吉野商事の乗っ取り首謀者との対峙、いつもの如く粛々とやるのかと思われたがその時対したのは吉野三郎ではなくキレたヨシノンであった。
それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。
2018/07/02
誤字脱字修正反映致しました。
ご指摘頂きました黒25様、リア10爆発46様、水上 風月様、K2様、蒼雄刹様、有難う御座います、大変助かりました。
少し肌寒い風が吹く西蘭島。
針葉樹林が広がる中で建造物の予定地となる部分が伐採され、各所を幅4m程の石畳で繋ぎ、森の中にそれらが点在する形になっている泊地。
予定外の事が重なり未だ施設の整備が整わず、所属の者達は出来る事を進めていた。
未だ慌しい日々を過ごす髭眼帯。
彼は今
門の程近く、左を見れば手作り感満載の茶屋と言うか何と言うか、形容のし難い木造箱型の建造物があり、入り口の上には『陽炎茶屋』という看板が風に吹かれてカタカタ揺れていた。
右側へ続く道路(石畳)に目を向ければ、数名の艦娘達が何とも言えない表情で佇み、少し向こうから進んでくる一団に目を向けている。
先頭を歩くのは香取型二番艦の鹿島。
いつもの童貞絶対殺す的な礼服を身に纏い、手綱的な物を手にスタスタ歩いている。
それに続くのはアルパカ、西蘭島に昔から生息し、首が長くモコモコとした、現在は西蘭島牧場で飼育されているアニモーの中で一番数が多く、西蘭泊地指定の危険害獣ナンバーワンともされる獣である。
鹿島に引かれるアルパカは調教済みなのか彼女に合わせカッポカッポと歩み、背に乗せた者の事も気にせず石畳を進んでくる。
その背に乗るのは工廠課総括であるメロン子。
彼女は頭に『修復』と書かれた緑のバケツをセットされた状態にあり、全身を亀の甲羅の如き見た目になるようロープで縛り上げられてプルプルしていた。
これが西蘭泊地で新たに施行された『泊地引き回しの刑』の始まりであった。
「……あの、鹿島君?」
「あ、提督さんおはようございます」
「う、うん、おはよう、てかこれは……」
「これ? ああこれですか、いえお白洲でのバケツ正座ではペナルティ効果が低くて色々調子に乗っちゃう子が増えてきてたので、ここは一つ厳しい罰が必要だという事で艦隊本部との協議の結果、試験的に処している最中なんですよ、うふっ」
「あー……そうなんだぁ、艦隊本部と相談して……へ~そっかぁ……」
メロン子と同じ程にプルプルする髭眼帯は鹿島からメロン虚無僧へ、更にアルパカから後方へ伸びるロープの先へと視線を移す。
泊地引き回しの刑と呼ばれる一行の最後尾、アルパカの後ろにはメロン虚無僧と同じく亀の甲羅ナイズされたロープワークで梱包された陽炎が、やはり頭にバケツをONされた状態でプルプルしていた。
それはアルパカにセットされてはおらず徒歩の状態であったが、余りにもアレな
「……えっと、最後尾のアレも……」
「はい、アルパカの調教がまだ進んでないそうで、取り敢えずジャンケンで勝った夕張さんをアルパカに乗せて泊地を練り歩いています」
髭眼帯は思った、恐らく移動時に於ける体力の消耗という事を考慮して勝者をアルパカにセットしているのであろうが、徒歩の速度ではその辺りは関係なく、罰のバリエーションとしてはバケツ亀甲縛りという痴態のレベルはそれ程変わらないんじゃないのだろうかと。
寧ろメロン虚無僧が身悶えつつハアハアする様は、開いてはいけない新たな扉を開こうとしているのではないのだろうかと危機感を募らせる。
「何と言うか……うん、後で寮の施設案内があるから程々にしてあげてね……」
「その辺りも計算済みですのでご安心下さいね、では」
にこやかに会釈しつつ鹿島が手綱を引くと、『エ゛~』と泣き声を上げたアルパカがカッポカッポとそれに続き、プルプルしたメロン虚無僧を背に乗せたまま亀甲縛りの陽炎型虚無僧を引き連れ、噴水をゆっくりと一周した後どこぞへとカッポカッポと消えていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「これが完成した西蘭泊地艦娘寮『
泊地引き回しの刑が処された日の午後。
名前の由来を示す様に周囲は楓の樹に囲まれ、焼き板がぐるりと敷地を囲む形で配されており、寮と呼ばれるそこは
「わぁ、ここも和風建築になっているんですねぇ」
「はい、設計は霰ちゃんが拘り抜き、島風ちゃんと妖精さんが全力で施工しまして、現在部屋数は二百室、生活に必要な共同施設や余暇を過ごす為のエリアも内包し、しかも増築しても大丈夫な様に幾つもの棟が渡り廊下で連結された形で建造されています」
「ふむ、早々人員が増える事はないと思うけど、拡張性があるのはいい事だね」
「コンセプトは
説明を聞きつつカラカラと引き戸を開け、潜った先に見えるのは、敷き詰められた玉砂利の中に三連打ちにされた万成石の飛び石が続く通路に、
正面には夕張が言う『鄙びた老舗の旅館』を思わせる玄関が見え、周りは松や楓が巧みに配されている。
中を暫く進むと飛び石が右へ分かれて続く小道があり、そこを見ればやはり和風平屋建ての建築物が見える。
そこには目立たぬよう配置された引き戸が見えていた。
「夕張君、あれは?」
「あー、あれは鳳翔さんのお店ですね、完成したのは昨日なので今はまだ準備中らしいんですけど、近日中にはオープンするらしいですよ?」
「へー、そうなんだ」
隠れ家的な見た目のそこも周りを木々で隠す形で作られており、通路からは建物の大きさが良く判らない状態になっていた。
夕張の説明に頷き一行は寮へ行こうとしたが、その時店の引き戸がカラカラと開き、
「おはようございます、寮の確認でしょうか」
「うん、完成したって聞いたから今の内にチェックしとこうかと思って」
「もう手が空いてる子達は荷物を運び込んでいるみたいですし、一両日中にそちらは整いそうですからこちらも営業を合わせる予定にしています、開店初日は無料でお料理を提供させて頂きますから提督もお越し下さいね」
「無料で鳳翔君の料理が食べられるとなると当日は混みそうだねぇ、てか大食いやザルな子達がワンサカ来そうだけど大丈夫?」
「はい、その為に今日は龍鳳ちゃんと旗風ちゃんが協力して漁と猟に出ていますので」
「……漁と猟?」
「えぇ、小型警備艇を出して貰えるとかで、龍鳳ちゃんは一航戦の二人と海へ、旗風ちゃんは瑞鶴と瑞鳳、それと葛城を連れて森に入っています」
「へ……へぇ……産地直送って言うか、全部この辺りの物で食材を用意するんだぁ」
「時雨ちゃんが居ればその辺りはお任せできるんですけど、今は治療に専念して貰いたいですしね」
今は療養中の小さな秘書艦はどれだけ狩人的な活動をしてたんだと乾いた笑いを浮べながら、鳳翔と少しだけ話した後髭眼帯達は寮へと入っていく。
間口が広く、低いあがり
「基本は土足厳禁になってまして、艦種によっては履物が大きい人が居ますから下駄箱が大型化しちゃいました」
「和風建築だとその辺りは面倒になっちゃうよねぇ」
「掃除は当番制になってますけど、廊下の大部分は皆さんが移動する手段で簡易に清掃されるので、維持的な労力は少ない形になっています」
「うん? 移動手段? 簡易に清掃?」
夕張の説明に首を捻る髭眼帯の脇では、榛名が例のブーツを脱いで下駄箱にそれを入れると、パタパタと廊下脇の小部屋へ入っていく。
何かあるのだろうかと見る髭眼帯の前では、榛名が入って行った小部屋脇の壁からピポーンピポーンと音が鳴り響き、木製の引き戸がミュイーンという和風なイメージを台無しにする音を伴い開いていく。
その辺りで髭眼帯の嫌な予感メーターがピポーンピポーンと反応し、小部屋からはあの〇グウェイ的なブツに乗った榛名が現れ、ミミミと駆動しつつ玄関まで進んでくる。
「寮は二階建ての低層建築物にした関係で奥の部屋までは移動距離がありますから、一部の子達にはマイウェーイを貸し出す事にしています」
「なにそのバッタモン臭が漂いつつも相手を煽っちゃう系な名称!?」
「このマイウェーイには某〇ンバ的な機能も内包してまして、移動すると同時に廊下のお掃除もできちゃったりするんです! さあ榛名さん、やっちゃって下さい!」
夕張のゴーサインにマイウェーイに乗った榛名は体重を掛け移動を開始。
その場でグルグルと回転したり蛇行しつつ巧みな操作を繰り返す。
そんなマイウェーイの下部からはソフトブラシとモップ的な何かがクルクル回っており、通過した後は確かに廊下の掃除が期待できるだろうというカンジは伺い知れる。
「更にこのマイウェーイ、使用する人によって艤装に搭載している武装もコンバート可能なので、泊地の地上防衛の際にも役立つ作りになっています」
「何で移動と掃除と防衛を一緒くたにしてる訳!? てか寮内の移動手段にそんなイミフな物組み込んでなにするつもり!?」
プルプルする髭眼帯の前では榛名が小ジャンプをキメ、スカートをふわりとさせつつドヤ顔で髭眼帯の前で停止する。
捲くれ上がったスカートからパンツを見せたまま。
「こういう風に使い方次第ではラッキースケベも演出可能ですので、提督の目の保養にもなるという使い道もできたりします」
「は……榛名は大丈夫です!」
「何がどう大丈夫なのかは知らないけどパンツ見せなくていいから! 寧ろラッキースケベを演出って提督目のやり場に困るからねっ!」
「提督は榛名のパンツにときめいたりしないのでしょうか……」
「いやそういう訳じゃなくてね、何と言うかその、アレだ……」
「榛名さんパンモロじゃダメです、そこはパンチラで着地の時に恥じらい的なポーズを見せるとか」
「ああ……そう言えば響ちゃんが鈴谷さんへチラリズムとか何とか教えこんでましたね、そういうのがここで生きてくるのですか、なる程」
「いや君達真顔でそういう相談をしないで貰える? 寧ろパンチラとかチラリズムとか特定のワード並べると提督の性癖とか不特定多数の人に誤解されちゃうから」
パンツを見せたままふむふむと相談する榛名と夕張に何と言ったものかと悩む髭眼帯の視界に、廊下の奥から徐々に近付いて来る何かが見えた。
それはパンツを見せている榛名が乗ってるマイウェーイと同じブツなのは何となく理解できた。
しかしそれに乗る者はハッハッハッと高笑いを上げつつ、どこかで聞いた類の音楽と共に玄関へミミミとやってくる。
「やぁ同志提督、待ったかい?」
「えっとタシュケント君達もそれに乗ってるんだ……」
パンツを見せたままで榛名が乗る白いマイウェーイとは違い、空色に彩られソビ〇トマーチを垂れ流す音響設備をセットしたマイウェーイに乗るタシュケントはニヒルに笑い、その後ろでは真紅のマイウェーイに乗って腕を組み、ドヤ顔でハッハッハッと笑うガングートというワケワカメが寮の玄関に広がっていた。
「どうした、貴様寮の様子を見に来たのだろう? 今日は非番だったから同志中くらいのと一緒に迎えにきてやったぞ、有難く思うがいい」
「え、迎えって……いや、その乗ってるアレと言うか、流れてるその曲は……」
「うん? 同志提督を迎えるのならやっぱり行進曲はソ〇エトマーチに決まってるよね、あ、それともカ〇ューシャの方が良かったのかな?」
「いや流してる曲だけじゃなくて、えと、君達もその、えっと……なんだっけ」
「マイウェーイです提督」
「そそ、そのマイウェーイってヤツ、何かえらくカスタムされてると言うか特徴的と言うか……」
「ああそれはですね、ほら、この泊地って土地だけはやたら広くて移動が大変じゃないですか、でも車とかバイクを走らせると事故とか燃料の問題もあるので、各課用に小型の電動バギーを、個人にはマイウェーイを利用して貰う事にしたんですよ」
「え、でも外からそのままコレ乗りつけたら廊下とか逆に汚れたりしない?」
「ああ、外用の物と室内用の物は別に用意してるから大丈夫です」
「外用とか室内用て……」
髭眼帯は怪訝な表情で今も赤いマーチを垂れ流すマイウェーイと言うか、共産主義的な空気を垂れ流す二人に目を向けると、ものっそ微妙な表情で頭を搔くのである。
そんな玄関から後ろ、外からはカッポカッポという明らかに蹄が石畳を叩く音が聞こえ、何事かと髭眼帯は振り返る。
「Hi Admiral、こんなトコでなにシテルの?」
振り返ったそこには午前中にも見たアニモーと言うか例のアルパカが佇んでおり、その背にはいつもの格好にテンガロンハットを被ったアイオワが跨ってニッコリと笑っていた。
「ちょっとアイオワさん、アルパカを牧場から出していいのは泊地引き回しの刑の時だけだと決まりがあったんじゃないですか?」
「ohあれはHorseだけじゃなかったノ? だから白夜丸に乗ってキタんだけど」
「いや騎乗生物は糞の処理があるので牧場以外は禁止って事になってたでしょ、て言うか夕張さんがプルプルして怯えてるじゃないですか」
「白夜丸……アルパカの名前が白夜丸て……」
「命名はサラに任せたネ、Japanじゃこういうカンジのnameが好まれるって言ってたワヨ? ほら」
アイオワはブラと言うか制服の胸部に手を突っ込むと、何やら紙を一枚ズルリと取り出し、まるで裁判結果を裁判所の前で見せるカンジの人っぽいアレ的にそれをババーンと髭眼帯達に見せ付ける。
『†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸』
「おおぅもう……ほんともぅ……」
白いアルパカに対して付ける名前がどうして黒い炎で堕天使になるのか、寧ろ†という記号は名前として用いるのはどうなのだろうかと言うかそもそも何故厨な名称になっているのか。
色々ツッコミしか無い名称に髭眼帯はプルプルし始めてしまった。
そんな髭眼帯の横をミミミとマイウェーイで通り過ぎ、ハッハッハッと豪快に笑いつつガングートが†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸の前まで進み出る。
「おいそこの資本主義のブタよ、榛名が言った様に牧場以外では動物を持ち出すのは禁止になっているぞ、さっさと戻してきたらどうだ?」
「あらアナタは確か……ガン……ガン? ガンタン〇だったカシラ?」
「ガングートだ、なんだ人の名も覚えていないとは脳みその中身が無駄に腫れあがったチチ袋に吸われてしまったのか? これだから資本主義に毒された者は御し難いな」
真紅のマイウェーイに頬杖をついたガングートは目を細め、クックックッとほくそ笑みながら†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸に跨ったアイオワを睨め付ける。
対してアイオワは眉尻を跳ね上げ睨みながら†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸の横腹を太ももで軽く叩くと、†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸は「エ゛~!」と泣き声を上げた後ペッと口から液体を吐き出した。
「ぬわっ!? 何をする貴様ってクサッ!? 何だコレは!?」
「フッフッフッ、それは†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸の秘奥義『飛影水旋殺』ネ! ホラホラ食らいなさい共産主義の犬め!」
†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸から次々と飛影水旋殺がペッペと吐き出され、それをミミミーっとマイウェーイを操り回避するガングート。
それはとても幼稚な口喧嘩が発端となった争いであったが、ペッペと吐き出される†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸の飛影水旋殺は周囲に飛び散り、辺りには嫌な臭気が立ち込め始める。
「ちょっと君達玄関先でなにやってってクサッ!? マジで臭いよコレ!?」
「提督危ないっ!? それを浴びてしまうとお風呂に数時間コース……ハッ!? これを……提督と一緒に浴びれば榛名と混浴に……」
「いや何榛名君なんで†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸のトコに突っ込もうとするの!? てか待って!? ホント待ってってクサッ!」
「ほう? 榛名も打倒資本主義戦線に参加をするのか! 歓迎するぞハッハッハッってクサッ!」
「敵か……やるしかないね。攻撃用意!行くよ!」
「ハッハァ! 幾ら人数が増えたところでムダネー! 白夜丸! 『飛影水旋殺・極』ヨ!」
「怖い怖いアルパカ怖いアルパカアルパカアルパカがあああああ……」
こうして寮の玄関ではアイオワが†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸の横腹を太ももでパタパタ叩き、†黒炎を纏いし堕天使† 白夜丸が『飛影水旋殺・極』を発動してペペペペッと連続攻撃を繰り広げ、ガングートが「クサッ!」と呻きつつマイウェーイで動き回る脇では何故か顔を顰めつつもホンワカするという複雑な表情になった榛名が髭眼帯を小脇に抱えながらペッされ、更にはタシュケントがその周りをカ〇ューシャを流しつつマイウェーイでクルクル旋回し、オマケで夕張が玄関内でプルプルしつつ怯えるという狂った地獄が出来上がってしまった。
後にこの事件は『
・誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
・誤字報告機能を使用して頂ければ本人は凄く喜びます。
・また言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。
それではどうか宜しくお願い致します。