大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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前回までのあらすじ

 遂に役者が揃い踏み、戦艦棲姫姉妹が何故か激オコで怪獣大決戦の予感


 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2018/07/11
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたMWKURAYUKI様、K2様、有難う御座います、大変助かりました。


南海の覇者と海の覇者

 夥しい量の鉄が飛び交い、己の声さえも掻き消される地獄。

 

 有象無象の異形が限りなく湧き出る只中を切り裂く様に、前に進む存在が4つ。

 

 先頭に武蔵を据えた楔形の陣形で両翼には榛名に冬華(レ級)、そして中心には朔夜(防空棲姫)を配した形で彼女達は敵の只中を戦艦棲姫へ向けて突貫していた。

 

 

 質に勝るも数により劣勢に立たされ一時は撤退も視野に入れていた第二特務課艦隊だったが、北センチネル島付近の敵を駆逐し合流を果たした第一艦隊の援護を受け体制を立て直す事に成功していた。

 

 どこにこれだけの異形が潜んでいたのかと驚く程に敵は沸き続けているが、今作戦に於ける第二特務課艦隊の主目的は敵の殲滅ではなく戦艦棲姫の撃破及び鹵獲である。

 

 全てを駆逐するには恐らく兵站が持たないだろうが、そうでなければやり様は幾らでもある。

 

 

 しかし長考するには足りない時間で出された案はそれでも多くは無く、結果として打たれ強い戦艦級の3人を盾に朔夜(防空棲姫)を囲み包囲を突破、その援護を残りの艦で行うという正攻法かつ強攻策が採られる事になった。

 

 

「何じゃここも南と同じかそれ以上に敵が沸いて来よるの、どうなっとるんじゃまったく」

 

「ああ、これじゃキリがねーぜ、でも気付いてるか利根」

 

「何じゃ?」

 

「コイツら姉御(武蔵)達の周りに居るヤツ以外全部こっちを狙ってきやがる」

 

 

 遥か向こうで直進する4人の後ろには僅かながら道は出来ているが、それに反応する深海棲艦は直接対峙している者だけであり、視界に入る殆どはこちらを向いたまま。

 

 超火力艦を含む存在が包囲網を突破するとなればその向こうに居る存在は戦艦棲姫二体とリ級(重巡)が二体、数は同じでも質では上回る事になり、これだけ執拗に数で押してくる戦艦棲姫達がそれに対して無反応というのは木曽と利根にとっては解せない状況ではあった。

 

 援護の為に幾らか砲火を放つがそれに反応し向こうを向いていた異形がこちらへ転進、僅かに見えていた突貫組が切り開いた道が瞬く間に埋まっていく。

 

 

「ここら一帯の深海棲艦は例の"金のヲ級"が操っていたそうですよ、統率する頭が居なくなったから組織立った戦いが出来ない状況なんじゃないでしょうか」

 

「ふむ、なら今の状況に一応の説明はつくな、しかし赤城よ」

 

「何です日向さん?」

 

「先程から戦艦棲姫の砲撃が私に集中してる気がするのだが何故だろうか?」

 

「さぁ? 流石にそれは私にも判りませんねぇ」

 

 

 当初一番危険と思われた突貫組は然程の被害を受けずに突き進み、代わりに何故か援護をしている艦、特に日向に向けてその凶弾が集中していた。

 

 布陣はそれ程広くもない単横陣、一度に対する敵は2~3体であったが相手は殆ど駆逐艦級とあって日向にとっては脅威という程でも無かったが、流石にそこへ戦艦棲姫からの砲撃が加わると話は別になる。

 

 弾着位置を予測し回避するが、運悪く突っ込んできたロ級(駆逐艦)と交差し足を取られ倒れそうになる。

 

 気合で膝を付かずに体勢を整えるが、それを待っていたかの如く日向の目の前では異形が(あぎと)を開き臓腑の中から砲を剥き出していた。

 

 必中の間合い、避け様の無い一撃を覚悟した瞬間、異形の脇に水柱が二つ爆発音と共に発生し、粉々になったそれが水底へ沈んでいく。

 

 耳に聞こえる徹甲弾が飛来する音に身を翻しつつ上空を見れば、数機の航空機が旋回をしており、それが飛来する先を見れば足の無い水上偵察機を器用に手掴みで回収する艦娘の姿が確認できた。

 

 

「Yes瑞雲!」

 

「Nice瑞雲!」

 

 

 新たな水上偵察機を手投げしつつ艦娘がサムズアップすると、助けられた艦娘も同じくサムズアップで答える。

 

 後に瑞雲界で"瑞雲の龍"、"瑞雲の虎"と称される両雄が初めて邂逅した瞬間であった。

 

 

「のぉ木曽よ」

 

「何だ?」

 

「この……何と言うか風船から空気が徐々に抜けるような感覚はどうにかならんもんかのぉ」

 

「やめろ……判ってても言うんじゃねぇ、そーいうのは伝染するんだよマジで……」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 金属同士が擦れる音と共に火花が散り、凡そ艦隊戦と称するには憚れる至近での殴り合いが行われていた。

 

 有象無象の壁から抜け出し、獲物(戦艦棲姫)との間に邪魔者が居なくなった瞬間榛名が猛進、戦艦棲姫が砲の狙いを定め切る前にはその懐に飛び込んでいた。

 

 相手は"ヤマシロ"と呼ばれていた個体、全力のラムアタックを仕掛けたものの流石に下位個体の如くそれを正面から貰う事は無く、危な気ながらも体を逸らす形で勢いを流し、お返しとばかりに寄り添う艤装(・・・・・・)の豪腕が榛名を襲う。

 

 人の胴より尚太い腕が質量を無視した速度で迫るのを顔色一つ変えず、体の捻りと両足の主機を其々逆に回して高速ターンを決め、その勢いのままアームシールドを腕に叩き込む。

 

 硬質な物がぶつかる衝撃と振り下ろされた豪腕により発生した瀑布(ばくふ)が榛名を弾き、僅かばかり両者に間合いが生まれる。

 

 肉質的な見た目に反しての硬質さに眉を顰める榛名と、在り得ない機動で立て続けに即死級の打撃を叩き込んできた金剛型に目を見開く戦艦棲姫、戦艦という存在をある意味突き詰めた形の異形と戦艦でありながら至近での戦いに特化した艦娘の死闘が始まった。

 

 

「何? 今金剛型に構ってる暇なんて無いんだけど?」

 

 

 巨躯から放たれる豪腕の連撃を潜り抜けつつ突貫、それを数合繰り返すも受けるのは頭部の殆どが口という見た目の異形では攻撃が効いているのか表情から読み取る事が出来ない。

 

 ぶつかり合う隙にしなやかな白い打撃が混ざるが連携が秀逸でそれを叩く事も掴む事も難しく、咄嗟に砲を放つが太い腕が邪魔でそれも届かず。

 

 "要塞"

 

 凄まじい砲の威力に目が行きがちだが、榛名はこの戦艦棲姫の真価は自立して動く巨大な艤装と連携した徹底しての防御にあると見た、故に要塞。

 

 

 巨大な(かいな)に守られ目を細めてこちらを見る相手に、榛名の切り結ばれていた口が薄く開き、平時は可憐と呼ばれる程の整った顔に亀裂の様な笑みを浮かび上がらせていた。

 

 難攻不落、鉄壁、厚い防御。

 

 しかしそのどれもが榛名にとっては歓迎する物である、相手が守りを固める者ならばそれなりのやり方はある、むしろ榛名にとってそれは自分とは相性の良い相手であると認識を改める。

 

 

 要するに攻めればいいのだ、徹頭徹尾、全てを攻撃に充てればいい。

 

 

 主機をフル回転させそれを全て運動エネルギーに変えて叩き込む、当然弾かれる。

 

 しかし缶の圧力は最大のまま、主機の回転も最大のまま、その方向を少し変えるだけ、そうすれば衝撃で弾かれた隙間が再び零になり、時には相手の斜めにすっ飛んでいく。

 

 盛大な鉄の火花が線を引き嫌なこすれる音が繰り返される。

 

 その合間には至近から51cm連装砲を叩き込み、細い手足が見えればこちらも手足で応戦する、徹底した攻めだけの無謀に見える突貫。

 

 受ける側の戦艦棲姫にしてみればそれを()なし隙を見て一撃を叩き込めば良いだけ、ただそれだけの事。

 

 

「ゴアア……アア……アアア」

 

 

 それだけの事のはずなのに、何故不離一体にある艤装の咆哮が唸りの声色に変わっているのか、何故己の手足から赤い物が滲んでいるのか。

 

 

 何故目の前の金剛型はそんなに(たの)しそうな顔なのに、それが恐ろしく見えるのか。

 

 

 叩き込む衝角(しょうかく)はただの鉄製であったがそれには幾多の想いと加護が詰まっていた。

 

 徹甲弾を打ち出す砲は一人の戦艦の意地と矜持が完成させた物、そしてもう一人の艦娘が全てを捧げ鍛え上げたモノ。

 

 繰り出す手足は魂と心を削り続け、研鑽(けんさん)し尽し、一つの武器として成った物である。

 

 

─────────ただの戦艦棲姫如き(・・)が受け続けられるものか

 

─────────そう生まれただけ(・・)の存在が戦舟(いくさぶね)の頂点である戦艦の()を驕るな

 

 

 戦艦棲姫は手厚い盾(艤装)の内に居るから見えていなかった、幾多の攻撃を跳ね除け、粉砕してきた(ともがら)が徐々に削れていく様を、ジワリとに首元に迫る獣の牙を。

 

 丸太の如き腕が跳ね上がり、その身に衝角(しょうかく)の一撃を受けた時、初めてそれから生み出される衝撃の凄まじさを実感した。

 

 

「ぐぇぇぇ……」

 

 

 艤装だけでは無く戦艦棲姫本体も並の深海棲艦よりは遥かに打たれ強い、その体がくの字に折れ曲がり口から胃の中の物をぶち撒けた。

 

 

乾坤一擲(けんこんいってき)……今まで渡ってきた(地獄)の数と、削ってきた命の重さが一撃の重さになるんです」

 

 

 戦艦棲姫とほぼ変わらぬ体躯から振り下ろされる一撃は、腹を押さえ嗚咽を吐き出す体を水面(みなも)に叩き付けた。

 

 

 

 榛名に遅れる事数瞬、黒のパーカーが殺意を振り撒きつつ雷撃と砲撃の同時攻撃を放っていた。

 

 左右に偏った形で雷跡が走り中央を砲弾が飛翔する、慣性零からの移動では被弾は不可避の一斉射、船という三次元的回避が難しい存在に対しては効果的な、全ての攻撃手段を持つ冬華(レ級)だからこその必中の一撃であったが、これもまた戦艦棲姫の艤装が受け止める。

 

 巨躯が吼え火砲が凶弾を吐き出す、瞬時に冬華(レ級)を中心に水柱が束となって吹き上がるが、次の瞬間吼えていた艤装の口内で紅蓮が連続して弾け、僅かばかり巨体を仰け反らす。

 

 目を細めた戦艦棲姫が見る先には獰猛な笑みを(たた)え砲を向けた艦娘の姿が見える、その砲は艦娘が持つにしては見た事が無い程の質量を誇り、たった二発で自身の艤装がよろめく程の威力を考えるとただの見掛け倒しでは無い事は嫌でも認識できた。

 

 

「驚いたな、流石硬さにだけ(・・)は定評がある戦艦棲姫だ、この51cmの斉射を食らって平然としてるとはな」

 

「その破廉恥な出で立ちに品の無い眼鏡、知ってるわ……確か、そうタケゾウだったかしら? こんな南の海まで痴態を晒しに来たの? ご苦労な事ね」

 

 

 薄ら笑いを浮かべた戦艦棲姫の体を艤装が抱え上げる、それと同時に足元で魚雷が爆ぜ炎が混じった水飛沫の華が咲くが、見た目には然程の変化は見られない。

 

 完全に命中した雷撃すら物ともせず悠然とこちらを見下ろす異形を前に、冬華(レ級)の内なる狂気が高笑いと共に表に噴出した。

 

 レ級elite

 

 (かつ)て南海の悪魔と呼ばれ数多存在する深海棲艦の中でも凶悪という二文字を欲しいがままにしてきた存在、姫でも無ければ鬼でも無い純粋な狂気が黒髪の異形を抱えた巨躯へ向けられる。

 

 一発二発と凶弾を受けるが口から漏れる笑いは止まらず、被弾によって流れ散る赤に混じって両の(まなこ)からは紅い燐光が尾を引いていた。

 

 

「痛い、痛いよアハハハハ」

 

 

 口元に垂れる赤い筋を舌で舐め取りつつ、尚も直進。

 

 当然更なる被弾を被るが構わず受けた以上の砲弾を叩き込む、砲撃戦のみのダメージ交換は艦としての性能を考えると冬華(レ級)にとって分が悪い、それでも冬華(レ級)は止まらない。

 

 

「おい冬華(レ級)、少しは回避も考えんと身が持たんぞ」

 

「うん……判ってるんだけどさぁ、ねぇムサシさん」

 

「……何だ?」

 

 

 激しい砲撃音と雑音に混じり、冬華(レ級)の静かな声が聞こえてくる。

 

 武蔵から見える様は相変わらず正面から撃ち合うという物であったが何故か先程まで狂った様に上げてた笑いは既に無く、声は気の抜けた物になっていた。

 

 

「コイツ、かっこ悪い」

 

「……何だと?」

 

「かっこ悪いんだよね、戦艦棲姫(・・・・)なのにさ」

 

 

 冬華(レ級)は既に足を止め、正面からの撃ち合いに変わっていた。

 

 対峙する戦艦棲姫は艤装に抱えられる形でこちらを睨み、その巨躯からは激しい砲撃が雨あられと吐き出されていた。

 

 そして冬華(レ級)の顔は位置的に武蔵からは確認する事は出来ないが、その声色と背中は明らかに先程とは違う何かを感じさせる物を滲み出させていた。

 

 

「ハルナもナガトも、そしてムサシさんも」

 

「ああ……」

 

「戦ったら、皆見てるだけでボクはワクワクするってのにさ、コイツは違うんだよね」

 

「何がだ?」

 

 

 どの戦場でもどんな時でも笑っていたその口からはもうそれは消えていた、代わりに目から滲んでいた紅色が全身に、狂気が怒気と入れ替わっていた。

 

 

「全力で殴って、全力で迎え撃って、その為のボク達じゃない? なのにさ……コイツ全力で戦ってないんだ」

 

 

 冬華(レ級)の前に居る戦艦棲姫は適度な距離を保ちつつ、余力があれば応戦し、己から積極的に仕掛ける素振りは見せてはいない。

 

 対する者(冬華)からの攻撃が激しく、応戦した結果が激しい物になっただけで基本相手に対し積極性を見せない、それは及び腰になっている訳では無くそれで充分な効果を上げているからである。

 

 戦い方としては真っ当で効率的、理想的とも言える物であったがそれに今対峙している者は戦艦レ級、死しても尚戦艦という存在に憧れ異形となってまでそれを叶えた駆逐艦清霜の魂を内に秘めた存在である。

 

 在りし日の憧れが、戦いの中並ぶだけで心を沸き立たせた存在が、今小ざかしい戦いを愉悦の相を浮かべ行っている。

 

 冬華(レ級)の中にある、心の芯(清霜)がそんな物を見て許せる筈が無い。

 

 

「ああ、それは駄目だな、まったく以って駄目だ」

 

「こんなのが戦艦の名前で呼ばれていい訳ないよね」

 

「当然だ、なら冬華(レ級)、お前はどうするつもりだ?」

 

「真正面から…… ブッちめる!」

 

 

 最後は怒声を搾り出し、左右に急転舵を繰り返し懐に飛び込む。

 

 至近で交差する視線を遮る様に振り下ろされる太い腕は、黒パーカーから繰り出される怒りの拳で弾かれる。

 

 

「ソコカラ……降リテコイ!」

 

 

 尾から撃ち出された砲弾と、武蔵が狙い撃った一撃が同時に弾け、戦艦棲姫諸共冬華(レ級)も炎の渦に巻き込んだ。

 

 

 

「ちょっとハルナといい冬華(レ級)といい初手からガチ殺しモードじゃない、全部平らげずにちゃんと一割は残しときなさいよ」

 

 

 呑気な口調とは裏腹にワルツを舞うように数度回転すれば空に舞う敵機がダース単位で()ちていき、無遠慮に背後から砲撃を浴びせ来るリ級に対してはのらりくらりと攻撃を叩き込む。

 

 至近から幾ら砲撃を叩き込もうが笑顔を崩さず、逆に受ける攻撃がどれもこれもが全て急所を狙い撃たれる、理不尽の極みがそこに存在していた。

 

 姫と呼ばれる異形の中でも特に数が少ない防空棲姫とは一見華奢に見えるものの、その攻撃力は51cm連装砲を備えた武蔵とほぼ変わらず、装甲値で言うならバケモノと称される目の前の戦艦棲姫の二倍を超えるという規格外の存在である。

 

 絶対的な自信に裏づけされた余裕と戦い以外に興味の中心が移った結果、以前よりは本能に従う様な刹那的行動が無くなってきており、誰言わずとも既に第二特務課"深海組艦隊旗艦"という役割を朔夜(防空棲姫)は回す立ち位置に身を置く様になっていた。

 

 

「人修羅に武蔵殺しだけでも大概だと言うのにそれを上回る人外が脇を固めるか、その気になれば国の一つ程なら落とせるのではないか?」

 

「あの人が望むのならそれもいいかも知れないわね、けど」

 

 

 朔夜(防空棲姫)は手早くリ級を片付けると残るもう一体へと標的を定める。

 

 51cm連装砲が生み出す圧倒的な空気の壁を涼しい顔で潜り抜け、至近を過ぎる時、武蔵の耳に触れるほどに口を近付けた朔夜(防空棲姫)は何事かを呟き通り過ぎた。

 

 

 刹那、武蔵の眉根と口が歪な形に吊り上る。

 

 

『そんな下らない事をほざく人間だったとしたら、今頃は誰も彼もあの島(南鳥島)から戻っては来れなかったでしょうね』

 

 

 何気ない冗談交じりのやり取りだった、返ってきた言葉自体もそう受け取る事の出来る内容の言葉だった。

 

 だが耳に届くあの声は、冷たさは深海棲艦の姫級の物だった。

 

 その言葉を聞いた時、あの瞬間、武蔵は間違い無く自分は死んでいたと思った(・・・・・・・・・・・・)、もし砲弾を装填中でなかったら、あと少し本能が理性を上回っていたなら間違い無くあの背中に向けて砲火を放っていただろう。

 

 日和っている訳では無い、臆している訳でもない、ただ己は目的の為に自分の役割を回しているだけだ。

 

 朔夜(防空棲姫)から武蔵に向けた殺気はそういう意味が込められていた。

 

 

「やってくれる、こんな時にあんないい殺気を貰ってしまっては()る気が反対に向いてしまうではないか」

 

 

 別な意味で気合が入った武蔵は胃の腑から湧き上がってくる欲求を押さえ込み、目の前で互いを削り合う戦艦級の片割れに向け更なる猛火を浴びせる事でその憂さを晴らす事にした。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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