モンハン世界に流れたある噂。最終的には巨大な人が動いたその噂の裏で語られた、世界の秘密の一端。
これは、あまりにも非常識なハンター達の生態の、秘密の一端に迫る記録である。

1 / 1
モンスター×ハンター×ハンター

 その世界には、かつて偉大な文明があったという。

 だが永き時の果てにそれは大自然に埋もれ、無に帰したという。

 いずれ永き時の果てに、文明は復興するのであるが、それまでの間には、荒々しくも逞しく人が生きてきた時代があったという。

 

 これはそんな時代の、裏側の一幕。

 

 

 

 辺境のとある村に、腕利きの見習い武具師がいるという噂がドンドルマに流れてきた。

 腕利き、といっても鍛冶技術が優れているわけではない。

 むしろ目利き、といった方が正確かもしれない。

 もちろん、武具師を名乗るだけの腕前は最低限備えている。だが、土竜族や竜人族の名工に敵うほどではない。

 なのに、何故か彼の作った武器防具を使用しているハンターの方が生存率が高かった。

 あるハンターは語る。竜の吐く火炎の被害が、自分と仲間では明らかに違っていたと。

 あるハンターは語る。轟竜の咆哮が、自分にはほとんど聞こえていなかったと。

 あるハンターは語る。飢え狂う乱入者の涎に、この防具は耐えたと。

 調査の結果、その噂は悉くが真実であった。

 そして、新たに明らかになった事実。

 彼はその工房で、主に先達の作った武具の強化に携わっていた。その過程で、彼は顧客に助言をしていた。

 ――そいつを狩りに行くのならば、この防具より先週修理したあっちのやつに赤い籠手を組み合わせた方がいいと思いますよ。あれ火に強いですし。

 ――雪山方面に行くんですか? ならえっと……はい、このお守り付けときます。これ付けておくと雪がまとわりつきにくくなると思うんで。

 ――うーん、これだとなんか落ち着かないなあ……よし、これとこれとこれで飾りを作って……うん、なんか落ち着いたし、丈夫になった気がする。

 彼は別に何かの思惑があったわけではないが、その助言は常に的確であった。

 その村でクエストを受けたハンター達の生存率は、確実に上昇していた。

 そして。

 

 その噂が確実なものになる前に、ハンターズギルドが動いた。

 

 

 

 一人の男――仮名【蒼】は、本来着る仮名のとおりの蒼一色の装備ではなく、中堅どころのハンターが好む装備を適当に組み合わせて着用し、彼の前に立った。

 彼の目的は一つ。噂の彼が、どの存在に当てはまるのか、その見極めである。

 ギルドナイトでもごく一部のものにのみ伝えられる秘密。

 覚醒者。そして、転生者、転移者。

 古き時代の力、そして異界の知恵を持つもの。

 過去、ごく僅から見出され、時には討たれ、時には大いなる仲間となったもの。

 その者達によって明かされた、世界の秘密の一端。

 その中には、先史文明が滅びた原因の一部すら含まれている。

 そして件の彼は、そんな太古の力か知恵か、その一端を目覚めさせた可能性があった。

 

 

 

 (よかった……彼はどうやら覚醒者だ。生まれには問題無し。転生者特有の鍵言葉にも無反応。だがいささか『力』が強すぎる……早急に保護して、ハンターや他の鍛冶師から攻撃されることがないようにしなければ)

 この村は辺境であり、鍛冶師も代々引き継がれてきたものであるため、嫉妬のたぐいとは無縁だ。だが、彼の『力』が知れ渡れば、この『村』全体が狙われかねない。

 心ないハンターや志の低い貴族に目を付けられたら彼だけでなく、村すべてが不幸になる。

 彼は指示を仰ぐべく、鳩を送った。

 

 

 

 次にこの村にきたのは、仮名【赤】。彼女は伝承の資料に従い、彼の【目】を試す装備を着用してきた。

 着用中の装備と、修理の名目で持ち込む装備。実は正しく組み合わせると、着用者に不思議な加護が掛かると言われている装備である。

 彼女は件の武具屋にて、修理の依頼を出す。

 そしてそんな彼女を見た彼は言い切った。

 ――そんな装備で狩りに行ったら危ないです。これとこれが直ってからこちらを身につけてください。

 大丈夫、問題ない、当たらなければどうと言うことはない、とうそぶきつつ右手の盾をくるくると回してみせると、彼はなおも言う。

 この前開きスカートがないと、せっかくの鎧が生かせません、と。

 これを着ていれば、金獅子の雷光ですら受け止められるはずです、と。

 何故言い切れる、と聞く彼女に、彼は言う。

 この組み合わせからは、先年雪山に入り込んだ金獅子の雷光を受けて生き残った老槍使いの人が使っていたのと同じ、守りを高める力を感じます、と。

 どうやら間違いない、と、彼女は確信する。

 彼は覚醒している。

 異界の叡智は引き継いでいない。

 【スキル】の存在は把握しているが、【スキルの知識】は持ち合わせていない。

 惜しい、とも思った。

 彼の力は今の時代では希少なものになっていた。

 それは危険な力。あまりにも巨大でありながら、誰にでも使える可能性のあった力。

 彼女も概要は学んでいた。その力があればこそ、ハンターは死なない。

 巨獣の一撃を受けようとも、竜の爪に引き裂かれようとも。

 崖から飛び降りようとも、時には深海に身を沈めようとも。

 その身に纏う【念】の力がハンターを守る、と。

 

 

 

 ある日辺境に、とんでもない人物が現れた。

 村の大人ですら見上げんばかりの巨人。その人物に付き従う赤と蒼の制服。

 お忍びだと本人は言うが、その姿ゆえちっとも忍べていない。

 さすがに辺境の村でも彼の人物のことは知っていた。

 名前は知らない。だが誰もがその名を、名前と変わらぬ扱いで呼ぶ。

 

 辺境の家では彼の巨体は収まらない。故にその話は村の広場で行われた。

 何故【彼】が出てきたのか。それはこの村の若者を説得するには、ある程度の【禁忌】を事前に明かさねばならない、そう彼が判断したためであった。

 しかも彼を『呼びつける』ような真似は出来ない、とも。

 彼はこの村に土着している。引き離せば不幸しか呼ばないと、【彼】は判断した。

 【彼】と彼。二人は開けた広間で話し合っていたはずなのに、その声はまわりの村人には聞こえなかった。

 もっとも、【彼】が聞かれたくないと望んでいると分かって、わざわざ聞き耳を立てる村人は、この村にはいなかったのであるが。

 

 

 

 【彼】は語った。

 かつてこの世界には、古き巨大な文明があったと。それは辺境の村人であっても、ハンターと関わっていれば少しは知る事実。

 志あるハンターの中には、その謎を解き明かすんだと息巻くものもいた。

 その文明の時代のことは分からない、だが、一つだけ連綿と語り継がれていた事があるのだという。

 かつての世界は、人の内にあるとある力によって滅んだと。

 後のいろいろな研究により、その力は【念】と呼称されていると。

 そして――その力は、決して【人】だけのものではないのだと。

 

 【彼】は、念という力そのものについては語らなかった。ただ、それは命あるものから生まれ、その肉体を保護・強化し、自然の法を越え、己が意思によって無法を通じさせるものであると。

 まるで伝説の古龍みたいですねという彼に対し、【彼】は然り、と頷いた。

 驚く彼に、【彼】は語る。

 突き詰めれば、【龍】もまた、【念】の使い手なのであると。【竜】であっても【念】を使うことには変わりないが、その【奥義】に達しているのが【龍】という存在なのである、と。

 かつて人の文明は、【念】の力を得ていた。だが、それは大変危険な力でもあり、無秩序に振るわれればあらゆる秩序が崩壊しかねなかったという。人は今のハンターズギルドのような組織を作って念の無秩序な拡散を防止し、また念亡き人にその害が及ばぬように努力したという。

 だが、ある日その秩序は崩れた。要因は二つ。

 一つは、念の秘密の暴露。

 もう一つは、人ならぬ念の使い手。

 かつて念の力は、人のみが持つと思われていた。だが、それは真実ではなかった。

 ただでさえ強力な人ならぬものが、何故か人のもの力と思われていた【念】を手にした。

 中には人ならぬ身で人語を解し、それどころか話すものさえ現れたという。

 彼らは何故か【念】を使えるものを捕食することを好み、その過程で念の存在が暴露された。

 念持つ外来の恐怖に、世界一丸となって立ち向かえば、それは退けられたのかもしれない。だが、念無くばあまりにも脆く命を落とす世界。その恐怖が無制限の念の習得を要求させ、それを抑えきれなかったが故に、結果としてその文明は滅びたという。

 そして世界には、【念】の力が溢れ、いつしか世界は無数のモンスターが跋扈する、今の世界になったという。

 彼は悟る。自分が何となく理解していたこと。それは【念】の力なのだと。

 【彼】は語る。たとえ死しても、モンスターの強靱な肉体には、【念】の力を適切な【能力】に変換するための【因子】が眠っていることを。

 それを的確に引き出すことにより、一見【魔法】かなにかのように思われる様々な事が出来るのだと。

 ハンターは例外なく、【念】の力に目覚めたものである。だが、本来それと同時に生み出される【奥義】は、ほぼ失われており、今のハンターは、ただやたらに頑丈で力持ちの人でしか無いのだとか。

 だが、モンスターの体から作られた様々な武具・防具・そして彼が製作していた【お守り】や【装飾】によって、かつて存在した、またはモンスター達が備えていた【念の奥義】をかけらとはいえ引き出すことが出来るのだという。

 その力は、古龍達が見せるような、【真の奥義】からはほど遠い力でしかない。だがかけらほどの力でも、時には武器の斬れ味を強化し、また武器がすり減るのを防ぎ、火がまとわりつくのを遮断し、大地の揺れに適応させる。

 そして彼の持つ力……それは武器防具に潜んでいる力のかけらを感知し、それを引き出すための組み合わせを見抜く力である、と【彼】は語った。

 【彼】はさらに語る。【念】は流動・変化する力であり、時間が経つと同じモンスターであっても、また、素材の加工過程でも、その【秘めた力】は変化してしまうのだという。

 ギルドや龍歴院には、そう言った力の膨大な記録が残されている。が、先の言のとおり、それは時代によってたやすく変化してしまうものなのだと。

 そう言われてさすがに学のない彼も理解した。【彼】は、彼の力で、【今の時代】の記録を作って欲しいのだと。

 流動すると言っても、さすがに数ヶ月で変化したりはしない。少しずつ、しかし10年あれば確実に変化は起きる、と。

 彼に望むのは現在製作されている様々な武器防具の、秘めた力の数値化と目録の作成。

 これが分かれば、見る力が無くても秘めた力をある程度引き出せるはずであるから、と。

 

 

 

 後に【スキル】と称される不思議な力が知られるようなるのは後の話。

 やがて時代が下り、【念】のさらなる力を引き出す技術・【スタイル】と【狩技】が生み出されるのも、もう少し後の話。




モンハン世界の謎をオリジナルで解き明かしてみようとして設定考えたら、HUNTER×HUNTERの念能力になってしまってorz。
開き直って念にしてしまいました(笑)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。