大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 お・ま・た・せ




例の砲の弊害と例のコラボ

 

「そんな訳で、昨日海湊(泊地棲姫)殿が提督の私室を爆破してしまい、その修復の間提督がどこで寝泊りするかという問題解決の意見を聞こうと皆に集ってもらった」

 

 

 奉行所(執務棟)執務室内に設置された円卓。

 

 二十四名が座れるそこには長門を中心に各課の代表+αの者が集い、其々真面目な相で家なき子になった吉野の避難場所という議題を中心に、話し合いの場が持たれていた。

 

 

「……えっと長門君? ちょっといいだろうか?」

 

「む、どうした提督」

 

「えーっと、今この泊地全体会議と言うかものっそ切迫した空気のコレは、一体何を決定する為の話し合いなんでしょうか?」

 

「うん? 今言ったではないか、提督の私室が元通りになるまでどこで過ごして貰うかという、重要かつのっぴきならない問題をどうにかする為の会議だと」

 

 

 長門の言葉に卓に着く者達は皆一様に固い表情で首を縦に振る。

 

 

 ついでに執務室の隅に設置されている畳コーナーでは、座敷鈴谷がグデーっと弛緩しつつ『んぁ~』っとだらしなく間延びした声を上げて響の膝枕を堪能し、窓から見える庭園に設置された鹿威(ししおど)しがカッポーンと音を立て、ついでに髭眼帯の表情が徐々に怪訝な物へとシフトしていく。

 

 

「……なんで提督の仮の宿を選定するのにこんな大袈裟な会議が開催されるのかの訳を聞いても?」

 

「なんでと言われてもな、このまま提督がヘタな場所で寝泊りしてしまうと、色々と問題があるからだ」

 

「って言うか、部屋の一つくらい工廠課にお願いすれば妖精さんの謎技術を使うだろうし、修復なんか一日も掛からないんじゃないの?」

 

「チッチッチッ、そら甘いで司令官」

 

 

 髭眼帯の言葉に、工廠課ではなく先ず龍驤から否定の言葉が漏れる。

 

 

「先ず提督の考えがどう甘いかを聞くよりも先に、何故龍驤君は巫女服のコスをしているのかの理由を聞いてもいい?」

 

「あ、これ? いやほら、これから司令官の私室を修復すんのに必要やし」

 

「何で提督のマイルームの修復に巫女服が必要なの?」

 

「ん? そら提督の部屋って泊地施設群を囲う結界の基点であり、中心やからな、そこが壊れとるから全部やり直さなアカンねん」

 

「は? いや待って、提督の部屋が結界の中心て……」

 

「泊地のどこが一番重要かって、施設作る前に皆と話し合うた結果そうなったんやけど?」

 

 

 怪訝な表情のまま髭眼帯がまたぐるりと卓を見渡すと、至極真面目な相で会議の参加者がコクリと頷く。

 

 ついでに執務室脇の扉がパターンと回転し、龍王の間から海湊(泊地棲姫)が巨大なキャノン染みた何かをカラカラと曳いて現れる。

 

 

「ちょっとネオアームストロ〇グサイクロンジェットアームストロング砲の試射に行ってくる」

 

 

 真面目な相で何を言っているのだろうと髭眼帯は海湊(泊地棲姫)を凝視するが、何故か彼女の後ろには米俵やら砂糖の袋を担いだ離島棲姫がそれに続くのを見てある事に気付き、プルプルを開始した。

 

 

「……海湊(泊地棲姫)さん、それは?」

 

「うん? ネオアーム〇トロングサイクロンジェットアームストロング砲だが?」

 

「それって例の超大型ポンポン菓子製造機なのでは?」

 

「それだと呼び方に華がないからな、ネオアームストロングサイクロ〇ジェットアームストロング砲と略称をつけてみた」

 

「全然略称になってないから!? 大幅に語句が増えた上に名称がものっそアレになってるし!」

 

「一応製作者が幾つか提案してきた名称の内一つを選んで名付けたのだが、何か問題があったか?」

 

「……おいメロン子」

 

「ネオアームストロングサイ〇ロンジェットアームストロング砲という呼称は、由緒正しき砲装備に与えられる名称です」

 

「メロン子の処遇は後で考えるとして ……取り敢えずネオアームストロングサイクロンジェットアー〇ストロング砲という呼称についての話は後でじっくり相談しましょう海湊(泊地棲姫)さん、で、そのネ〇アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を持ち出して何をするんです?」

 

「ポンポン菓子を作るんだが?」

 

「そっかぁ、ポンポン菓子作っちゃうのかぁ……海湊(泊地棲姫)えもんそれ気に入っちゃったんだねぇ」

 

「このネオアームストロングサイ〇ロンジェットアームストロング砲はロマンと食欲を同時に満たせるいい装備だからな、これがあれば我が縄張りはあと十年は戦えるぞ」

 

「ポンポン菓子で維持できちゃう海域ってどうなのとか思うのは提督だけじゃない筈……ああいやえっとその……なるべく人や建造物のない場所でポンポン菓子を作って頂けたらと、物理的な危険を回避する為に」

 

 

 ロマンとオヤツ、そんな邂逅する筈のない物同士を結び付けてしまうという奇跡の装備。

 

 そんなネオアームストロングサイクロンジェット〇ームストロング砲をカラカラと曳いていく南太平洋の王者をプルプル見送りつつ、髭眼帯は怪訝な表情のまま卓へ視線を戻す。

 

 

「まぁそんな訳でやな、結界を敷き直すのに一週間は掛かる訳や」

 

「今の全スルーしちゃうとかどうなの? 君達さぁ」

 

「龍驤さんの作業の後は工廠課が設備を修繕し、建物を作り直すんですが、諸々のギミックや機構の調整で二週間のお時間を頂くと思います」

 

「いやだからスルー……は? 二週間?」

 

 

 メロン子の二週間という工期を聞き、髭眼帯はえっ? と眉を顰めた。

 

 

 以前大坂鎮守府を使えるまでに整備をした際、要した日数は二週間であった。

 

 そして現在半壊している髭眼帯の私室の修繕に要する日数も二週間だという。

 

 

 何をどうしたらたった一部屋を修復するのに、鎮守府の基礎施設群を整備するのと同じ時間が必要になるのだろうと髭眼帯は眉を顰めたまま首を傾げた。

 

 

「えっとその……二週間?」

 

「はい、先ず提督の私室地下には独立した発電施設や、各種システムを統合するジャパネット明石謹製のスパコンが設置されています、そして皆様の要望を取り入れた諸々のギミックも設置されている関係で一度部屋を解体して再設置、調整……と、かなり手間が掛かるんですよね~」

 

「……発電施設ぅ? スパコンん? 諸々のぉギミックぅ? なぁにそれぇ?」

 

「まぁ提督の部屋だからな、非常時の色々を考えるとその程度の設備は必要になるな」

 

「まぁ今回ネオアームストロングサイ〇ロンジェットアームストロング砲の暴発で半壊したという結果を鑑み、大幅なアップグレードを施す事になりまして」

 

「……君達提督のマイルームの何をどうアップグレードする気なの?」

 

「取り敢えず強度という面は当然として、ほぼ全ての部分を見直すつもりです、判りやすいところだとベッドの回転速度の増加と、マットレスはウォータータイプに差し替えたり」

 

 

 何故スパコンやらギミックやらの壮大な話を実感させるのに回転ベッドの性能向上の話を引き合いに出すのかと髭眼帯は思ったが、それを突っ込む暇もなく、髭眼帯を置き去りにしたまま会議はどんどんと進行していく。

 

 

「まぁそんな訳で、都合三週間、提督が執務外で過ごす場所をどうするかが現在問題となっている訳だ」

 

「え、いやそんなの執務室に布団とか持ち込めばいいんじゃないの? 畳ゾーンとかに」

 

「……提督よ、それは無理な話だ」

 

「は? なんで?」

 

 

 長門は渋い顔をしつつ、会議の卓に着く者達へピシッと指をさす。

 

 それに従い前を見れば、何故か卓を囲む者達は臨戦態勢と言える雰囲気のまま互いを牽制し合っているというワケワカメな円卓がそこにあった。

 

 

 それを見て何事? と無言のまま髭眼帯が視線を投げれば、ふぅと溜息を吐きつつ肩を竦めた長門が小声で呟きを返してきた。

 

 

「一部の者達がな、自分達の用意した場所に提督を招待するのだと言い張って聞かんのだ、たかが一夜の寝床とは言え色々思う者も居るのは確かだし、それを無下にするのはな……そんな訳で、まぁ、色々察して欲しい」

 

「え、ナニソレ、どういう事?」

 

「取り敢えず提督の一時避難所を用意する者は詳細を記載した書類を提出、出揃ったら数に応じて日数割をする、順番は公平にあみだくじにするからな、それでいいか?」

 

「ちょっ、長門君それ決定な訳!?」

 

「他に全てを丸く収めるいい案があるなら聞くが?」

 

 

 長門の言葉に怪訝な表情のまま周りを見渡す髭眼帯であったが、会議に参加している者達の何と言うか、今からE5ラスダンへ出撃します的な緊迫した空気を見ると髭眼帯のプルプル度が増してしまった。

 

 因みに秋イベのE5はゲージ二本目が一番鬼畜で、ラストの三本目は逆に気が抜ける程楽だったのは調整失敗なんじゃないかとこの時髭眼帯は現実逃避をしていたのは内緒である。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「そんな訳で、今日はこの事務方管轄の特別施設で提督にご奉仕させて頂こうかと思っています、何かご希望があれば対処致しますのでお気軽にお声を御掛け下さい」

 

 

 ものっそ怪訝な相の髭眼帯の前では、事務方総括の大淀がメガネのポジをクイクイと調整しつつ、ニコリと微笑みながらティーをそっと差し出した。

 

 

 例のロー〇ン的なブルーとホワイトの縦縞ユニフォームを着て。

 

 

「あ、ガンビーさん、そこの棚に茶菓子が入ってますので提督にお出しして下さい」

 

「は、はい! お待ちください!」

 

 

 そんなロー〇ン的なユニフォームでメガネポジをクイクイする大淀は、つい最近泊地へ着任した艦娘、ガンビア・ベイへ茶菓子の用意を指示していた。

 

 

 そんな茶菓子を用意しているガンビーさんも、何故か例のロー〇ン的なブルーとホワイトの縦縞のユニフォームを着ている。

 

 

「あ、提督さん、この前本土から鎮守府で使っていた車両が送られてきたので、こっちの環境に合わせて少し調整したいんですけどいいですかぁ?」

 

「と言うか、貴女は秘密裏に私的な整備工場を郊外に設置済みではなくて? その報告は提督にしているのかしら?」

 

「あー、それはそのぉ、報告は公用車が泊地に運び込まれてからしようかなって思ってました、アハハ……」

 

 

 テヘペロ的に舌を出して苦笑する鹿島の前では、煎餅と共にサルミアッキをボーリボーリする加賀が隣接する冷蔵棚からジュースを一本引き抜くと、蓋をもぎり落として中身をゴクゴクと嚥下する。

 

 

 当然二人共例のロー〇ン的なブルーとホワイト縦縞のユニフォームを着ているのは言うまでもない。

 

 因みに加賀が飲み物を引き抜いた冷蔵棚は、店内の冷蔵棚へと飲み物を補充する、所謂バックヤード扉側部分から取り出した物である。

 

 

 その様を見つつ髭眼帯が周りを見渡せば、先ず壁際に多種多様な物が詰め込まれたダンボールが積み上がり、壁面の一部は飲み物を補充するガラスの扉が見える。

 

 壁にはシフト表が貼り付けられ、設置されたスチールの棚にも多種多様な商品が詰め込まれていた。

 

 

 そんな一角に設けられた提督ゾーン。

 

 

 そこは例の鎮守府カフェばりの設備が設置され、金剛の紅茶セットばりのソファーセットが設えられている。

 

 壁面は小粋な焼きレンガの中に高級ブラインド窓がはめ込まれ松林を一望できる一等席。

 

 足元は毛足の長い真っ白な絨毯と、背後にはジュークボックスがONされ加賀岬が流れている。

 

 

 そしてブラインド窓の対面は飲み物補充用のガラス棚。

 

 

 そこは泊地唯一の酒保という名目で建設された松のホットステーション。

 

 正式名称は『明石酒保西蘭店』

 

 店内はロー〇ンとファ〇マを混ぜて、更にポプ〇的にイートインや雑貨も扱うという雑多な松のホットステーションであった。

 

 

 商品を拠出するのは当然明石酒保だが運営は西蘭泊地事務方によるもので、店員は某コラボ経験者に限るという特殊な店舗。

 

 

 つまり現在髭眼帯はそんなホットステーションのバックヤードに設けられた特別ゾーンに据えられ、コラボ経験者達から歓待を受けている最中であった。

 

 

「……えっと大淀君、ちょっと聞いていい?」

 

「はい、なんでしょうか提督」

 

「この……えっと、コンビニの裏は一体……」

 

「あぁ、提督が一夜を過ごす場所としてコンビニ然としたままだと色々問題があると思いまして、急遽バックヤードの一部を改築しました」

 

 

 oh淀の言葉に改めて髭眼帯は周りを見渡す。

 

 視界の一番奥には従業員用のトイレのドア、そこから続く商品を詰め込んだ無骨なスチール棚。

 

 合間には消毒剤のポンプが附帯した手洗い場に、やや煤けた壁には標語が書かれた紙やシフト表、そして商品用のポップが貼り付けられ、途中には冷蔵庫への巨大な金属扉もチラッと見えている。

 

 更に視線を手前に持ってくれば、突如として真っ白な絨毯に煉瓦の壁、そして金剛の紅茶セットという別世界という有様、それが大淀が言う提督の為に改築したゾーンであった。

 

 

「改築したんだぁ、そっかぁ、何か気を使わせちゃったねぇ」

 

「いえいえ提督に快適な時間を過ごして頂くには当然の処置かと、それで現在工廠課は提督の私室を修復するのに手一杯でしたので、今回は外注という形で明石に頼んで改築をして貰いまして」

 

「……明石に?」

 

「えぇ、例えばこの壁、何の変哲もない煉瓦の壁に見えますが、ここの部分をこう……叩きますと」

 

 

 oh淀がおもむろに壁を叩くと、ウィンウィンという駆動音と共に壁が反転し、そこからベッドが現れる。

 

 それを怪訝な表情で見る髭眼帯は、これに寝ろというのかという意味を含めた視線でoh淀を見る。

 

 

 何せ豪華装備で飾ろうと、そこにあるのが寝心地の良さそうなベットであろうと、それが設置されているのは松のホットステーションのバックヤードである。

 

 ヘタに寝返りを打てば、視線の先には飲み物を冷蔵している棚が真正面にあったりするのである。

 

 

 ビジュアル的にそれを説明すると、数々の飲み物が冷え冷えで照明に照らされた透明のガラスの棚がオネムしている髭眼帯の視界一杯にあり、更には24時間客が入れ替わり立ち代りしているという状態。

 

 ヘタをすると飲み物を確認する為客が屈んで中を確認すると、スヤスヤとオネム状態な髭眼帯が見えるという仕様になってしまっている。

 

 

「ず……随分寝心地の良さそうなベッドだねぇそれ」

 

「はい、明石寝具謹製テンピョールベッドに寝具のセットです、この体を包み込むが如くの使用感、安眠は確実ですよ?」

 

「ねぇ、幾ら何でもそのネーミングはギリギリアウトなんじゃないかって提督思うんだけど……」

 

「提督のネームバリューのお陰で登録商標の問題はクリア出来てるという話なので、大丈夫、です」

 

「提督のネームバリューってナニ!? もしかして明石って提督の名前を盾にアチコチで色々ヤバい事やっちゃってるんじゃないの!? ねぇっ!?」

 

 

 どこぞで聞いた事のある様な名称と、聞きたくなかった驚愕の事実に髭眼帯のプルプル度は更に増していく。

 

 

「ああそう言えば提督、現在新たなPo〇taカードが入手可能なコラボが開催されているのはご存知でしょうか?」

 

「いやサラッと提督の質問をスルーしないで? てかPo〇taカードて、この前提督専用とかってのに切り替えたばっかだし」

 

「いえいえ今回のは特別製なんですよ、この大淀仕様のPo〇taカードと、あのガンビア・ベイ仕様のPon〇taカードの二種が選択可能となっています」

 

「え、大淀仕様と……ナニ?」

 

「そしてPo〇taカードを申し込むと、なんと大淀仕様クリアファイルガンビア・ベイ仕様クリアファイルが支給されます、この機会に切り替えをご検討なされては如何でしょうか?」

 

「え、だから大淀仕様とナニ?」

 

「如何でしょうか?」

 

 

 結局食い気味の営業攻勢を受けた髭眼帯はいそいそと店内へ案内され、ロッポートという珍妙なネーミングの端末でPo〇taカードの申し込みをさせられたのであった。

 

 

 その後、何か釈然としないまでも申し込み表と、ついでに購入したから〇げクンとファ〇チキ片手にバックヤードもとい提督ルーム(バックヤード)に帰ってくると、何故かそこにはエプロンを装備し、ポニテという気合の入った足利さんが腰に手を当て髭眼帯を待っていた。

 

 

「今日の晩御飯はコラボで一世を風靡した私が作ったメンチカツカレーよ! さぁ召し上がれ!」

 

「あ~ うん、そうそう居た居た、確か足柄君もコラボってたんだっけ? そっかぁ、カレー作っちゃったかぁ、確かに制服着てなかったから裏方に回るしかないかぁ~」

 

「ちょっ!? 別に店員なんかやるつもりはないんだから! ナニよその裏方って!」

 

「足柄は色んな意味でガツガツし過ぎで表に出せないのよ、その辺りの事情は汲んであげて」

 

「そういう加賀君はメンチカツカレーをガツガツし過ぎなんじゃないかと提督思います……」

 

「ちょっと待った! メシって事ならこの長波様を忘れて貰っちゃ困るぜ?」

 

 

 空母盛りのメンチカツカレをモーシャモーシャする青いのと、その横で魔女の釜の如く巨大な鍋でカレーをグールグルする魔女もとい狼さんを見てどうしようかと思案する髭眼帯の横から、オレンジのエプロンに三角巾を装備した長波様がチャーハンの乗った皿をテーブルにドンと置く。

 

 

 そこは先程も説明した通り、午後のアンニュイに時間を優雅にティーする系の金剛の紅茶セットな家具である。

 

 その上に並ぶのはオサレなティーでもスイーツでもなく、大盛りのカツカレーに大盛りのチャーハン、そしてからあ〇くんとファ〇チキである。

 

 炭水化物+炭水化物+カツ+鳥の揚げ物×2。

 

 寧ろ飯系が盛大にダブっている、某ゴロー的な表現をするなら『しまった、これはエライ事になってしまったぞ』になってしまっている。

 

 

 しかもカツカレーにチャーハンと言えば米が主食でありながらも、皿一つで一食を完結させてしまっている料理である。

 

 

 オカズが揚げ物三種で飯物被ってるやん……と現実逃避に差し掛かった髭眼帯であったが、その袖をクイクイと引っ張る者が居た。

 

 誰? と振り向けば、例のロー〇ン的なブルーとホワイトの縦縞のユニフォームを着た瑞鳳は、何故かはにかみながら料理の乗った皿を差し出しクネクネしていた。

 

 

「……卵焼き、たべりゅ?」

 

 

 テンプレである。

 

 

 確かに瑞鳳もローソンコラボ経験者であり、彼女のアイデンティティは卵焼きと九九艦爆の足という極めて狭い範囲の部品のみである。

 

 その数少ない、かつ唯一とも言えるアイディンティティである卵焼き。

 

 だが皿に乗ったそれは世間一般の卵焼きとは一線を画していた。

 

 

 それはカレーが卵焼きにON THEされていた。

 

 慈悲も飯も存在していなかった。

 

 

 皿にONされていたのは、世に言う卵焼きカレーである。

 

 

 何故卵焼きにカレーが? と思った髭眼帯はフと思い出してしまった。

 

 例の瑞雲祭りの期間、このたべりゅの期間限定ボイスに 『よしっ、完成! 瑞鳳の卵焼きカレー瑞雲祭りスペシャル! 瑞鳳、自分の実力が怖いっ! さぁ提督、瑞鳳のカレー、食べりゅ?』 という正気の疑うような内容の、そしてやたらとクソ長い物があったなと。

 

 

 そのセリフを聞いた時は実力よりも、それを実行してしまう行動力の方が怖いと思ったものだが、まさかここでその結果を体験するとは夢にも思っておらず、髭眼帯の目からハイライトが徐々に消えていった。

 

 

 そんな限定ボイスを具現化してしまったブツ、卵焼きON THEカレー。

 

 ビジュアルは提督諸氏の想像に任せるとして、現在髭眼帯の目の前には狼さんのカツカレー、長波様のチャーハン、たべりゅの卵焼きON THEカレーとからあげ二種が鎮座している。

 

 

 髭眼帯は思った、ここまで心が休まらない夕餉があるのかと。

 

 どれを食べても高カロリーかつ味の方向性が違うのに濃いという合致したメーがあると。

 

 

 そんな松のホットステーションに設けられた提督専用スペースで一夜を過ごした髭眼帯であったが、これがまだ私室の修繕が終わるまで続く様々な行脚の始まりに過ぎないという事は、この時露ほども思っていなかったのである。

 

 

 




 台風震災の影響がほぼなくなり、今週から週一ペースを目指して更新していく予定です。

 色々な方にご心配をお掛けし、温かいお言葉に助けられました、ありがとうございます。

 え? イベントはどうしたかって? ハハハそうですね、完走して今回も掘りは終了しています。

 ってイベントしてたから更新ストップしてた訳じゃないのよ!?

 ないんだからネッ!

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