真・箱庭転生 FINAL   作:VANILA

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女神転生4 FAINALのニュートラルルート二つをクリアし、思わず感銘を受けてしまい半ば衝動で書いてしまいました。どうか、楽しんでいってください。


プロローグ

少年は神を殺しうる力をもって、並ぶことのない唯一なる栄光の主に向かって、渾身の一撃を繰り出した。その一撃を受けた者は、余りの苦痛と恥辱に呻き声を上げる。その一方で、その一撃を放った少年は呻き声を上げる者とは対象的に、まだ余力を残しているようで、息を上げてすらいない。

 

目の前の存在の神性を全て消し去らんと、少年はその刃に全身全霊の力を注ぐ。この一撃で状況が動く、そう意気込んで気力を高める。

 

宇宙の星々の様に暗闇に輝いていた□□□□の神性はもう面影を残しておらず、ただそこには暗闇にそびえる□□□□と神殺しの青年、禍々しさと神々しさを併せ持つ悪魔、そして少年が立っているだけだった。

 

終わらせる。少年は一気に□□□□に畳み掛けようとする。だが

 

「!?」

 

少年は気付く。自分の足が動かない事に。そしてその原因が、自分の足に絡まる手の様な何かだという事に。

 

「主殿!?」

 

青年が驚く。無理もない。自分の慕う主はいま、手の様な何かに縛られると同時に、その身体が暗闇の中に飲み込まれようとしているのだから。

 

束縛された少年はその手の様な何かから逃れようと、もがく。青年も自分の主が暗闇にのまれないよう、少年の身体を引っ張る。だがどんな原理なのか、身体に力が入らず束縛を解くことができないうえに、青年がどれだけ引っ張っても身体はズブズブと暗闇の中に入っていく。そしてそうこうしている内に、身体の半分が闇にのまれてしまった。

 

すると、スマホを依代としていた髑髏の様な姿をした悪魔が、慌てた様子で少年の前に現れる。

 

「チィッ!奴め、□□□□に身も心も売ったか!マズイぞ小僧ッこのままではお前と俺の繋がりが……!」

 

だが、その言葉は最後まで続くことはなかった。

 

その言葉が続く前に、少年の全身が暗闇にのみこまれたからだ。

 

「主殿ぉッ!」

 

完全にのみこまれた少年の姿を見て、青年は叫ぶ。しかし、その声が少年には届くことは、もうないだろう。少年は跡形もなく闇にのまれて消えた。

 

身体がのみこまれていくのを感じながら、少年は最期に己の無力さを悔いた。結局、□□□□を倒す事は叶わなかった。全ての神を殺すと言ってかつての仲間を手にかけておいて、自分は何を為す事もなく消えていこうとしている。

たまらなく悔しい。

たまらなく苦しい。

たまらなく悲しい。

だが、もうその感情すら無くなる。

もう、この世界の事など、自分には関係のない事になる。

 

そして少年は暗闇に沈む。

 

 

 

何を為すことなく

誰かを守る事も出来ず

少年はただ無様に

暗闇にのまれていったのだった。

 

 

 

 

 

 

唐突に、自分が「改札口」と呼ばれる場所に立っている事に気が付いた。

 

  辺りを見渡すと、荒んだ大地が、まず目に入った。不思議な事に、その大地は赤黒い砂嵐が吹きすさぶ空間を、浮遊しているように見える。枯れた地面には線路が敷き詰められていて、それが遠い遠い急勾配の坂の先から、この「改札口」まで続いているようだ。

 

  次に黒い人型の、靄の様《何か》が目に入る。その姿はまるで、輪郭がぼやけた人間のようで、少し気味が悪い。

 

人型のその《何か》は、坂の先からこの「改札口」を目指して、ゆっくりと動いて来る。とても沢山の《何か》が此処まで来るが、どれも自分の事などお構いなしに、自分の後方にある「改札口」を通って行く。

 

「行かない……と。進まない……と」

 

  《何か》達はそれだけ言って、進んでいく。

 

  通って行った《何か》は、更に向こう側にある光の柱に入って行く。ただ、幾ら待っても、柱に入って行く“靄”はいても、柱から出てくる《何か》は一向に現れなかった。

 

  何故だかは知らない。だが、少年はその光景を恐ろしく思えた。何か、「後戻りが利かない」ような、「進まざるを得ない」ような、気分がするのだ。

 

  どうしてこんな所に自分は居るのだろう。明らかに普通ではないその光景を目にし、少年は焦りながら自身の記憶を手繰り寄せる。

 

「…?」

 

  少し焦って、ふと気づく。

 

  自分がさっきまで何をしていたのか、自分が何をしようとしていたのか、全く思い出せない。おかしい。それどころか、昔の事や知人の顔とその名前、自分の誕生日や年齢、そして

 

 “ 自分の名前が思い出せない”

 

  いよいよ、自分が今とんでもない状況になっている事に気が付き、どうしようもなく取り乱す。少なくともこの状況は普通じゃ無いと分かる、全く関係無いが計算も出来る。ついでに、言葉も分かるし常識も持ち合わせている。

 

  だが。

 

  自分が何処に住んでいたのかわからない。計算や言葉を何処で知ったか覚えてない。どんな世界での、どんな国での常識か分からない。

 

  自分に関する記憶を、思い出せない。

 

   慌てて自分の持ち物を漁る。鞄には回復薬しかなく、腰にはホルスターに入った銃と剣、左手のスマホホルダーに入っていたのは初期設定画面の名前欄にNAME LESSとでているスマホだけ。どれも自分の身元がわかるような持ち物ではなかった。

 

「やぁ」

 

  自分の記憶が無いという事実を知り焦燥感を感じていると、自分の背後から、急に穏やかな声が聞こえた。

 

  驚いて振り向くと、さきほどまで誰も居なかった場所に、車椅子に座った男性が悠然とくつろぎながら、こちらをジッと見つめている。

 

「どうやら君は、この世界から拒否され、別の世界に跳ばされるようだ。無理もない、なんせ君は、あの□□□□に喧嘩を売ったのだからね」

 

  この男はなにを言っているのだろう?何故、自分は跳ばされなければいけないのだろう?そして、□□□□に喧嘩を売ったとはどう言う事なのだろう。急に現れたこの男は何を自分に伝えようとしているのだろう。

 

  様々な疑問が、少年の頭を駆け巡る。そんな少年の様子を車椅子の男は暫く眺めた後、やれやれと頭を振ると

 

「……そうだったね。君は記憶を抜き取られているんだった。これでは少し話し辛いな」

 

  と、言った。

 

  ザッと半身を引いて、何故か覚えていた、戦闘の構えをとる。その口振りは、どうして自分の記憶が無いのか、知っているものだった。もしかしたら、こいつが記憶喪失の原因かもしれない、と少年は警戒する。

 

 しかし、その男は少年が構えるのを見て、「私は敵じゃないよ」とだけ言い、両手を上げるだけだった。

 

  それだけの行動だったが、その男の言動に敵意は感じられず、少なくとも敵ではない事を確信し、少年は自身のとっていた構えを解く。

 

  少年が構えを解くのを見て、男は満足そうに頷くと、言葉を続けた。

 

「君はこれから、前と同じ悪魔や神が蔓延る世界に足を踏み入れる事になる。そして、その世界で君は再び、悪魔と神の闘いに身を置くことになるだろう」

 

  男の言葉に、反応する。再びという事は、自分は昔、闘っていたのだろうか。先程、無意識のうちに構えをとっていたり持ち物に銃や剣といった武器を持っていたあたり、自分は間違いなく戦闘経験が多かったように思える。しかし男は、

 

「いずれ分かるよ」

 

  少年の考えてる事に被せる形で、そうとだけ言う。この事について話すつもりはないという事だろう。

 

「今回も、君は大きな選択を強いられるだろう。混沌か、秩序か、はたまた中庸か。どれを選ぶかは、君の自由だ。ただ」

 

  男は一旦言葉を止め、頬杖をつく。

 

「……今回も“君の中庸”を選ぶなら、僕も少し、協力してあげよう」

 

  ……“君の中庸”とは、何なのだろう。普通の中庸とは違うのか、どうしてその選択に協力するのか、自分は何者でどうして記憶が無いのか、お前は何者で何故自分にこんな事を話すのか。

 

 そう目の前の男に問いただそうすると、男は「もう、お別れのようだ」と少年に告げる。

 

  すると、足元にヒラリ、と何か白い物が落ちたのが見えた。それを拾い上げてみると、白い手紙だという事が分かる。宛名の無い手紙を手に取って見ていると、男から「開けてみるといいよ」と声が掛かる。

 

  少し不審がりながらも手紙を開ける。中に入っていた白い便箋には、こう書かれていた。

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。己の才能を試す事を望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを投げ捨て、我ら“箱庭”に来られたし』

 

  その文を読み終わると、途端に身体が輝きだし、視界が白く塗りつぶされる。当然、目の前の男の姿は光で見えない。

 

「そういえば、“記憶の無い君”には、まだ自己紹介してなかったね」

 

  相変わらず白い視界の中で、前から男の声がする。何とか白い視界から逃れようと必死でもがく少年とは裏腹に、落ち着いた穏やかな声で、男はこう言った。

 

「私の名前はスティーブン。……東京の救世主だった君が、箱庭で何を為すのか。僕はずっと見守っているよ」

 

  男の、「スティーブン」の声を最後に聞いて、少年の意識は途切れた。その名前に強い既視感を覚えながら。

 

 そして

 

 

 

  少年が目を覚ますと、4000メートル上空に、自身の身体が投げ出されているのに気づいた

 




ダグザ「俺の出番が少なくないか?」
出番が多すぎると核心とも言える所まで言われそうだったので、出番を少なくしました。ダグザ好きの方は申し訳ありません。

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