プロット書いたりメガテンやり直したり「カリギュラ」遊んだりして(無関係)遅れてしまいました……。
問題児達との初コンタクトの後、黒うさぎは彼らを自分のコミュニティのリーダーである、ジンという少年に紹介する為、箱にの外壁と中側を繋げる階段の前に向かっていた。
しばらく歩いていると、遠目に石造りの階段に座るダボダボのローブを纏った少年が見えてくる。かなり幼く見えるがその少年こそ、黒うさぎのコミュニティのリーダーである、ジン・ラッセルだ。
「ジン坊っちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」
「あ、黒うさぎ。お帰り」
そう呼びかけるとジンは、はっと顔を持ち上げてこちらに向かって小走りで駆け寄ってくる。
「お疲れ様、黒うさぎ。そちらの女性二人が、件の?」
「はいな、こちらの御四人様がーー」
クルリ、と黒うさぎが振り返り、
カチン、と身体が固まる。
「……え、あれ?あの殿方二人は?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪い全身から“俺問題児!”ってオーラを放つ殿方と、無口無表情で“近寄んな”オーラ放つ乱射魔の殿方は?」
「あぁ、十六夜君とナナシ君のこと?十六夜は“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言ってあっちの方へ行って、ナナシ君は何も言わず何処かへ行ってしまったわ」
それを聞いて黒うさぎは呆然とし、うさ耳を逆立てて問いただす。
「な、なんでお二人を止めてくれなかったんですか!」
「十六夜君は“止めてくれるなよ”って言ってたし、ナナシ君はしばらく左手の板切れをいじっていたかと思ったら、急にどっか行っちゃったんだもの」
「なら、どうして黒うさぎに言ってくれなかったんですか」
「二人から“黒うさぎに言うなよ”と言われてたから」
「嘘です!絶対嘘です!単に面倒くさかっただけでしょう!そもそもナナシさんが喋るわけな
いでしょう!」
「「うん」」
二人の返答に黒うさぎは膝から崩れ落ちる。数時間前まで新たな人材に胸躍らせていた自分が妬ましい。
そんな黒うさぎとは対照的に、ジンは蒼白になって叫んだ。
「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのため野放しになっている幻獣が!果てではなくても、凶暴な魑魅魍魎達が箱庭の外にはうろついています!今二人は、かなり危険な状
況です!」
「あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー……?斬新?」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
ジンは二人に事の重大さを伝えようとするが、二人はそれを聞いても肩をすくめるだけだ。
黒うさぎは一旦溜め息を吐き、立ち上がり。
「はぁ……ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御二人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒うさぎはどうする?」
「問題児二人をとっ捕まえて参ります。事のついでにーー“箱庭の貴族”と謳われるこの黒うさぎをコケにした事を、骨の髄まで後悔させてやります……!」
先程までの悲しみから黒うさぎは立ち直り、怒りのオーラを身体中から噴出させ、ツヤのある黒髪を淡い緋色に染めていく。
「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフをご堪能下さいませ!」
そう言って、外門の柱に垂直に張り付いた後、猛烈な脚力で踏みしめる。全力で柱から跳躍した黒うさぎは弾丸の様に飛び去り、瞬く間に残った三人の視界から消えていった。
(はぁ……。どうやら此処に呼ばれた人達は、どうも一筋縄ではいかなそうだ。)
黒うさぎの去った後をボンヤリ見つめ、ジンは今後の自分達のコミュニティの雲行きを憂いた。
(そういえば)
ジンは少し前、黒うさぎと召喚の儀に立ち会わせた時の事を思い出す。
(たしか、彼らを呼び出すために出した手紙は、三通じゃなかったっけ。)
あの時確かに、出した手紙は三通だった。しかし、黒うさぎの話では、呼ばれたのは目の前にいる女性二人と、今どこにいるかわからない男性二人が呼び出されたそうだ。
一人、多いのだ。
もしかしたら、三人を召喚する時に、一人巻き込まれてしまったのだろうか?それとも、四人の内の誰か一人が時空を超えてこの箱庭に来たのだろうか。
結局この疑問が氷解する事はなく、目の前の女性達に箱庭の中を案内させてくれと頼まれ、ふと立ち上った疑問は自然と彼女らとの談話の中で、霧消してしまったのだった。
なお、この後喫茶店で一服していた三人の前にガルドが現れ、ジンのコミュニティの惨状をバラしたり、ガルドの悪行が暴かれたれたりと一悶着があった後、ガルドのコミュニティにギフトゲームを申し込む事になるのだが、それはまた後の話である。
◇
同時刻、ナナシは一人箱庭の果てを目指していた。
最初ナナシは黒うさぎについて行こうかと思ったが、左手のホルダーに入ったスマホを操作していた時に目に付いたメニュー欄のアプリを試す為に、先に箱庭の果てを目指す事にしたのだ。
初期設定を済ませたスマホには、三つのアプリが入っていた。
まず一つは『悪魔召喚プログラム』。説明が書かれてないので具体的にどうなるのかは分からないが、名前から察するに“悪魔”を文字通り“召喚”するアプリだろう。
スティーブンの言葉が噓偽りのないものだとしたら、あの世界はこの箱庭同様に悪魔や神々が跋扈していた世界で、人はその中で暮らしていたそうだ。
という事は、前の世界は仲間となる悪魔、“仲魔”を召喚して、外を跋扈していた修羅神仏共と戦い、渡り合うのにこのアプリを使っていたのかもしれない。
その機能は前の世界、今の世界のどちらでも役に立つものだろう。そうなれば善は急げ。早速、仲魔を紹介して戦力を強化し、来たるギフトゲームの時に備えるべきだろう。
だがその前に、悪魔を仲魔にするにあたって確認するべきなのは、“箱庭”でその機能がしっかり動くかどうかだ。
別に召喚アプリが動くかどうかの確認は、箱庭でもできる。しかし、アプリが想定どうり動かなければ、大惨事を招くかもしれない。
悪魔が召喚されないくらいならまだしも、アプリが暴走して自分が扱えない程強大な悪魔が大量に、それも人々が生活している中で召喚されるかもしれないのだ。
いきなり箱庭の中でアプリが暴走し、強大な悪魔が無尽蔵に湧き出たら、それこそシャレにならない。
その為にも、箱庭という野内ではなくその外である野外に出て、アプリの機能の動作性を確認しなければならない。そしてなるべく、箱庭から遠い場所でそれを起動した方がいいだろう。
二つ目は、『邪教の館』。『悪魔召喚プログラム』の時とは違い、先程起動すると、ダミ声が印象的なヒゲのアプリ内のAI、《ミドー》がアプリの使い方を説明してくれた。
《ミドー》曰く、このアプリは仲魔を合体し、より強い仲魔を“創る”ものだ、と。
そして、仲魔を得るには悪魔と交渉したり、服従させる事で仲魔を得ることができるのだ、と。
胡散臭い、と《ミドー》の言葉を疑ってかかったが、箱庭の果てに向かう途中で【スダマ】という悪魔に交渉をしかけてみると、
「チミ、ナナシ君?チミの評判、仲間からいつも聞いてるよエブリデイ。チミ良い子みたいだから、ぼくちゃん仲魔になってあげるよ、ロハで」
そう言うと【スダマ】は目の前から消え、かわりにスマホのストックの欄に【スダマ】が追加されていた。
交渉する前にアプリポイントでインストールしたアプリ、『悪魔たらし』の影響もあるだろうが、悪魔を割と簡単に仲魔にできたのだ。
一体でも仲魔を得られたのはかなり大きいが、『邪教の館』アプリを試す為にも、あと何体か仲魔が欲しいところなのだ。
そこで、修羅神仏が跋扈している箱庭の外で悪魔を見つけ次第、片っ端からスカウトしまくる事にしたのだ。
そして三つ目、『マップアプリ』。正直、これが箱庭の外を目指す最大の理由となるアプリだ。
このアプリの機能はかなり凄い。
どう凄いのかというと、このアプリは自分がかつて通った場所を自動でマップに登録し、同時に地図を作り出すのだ。
地図というのは探索の要ともなるが同時に、作るのに手間のかかる重要アイテムだ。
そう、地図作成には“手間がかかる”のだ。それこそ某、世界樹の根元のダンジョンを探索するRPGだったりとか、二人のワイルド野郎が学園祭するRPG並に手がかかる。かといって面倒だと地図を作らなかったら、探索する時に迷ってしまうのは必至だろう。
そこでこの『マップアプリ』だ。あらかじめ探索する場所をスマホでサーチし、ただ歩き回るだけだ勝手に地図を作ってくれる為、重要なアイテムがお手軽にできあがる。しかもアプリの価格自体は只。このアプリを作る胴元が金欠になってないか心配になる。
こんなに有能なアプリ、今使わなければ製作者に失礼だろう。そうナナシは考え、この広い箱庭の外を“マッピングする事に決めたのだ”。
ここまで自分がマッピングに夢中になるのは、もしかしたらかつての自分もかなりのマッパーだったからなのかもしれない。半ば確信に近い空想がナナシの頭を駆ける。
そんなこんなで箱庭の外にサーチをかけたところ、この箱庭をマッピングすることも可能らしい。これだけ広ければ尚更地図を作りたくなってくるな、とナナシは意気込む。マッピングをするなら、まずはマップの端に行き、地図の空欄を埋めていく方が捗るだろう。ならばこの“世界の果て”まで歩を進めるとしよう。
そう考え、ナナシは“世界の果て”を目指すのだった。
◇
暫く走り続け、仲魔を集めながら箱庭の果てを目指していると、遠目に断崖絶壁と大きな湖が見えてきた。これが箱庭の果てだろうかとナナシがマップを覗くと、《ミカド湖》と書かれた水色の輪とここが果てだという証明である、ラインが引かれていた。
ここまでくれば、召喚の被害は起きないか、とナナシは考え『悪魔召喚プログラム』を起動する。
『SUMMON OK』
その機械音声と共にスマホ画面に奇妙な六芒星が浮かび上がる。周囲にはバチバチと放電のような現象が起き、スマホの画面が光り出す。
パシュン、という音と共にナナシの目の前に異形の者が現れる。
現れた異形の者はとても不思議な姿をしており、頭は二つの馬頭でできていて、手足は蹄だが二足歩行をしている。体色は淡い青色で、どこか凛々しさを感じさせる佇まいをしていた。ひとまず、『悪魔召喚プログラム』の名の通り、悪魔を呼び出す事に成功できた事にナナシは安堵する。
「ほう、また我を召喚したかナナシよ。つくづく汝と我は固い繋がりで結ばれているようだ。よかろう、今回も汝の仲魔となり、力を貸そう」
召喚して直ぐ目の前の異形の者は、召喚者であるナナシにむかって嬉しそうに言う。召喚できただけでなく、自分の仲魔にまでなってくれるそうだ。そして口振りから察するに、この悪魔は記憶を失う前の自分の事を知っているみたいだ。
早速目の前の異形、《ケンタウロス》と呼ばれる悪魔に、自分の過去を聞いてみることにする。
「……なに?記憶がない、だと?それで自分が何者かを調べている?……随分ヨソヨソしい態度だと思っておったら、そういうことか」
腑に落ちたとでも言いたげに、《ケンタウロス》はしばらくうなづいく。
「ならば知る限りの事を汝に話してやろう。といっても、我は途中で別の悪魔と合体したから、合体した後の汝はどんなだったか知らんが」
それでも良いから、自分は何者だったのか教えてくれ。そう目で言うと、《ケンタウロス》は「相、分かった」と言い、記憶を失う前の自分の事を話し出した。
「汝は我等、悪魔と戦う人外ハンターと呼ばれる職についていた。我がいた時はまだまだひよっこの立場だったがな。そんな汝に、仲魔として我を召喚した悪魔がおった」
心なしか《ケンタウロス》の目が鋭くなる。
「……《ダグザ》。汝の主である、ダヌー神族の長たる神だ」
『こぞ……、…いつ等を……せ!せい……俺たちの……てに……ってもらう!』
《ダグザ》、その名前を聞いて、脳裏に低い男の声が響く。初めて聞いたその声は、懐かしさを感じるもので、ナナシはその懐かしさに困惑する。ナナシの困惑を気に止めず、《ケンタウロス》は話を続ける
「《ダグザ》は汝を大層気に入っておったな。汝が何度も死ぬ目に遇わぬよう、我を汝の仲魔にするため我を奴の強大な呪力で縛り付けおった。まぁ、今では別に気にしてなどおらんが」
「……?」
何度も死ぬとは、どういうことだろうか。その口振りだと、自分は何度でも死ぬ、つまり何度でも生き返れるということにとれるが。そうナナシが言おうとすると。
ナナシの首もとに鋭い剣の一閃が飛んできた。
◇
ナナシが得体の知れない者の襲撃にを受けている丁度その時、黒うさぎは件の問題児の一人である十六夜が竜神を倒しているところを発見し、同時に自分の所属しているコミュニティが危機的状況だということが十六夜に発覚していた。
黒うさぎの必死の懇願の甲斐あってか、十六夜はコミュニティに協力してくれるようになったが、他の問題児達に現在のコミュニティの現状を伝えるように、十六夜に言われてしまう。
本当の事を言って、あの方々は協力してくれるだろうか。主にナナシが。
「……あ!そ、そうでした!ナナシさんも探し出さなければいけないんでした!」
「ん?ナナシがどうしたんだよ?」
先程からやらなければいけないことや、度肝を抜くような事が頻発していた為、ナナシも探しさなければならないのを忘れていた事に黒うさぎは気付く。
「ナナシさんがいつの間にか黒うさぎ達からはぐれてしまったのですよ!箱庭の外は、さまざまな人外の者達が人間を襲おうと、目を光らせているのです!いくら乱射魔のナナシさんでも、危険過ぎるんです!」
「やはは!要はあいつ、迷子になってんのか!命がけの迷子たぁ、なかなか斬新な趣向じゃねぇか!」
「冗談を言っている場合ではありません!」
ナナシの危機的状況を十六夜に伝えるが、今はコミュニティ内で詳しい説明を受けているであろう問題児の内二人と同様に、十六夜は特に反省した様子もなく、やははと笑っている。
「はぁ……。仕方有りません。ナナシさんを一刻も早く探し出しましょう!そして、事情を聞いてもらえるだけ聞いてもらって、さっさと半殺しにされましょう!万が一、億に一に、絶対無いでしょうけど、ナナシさんが協力して下されば儲けものです!」
「もうお前の中ではあいつに断られる前提なんだな……」
「むしろ、半殺しで済んだら良いなとすら思えますよ……」
「どうだろ。あいつはお前の企みに気づいた上で、お前のコミュニティに入ったように見えたが」
十六夜のその言葉を聞き、黒うさぎは不思議な顔をする。
「え?でしたら、何でナナシさんは私たちのコミュニティに入ってくださったのでしょう?利益になるようなことなんて、ないですのに」
「さぁ?ナナシはナナシなりに、なにか考えて入ったんだろ」
黒うさぎの問いに十六夜はそうとだけ言って、「それより、ナナシを探すぞ」と黒うさぎに背を向けて走り出す。
「え!あ、ちょっと待ってください十六夜さん!というか速!?」
予想以上のスピードで走る十六夜に驚きながらも、「黒うさぎの前を走るだなんて百年速いのですよ!」と十六夜の後を黒うさぎは追いかける。亜光速で走る二人は、そのままナナシを探しに行ったのだった。
◇
首に一文字の切り傷が入る。遅れて、赤く少し粘性のある血液が、つうっと流れる。ナナシの首を的確に狙った剣戟は、ナナシ本人のとった回避行動によって避けられる。しかし剣戟の余波まではかわせず、ナナシは首の皮一枚裂かれてしまう。
「ほぅ……まさか、かわされるとは思わなかったぜ」
ナナシのすぐ横で粗暴そうな声が発される。二撃目がくる、そう予感して声の聞こえた方から飛び退くようにナナシは動く。シャッ!という音が元いた場所からする。二刀の剣を避けたナナシの目が、飛び退いた瞬間に、その剣戟を放つ輩を捉える。
それは、豹の姿をしていた。しかし、その手足は人間のように、二本の足で立ち二本の手で剣を振るっている。まさに王者、といった風格をその肢体から放っており、しかもそれはファッションなのか、厳ついふんどしで股を隠し、緑のマントを羽織っている。
その豹は、ナナシを敵意に満ちた目で見据え、静かに
「今度は外さんぞ」
殺し合いの開始を、宣言する。
ナナシ「箱庭で悪魔召還プログラムを起動すんのは危なそうだな」
中島「ワイなんてルシファー召還しちゃったしな!」
STEVEN 「悪魔と戦うんだから多少の危険性はしょうがないさ」
ナナシ「なんだお前ら」