大本営第二特務課の日常   作:zero-45

302 / 329
 週一投稿宣言、セフトです。

 前回から一週間と37分、37分遅れ、セフトです。

 セフトに……してください_:(´ཀ`」 ∠):


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2019/03/30
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました水上 風月様、リア10爆発46様、柱島低督様、じもすん様、有難う御座います、大変助かりました。


自重しない泊地方針と、自重しない艦娘達

「まぁそんな訳でこちらからの通達はこんな感じかな」

 

 

 西蘭泊地奉行所(執務棟)内、提督執務室。

 

 欧州方面出撃作戦から帰還した髭眼帯は即各課の者達を召集し、それまでに起こった出来事および対応の方針等を、取り敢えず口頭で通達した。

 

 結局、船渠棲姫との密約や、それに応じてどう動くか等の諸々は軍部に振ってきた手前、事後の事は流動的な状態と謂わざるを得ない。

 

 ただ西蘭としては既に、インド洋に対する抑止力と、欧州方面航路の有事の際に戦力を派出するよう軍より要望されている関係で、既にとある許可(・・・・・)は取り付けてはいた。

 

 

「成る程、まぁ提督自身は以前に『戦力配備に関しては自重しない』と宣言していたしな、その辺りを軍部が認めたと思えば、今までの準備が無駄にならなかったという事で良いのではないか?」

 

 

 泊地の人員や戦力の差配については西蘭泊地艦隊本部が担う事になっており、新規の人事に関しても当然担当はそちらになる。

 

 一応艦隊本部の総括は大和になっているが、それを含め他所も取り纏めるのが艦隊総旗艦である長門の役目でもあった。

 

 

「今回提督が鹵獲してきた欧州水姫は既に榛名さんが幾らか教育(・・)されているみたいですし、所属は深海棲艦艦隊となりますが、教育関係は例外的にそのまま榛名さんでいく事になっています」

 

「そうね、本人もそれでいいと納得してるからウチもそれで構わないわ」

 

 

 手元の資料に視線を落とした大和が鹵獲してきた欧州水姫の扱いに言及しつつ、確認の為と視線を朔夜(防空棲姫)へと向けると、深海棲艦艦隊の総旗艦である彼女も問題なしと言葉を返した。

 

 

 今回髭眼帯達が抜錨して鹵獲してきた個体は二名。

 

 

 一人は船渠棲姫からの裏取引で鹵獲した欧州水姫。そして、アクシデントというか、何かしらのメッセージとも取れる形で鹵獲させられた(・・・・・・・)航空母艦翔鶴。

 

 この内、欧州水姫は泊地入り後にひとまず艦隊本部で初期教育を受け、その後は本人の希望もあり榛名の元で教練を受けながら泊地の軍務に割り当てられる事になっていた。

 

 対して翔鶴は、鹵獲して以来ずっと昏睡状態のまま目覚めていないため、現在は検査も兼ねて詳細が判明するまで医局の預かりという形で療養中である。

 

 

「で…っと、そういう訳で軍部からのお墨付きも頂いた事でそっちも忙しくなると思うんだけど、工廠課としては大丈夫なのかな?」

 

「例の広域通信関係がありますので付きっ切りにはなれませんが、ある程度のペースでの建造は大丈夫です」

 

「ふむ、必要資材の準備は?」

 

「暫くは弾薬生産の偽装のために大坂から持ち込まれている資材で賄えますし、そっちがなくなるまでには南島各所からの採掘と精錬が軌道に乗っている見込みなので、計画の推進に支障はないという試算が出ていますよ」

 

 

 工廠課の総括である夕張は手にしたタブレットで様々な資料を呼び出し、それを吉野の手元にある端末へ映し出す。

 

 

 南半球に位置する西蘭島、元の名をニュージーランド。

 

 そこはゴンドワナ大陸の東縁部にある大陸プレート境界線付近に位置する。

 

 海洋には油田やガス田が建設可能である上、一部に水深が極端に深くなっている箇所があり、現在西蘭泊地が経済的な主武器としているメタンハイドレートが大量に埋蔵されていた。

 

 更には、人の営みがあった頃は経済の支柱を酪農や観光で賄っていたので手つかずであったが、実はこの島には様々な種類の鉱物も埋蔵されている。

 

 鉄や金から始まり少量ながらもレアメタル、更には艦隊運営に欠かせないボーキサイトまで。

 

 それは一国の産業を恒久的に賄える程の量ではないが、泊地一つを運営するというレベルならば数百年単位の物資が埋蔵されていると言える。

 

 しかもこの島は吉野達が自由にしていいという約定が海湊(泊地棲姫)との間でされており、また夕張という妖精さんと組んでアレコレとやっちゃうアンタッチャブルが存在するという技術環境があり、結果的には単一で全ての軍備を賄える拠点として成立してしまっている。

 

 

「暫くは小型艦の建造で様子見しつつ、南島の採掘ペースが掴めたら大型艦建造も、という事でどうかなと思ってます」

 

「流石に溶鉱炉はどうかなって思うんだけど……まぁ、現状建造が可能と確認されている全ての艦娘を揃えるとなったら避けては通れない道になっちゃうよねぇ」

 

 

 吉野が彼女達に『自重しない』と言った言葉の意味。

 

 

───── 軍備の拡充を自重しない

───── 対外的な活動を自重しない

───── 海域の攻略を自重しない

 

 

 この三本柱を軸とした『自重しない』活動という意味での宣言。

 

 その内の攻略という部分では、対船渠棲姫という事情と、太平洋側の現状を鑑みて暫くは内政と備えに充てられる事になった。

 

 対外的な活動に於いては、既にドイツとは密な情報網の構築に着手し、更にはオーストラリアとも『お隣さん』という事で経済を先行させながら、しかし国防という面でも内政に食い込みつつある。

 

 他にも西蘭と関係を持ちたい国々からのアプローチがあるにはあるが、元々そういう国は日本や軍部と密接な関係がある為様子見という形で、矢矧と漣を中心とした特務課の外事担当を中心に関係を模索しつつある。

 

 

 そして筆頭の"軍備"

 

 

 この世界に於いて、人類は深海棲艦という不倶戴天の敵と絶望的な戦いを繰り広げている。

 

 連綿と続いてきた人類同士の戦いを膠着させる程に、種の存亡を懸けた殺し合い。

 

 それでいて人の力が及ばない生存競争は、辛うじて絶滅には至らずにギリギリの位置で停滞していた。

 

 

 艦娘という存在によって。

 

 

 この世界でも軍備と言えば、それまで人類が備え、発展させてきた兵器群を指す。しかし、こと深海棲艦が相手となれば、最早艦娘という存在以外は添え物程度の惨状と言えるだろう。

 

 

 吉野が言う自重しない軍備も、当然ながら艦娘の配備に他ならない。

 

 

 現在西蘭泊地に着任している艦娘の数は、内地の四大鎮守府にやや劣る程度であるとされている。

 

 深海勢も含めた戦力であれば同等以上とも言えるが、単純に頭数で見るなら内地最大と言われる呉の約六割に届くかどうかどうかの状態。

 

 

 更には西蘭泊地に居る艦娘の七割は他拠点からの異動組から成っており、純粋に吉野の下で建造された艦娘はまだ少数派とも言える。

 

 

 内地に居を置いていた頃は軍部や政府に危険視されているという環境であったため、建造という手法は極力最小限に留めてきた。

 

 しかし外地の、しかもバックアップが無い、寧ろバックアップを求められる立場となった今は、総合的な戦力は元より、多面的な活動に対応する為の数が必要になった。

 

 また先の説明にある「着任艦の殆どが異動してきた者で構成される」という有様は、其々が抱える事情によって吉野自身建造に踏み切れない事情の一つになっていた。

 

 

 長門や摩耶、あるいは球磨を始めとする古参組。

 

 これらの艦娘は数十年単位で生き残り、その卓越した技術や経験は吉野のこれまでを幾度となく支えてきた。

 

 

 だが、長く生き残ってきたという戦歴は、ひるがえせば姉妹艦を多く失ってきた過去を持つと同義とも言える。

 

 そんな古参であり長らく第一線で戦ってきた艦娘事情で言えば、姉妹を失っていない西蘭所属の金剛姉妹や大和姉妹の方が、実は軍部では少数派と言えるだろう。

 

 それ故、古参の異動組が中心という環境は、彼女達が失ってきた姉妹艦の建造という微妙な部分に関わる関係上、吉野としてはそれとなく避けてきた道でもあった。

 

 

 しかし現状を鑑み、少し前に軍備の拡張という話に至った時、薄々そうではないかと察していた彼女達は吉野に対してその心中を打ち明ける事になる。

 

 

 元々艦娘側の立場を考慮し、なるべく沈んだ姉妹艦に関わる建造を避けてきた吉野。

 

 それを知って逆に何も言い出せなかった艦娘達。

 

 

 結論から言えば、何も思う事はないとまではいかないが、彼女達は必要とあれば軍備の拡張、要するに沈んでしまった者と同じ姉妹艦の建造になんら問題はないという考えを持っていた。

 

 寧ろ戦場で生きる者としては、例えそれが本当の姉妹だと感じられなくても他艦よりは連携が取り易く、また同型艦が存在する方が心強いと言う。

 

 

 他を代表してその辺りの事情を口にした長門の言に、吉野は今まで持っていた迷いが無用の物だったという事に気付き、そして外地の独立拠点に成らざるを得ない現状を鑑みてある計画を発令した。

 

 

 吉野が言う『現状建造が可能と確認されている全ての艦娘を揃える』という計画。

 

 それはインド洋へ抜錨する少し前には、既に始まっていた。

 

 

鹵獲(ドロップ)でしか邂逅できない艦以外は全て建造するとして、先ずは建造資源が少なく、また姉妹艦が多いという事で特型駆逐艦から建造しては如何かと思います」

 

「ふむ、ポテト型かぁ……ウチで着任してるのは綾波君だけだっけ?」

 

「ですね、厳密に言うと綾波さんは綾波型のネームシップになりますけど、大別してしまえば特型駆逐艦の一隻と言えますね」

 

 

 特型駆逐艦

 

 大日本帝国海軍に於いて、特別な、または特殊なという意味を冠して建造された艦は二十四隻存在した。

 

 大正十二年から大正十五年度計画に於いて建造された、ネームシップの吹雪から十番艦の浦波までの十隻は特Ⅰ型、若しくは吹雪型と呼ばれる。

 

 しかし何故か五番艦のムチムチ叢雲だけはポテト然としておらず、姉妹の中では浮いているとか口が裂けてもいえない。

 (尚、昭和二年度改装計画の雛形になった浦波は、艦体構造物は吹雪型でありながら兵装は綾波型の物を搭載した関係で改Ⅰ型とも言われる)

 

 昭和二年度に発令された特型改装計画によって建造された綾波から潮までの十隻は、それらを一括りにして特Ⅱ型、若しくは綾波型と呼称される。

 (尚、七番艦の朧から潮までの四隻は艦の形状が効率化の為やや変更されており、後期型と呼ばれる)

 

 そして昭和二年度計画の後期、それまでの建造艦が設計から大幅な重量超過になっているという問題を受け、機関の効率向上と軽量化、その他の仕様を変更して建造された、暁から響までの四隻を特Ⅲ型、若しくは暁型と呼ぶ。

 (但し友鶴事件・第四艦隊事件を受け最終的に暁型は大幅な改修を受け特型としては最終的にかなり特徴的な形となっている、故に特Ⅲ型は世間からは脱ポテト艦とも言われる)

 

 因みに軍の記録には現状吹雪型では六番艦東雲、七番艦薄雲、八番艦白雲、綾波型では三番艦朝霧、四番艦夕霧とは未邂逅とある。

 

 

「成る程、確かにウチは何故かポテト艦の着任は異様に少ない状態だったし、先ずはそこから手を付けてみても……」

 

「ちょっと待ったァァァァァァァァッ!」

 

 

 髭眼帯とメロン子が粛々と建造計画を進める只中、パターンと執務机裏の回転壁を押しのけ誰かが待ったを掛ける。

 

 第二次改装を終え、少し髪が伸びた? と髭眼帯が微妙に評価した、陽炎型ネームシップの例のお茶会テロリストがあのジョーンズさんチのソーダを片手にザッシザッシと歩いてくる。

 

 

「ンッグンッグ……ッパァッ! なに? 駆逐艦を建造するなら現状中途に残ってるウチの姉妹を取り敢えず揃える方が色々諸々いいんじゃないかって思うんだけど?」

 

 

 陽炎型駆逐艦

 

 大日本帝国海軍に於いて、第三次軍備補充計画の下建造された十五隻、また第四次軍備補充計画の下建造された四隻の計十九隻の駆逐艦である。

 

 特型に続く初春型以降の駆逐艦はロンドン軍縮条約の制限下で建造された為、制約による多くの問題(主に復元性や航続距離)が伴う造りとなっていた。

 

 だがそれを脱した昭和十二年より建造された艦は条約による制限を廃し、一から効率化された全く新しい艦となった。

 

 それまでよりも巨大で強力な缶、強力な武装、長大な航続距離をより高速で。

 

 軍の要求する無茶をぶっ込みややおっきくなったくちくかんは、艦娘を見て判る通りポテトよりも、ましてや暁型よりもおっきくなったJCみたいな体躯となってこの世に顕現した。

 

 姉妹艦はネームシップの陽炎を筆頭に末妹の秋雲までの十七隻存在する。

 

 最後の秋雲に関しては当初ポージングから「コロンビア2号」だの、同人作家というユーザー設定が与えられ「オータムクラウド」という別称があったり、更には何故か夕雲型の制服を着込んでいる為「エセ陽炎型」とまで言われてしまうがその辺りの事情は大人の都合と文字数の関係からここまでとしておく。

 

 また陽炎型といえば大人の(絵師)事情から一部特殊な事になっており、また姉妹には異能生存体と名高いビーバーもとい雪風や、ノースカート仲魔の子犬(時津風)、余りにも低いドロップ率の為ツチノコ扱いされた初風というアニマル勢に加え、あのパイ風もとい浜風やおっぱい風もとい浦風というおっぱい勢、果てには例の磯風など、数もそうだが姉妹艦のバラエティという面で言えば多数姉妹艦を持つ艦種の中では恐らく一番だろう事は難くない。

 

 因みに史実での姉妹艦の内、早潮と夏潮はまだ邂逅したという報告は皆無であった。

 

 

「我が陽炎一家は後七人で勢揃い、対してポテト姉妹は後十八人建造しないと揃わないわ、ねぇ司令、それを考えれば先に陽炎型を建造して揃えた方が建設的なんじゃないかって思うんだけど?」

 

「いやなに君今日はテンション高いね、って言うかそんなヤバいブツの瓶を提督の顔にグリグリしないでくんないかな?」

 

 

 いやにハイテンションの陽炎が手にするのは、例のフットボーラーがプリントされた乳白色の液体が入った瓶。

 

 何故よりにもよってあのフットボールシリーズの汗炭酸をグビグビとしつつ絡んでくるのか。

 

 寧ろそんなの飲んでるからテンションがハイになっているのだろうかと髭眼帯は怪訝な相で陽炎を見る。

 

 

「いや、人数的な物で言うなら寧ろ白露型の建造を優先するべきだと僕は思うんだけど」

 

「あー、確かにウチに着任してる子を除けば……えっと、四人建造すれば揃う感じなのかな?」

 

 

 白露型駆逐艦

 

 ロンドン軍縮条約の批准後、制限下でも特型駆逐艦に匹敵する艦を求め、初春型駆逐艦が建造される。

 

 保有数の確保も兼ねて条約の制限よりさらに小型、特型のおよそ8割5分の規模で設計された初春型であったが、要求性能を小型化した艦へ詰め込んだ結果、数々の問題が残る事になった。

 

 特に復元性の問題は大きく、大改修を経て改善が図られることになる。結果、当初十二隻で計画された初春型は、ネームシップの初春、二番艦子日、三番艦若葉、四番艦初霜の四隻、および建造途中であった二隻で打ち切られる。

 

 妥協した武装の再強化のため新型装備の開発を待っていた五番艦有明、六番艦夕暮は建造中に先の四隻の同様の改修を受け、起工前であった白露以降は船体の設計を一新。この有明以降が初春型駆逐艦改め有明型駆逐艦として類別されることになる。

 

 後に有明型駆逐艦は登録抹消の末に整理され、有明、夕暮は初春型へと編入。有明型三番艦であった白露は船体構造が異なるため、新設された白露型駆逐艦の一番艦として登録される事となる。

 

 因みに、この難解な整理新設によって三番艦からネームシップへと上り詰めた経緯が、白露の口癖である一番ネタの元とされているとかいないとかはまぁどうでもいい。

 

 また白露と共に当初有明型であった艦は他に2隻存在しており、それらは時雨、村雨と名付けられた。

 

 そして、白露型に改められた駆逐艦は、当初計画の残り2隻を加え、六姉妹として抜錨する事になる。

 

 後に白露型駆逐艦は十隻となるが、艦娘となった彼女達の中にはもうお約束と言うか、恐らく大人(絵師)の事情なのだろう、何故か毛色の違うと言うか、明らかに姉妹とか何かが違う系の二人(五月雨・涼風)が含まれる事となるが、それはここで語るとアレがソレしちゃうので言及は避ける事とする。

 

 

「いやまぁ確かに残りの建造数で言えば確かに白露型って手もあるにはあると思うと言うか、ねぇ時雨君?」

 

「僕に興味があるの? いいよ、なんでも聞いてよ」

 

「そのセリフ随分久しぶりに提督聞いた気がするんだけど、寧ろ君、何で今日は水着な訳?」

 

「ああこれ? いや大本営からなんか白露型の艦娘的な水着が某百貨店で売りに出されるって聞いたから、大坂に寄航した時通販しておいたんだ」

 

「あー…… 三○コラボ、いやそれはいいんだけど何でそんなの着てんの?」

 

「え、着ちゃダメなの?」

 

 

 着ていいか駄目か、答えを言えば当然メーである。

 

 何故ならそこは泊地の軍務を執り行う提督の執務室であり、今は各課の代表を交えての重要案件を話し合う為の会議中だからである。

 

 そんな場で、幾ら販促が大本営から発令されているとしても水着でINするのはどう考えてもアウトだと思うのは吉野的に気のせいではない筈である。

 

 そんな基本的な部分を秘書官である白露型の水着お下げにどう嚙んで砕いて納得させるべきだろうかと、髭眼帯はお茶会テロリストから今も尚ツンとにほひがする瓶をグイグイされつつボスケテの視線を各課の代表に投げる。

 

 が、何故か会議の卓は差配をするべき吉野を完全スルーし、粛々と議題を進めていた。

 

 

 つまり、要するに、そういう系の暴走は取り敢えず髭眼帯に一任され、こっちはこっちで仕事を進めようという事であった。

 

 

「……」

 

「ねぇねぇ提督、この水着って見た目普通のワンピなのにさ、こうすると……こう、ほら、ね?」

 

 

 歴史のある○越百貨店が販売する艦娘コラボ、その一つ白露型駆逐艦水着。

 

 見た目は彼女達のアンダーウェアーを模した意匠のワンピースタイプに見える水着であった。

 

 しかしそれは見た目だけであり、上着的な部分をペロリとめくるととんでもない形になっている。

 

 先ず水着の下にはブラ部分とアンダー部分がセパレートとして存在し、上半身は前側が下に長い少し特徴的なと言うか金太郎の前掛け的形状のトップになっている。

 

 次いでアンダーはスカート部分を廃すると、前面から見れば鼠蹊部丸出しの鋭角なハイレグ、しかも前面はヘソまで覆う丈になっているが、後ろはあろう事か半ケツどころか1/3ケツしか尻が隠せない痴女仕様。

 

 しかもサイドの布は皆無な為、アンダーは一枚布をヒモで縛って水着の体にしている、所謂変則的なふんどしとも言えるスケベ状態。

 

 そんなブツを見せられどうなのかと意見を求められても、何をどう言ったとしてもいい大人としてはアウトな答えになってしまうのは確定と言えるだろう。

 

 

「因みにお留守番してた子にも買ってきてるんだけど、暫く白露型はこの水着で公務に就こうかって話になってるんだ」

 

「えぇ~ その水着でぇ~ 公務ぅ~? なに言っちゃってんのぉ時雨君」

 

 

 髭眼帯がプルプルしつつ瓶をグイグイされながら突っ込みを入れると、執務机裏の壁が再びパターンと開かれ、ザッシザッシと誰かがそこから現れた。

 

 

「ぽいっ!」

 

 

 白露型のポイヌ(夕立)を筆頭に、春雨、海風、山風、江風という泊地に着任している白露型シスターズが例の回転扉(隠し)から列を成して現れる。

 

 当然全員○越コラボの水着着用で。

 

 

 プルプルしつつそれらを見れば、ノリノリのポイヌ(夕立)、プルプルしつつ涙目の春雨と海風、ジト目で口を△にする山風、そしてゴミを見るような目付きで見下ろす江風と、思わず髭眼帯はそれらの惨状を直視できずに視線をプイッと逸らした。

 

 

「あの、時雨君、これは……」

 

「クッ……流石大本営(運営)推しが多い白露型、でもこっちは数とバリエーションに勝る陽炎型よ、ここは出し惜しみしないわ、いいわねっ」

 

「勿論です」

 

 

 瓶をグイグイされる方の逆サイド。

 

 さっきまでは誰も居なかった筈の方を向くと、何故かプルプルするおっぱい風もとい浦風が前屈みで睨むというワケワカメがそこにあった。

 

 機能美溢れる提督指定の水着(意訳)を着て。

 

 

 因みに提督諸氏の間では、あの水着で溢れているのは機能美ではなく別のパイパイ的な物ではないかという議論が一定の割合で定義される事があるが、そんな事は他の提督諸氏の心中では既に消化されそういう物(・・・・・)と認識されているので特に話題が広がる切っ掛けにはならないという。

 

 

 そしてぷるぷるするおっぱい風もとい浦風のとなりでは、何故か呉から着任し、現在は艦隊本部の副艦を勤めるパイ風もとい浜風がおっぱい風もとい浦風と同じく機能美溢れる提督指定の水着を着用したまま腰に手を当てポージングし、ニヤリと髭眼帯の事を見下ろしていた。

 

 因みに提督諸氏の間ではぱい風とおっぱい風では呼称が被りややこしく、かつ特徴が出てないのではという議論が長らく交わされていたが、それは自然とパイ風もとい浜風はカタカナでパイ風、おっぱい風もとい浦風はひらがなでおっぱい風と自然に住み分けが進み現在に至っている。

 

 

「んっ、なんですか、提督! 何か、私の兵装に、何か?」

 

「意味不明なデフォルトボイスを口にして何かと言いたいのは提督なのですが……浜風君、なにしとん?」

 

「これでも私は一応陽炎型十三女ですから、長女命令なら従うしかないでしょう?」

 

「いや君元は呉の秘書官筆頭かつ寺田中将の初期艦だったデショ、そんな大物が長女命令もヘッタクレもないんじゃ……」

 

「いいえ、現在の私は一兵卒、しかも長女よりも後に着任したペーペーですから」

 

 

 『ぜかまは』と一文字違えば別な意味できわどい制服のあのスピード狂艦と間違えそうなネームのゼッケンを張った、パイ風と言われる所以となった胸部装甲をプルルンと張ってニヤリとするパイ風もとい浜風。

 

 その仕草に何故かゴゴゴゴという殺気というか圧力を感じた髭眼帯が会議中の卓を見ると、色んな意味で()る気満々な視線を向けるドラゴン(龍驤)がいるというカオス。

 

 

「なァ提督よぉ」

 

「え……うん、どうしたのかな江風クン」

 

「このスケベ水着着て仕事とか、マジなんか?」

 

「色々コラボと言うか百貨店的にスケベ水着言とかわない、てか提督そんな命令を出した覚えは微塵もアリマセン」

 

「なぁ提督さん……うちにこがぁな格好さしてどうするつもりなん……」

 

「いやそれは提督が指示したのではなく、横に居る邪悪なおっぱいが企んだ罠としか言えません……」

 

「提督よ」

 

「……なんですか長門君」

 

「龍驤がな、今般若の相で外に飛び出していったんだが、恐らく例の四人に召集を掛けにいったのではと思うのだが……」

 

「あー……フラット5、てかもう彼女抜けたんなら会議は進まないでしょ?」

 

「うむ、そうだな」

 

「じゃ一旦今日はおひらきにして、提督はどこぞに避難……」

 

「いや、時間が勿体無いので、議題を次期建造くちくかんはどれに選定するかというのに差し替えてみてはどうかと思うんだが」

 

「ちょっとしっかりしてビッグセブン! て言うか真顔でそんな狂った議題推し進めないで!」

 

 

 こうして狂ったソーダや水着やおっぱいやビッグセブンに囲まれた髭眼帯は、突っ込み体質が災いし避難するタイミングを逃してしまうという致命的なミスを起こしてしまい、この後平たい一族が乱入する混沌の執務室の中心から逃れる事は適わなかったという。

 

 

 




・誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
・誤字報告機能を使用して頂ければ本人は凄く喜びます。
・また言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 それではどうか宜しくお願い致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。