大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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前回までのあらすじ

 吉野三郎は新たな力を手に入れた、しかしそれを付け狙うナガモンと、全てを無にしようと最終兵器を振るう加賀、そうして混迷は深まっていった。


 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。



2018/12/27
 誤字脱字修正致しました。
 ご指摘頂きました黒25様、なぎぽ様、雀怜様、有難う御座います、大変助かりました。


本気と書いてマジと読む、そんな演習風景

 空は鉛色が広がり、水面(みなも)は濃い藍色に。

 

 波は高く連なり飛沫が霧散する。

 

 千葉から南東約180km、100海里程の沖合い、日本海流と千島海流、所謂黒潮と親潮がぶつかる潮目、二つの海が交差する場所に強襲揚陸艦轟天号は浮かんでいた。

 

 そこは日本近海とはいえ波高く、また水深もそこそこあった為に外洋に近い環境が広がり、遥か南方インド洋周辺を主戦場と定めた第二特務課が実戦を想定し、演習をするのに適した場所である。

 

 

 艦橋で15海里程向こうの状況を大型スクリーンで観察しつつ、吉野三郎第二特務課々長(二種軍装)は、普段は余り見せないらしからぬ相(・・・・・・)で椅子に腰掛けていた。

 

 

 スクリーンには戦場となるべき海域を上から俯瞰(ふかん)する様に見下ろす形での映像が映し出され、手元にあるコンソールにも20インチ大のモニターが据えられている。

 

 

「メインスクリーン用ドローン二機定位置に付きました、そちらの装甲型はどうですか?」

 

「うん、ちゃんと詳細は映ってるね、感度も良好だし、演習弾の直撃が無ければこれでいけそうだね」

 

 

 吉野は手元のコンソールを確認しながらタブレットを操作する、指がタブレットに触れる度にモニターに映る画面が切り替わり、ズームさせれば艦娘達の表情もなんとか確認出来る。

 

 

「流石妖精さん、これだけ離れてるのに、状況が手に取るように確認出来るよ」

 

「むっ、それ妖精さんだけじゃなく私も開発に関わってるんですけど?」

 

 

 船の舵を取りつつ、少し頬を膨らませた夕張が不満げな言葉を漏らす。

 

 波が高く、全長が50m程しかない轟天号では波の影響が強く出てしまい、通常ならそれなりに上下に揺れている物だが、そこは長らく海で戦い、対潜をメインにこなしてきた夕張、器用に船体を操り揺れが少なくなる様操っていた。

 

 そんな彼女に賛辞を織り交ぜたフォローを幾らか入れつつ、改めて目の前の大型スクリーンに視線を向ける。

 

 映像は左右二つに別れ、片方には旗艦長門を筆頭に、榛名、妙高、陽炎、加賀、龍鳳という編成の第二特務課艦隊が、そしてもう片方には冬華(レ級)が突出し、朔夜(防空棲姫)(空母棲鬼)がやや後方左右に展開する、第二特務課……いや、吉野三郎麾下深海棲艦部隊が映っていた。

 

 

 今回の演習は、そろそろ発令されるだろう捷号作戦に於ける第二特務課の立ち回りのおさらい、そして実戦で想定される戦いに備えての連携を経て、第二特務課艦隊には"深海棲艦相手の立ち回り"を、そして深海棲艦部隊には"上位個体のみの艦隊の運用"を想定した物を。

 

 そういった実戦を見据えた形式の演習をする為泊り掛けで海に出ていたのであった。

 

 

『周辺30海里内、水上水中共に感無し』

 

 

 轟天号に寄り添う様に航行し、不知火は周囲を索敵する、そして船を守ると共にその不知火を護衛する為時雨は海を(はし)っていた。

 

 

『やっぱり海はいいね、戦えないと判ってても、この潮の匂いと飛沫の冷たさ、僕はやっぱり艦娘なんだって安心するよ』

 

 

 久々の波の高さに高揚した黒髪の少女をカメラからの映像で確認しつつ、苦笑の相を浮かべながら吉野は首に張り付いたマイクに手を添え、既に展開し終えた二つの艦隊に向け演習よりはやや激しくなるだろう模擬戦開始の言葉を呟いた。

 

 

「それでは演習を開始する、今回指揮については旗艦に一任し自分は一切指揮に関わらない、其々事前のブリーフィングは済ませてあると思うから後は現場での調整を残すのみだろう、さて、グダグダ言うのもアレだし早速始めるとしようか、では……貴官らの活躍と戦果を期待する、演習始めっ!」

 

 

 号令一下(ごうれいいっか)、複縦陣のまま緩やかに深海棲艦部隊へ進む第二特務課艦隊、加賀は持てるだけの艦戦を空へ放ち、逆に龍鳳は弓を構えたまま、何かを探る様に彼方の敵を見据えている。

 

 

「では皆の者、打ち合わせ通りに頼む…… と言っても今回のは真っ向からの電撃戦だ、ヘタに小細工するつもりは無い、各々(おのおの)味方を振り切らない程度になら暴れてくれてかまわんからな、それでは艦隊、……ゆくぞ!」

 

 

 長門の(とき)の声と共に船速を上げ、綺麗に二列だった艦列がやや横に歪な形になる。

 

 長門と並び先頭を往く榛名が少し先行し、それに隠れる様に陽炎が追随する、彼我の距離は10海里程、始めの声が掛かった時点でそこは双方の射程距離の内であった。

 

 

「どうやらアチラさんは真っ向勝負をお望みのようね、ふふっ…… ならこっちも真正面から受けないと礼を欠いちゃうかしら?」

 

 

 ニヤリと口角を上げ、早くも至近で上がる水柱を涼しい顔で眺めつつ、朔夜(防空棲姫)は艤装に積まれた4inch連装両用砲+CIC、四機八門全てに弾を装填し、ゆるりと前に滑り出す。

 

 それに呼応し、(空母棲鬼)は予想されるであろう加賀が放つ艦戦と拮抗出来ると思われる数の艦載機を放ち、やや後方に位置した状態で動き始める。

 

 

「一応航空拮抗辺りになるよう調整するわ、全力で制空権もぎ取ってもいいけど、あの龍鳳って軽空母、ちょっと面倒臭いのよ、直掩(ちょくえん)残しとかないと足元掬われ兼ねないわ」

 

「アッハハハーーー! キタキタ! ねぇ朔夜、ボクハルナと戦いたいんだけど、突っ込んでも構わないのかな?」

 

 

 満面の…… 狂喜という言葉を彷彿させる相を表に貼り付け、興奮した猫の如く尾をピンと立たせ冬華(レ級)は体勢を低く構えた、その様は四足の肉食獣を彷彿させ、今にも暴発するのでは無いかと思われる程に力を内へ溜めていた。

 

 ここ最近、ポワポワと陸で饅頭片手に日和(ひよ)っていた者とは掛け離れた、獰猛な海の破壊者(デストロイヤー)に対し、スイスイと軽やかに水柱の間を縫う朔夜(防空棲姫)はいつもの相を崩さず、されど紅い瞳から燐光を滲ませながら口から底冷えのする程抑揚の無い声を吐き出した。

 

 

「そうね、とりあえず痛そうな攻撃をするヤツは最初に潰しておくべきね、長門は(空母棲鬼)に暫く任せるわ、冬華(レ級)……二対一になるけど、それでいい?」

 

 

 朔夜(防空棲姫)の言葉に少し不満気な相を見せる物の、それでも納得したのか冬華(レ級)は前を見据え、歪んだ口元から牙を彷彿させる八重歯を覗かせつつ首を一度だけ縦に振った。

 

 

「それじゃ狩りの時間よ、先ずはアの戦艦カラ喰イ散ラカシテシマオウカ……」

 

 

 相変わらずゆっくりと、しかし殺意の塊となった海の獣は獲物と定めた高速戦艦へ真っ直ぐに、そして確実に喰らい付ける場所へと距離を詰めていく。

 

 そんな深海棲艦の本能とも言うべき殺気に当てられつつも冷静に、苦い顔をしつつ(空母棲鬼)は追加の艦載機を放ち、先に発艦させた航空機から入る情報を頭の中で整理し始めた。

 

 

 状況的に見て注意すべき場は三つに分かれる、真っ向からぶつかるであろう中央、それを支援する後方の空母達、しかし今も尚発艦せず機を伺う龍鳳は恐らくこちらを狙ってくるのは確実視される現状、自分の周囲も完全な危険域。

 

 今制空権を保つ為に加え、長門を牽制する為に追加で手持ちの艦載機を幾らか放ったが、直掩(ちょくえん)として残した物はまだ少し余裕がある。

 

 これを更に出すか、それとも保険の為に残しておくか、恐らく自分がこの戦場に最も影響を与える手はこれにあると(空母棲鬼)は読んだ、前に出た二人は真っ向からぶつかる形を選び、戦端を開くのならば、諸々の調整や支援は自分が一手に担わなければならない。

 

 内なる狂気を抑えつつ、前に出そうになる足を踏ん張り残りの艦載機を出すタイミングを計る彼女。

 

 

「何か自分だけババ引かされた気がして納得いかないわね」

 

 

 口をへの字に結び、そろそろ砲撃が始まるであろう場所に注力しつつ、(空母棲鬼)は両手で軽く頬を叩き、気合を入れ直していた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「真っ向からの殴り合いになったらちょっとヤバいんじゃないかって思ってたんだけど、まさかこんなにダンゴ(・・・)になっちゃうとはね……」

 

 

 大型スクリーンに映し出される状況を見ながら、眉根を寄せて吉野はそう感想を述べる。

 

 

 榛名の周りを(はし)りながら攻撃を仕掛けるも、畳み込むには少し足りない程にしか踏み込めない冬華(レ級)朔夜(防空棲姫)、幾ら榛名の機動力を以ってしても二人の深海棲艦上位個体を同時に相手にする事は難しいが、何故か奇妙な拮抗状態が展開されている。

 

 その答えは単純で、これは一対一の戦いでは無く艦隊戦である、個の戦力は劣っても、立ち回りと数でそれはある程度は覆せる状況を作り出す事は難しくない、航空機に邪魔はされても長門の援護は容易に二人を近付けさせる事を阻み、更に予想外の伏兵が榛名の守りをより強固にしていた。

 

 

 陽炎型ネームシップ、一番艦陽炎

 

 大本営周辺で行われていた演習に於いて、そつ無く何でもこなし、援護という面に於いては優秀であったものの、駆逐艦という限定された性能故今一つパッとしない印象だった彼女。

 

 そのイメージは吉野だけでは無く恐らく他の艦隊員すらも感じていたのだろう、艦隊戦が始まって暫くはノーマークに近い状態で放置されていた。

 

 そんな補助的位置付けで見られていた駆逐艦は、自身を覆うかの如き高波と、日の光が薄い鉛色の空の下、この先戦いが行われるであろう場所と同じ環境に足を踏み入れた瞬間その牙を剥き、苛烈なまでの攻めを見せる事になる。

 

 

 波を盾に近付き、更にその高低を利用しての急加速、たった一度水の壁が上下した後には目を疑う程離れた場所にその姿を現していた。

 

 それは常に相手の死角を突く形で行われ、気付くと遠くない位置から放たれた砲弾が装甲の薄い場所に突き刺さる。

 

 また、彼女(陽炎)に狙いを向け反撃するも、回り込まれた先の、そそり立つ波が盾になって有効なダメージが出せないでいる。

 

 

「立ち回りが秀逸だねぇ、あれだけ引っ掻き回されると朔夜(防空棲姫)君も冬華(レ級)君も中々榛名君に集中する事は難しいんじゃないかなぁ」

 

 

 モニターでやっと追いつける程のトリッキーな動きを見せる陽炎の脇を、水壁を抜けた砲弾が通り抜ける。

 

 通常直撃すればおそらく一撃で行動不能にされるだろうそれも、幾らか威力を落として水の中に消えていく。

 

 

 水というのは優しく触れれば肌を滑り滴り落ちるような(はかな)い物であるが、叩きつける程乱暴に接すればその有体は劇的に変化する。

 

 液体と言われるそれは『張力』という力を内包している、静かに触れれば何の抵抗も無く物体を通過させるが、一定以上の運動エネルギーを加えると圧力と張力が増し、たちまち固体の如き硬さへと変化する、威力が増せばそれに呼応して更に硬く、その威力は弾頭を潰し、運動エネルギーを霧散させる程にもなる。

 

 そんな水の盾を利用しつつ、巧妙に立ち回る陽炎だったが、余程癪に触ったのか、一旦榛名から完全に目標を移した朔夜(防空棲姫)から撃ち出された砲撃は、流石にどう足掻いても直撃すると思われたコースへ飛来した。

 

 

「シッ!」

 

 

 襲い来る暴力を前に陽炎は一息だけ空気を吐き出し、足から海へ推進力が伝わるギリギリの角度で体を倒しつつ、更に水面に近い右腕を肘の辺りまで水中へ叩きつける。

 

 それなりに速度が出ていた体は右腕に掛かる水からの抵抗(・・・・・・)に引っ張られ、腕を中心に全開で輪舞(まわ)る足からの推進力を横に向けさせた。

 

 歪な形に(えが)かれた直角に近い白い軌跡に朔夜(防空棲姫)が放った砲弾が突き刺さり、山の様な水柱を上げる事になるが肝心の獲物(陽炎)は再び波間に掻き消えてしまった。

 

 急な角度で逸れる軌道にカメラは追随する事は出来ず、それを見ていた吉野と夕張は思わず感嘆の声を上げ、今度は波の登頂を狙い飛ぶ様に移動する陽炎の姿を凝視していた。

 

 

「うっわ怖っ! アレ失敗してたら横転して転げまわったとこをタコ殴りにされてるトコですよ」

 

「ホントにねぇ…… 駆逐艦って足が速いのが特徴だけど、陽炎君のアレはそんなレベルの話じゃないね」

 

 

 夕張もそれなりに立ち回りが上手く、環境を味方に出来る術を心得てはいたが、その彼女から見ても陽炎の動きはギリギリと言える、どちらかと言えば無茶と表現しても良い物だった。

 

 それでも咄嗟にそう動けるという事は、少なくとも生死が掛かった戦いの中で自然と身に付けた物なのは確かであり、普段は援護に徹しそつ無い動きをしていた彼女の本気が余りにも激しい物だったのに驚いたのは、何も船内の者だけでなく、戦いの中心に居た艦娘達も同じだった。

 

 

『陽炎は波を読むのが上手いですから』

 

 

 艦隊用とは別に用意した連絡用の回線から不知火の言葉が聞こえてくる。

 

 その言葉を肯定するかの如く、今度は突貫しようとしていた冬華(レ級)の足元で水柱が上がる、それは直撃を示す青いペイントが足に飛び散り、転げはしなかったものの大きく体勢を崩させた。

 

 

波の底(・・・)で魚雷を放った……」

 

 

 夕張がそう呟く。

 

 波の高低が激しい位置で、艦娘の様に水面に立つ者が魚雷を放った際、それは波間の空間に晒されしばしば狙いが逸れる事がある、しかし波の一番低い位置、文字通り"底"で魚雷を放てばその心配は無く、狙った位置へ雷撃をする事は可能だが、同時に水の壁が邪魔して射出の瞬間目標が視認出来なくなる。

 

 

博打(ばくち)打ちだねぇ」

 

「陽炎ちゃんもそうですけど、龍鳳さんも結構イケイケみたいですね、ほら」

 

 

 夕張が指差すモニター、そこには前衛で起きた予想外の混乱に、仕方なく追加の航空機を放ち、更にそれを制御していた(空母棲鬼)の周りで発生した、細かな水柱が幾つか上がる様が映し出されていた。

 

 そしてその状況を作り出している張本人である龍鳳の姿は加賀の遥か前方、今正に殴りあいと言うべき様を展開している場所から程近い場所にあった。

 

 

 構えた弓から放たれる艦攻は、水面ギリギリと言うには生易しい、波間を縫う程の高度で飛翔し、砲撃戦で発生する水柱と爆煙すらカモフラージュとして利用つつ、数機単位で多方面から目標へ飛来していた。

 

 

「幾ら発艦の瞬間を気取られない様にする為だって、アレはちょっとやり過ぎだと提督思います……」

 

 

 轟音渦巻く只中で、仁王立ちとも取れる姿で弓を構える軽空母。

 

 吉野の前ではアワアワと、小動物を彷彿させる様な気弱さを見せた龍鳳は、"リンガ生え抜きの大物食い"と聞いていたイメージに違わぬ図太さと、大胆不敵な立ち回りを見せ付けた。

 

 

 これだけ巧妙に、更に集中的に攻められても尚深海棲艦部隊の勢いは衰える気配が見えない。

 

 単体で一艦隊を相手に出来る程の頑強さと手数、そして何より海域のボスであった頃の気概と意地が逆に狂気を引き出す形になっていた。

 

 

「イイ…… イイネェ! こんなに暴れても壊れない艦娘が沢山…… 笑いが止まらないよ!」

 

 

 全身のあちこちを青くしながら、多少は動きが鈍くなった冬華(レ級)は、それでもまだ目の前の榛名以外を近づけさせる事無く、前へ前へと体を押し出す。

 

 

「貴女とこうして相対するのは何度目でしょう、あの時とは違い、面倒だからと榛名が止めを刺さないなんて思わない事です」

 

 

 水飛沫の中を多少強引に、"武蔵殺し"と化した榛名がレ級に喰らい付く、金属がへしゃげる嫌な音が聞こえ、それでも構わず二つの狂気が交差する。

 

 使用している弾薬は致死性の無い演習弾ではあるが、肉弾戦で振るわれる徒手空拳にそんな安全な物は当然存在しない。

 

 

「ね…… ねぇ、コレ、演習だよね? マジもんの殺し合いとかじゃないよね?」

 

 

 モニターに映る戦況に口元をヒクつかせ、乾いた笑いを上げて夕張に確認する吉野。

 

 しかし話を振られた夕張はプイッと視線を逸らし、殴り合いまで責任は持てませーんと言いつつ我関せずの姿勢を見せる。

 

 

「ちょっと君達提督の話を聞いて! これ演習だから! ボコスカウォーズ禁止ぃぃ!」

 

 

 そんな悲痛な吉野の叫びは空しく砲撃と殴打の音に掻き消され、演習中止のカラフルな照明弾を花火の如く撒き散らしつつ轟天号が突貫するも時既に遅し。

 

 

 波間に漂う、絡み合ったビックセブンと朔夜(防空棲姫)だった塊や、互いの襟首をつかみ合い、今も尚絶賛ステゴロ中の二人(冬華と榛名)を狩人のような(まなこ)で虎視眈々と狙う魚雷管を構える陽炎。

 

 遠くを見ると何故か弓でバシバシと(空母棲鬼)に殴りかかり、追い掛け回す龍鳳らしき姿が見え、更に手前では何故か某犬神○を彷彿させる下半身だけ水面に突き出した加賀と、全般に渡り空気だった妙高がそれを救助しに駆けつける最中という、目を覆いたくなる様な惨状がそこに繰り広げられていた。

 

 

『ねぇ提督…… これ、バケツ用意した方がいいんじゃないかなって僕は思うんだけど……』

 

 

 小さな秘書艦は至極真面目な面持ちで己の主に上申する。

 

 

『周囲に敵性と認識される感無し、不知火は早急に負傷者を回収し、戦力を立て直した方がいいと具申します』

 

 

 直接それを見る事は無いからだろう、桜色の髪の目付きが鋭いぬいぬいが的確な処理の遂行を促す。

 

 

 こうして本気が行き過ぎ、演習であるにも関わらず、何故か高速修復剤が一山消費されるという軍事訓練は一旦中止され、更に入渠の際青筋を額に浮かべた吉野が、バスタブに向かって無言でひっくり返したバケツに冬華(レ級)(空母棲鬼)に加え、朔夜(防空棲姫)から上がった悲鳴が宵闇が迫る海に響き渡ったという。

 

 

 

 

 そんな珍事と言うか惨状を経ても何故か朔夜(防空棲姫)は恍惚な相を貼り付け、『ワイルドで猛々しいテイトクもステキ……』と間違った方向でLOVEを深め、新たな世界を垣間見せる言葉を口にしつつ周りの者をドン引きにさせたのという話は詳しく語られる事は無いだろう、多分。

 

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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