・この作品は東方Projectの二次創作作品です。
・習作です。
博麗神社上空。時刻は3時前。博麗霊夢と霧雨魔理沙が空に浮かんでなにやら打ち合わせのようなものをしている。
「いいか?スペルカードはお互い1枚。どんなときに使ってもいい。とにかく、相手に弾を当てられれば勝ちだぜ」
「どんな方法でも負ける気はないけど、まあいつもとおんなじね」
どうやら、これから2人が行う『弾幕ごっこ』についての打ち合わせのようだ。
彼女らはよく色んな事を弾幕ごっこで決める。今日は2人呑みの際に、どちらがお酒代を出すかを勝負の勝敗で決めようということである。
「さ~て、今日はどういう戦法で行くかな・・・」
「どんなせこい手で来るのか、足元を掬われないようにしないと」
しかし、そんなことは勝負の手前ではどうでもよく、2人は弾幕ごっこに意識を集中させていく。
「・・・よし、決めた!」
魔理沙は箒に乗る姿勢を直し、帽子から何かを取り出す。そして、その瞳はしっかりと霊夢に照準を定める。
「行くぜ!今日は『止まらない』!」
帽子から取り出したものは水晶のような透き通った丸い水色の石を自分の前上方に放り投げる。魔理沙から少し離れた空中で、その丸い石は静止する。
「『衛星』ね!」
霊夢は攻撃が来ることを見越して、魔理沙と魔理沙が投げた『衛星』から目線を離すことなく、後方にサッと移動して距離を取る。
霊夢が予測したのは、衛星からばらまかれる大きな星弾を、魔理沙の後方からのレーザーによって小さな星弾に分裂、拡散する弾幕だ。離れることで弾幕が見える範囲を大きくし、弾がどこから飛んで来るのかをしっかりと見据えれば、霊夢には避けるのは容易い弾幕だ。
しかし、霊夢の予測は外れた。
「離れたな!鬼ごっこの始まりだぜ!」
ミニ八卦炉を構える魔理沙。砲口の向きは霊夢・・・ではなく『衛星』だった。
「!!」
閃光が走る。霊夢はとっさに体を右に反らせた。
その直後、一筋の光、魔理沙が使う『イリュージョンレーザー』と同じ光の筋が霊夢の左袖をかすっていく。袖の一部は焼け焦げた穴が空き、収納していた『妖怪バスター』の一部は舞い落ちる桜のように地面へと散っていく。
『妖怪バスター』は霊夢の基本武装であるお札。素早く速度のある御札を投げつけて相手をぶっ飛ばす、霊夢らしい力技。それを使える回数が、この弾幕戦では減ってしまった。
「うそ!?袖が!?」
「やっぱり避けたか。だが、あいつの弾数が減ったのは運がいいぜ!」
魔理沙の奇策は直撃までには至らなかったが、十分に効果を上げた。
『衛星』は魔理沙が開発中の『レーザー偏向衛星(仮)』である。開発途中で、まだ『イリュージョンレーザー』程度までのレーザーでしか使用はできないが、レーザーを任意の方向に曲げることができるマジックアイテムだ。
魔理沙の帽子の裏に隠された子機から、魔法で衛星に指示を送り、思い通りの方向にレーザーを曲げることができる代物。その精度は高いが、欠点はガラス並みの強度と強力なレーザーを打つとその制度が著しく下がることが挙げられる。
「8回投げられるうちの6回分くらいは削ったかな?これでだいぶやりやすくなったはずだぜ」
散っていく妖怪バスターを目算でおおまかに数える。魔理沙は霊夢と何度も弾幕戦をしているので、いつも同じような戦い方をする霊夢の手の内は殆どを知り尽くしている。
「いきなり知らないことを仕掛るなんて危ないわね!」
逆に、魔理沙は戦い方を逐一変化させてくるので、霊夢は手札を知り尽くしているわけではない。しかし、そんな不利な状況でも、大体6割ほどの勝率を勘と力技で勝ち取っている。
そんな化け物じみた霊夢の実力であろうと、魔理沙は屈することなく、前向きに進み続ける。
「今のを避けるお前もお前だぜ!ほらほら、今日の私は『止まらない』んだぜ!動け動け!」
初撃で相手のペースを奪った魔理沙は、衛星にイリュージョンレーザーを連発。何発もの虹色のレーザーが衛星に当たって、霊夢周辺めがけて広範囲に光の雨のように降り注ぐ。
「あーもう、調子狂うわね!」
霊夢はレーザーをかわしながら、光の雨空域から離脱するべく上昇していく。
「要は、その衛星を潰しちゃえば・・・」
衛星と魔理沙よりも高度を取り、破れていない右袖から、腕を振るようにして『封魔針』を2本右手に持たせる。そして、衛星に狙いを定めようとするが、
「・・・あれ?見えない?」
衛星はどこにもない。ついでに魔理沙も消えている。
「こっちだよ!」
「あ!!」
声が聞こえたのは後ろ下方。霊夢が光の雨を抜ける直前、魔理沙は衛星を回収し、霊夢を通りすぎてスピードをつけながら旋回し、霊夢に向きなおしていた。
「衛星は壊されちゃかなわんからな!それ!」
魔理沙は自らの双方に小さな魔法陣を展開。加速しながら『マジックミサイル』を霊夢に向けて発射する。そのため、初速が加わり、いつもより弾速が速い。
「きゃあっ!?」
ペースが乱されている中で、スピードのついたミサイルに対応が遅れる。霊夢はとっさに結界を展開し、魔力の塊の激突と爆発を防いだ。妖怪バスター2回分の御札を使っての緊急防御だ。霊夢の妖怪バスターの残り使用回数はゼロになってしまう。
そして、魔理沙はスピードの乗ったまま減速することなく霊夢を通り過ぎる。
「そ~ら!流れ星!」
それと同時に、魔理沙はスペルカードを頭上に掲げた。
【魔符「ミルキーウェイ」】
魔理沙は載っている箒の穂先にミニ八卦炉を装着、大小無数の星形の弾幕が放出される。穂先の延長線上にいた霊夢は、その弾幕の中に飲み込まれていく。
「また来るの!?」
さっきからひっきりなし、魔理沙のペースで続く弾幕の雨あられに少し混乱する。魔理沙を探して針を投げつけようにも、星形弾幕が濃いせいでその姿は見えない。
そんな状況であっても、身体を傾けたり左右に細かく移動することで、霊夢は魔理沙の弾幕を華麗にいなしていく。
「まだまだ行くぜ!いやっほーう!!」
霊夢が避けるのに専念していると、今度はその左から。魔理沙は天の川のごとく、カーブする軌道を弾幕で空に描き、霊夢がいる方向に身を向けマジックミサイルを打ち込んでくる。
「そこっ!!」
弾幕の第一波が薄くなってきたおかげで、霊夢もその魔理沙を目視する。そして、考えることなく右手に持つ2本の針を魔理沙に放った。
「どわぁっ!?」
魔理沙は危険を感じ、とっさに身体を右に傾ける。針は間一髪、魔理沙のスカートをかすって通り過ぎ、魔理沙は霊夢から見て左下の方向へと曲がっていく。
そして、スピードがつきすぎた魔理沙の体は、地面に近づいてくる。
「ふんぬぅぅぅ!!」
思いっきり箒を起こし、八卦炉から火を吹かせる。下方向へのスピードは無くなり、木々からすれすれで低空飛行。
「くっそ、やっぱり少しでも油断するとやられるぜ、肝が冷える!」
首を動かし、霊夢を注視しながら魔理沙は体を少し左に体を傾け、箒を起こし急旋回しながら序章していく。遠心力で少し血が頭から下がるが、スピードはあくまでも落とさない。
それはなぜか。魔理沙の動く後方には妖怪バスターとは別のお札。追尾する『ホーミングアミュレット』だ。スピードを下手に緩めると、お札のの追尾性能に負け、弾にあたってしまう。
「当たりなさいよ!」
「当たってやれるか!」
霊夢はホーミングアミュレットをどこからともなく取り出した陰陽玉から打ち続け、動きまわる魔理沙の後ろにつく。
「くそ、後ろに!」
「形勢逆転よ!」
たった一回の霊夢の射撃で、ものの見事に霊夢と魔理沙の立場は入れ替わる。今はもう、勝負の方向は霊夢のペース下にある。右へ左へ、上下へ曲がり続けても霊夢は距離を保って狙いをつけてくる。
「ちいっ!!」
魔理沙は再度、ミルキーウェイの星型弾で霊夢の追撃を振り切ろうとする。だが、目が慣れたと言わんばかりに、霊夢は背骨を軸とするような回転で避けながら魔理沙を追い続ける。
「ああ、もう、ジリ貧ね!!」
霊夢はこのままじゃ埒が明かないと感じ、スピードを緩めてしまう。魔理沙は構わずスピードを落とさず旋回、星をキラキラと天の川を作り続ける。
「!!」
そして、霊夢は前方にスペルカードをかざした。
【霊符「夢想封印」】
「まとめて終わらせてやるわ!!」
霊夢が両手を広げると、体の中心から5色の光の玉が生まれ、霊夢の体を回り始める。その光は魔理沙の弾幕を、霊夢に当たる前に飲み込み、消していく。
「はあっ!!!」
霊夢が叫ぶと、夢想封印の光は魔理沙めがけてホーミングしていく。その光は魔理沙より若干速く、魔理沙の後ろでどんどんと距離を縮めていく。
「来た来た来た!!」
しかし、魔理沙の顔は緊迫するどころか、待ってましたと言うような表情だ。何かを仕掛けるつもりなのだ。
「試してやるぜ、対霊夢用の機動!!菫子が持ってきた本にあった『バレルロール』って動きを!!」
魔理沙は少しスピードを落とし、箒の柄を少し持ち上げ、同時に体重を左にかける。するとどうだろう、魔理沙はくるくると、軸が頭の方向にあるような螺旋を描くように回転する軌道で飛び始める。
「くぅううううっ・・・!」
激しい機動に魔理沙の視界は回る。夢想封印は迫ってくる。
「・・・!!」
1つ、2つ、3、4、5つと続け様に、光の玉が魔理沙の後ろから視界の前に飛び出してくる。
「嘘!?」
夢想封印、敗れたり。避けられた霊夢は思わず声を漏らす。
魔理沙が言っていた『バレルロール』という動き。それは、外の世界での空戦、戦闘機同士の追尾ミサイルをかわす際に有効な戦闘機動だ。螺旋を描くことで、進行方向を変えることなく弾の追跡を振り切る事ができる。
魔理沙は、外の世界の女子高生の宇佐見菫子のつてを使い、弾幕ごっこに役立ちそうな本を取り寄せていたが、その本の中に『フライトシューティングの極意』といたようなものが混じっていた。それを読んで魔理沙はこの機動を学習したのだ。
「・・・いよっしゃ!!!」
回避したことを確認した魔理沙は停止。箒の穂先のミニ八卦炉を取り外し、霊夢を見据える。
「一気に勝負を決める!!ミルキーウェイ、最大出力だ!!!」
そして、ミニ八卦炉を霊夢に向ける。弾幕はパワーだと、ミニ八卦炉にパワーを集中させる。
「え!?きゃっ!!」
夢想封印を魔理沙に完璧に避けられた霊夢は動揺、太陽を背にする魔理沙を直視してしまう。陽の光の残光が霊夢の視界を奪う。
「どりゃああああ!!!!」
星、星、流れ星。綺麗なきらめきが霊夢に降り注ぐ。その光景に、霊夢はただ立ち尽くし、見とれているだけだった。
「いたた、久々にかまされたわ~」
「ふっふっふ、久々にかましてやったぜ」
星が闇の中できらめいている。それに混じって、地上におしゃべりなも光も混じっている。
「はい、八目鰻と熱燗おかわりね~。酒は飲んでも飲まれるな~♪飲まれて良いのは暗き闇~♪」
「闇に飲まれたら、目が見えなくなっちゃうじゃない」
「あ、そうか。見えなくするのは私の十八番なのに~♪」
焼き八目鰻の屋台。歌う店主がやかましいその屋台で、霊夢と魔理沙はお酌を注ぎ合いながら今日の弾幕ごっこについてを語る。
「しかし、あんた、今まで防御でもしないとあれをやり過ごすことできなかったのに、まさか避けるとはね~、んく・・・きくわ~!」
「お前の最初のアレも普通よけらんないぜ、ぐいっ・・・か~っ」
アルコールの鼻が通る感じが二人の気分を高めていく。
「弾幕ごっこの後の・・・むぐむぐ・・・」
「お酒は・・・きゅっ・・・」
「「ぷはぁっ!最高ね!!」だぜ!!」
わはははと、酔いが回ってきて笑い出す2人。今日はなぜか、特に上機嫌なようだ。
「賑やかなのは~夜の鳥~♪」
「楽しいのは~夜の歌~♪」
「それは私の歌~!盗らないで~♪」
弾幕ごっこの次は、歌合戦が始まってしまったようだ。3つの歌は互いに競い合う。
「ああ~明日の~♪」
「あははは!いいわよ~魔理沙!」
「わ、私のほうが~うまいんだから~!真夏は~♪」
歌合戦はしばらく続いた。霊夢と魔理沙、そして何故かミスティアも仲良く歌い続けた。
その後、霊夢が屋台の支払いをツケにして帰ってしまったのはまた別のお話・・・