますが、周囲は返還する事も考慮した土地運用が義務付けられていますし現状はどうにもなりません」
「あーあー出たよ、市民団体とやらに芋引くお役所仕事、ホント軍ってのはヘンなトコで弱腰ってのは昔から変ってないねぇ」
「あ……あの、その……えっと、ちょっとイイデスカ?」
襲撃のすったもんだが過ぎ、四時間程が経ったKOS-MOS車内。
その中央ではシートを車座の位置に移動し、テーブルを囲む状態で其々は座り、数名の者がギャンギャンと話す場が出来上がっていた。
結局あの後あきつ丸が通報した後先行する時雨と神通のバックアップに就き、三人編成で襲撃者の追跡に出た。
結果として通報を受けた軍部と憲兵隊は一帯を封鎖、また包囲が完全に完了する前に狙撃手と観測手の二人が大坂鎮守府の三人に捕らえられる事になり、騒動は一旦終息するに至る。
この間僅か30分、その結果は設立後まだ一ヶ月にも満たない大坂鎮守府の特務課の、それも最小規模のチームが殆どした事とあって、後日この話は多方面へ伝わる事になり、軍内での大坂鎮守府へ対する評価が改められる事となっていくのであった。
というのは別の話として現在、大本営施設へ向けての襲撃という事と、狙われたのが将官という事もあり未だ厳戒態勢が解かれておらず、また関係各所からの聞き取り調査が漸く終わった髭眼帯たちはKOS-MOSへと戻ってきたが、未だ敷地から出る許可待ちの状態にあった。
憮然とした表情で肘を付き、トントンと苛立たし気にテーブルを指でつつくハカセ、その対面には諸々の伝達と受け答えを続ける吹雪。
現状の取り纏めと分析を口にしつつ、茶を啜るあきつ丸に、いつ着替えたのだろうかいつものメイド服に身を包んだ時雨と、何故か球磨が着用しているのと同じ意匠でありながら、川内型の制服と同じ配色のゴスロリメイド服を着た神通がパタパタとおさんどんの真っ最中。
運転席では夕張が周囲警戒を兼ねて待機中。
そして髭眼帯は席にシッダウンしているが、何故か榛名がガッチリ腕をホールドして同じ席にINしているという、そんな
そして表現に困るアレな配置に雨に濡れた子犬の如くプルプルしつつ、髭眼帯は空いた右手をそろそろと上げて周りの視線を一身に受ける。
「あ、ドクペおかわり? ちょっと待ってね今持ってくから」
「いや時雨君、今提督の目の前にはクソデッカイワイングラスに並々と注がれたドクペがシュワシュワてるし」
「ホットサンドでしょうか? 暫くお待ち下さいね」
「神通君もいつの間にメイド服……てかナニそのムッチャいい笑顔、いや提督あの煉獄染みたアッツィサンドこれっぽっちも所望してません」
「はいっ、榛名は大丈夫ですっ!」
「榛名君が大丈夫でもその、こう……何か席がキッツキツなんですがそれは……」
「榛名、感激ですっ!」
「いやその何と言うか榛名君は相変わらず提督の話ガン無視なのはナンデ? てかそうじゃない、そうじゃないんです……」
挙手をしたままプルプルする髭眼帯に数名は笑顔のまま小首を傾げ、車内という空間であるにも関わらずそこはいつもの大坂鎮守府的な空間が濃密に出来上がってしまっていた。
「あ、そうそう鳳翔さんが作ってくれたオカズとか冷凍してあるよ? そろそろごはんにしちゃう?」
「いいですね、そろそろ夕餉の時間になりますし、吹雪さんもご一緒に如何です?」
「そうですね、ご馳走になります」
「あの……吹雪さん?」
自然と場に溶け込んでいる大本営所属、大隅大将秘書艦に半分スルー状態になっている髭眼帯は挙手したままプルプルと語り掛ける。
その言葉に真顔で振り向き、何か用でもあるのか的な表情で吹雪はジっと髭眼帯を見る。
「……何か?」
「何かと言うか、色々報告の為に来たのは判るんですが、何時間もこんなトコに居てていいんです?」
「はい、司令の指示でここに居ますので」
「……大隅さんの?」
「えぇ、今回の件も含め、三郎さん周囲の現状を色々把握しておく必要があると言う事で、このまま私は大坂まで同行して、暫く鎮守府の現状を確認して来るよう命令を受けております」
「え、何それは?」
「『アイツ最近調子くれてるみてーだから、変な事になってないかお前見てこい』、だそうです、まぁ三郎さんは定期的に教育しなければ碌な事をしませんし、プライベート辺りとかは相変わらずなのでしょう?」
「そっち!? え!? プライベートぉ? 仕事の方じゃないの!?」
「それもついでに確認するつもりです」
超真面目な表情の吹雪に、怪訝な表情で対す髭眼帯。
軍部の一拠点を、しかも鎮守府まで任されている髭眼帯に対し、まさかママンが部屋に薄い本やアレなブックを隠していないか的に様子を見に行くと口にする吹雪。
そんな会話は、只でさえ少ない鎮守府司令長官の威厳をガラガラと崩していく。
「提督の部屋はある意味皆の共有空間になっちゃってるからね、そっち関係は武器ロッカーに隠匿されてるかな」
「相変わらずですね」
「そっち関係って何の事!? てか時雨君提督の私室が共有空間ってどういう意味!?」
「はいっ、榛名は大丈夫ですっ!」
「いやだからナニが大丈夫なの!? 割と提督ピンチな気がするんだけど!?」
驚愕の相を浮べ、身に覚えのないそっち系という事に何かあったかと思考を巡らせる髭眼帯。
そんな肩を誰かがポンと叩く。
何事かと振り向くと、そこにはオレンジなゴスロリの神通がにこやかに、しかし静かに首を左右に振る姿が見える。
「え、ナニ神通君?」
「提督もその……はい、男性ですからそういうのは仕方のない事だと思いますが、そういった事というか処理はなるべくこちらにお任せ頂けたら……」
「ちょぉっ!? すっごい誤解してない君? 違うのっ! 提督なんも隠匿してないからっ!」
「最近のオキニはスエーデンのヤツだったっけ?」
因みに時雨が言う髭眼帯のオキニとはスエーデンが生産している小銃、Ak5の事を言うのだが、日本へ輸入されるえっちい本で代表されるのもスエーデンというアレが色々と周りの誤解に拍車を掛ける。
「以前は主にドイツ系の物を好んでた筈ですが、最近はそっち系のマニアックな物も収拾し始めたのですね」
吹雪が言うのも主に銃器の話であるが、割とえっちい本ではドイツのブックも日本ではそれなりの流通量があった、そしてAk5という自動小銃は割りとニッチな部類に入る物でもあった。
「ああうん何と言うか、あの何と言うか妙に中途なサイズと言うか、地味目っぽい見た目が妙に琴線に触れると言うか」
何度も言うが、髭眼帯が言うブツは自動小銃の事である、決してえっちいブックの話とか、女体に対する評価では無い。
そんな色々な会話がされるテーブルから少し離れた位置。
運転席では暇を持て余したメロン子がスマホ片手に何やら耳をそばだて、ポチポチとやっていた。
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何故か髭眼帯の与り知らない処で性癖が決定付けられ、一部艦娘からそんな認識がされた瞬間であった。
こうして結局髭眼帯達は日付が変るまで大本営に留まる事になり、帰りは何故か神通と榛名にサンドさた形でベッドに拘束され、『ギギギギ』とうわ言を上げつつ帰路に着く事になるのであった。
誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。
また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。
それではどうか宜しくお願い致します。