大本営第二特務課の日常   作:zero-45
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 お知らせ

 活動報告でちょっとだけ書いてますが、現在KBを打つのに難儀な状態にありまして、話の更新に労力を割きたい為ご感想にレスは暫くできないと思います。

 不義理な状態にありますが、暫くはどうかご容赦下さいませ。

 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2018/11/27
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、水上 風月様、有難う御座います、大変助かりました。


アラビア沖海戦 -了-

「……これは物凄く面倒臭い上に厄介な事になったわね」

 

 

 半包囲された状態の只中、朔夜(防空棲姫)が見るインド洋深海棲艦艦隊はほぼ半数が大破になりつつも艦隊の体を保ちつつ、西蘭深海棲艦艦隊をそこに釘付けにしたままであった。

 

 会敵当初は西蘭側が相手の数を一気に減らしたが、一当てした以降は混戦になった事もあり戦線は膠着、じわじわとダメージを蓄積させつつも朔夜(防空棲姫)達は包囲されたままの形で海戦は推移していた。

 

 

 数はインド洋艦隊が遙かに上ではあるが、個々の戦力という面では西蘭側が遙かに高く、持久戦となればこちらが有利だと朔夜(防空棲姫)は当初読んでいた。

 

 しかし戦っていく内にその予想が間違いであった事に眉を顰める。

 

 

 朔夜(防空棲姫)達が相手取る艦隊は三。

 

 内、上位個体は其々の旗艦として三体、残り十五体はflagshipという構成。

 

 

 実際戦ってみた感想としては、個々の戦力は脅威にならない程の輩、恐らくという前置きが付くが戦闘経験が殆ど無いのではという程に拙い動きしかしない者ばかり。

 

 だが全体的な動きや位置取りは結果として包囲を形成し、状況を五分に近い形に押し込めている。

 

 

 それはつまり戦力にならない者達を、戦術という手段で戦力に仕立てる事が可能な者が居て、その者が指揮官としてこの戦場を場を支配しているという事になる。

 

 

 元々数で圧倒的に不利な人類側は、戦略や戦術を用いる事で何とか生き永らえてきた。

 

 だがそのアドバンテージを引っくり返される事になれば、この先の戦いは相当厄介な事になる。

 

 特に深海棲艦の数が多いと言われるインド洋を相手取るとなれば、幾ら姫鬼で固めた西蘭泊地であろうと戦闘面では後手に回る可能性が高い。

 

 実際に今出撃している戦力は、西蘭に所属する深海勢の殆どである。

 

 加えてインド洋艦隊の戦力がここに居る者達のみという事はあり得ない、幾ら轟沈させてはならないという足枷が邪魔しているとしても、普通なら西蘭側が戦力的に押し込めていないといけない状況にある。

 

 

 争いとは、少数の内でなら個の能力で勝敗は決する。

 

 しかし戦う者の数が十を超え、百に達した時点で争いは戦争になる(・・・・・・・・)

 

 そして戦争になった時点で勝敗を決するのは個の能力ではなく、戦術と戦略、そして数である。

 

 

 つまり戦争とは兵の質よりも、指揮官の能力と投入する兵力に依存する、それは現状の西蘭泊地では船渠棲姫率いるインド洋の深海棲艦と対峙した場合、策を弄しても勝ちの目は皆無と言えるだろう。

 

 

「なる程、確かにこれは軍って呼べる形の戦い方ね、もしインド洋全体がこんな感じだったら……」

 

朔夜(防空棲姫)

 

「なに? どうしたの(空母棲鬼)?」

 

 

 余り面白くも無い状況に思考を取られていた朔夜(防空棲姫)に、(空母棲鬼)もイライラしていたのだろう不機嫌そうな面持ちで相手艦隊の一角を指差す。

 

 その方向には、それなりに傷を負いつつも未だ包囲を続けるflagship級の間を抜けてくる、無傷の上位個体二体の姿が見える。

 

 

 青い海にあるもそれらとは間逆の赤黒い瘴気と、白い体躯。

 

 半ば崩れた形の砲と蠢動する艤装を纏い、それに溶け込むように白い裸体を晒す二本の角を持つ上位個体。

 

 

「……確か、中枢棲姫って姫だったわね」

 

「流石"ハグレの防空棲姫"、私と同じ個体は殆ど表に出てこないもんなんだけど、見られただけで正体がバレたのは初めてよ」

 

「そんなグロい艤装の姫なんてそうそう居ないし、割と身バレしそうなんだけど?」

 

「だから普通はそういう情報すら……はぁ、もういいわ、で、ウチから連れて来た別働隊はやられちゃったし、余り長引いてもどっちも得る物はないと思うんだけど、そろそろ終わりにしたいかなって」

 

「こちらは別に構わないけど、いいの? トータル的にはそっちが損になってるんじゃない?」

 

「ええ別に構わないわ、現時点ならウチが損になってる事なんてないし」

 

 

 戦況で言えば大破艦はインド洋艦隊の方が多い状態にある。

 

 それでも「損になっていない」という事は、戦闘の結果以外の何かに彼女達の思惑があったと見るべきだろう。

 

 

 朔夜(防空棲姫)と中枢棲姫の会話を聞く吉野は戦闘停止の命令を出しつつも、中枢棲姫が言う言葉の意味を模索する。

 

 

 判り易い部分で言えば西蘭泊地の戦力把握、特に今回は深海勢の殆どを抜錨させての戦闘である、ここでそれを知るのは戦略的に大きな意味があるのは確かであろう。

 

 そして同時に艦娘や装備関係のデータも得られ、今後の対応の指針にもなるだろう。

 

 船渠棲姫が姫や鬼よりもflagshipを中心として艦隊を編成したという事は、勝ち負けよりもそれ以外の部分に主眼を置いているのは間違いない。

 

 

「ヘタに姫鬼をぶつけると大袈裟な事になるだろうし、もしもの事(事故としての轟沈)を考えれば、flagshipをメインに据えるのも手かも知れない、けどそれじゃ……」

 

 

 もし吉野が相手の立場だったとすれば、この結果はまだ「損」の域を出ていない、つまりそれ以外の何かがある事の裏付けになる。

 

 しかも事前の情報では元々船渠棲姫の目的はこの戦闘にはなく、あくまでもこの海域の先にある大陸への上陸にあるという事は最初から聞いていた。

 

 だから相手側の言う「損ではない」という言葉の意味の裏側にはそういう事情が前提と考えれば納得いく部分もあるにはある。

 

 だが吉野的にはそれでも西蘭にわざわざ無理な交渉を持ち掛け、ガチに近い海戦をするぞと煽る(・・)意味が判らない。

 

 

 現状のままで相手が納得するなら、そもそも海湊(泊地棲姫)を巻き込むというリスクを犯してまでこんな海戦を挟んで大陸へ向かうという手は無駄かつ余分な手間でしかないだろう。

 

 敢えて本気で戦力的なデータが欲しいという単純な理由で動くのならば艦隊の編成には姫鬼の数を増やし、双方の戦力を拮抗させないとデータとしては使えないだろう、なにせ今回の海戦はほぼワンサイドゲームと言っていい状態で終わろうとしている。

 

 それは朔夜(防空棲姫)が感じたように、個々の戦力が余りにもお粗末、つまり指揮経験が少ない吉野にしても相手のflagship達が経験不足で本来の戦力に届いていないように見えたからだ。

 

 

 何故わざわざ海戦を持ち掛けこちらに利のある戦いをさせたのか、目立ちたくないだけならもっとやり様があるのではないか?

 

 以前対した船渠棲姫からは自分と同じ匂いがした(・・・・・・・・・・)、厄介で裏のある、そんな手合い。

 

 なら、こんな事で満足がいく結果なんか得られない筈だと、吉野がそう訝しみモニターに映るインド洋艦隊の様子を眺めていた時に、変化が訪れた。

 

 

「ウチの頭目からの伝言を伝える」

 

 

 中枢棲姫の後ろから戦艦棲姫が進み出て両手を広げ、船渠棲姫からの伝言という言葉を口にする。

 

 位置は双方が対峙する中央の、やや西蘭艦隊に近い位置。

 

 中枢棲姫が戦闘の終了を申し出た時点で双方が退いた為に出来た、ほんの少しの空間。

 

 

「人の将よ、世界の真実を知れ、その欠片を今見せる」

 

 

 言葉と共に中枢棲姫の砲が火を噴き、戦艦棲姫の背中に凶弾が降り注ぐ。

 

 無防備な背中に火と血の赤い華が咲き、波紋と白波の輪が紅い華を中心に広がる、そして……

 

 

「願いは届く……形となって世界を変える、連綿と続く呪いを、(かえ)る事の悲しみを、心を焦がす憎しみを、終わらせる事ができる」

 

 

 いきなり見せられる惨劇。

 

 味方を背中から撃ち、沈め、それでも何も無かったように中枢棲姫は振り返り、話は終わりだと僚艦を引き連れ朔夜(防空棲姫)達から離れていく。

 

 

 そして朔夜(防空棲姫)(空母棲鬼)達が唖然と見守る中、海に咲いた赤い華から、何かが(・・・)浮かび上がる。

 

 

 その様子も結果も振り返ること無く去っていく中枢棲姫は、誰に言う事なく小さく呟いた。

 

 

「願えば、()()()()()()()()()()()、お前達の将が船渠棲姫の言う"自分と同じ考え方をするニンゲン"だったなら……」

 

 

 そこで言葉を飲み込み、同族を手に掛けた不快感に口を歪め、続く言葉を飲み込んだ。

 

 

 

 こうしてアラビア海で行われた海戦(出来レース)は西蘭側が予想もしない形で終了し、結果として長い長い謎を解く為の戦いへ突入する事になる。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「それで? 最後にドロップした子(・・・・・・・・・・)の様子はどんな感じ?」

 

 

 戦いが終了し、全員が撤収を完了するのに約二時間、その後は補給や修復、そして周囲の索敵を終え安全が確保されたと確認が取れるまで十時間。

 

 都合十二時間を要した現在、吉野達は会敵ポイントを離れ欧州連合が用意したアラビア海の西、ソトコラ島へ向けて進路を採る。

 

 

「今はまだ入渠中で意識は戻ってませんね、それにしても……どういうつもりでしょうか、友軍の、それも姫級を轟沈させて、その……」

 

「状況的には沈めた戦艦棲姫が還る……艦娘が確実にドロップする(・・・・・・・・・・・・)のを見越しての行動に見えるんだけどねぇ」

 

 

 吉野は現在大和を伴い、艦の中央にある第一ブリーフィングルームを目指していた。

 

 

「まぁそっちは現時点で何も判らないから何とも言えないかぁ、んで? 鹵獲された欧州水姫君の方は?」

 

「そちらですが、彼女と榛名さんは結構損傷が酷かったので即入渠させました、現在はブリーフィングルームに来るよう連絡していますので話を聞くのは可能だと思います」

 

「そっかぁ、中々派手にやらかしてたからねぇ……ん? ちょっと待って? あれからもう風呂(入渠ドック)から出てきたの? 見た感じ大破に近い感じになってたと思うけど……」

 

「ですね、榛名さんが中破、欧州水姫が大破、それに例のドロップ艦の事があり状況が状況という事で、こちらの判断でバケツ(高速修復剤)を使いました」

 

「そうなんだぁ、って……え? バケツ(高速修復剤)を……使ったの? 入渠時に?」

 

 

 大和の言葉に吉野は思い出す。

 

 以前南鳥島での戦いを終えた後、(空母棲鬼)冬華(レ級)が入渠した際にバケツ(高速修復剤)を使用した結果起きた惨事を。

 

 深海棲艦であった彼女達にもバケツ(高速修復剤)を使用した際、艦娘と同じ効能があったが、その代償に凄まじい痛みが体中に発生し、(空母棲鬼)は泣きじゃくり、冬華(レ級)は現実逃避して暫く正気に戻らなかった。

 

 

 ある程度生態が判明した今でこそ言える話だが、深海棲艦には強固なDNAが備わっており、高速で細胞が修復する際、人に高速修復剤を使った時のような"事故"は起きないが、それでも無茶な回復は「神経をヤスリに掛ける程の刺激を発生してしまう」と(空母棲鬼)達がプルプルする程の苦痛を伴う為、余程の事がなければ深海勢にはバケツ(高速修復剤)を使わない事にしていた。

 

 また現在はハカセが彼女達用に調整したブツを研究中だが、それはまだ実用化に至っておらず実用化の目処も立っていない。

 

 そういう事情があり深海勢は確かに強力な戦力と言えたが、継戦力が艦娘達より劣るという事情があって、今回の様な外征へ連れて行くのにも編成を考慮しなければならないという事情があったりする。

 

 

 深海棲艦という戦力を取り込んだ後も、軍や諸外国に対し吉野が慎重に接してきたのはこういう裏事情もあっての事であった。

 

 

 そんな深海の人達とバケツ(高速修復剤)の関係性。

 

 

 大和は今髭眼帯にサラっと言った、榛名と欧州水姫へバケツ(高速修復剤)を使ったと。

 

 

「ん……んんんん? 使ったの? バケツ(高速修復剤)を? 欧州水姫君に?」

 

「はい、提督は欧州側と大本営へ出す報告書の纏めで手が離せないという事で、現場の差配は大和が任せられましたから」

 

「あーうん……確かに事後の色々諸々は君に任せちゃったけど……」

 

 

 ニパーっと凄くイイ笑顔で答える大和に対し、「欧州水姫にバケツ(高速修復剤)使ったらどうなってしまったのか」という言葉を何故か言えず、嫌な予感メーターをピコンピコンしつつ髭眼帯はブリーフィングルームへ向かう。

 

 

「ではブリーフィングルームへ行く前に、提督には着替えて頂きます」

 

「え、着替える?」

 

「はい、相手は確かに鹵獲した個体ですがまだちゃんとした意思疎通はとってない状態ですし、もしもの為に着替えて頂きます」

 

「もしものためにぃ? 着替えるのぉ? どんな服にぃ?」

 

「今回の作戦へ出撃()るにあたり、工廠課より提督用の新装備を預かっていますので、そちらを装備して頂きます」

 

 

 工廠課、それはつまり例の夕張重工の事を指す。

 

 その名称と新装備という単語を聞いた吉野の嫌な予感メーターはアイドリング状態から一気にレッドゾーンに突入し、プルプルが開始されるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 艦娘母艦和泉(いずみ)

 

 そこは泉和(いずわ)のように軍務に比重を置いた設計とは違い、外洋で長期の活動をする関係上要所で色々な設備が導入されていた。

 

 人員全てに個室を与えるには流石にスペースが足りないが、なるべく普通のベットとプライベート空間が行き渡るよう部屋が工夫され、共有スペースもリラックスできる形に整えられている。

 

 

 ブリーフィングルームも平時であれば椅子と机が並び、一度に四十名程が会議に参加できるよう部屋が整えられているが、何があっても対応できるようこの手の大きな部屋は多目的な使い道ができるような設備がINされている。

 

 

 平時は板張りの床は、五十畳程の総畳張りにチェンジしちゃった室内へシフトしている。

 

 そこにちょんと正座させられた欧州水姫。

 

 

 割とフカフカなザブトンが与えられシッダウンした状態の彼女だが、何故かプルプル震えている。

 

 それはバケツ(高速修復剤)という暴力に晒された事による物なのか、それとも現在目の前に広がっている光景の為か。

 

 

 彼女の目の前には金屏風の前に、刀を手にした時雨が片膝立ちでちょんと控えている。

 

 そして隣には髭眼帯が居る訳だが、今回の邂逅で"もしもの事"が起こっても大丈夫なように夕張重工謹製の新型対爆スーツにお着替えして椅子にシッダウンしていた。

 

 

 それは漆黒でゴツい、以前にも増して鎧兜度を増した、ある意味侍ではなく大名染みた出で立ちをしていた。

 

 そして装備が装備なのでフツーのチェアーには収まらない関係上、用意されたのはフォールディングタイプのチェアー。

 

 ビジュアル的に言うと釣りやキャンプに持って行く系の小さな椅子が用意されていた。

 

 それは刀を小姓の様に捧げ持つ時雨を加味した場合、色々セットした結果髭眼帯が本陣に陣取る大名の様に見えない事もないが、周りの者に他意はない、多分。

 

 

 繰り返し言うと広い総畳張りの空間に金屏風、その前には小姓ちっくにちょんとした時雨にプルプルする大名染みた髭眼帯と、プルプルする欧州水姫という異空間が出来上がっているというカオス。

 

 

「え~っと、自分がこの艦の艦長をしている吉野三郎です、で、いいのかな?」

 

 

 時雨の言葉にうむと首を縦に振る髭眼帯(大名)

 

 言葉を聞きビクリとする欧州水姫。

 

 

 今回髭眼帯が着込む大名スーツは対深海棲艦用に試験的に作られた装備であるため、身動きが中々とれない程のゴツい作りになっており、更には生命維持用の装備を取り付けるのが精一杯で外部に声を届ける機構が間に合わなかった。

 

 それ故意思疎通は傍に控える時雨(小姓)を通じてする必要があるが、バケツ(高速修復剤)で既に心が一度折れている欧州水姫は目の前の司令長官(大名)が発する不気味な雰囲気に呑まれてビクビクとした邂逅になってしまっていた。

 

 

 人を憎み、深海棲艦を憎み、艦娘を憎む。

 

 四方八方の存在全てを敵だとツンツンしていた姫は、現在色んな意味で精神が折れプルプルしていた。

 

 

『……』

 

「え? ああ正座は辛いだろうから足を崩してもいいよ、だって」

 

「ッヒ……いや、こここれで大丈夫だ……です」

 

『……』

 

「無理しなくていい、だって」

 

「……クッ、了解した」

 

 

 プルプルする欧州水姫は別段正座が辛い訳ではなかったが、少し首を傾げた鎧兜に不気味さと恐怖を感じ、このままでは命がデンジャーなのではとプルプルしつつ足を崩して胡坐をかいた。

 

 

『!?』

 

「ッヒ!? 何だ……です?」

 

 

 ピクリとする髭眼帯(大名)に反応して欧州水姫のプルプル度が増してしまう。

 

 対する髭眼帯には決して悪意はなく、ましてや相手を気遣っての行動であったが、結果としてその気遣いが色々彼女に対し不幸な方向へ状況を流してしまう。

 

 

 欧州水姫とは戦艦級の深海棲艦である。

 

 

 戦闘時は強固な鎧に身を包み、巨大な砲と艤装を背負う姫である。

 

 しかし平時は艤装を収納し、鎧も身に着けてはいない、つまり現在の彼女は鎧下と言うか、ピチっとしたミニスカワンピという格好であった。

 

 そんな彼女が胡坐という形でザブトンへシッダウンしていると言う事は、つまり、髭眼帯(大名)からは欧州水姫のデルタゾーンと言うかぶっちゃけパンティーが○見え状態という事になってしまうのである。

 

 

 何故そこで胡坐なの? 乙女座りとかじゃないの? と髭眼帯は思ったが、そこはそれ、欧州水姫は騎士っぽい性格をしており、足を崩すという行為はイコール胡坐なのである。

 

 

『……! ……!!』

 

「え? パン? パンってお腹空いたの提督?」

 

『……!! ……!!』

 

「ふんふん……うん、判った、じゃあ間宮さんからパン貰ってくるね」

 

 

 コクコクと頷きブリーフィングルームから出る大和と時雨。

 

 因みに髭眼帯はパンツ見えてますと伝えた筈だがくぐもった声ではちゃんとした意味を拾っては貰えず、何故かパンが食べたいという形で時雨に伝わってしまった。

 

 

 どこをどうすればこの状況でパンが食べたいという命令になるのだろうと思われるだろうが、割と髭眼帯は突拍子も無い行動をする時もあるのは確かである。

 

 結果、たまにする奇行が不自然な命令を納得させてしまうという自業自得がここに発生してしまった。

 

 

 その後はパンツ○出しのまま胡坐をかいてプルプル状態のままザブトンにシッダウンする欧州水姫と、同じくそれを見つつプルプルする髭眼帯(大名)という気まずい時間が暫く流れる。

 

 そして二十分後、メロン子が用意した装備に端を発した誤解と自業自得が齎した結果、欧州水姫の前には金屏風の前に小姓を傍に置き、逆側にはパンが山になったお膳がセットされる髭眼帯(大名)というワケワカメな本陣が出来上がってしまった。

 

 

『……』

 

「うん? えーっと? パンが……何? え、食べていいの?」

 

 

 髭眼帯的には目の前の欧州パンティーを何とかして欲しいというメッセージを再び時雨に送ったのであったが、悲しいかなそれはまたしても曲解され、時雨は山盛りになったパンを大和と欧州水姫に配給し、何故か自分もモグモグし始める。

 

 ビジュアル的にそれを説明すると、五十畳の総畳敷きの部屋で欧州水姫はパンティー○出しで胡坐のままプルプルしつつパンをモグモグし、その向かいでは金屏風の前で刀を捧げ持つ時雨がパンをモグモグし、それを見つつ横では大名ちっくな黒い鎧がプルプルし、更に脇では大和が凄まじい勢いでパンを消費するという、咀嚼音のみが支配する気まずいブリーフィングルームが完成する。

 

 

 吉野は思った、何故今自分は身動きが取れないゴツい鎧を着込んで、パンツ○見えの深海棲艦がパンをモグモグする様を観察しているのかと。

 

 寧ろ何故こんな場でウチの秘書艦はパンを配布してモグモグする事に違和感を感じていないのかと。

 

 ある意味責任の幾らかは髭眼帯自身にもあるにはあるが。

 

 

 何となく現状で欧州水姫はそれ程危険な存在とは言えず、逆にビクビクしているのは吉野にも理解できた。

 

 つまりこの過剰な防護装備は不必要、かつコミュニケーションをとるには邪魔なものでしかないのではと吉野は思った。

 

 

『……! ……!!』

 

 

 故に髭眼帯(大名)は辛うじて動く指先でパタパタと時雨(小姓)にメッセージを送る。

 

 

 - ─ - | - \/ - ゛()   - ─ - | - ・()   - L - ノ()   - 二 - ノ()

 

 

 手旗信号である。

 

 

 何故艦隊司令長官かつ艦長である海軍将官が指先でチョコマカとパンをモグモグするパンツ○見えの深海棲艦から逃れるのにパンをモグモグする小さな秘書官へメッセージを送らねばならないのかは判らないが、そこはそれ、色々と髭眼帯(大名)は鎧を脱ぎ捨てこの気まずい空気をなんとかせねばと奮闘したのである。

 

 ただ焦りとうろ覚えな知識しかない中で送ったメッセなので、本来"タスケテ"とメッセを送る処が"ボスケテ"となってしまっていても、状況的にそれは仕方がない事だったと言えるだろう。

 

 

 必死でチョコマカと大名が送るメッセージに気付いた秘書艦(小姓)は、暫く何かを考えた末、ニコリと笑顔を浮かべてコクリと頷き、大和へコショコショと耳打ちをする。

 

 すると大和も思案顔のまま何かを考えていたが、途中で笑顔を浮かべ髭眼帯(大名)へ一度頷き、二人でブリーフィングルームを後にする。

 

 そして髭眼帯(大名)の嫌な予感メーターの針が振り切れる。

 

 

 結果としては二人がまた退出し、再びパンツ○見えのままパンをモグモグする欧州水姫と差し向かいというものっそ気まずい時間が流れ、暫くモーシャモーシャという咀嚼音だけがブリーフィングルームを支配する。

 

 

 それから約十分後、食っても食っても減らないパンと格闘し、パンツ○出しでプルプルする欧州水姫と、どうしてこうなったとプルプルする髭眼帯(大名)の精神が限界になりつつある処へ、カチャリとドアが開かれる音が室内に響く。

 

 

「お待たせ、それじゃはいこれ、今回は支給って事になるけど次回からは自腹だからね」

 

 

 ニコニコとブリーフィングルームにINし、欧州水姫へ服っぽい何かを手渡した時雨は何故か白と黒を基調としたワンココスのミニスカメイド服を着用していた。

 

 

「今回は予備の備品として持ってきたのでそれしかありませんでしたが、自前で発注する際はデザインの指定が可能ですよ」

 

 

 吉野は思った、何故コスなメイド服が艦娘母艦という移動式軍事拠点の備品として搭載されているのかと。

 

 寧ろ誰が着るのか判らないという予備の筈なのに、デザインが嘗て古鷹が強制的に着用させられたミニスカビキニオープンバックネココスメイド服という究極なのは何故なのかとプルプル度を上げた。

 

 

「でも提督流石ですね、不安に苛まれているであろう欧州水姫さんの緊張を解そうとメイド服を薦めるなんて」

 

「だね、その手があったかって僕も感心したよ」

 

 

 因みに吉野はただ対爆スーツをキャストオフしたかっただけである。

 

 そして欧州水姫を不安にさせている原因の殆どは、主にこのセッティングをした時雨(小姓)とチャイナメイド服を着用しているパンを暴食する徹甲乳、更には大名具足(対爆スーツ)を作ったメロン子である。

 

 

 ただ邂逅し、語り合う為の場がいつの間にかパンツ○見えの末パンを食べる会に発展し、更にはキワドイを通り越してヤバイメイド服を新入りの姫に強要するという事態へ発展してしまった。

 

 

 この時点で欧州水姫的に髭眼帯は鎧で完全武装した、謎で恐ろしく、そしてメイド服という未知の制服を配下に強要する支配者という存在に認知されてしまう。

 

 

「うん、やっぱり古鷹さんのサイズだとちょっと無理があるね」

 

 

 そしてサイズが合わないブツを装着させられた欧州水姫は、見た目例の手塚神が書くメ○モちゃんな幼女ちっくと言うか、国民的某アニメに出てくる海産物の名をキャラネームとする一家の次女であるワ○メちゃん的な佇まいと言うか、ぶっちゃけ立っててもパンツ○見えというアレな姿になってしまっていた。

 

 とてもエロい方向で。

 

 

「……そうですね、これは予備に持ってきた私のウサミミオープンバックミニスカチャイナメイド服を借与した方がいいかも知れません」

 

「え、それってこの前大和さんが徹夜で並んで漸く買えた明石セレクションの期間限定品じゃなかった? いいの?」

 

 

 大和の言う明石セレクションの限定服はもうジャンルもイメージも色々振り切ってて想像がつかないなと髭眼帯はプルプルする。

 

 

 こうして双方誤解を残したままプルプルする艦隊司令長官と姫は、互いにプルプルするという救えない邂逅を果たしたのであった。

 

 

 




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