B.S.A.A.極東支部。北米支部や西部アフリカ支部の某主人公達のようには流石になれないけれど、自分達は自分達で出来ることをする。
そんな名前も出てこないモブの話。

銃の描写などをした事が無かったので練習として書きました。自分の今後に生かせればなと思っているのでアドバイス等あれば是非お願いします。

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これはバイオハザード6の少し前の話。


B.S.A.A.極東支部

2011年 11月

 

中国のとあるショッピングモールの一角。

 

そこには普段では考えられない程現実離れした光景が広がっていた。

 

粉々に割れた窓に血濡れた床。バラバラになったマネキンに混じって人間の腕や脚が転がるといった光景が何が起こったのかを物語る。

 

 

 

 

バチッ……バチバチッ……

 

天井の照明はその殆どが破壊され、光を喪った配線は左右に揺れながら火花を散らしていた。

 

そんな光の無い暗がりを進む大きな影が一つ……二つ……徐々に数を増していくソレらは次の獲物を求めて徘徊する捕食者であり今回の事件の犯人達であった。

 

 

 

ガサガサガサガサ

 

銃の下部に取り付けたライトの光にその眼を赤く反射させる者の正体は……体長は2m程はあろうという蜘蛛の群れ。

 

自然界では決して生まれることのない筈のこの蜘蛛達は人為的なもの。その昔何処かの馬鹿げた野郎が作り上げたTyrant Virus(タイラントウイルス)……通称「T-ウイルス」に何らかの形で感染した蜘蛛がその正体だそうだ。

 

 

 

目の前の敵に気づかれる前に隊長がインカムに手をかける。

 

「HQ、こちら第二部隊。エリア3にてB.O.W.を発見、処理を開始する」

 

そう隊長が司令部(HQ)に報告すると同時にハンドサインで俺達部下に指示を行う。

 

[総員、戦闘配置]

 

『HQより第二へ。各自判断により敵を殲滅せよ』

 

[撃ち方始め]

 

 

無言の指示を受けた俺達は後方確認の隊員を除いてそれぞれの射線に入らないよう立ち位置へと回り……一斉に引き金を引いた。

 

幾つもの発砲音が重なり耳に入るのは銃声のみ。発火炎(マズルフラッシュ)でほんの僅かに照らされた大蜘蛛達はこちらに気づくももう遅い。

 

 

被弾した箇所から次々と緑色の体液を噴出させながらのたうち回る蜘蛛に俺達は引き金から指を離さない。

 

俺達の隊長はよく言う。

 

[相手が動きを止めたとしても撃て。そいつがもう動かない確信なんてどこにある?肉塊になるまで徹底的に殺れ。そうすりゃ奴等は動かない]

 

俗に言う『フラグ』に似た状況に何度も陥った事のある隊長の経験則だ。

活性死者(ゾンビ)なら必ず頭を吹き飛ばし、ゾンビ犬(ケルベロス)は首から先を切り落とす……それが転がっている死体でもだ。そうすることでソレ等が蘇ることは殆ど無い。

 

 

大蜘蛛達の体がバラバラになったところで隊長がハンドサインを示す。

 

[撃ち方止め]

 

すると射撃を行った隊員はすぐに引き金から指を離し弾倉を切り替える。

 

 

発砲からここまででほんの数秒。殆ど弾倉内の弾薬は減っていなかったが、次の接敵の際に弾切れを起こしたりすれば洒落にもならん。

 

 

 

空になった薬莢が地面に触れる音が廊下に鳴り響く中また通路内を進んでいく。

 

「第二部隊よりHQ。エリア3の脅威を排除、これより生存者の捜索に移る」

 

『HQ了解。第二部隊、生存者捜索に当たれ』

 

「了解。…………行くぞ」

 

隊長の言葉に全員が同時に頷くと、そこから殆どハンドサインのみのやり取りで道を進んでいく。

 

「クリア」

 

「クリア」

 

「クリア」

 

「オールクリア。次だ」

 

なるべく静かに部屋をクリアリングし、生存者を探す……が、見つからない。

 

生存者の姿も無ければ死体も見当たらない。

……B.O.W.の姿もだ。

 

小隊内の不安感が徐々に増してきた頃、通信が入ったのは突然の事だった。

 

 

『第一よりHQ、エリア5にて敵B.O.W.と交戦中!戦況は拮抗、増援求む!』

 

銃声混じりの報告が状況を告げる。その声に余裕は見られず、焦りと恐怖を孕んでいた。

 

 

『HQ了解、第二部隊。エリア5の第一部隊の援護に向かえ』

 

「第二、了解。これよりエリア5へと向かう。……行くぞ、急げ!」

 

「「「「了解」」」」

 

物静かだった忍び足は騒がしい駆け足へと変わり、それぞれ身に付けた装備が激しく音を鳴らし出し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『第一よりHQ! エリア5より緊急撤退!』

 

第一部隊との合流を目指して数分。彼らであろう発砲音がヘルメット越しに聞こえ始めていた。

 

『第一部隊 詳細を報告せよ 何が起こっている?』

 

『敵B.O.W.の増援多数!現状の戦力では対処しきれない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長、この曲がり角を右へ。その先のドアです」

 

「ああ……お前ら、戦闘に備えろ」

 

扉の前で瞬時に各自の弾倉、手榴弾、拳銃、ナイフを改めて確認する。

 

「やれ」

 

変形が原因か、固く閉じられていた非常扉の枠を小型爆弾で吹き飛ばし全員が扉の先へと押し入る。

 

 

扉が地面を叩く鈍い金属音。突入と同時に大きく聞こえるのは敵B.O.W.の雄叫やB.S.A.A.隊員による銃から発せられる破裂音だった。

 

 

 

 

「「「エ"エ"エ"ェ"ェ"ェ"!!」」」

 

突入の直後に自分の視界に入ったのは広い空間と幾つもの太く四角い柱。血に濡られたエスカレーターには死体が数体散乱し、十数匹にも及ぶ人型B.O.W.が第一部隊へと迫っていた。

 

 

 

即座に銃を構える…………が、間に合わない。

 

自分が引き金を引くが先かB.O.W.が第一部隊員の喉をその爪で掻き切るが先か……そんな瀬戸際の中、すぐ耳元で聞き慣れた破裂音が響いた。

 

火薬が炸裂する乾いた音。

その瞬間グチャリという組織を破壊する音がここからでも聞こえてきそうになるほどハッキリとB.O.W.の頭が破裂する様子が目に焼き付く。

 

 

 

「総員、敵勢力を殲滅せよ!」

 

隊長だった。

 

極東支部の誰よりも多くの修羅場を潜り抜けてきた彼は俺達第二部隊の誰よりも速く照準を敵に照らし合わせ、尚且つその引き金を引いたのだ。

 

最早脊髄反射とも言えるそのレベルは誰も追い付けない。

 

時々化け物じみた事を本当にこの人はやってくれる。そんな恐怖とも安堵とも言える感情が自然と俺の顔を引き攣らせた。

 

 

 

 

それからは一瞬だった。

 

「フラッシュバン!」

 

叫びながらピンを抜いた閃光手榴弾を敵の蔓延る辺りへと放り投げると直ぐに遮蔽物へと身を隠し、目を瞑る。

 

すると真っ白な閃光と火薬による爆音が瞬く間に空間を包み込み敵の視力と聴力を奪ってゆく。

 

 

ある個体は両手で顔を抑えその体を蹌踉けさせ、またある個体は突如視覚と聴覚を奪われたことに状況が理解できず、自分の最大の武器であるその爪を四方八方へと振り回していた。

 

「第二部隊よりHQ、エリア5にて第一と合流。これより敵勢力殲滅に移る」

 

『HQ了解。第一部隊は負傷者及び生存者の安全確保を最優先、第二部隊はその援護を行え』

 

これ程までに隙が露になる事はない。待ってましたと言わんばかりに鉛の雨が降り注ぎ、敵を一網打尽にしていく。

 

「リローディング!」

 

「カバー!」

 

その雨が止むことが無いように交代で弾倉を交換。第二部隊の何人かは第一部隊の隊員へと自分の予備弾倉を渡し、全員の銃が射撃可能な状態になるようにしていた。

 

 

 

 

数秒後。人型B.O.W.の原形は何処にもなく、あるのは大量の爬虫類じみた鱗をした肉塊とそれを飲み込む血の海。幾つかの個体は未だに痙攣を起こしており、警戒を緩めることは全員なかった。

 

 

ゆっくりと死骸へと歩み寄り、その額へと銃口を押し当てる。

 

銃声。その数は1つではなかった。

 

……首から上を完全に失ったその体は1度だけ攣縮のような動きを見せると、糸の切れた操り人形のように再び動くことは無かった。

 

 

 

 

 

「状況終了。各員警戒を怠るな」

 

構えた銃を下ろすことなく隊長がそう口を開き、深い溜め息をついた。

 

ふと後ろを振り向くと片腕の肘から先が見当たらない隊員が2名程が布で出来た簡易担架に乗せられ運ばれていくところが目に入った。

 

「第二よりHQ、敵勢力を排除。次の指示を乞う」

 

『HQより第二部隊、敵B.O.W.は確認されていないが警戒を続けろ』

 

「第二了解」

 

 

 

 

 

結局今回の作戦はそれで終了した。テロリストが起こしたバイオテロによってバラ蒔かれた人型B.O.W.……コードネーム[ハンター]はその数25体にも及び、後に来た処理班がその数に手を焼いていたそうだ。

ちなみにあの大蜘蛛は元々あの大きさでの運搬は難しいらしく、おおよそ地下か何処かで事前に育成していた可能性が高いらしい。

 

被害に遭った一般人11人とB.S.A.A.隊員2人が帰らぬ人となったが、二次災害が発生する前に事態を鎮圧出来たのでこれでも比較的マシな方だと隊長が言っていたのがずっと俺の頭を過っていた。

 

もっと早く行けば助けられたんじゃないか?そう自分の胸に聞いていた時があった。そんな時だった。

 

[いいか?……戦場ではヒーローになろうとするな。自分を犠牲にしようとも思うな。俺達は全ての命を助けられる訳じゃないし、英雄でもない。限りある自分の力で助けられる範囲で助ければいい。そうやって自分を慰めてけ]

 

などと彼は言っていたが、どれが正しい答えなのかなんて俺にはわからない。

 

 

 

だが出来る事ならある。

ここ……B.S.A.A.極東支部の人間として今出来る事は……バイオテロリズムによって使われるB.O.W.を殲滅する事だ。

 

 

 

 

 

(ひとまず……戻ったら報告書だな)

 

複雑に絡まり始めた思考を拭い去るように頭を振ると、俺は帰路に就く装甲車に揺られながら目を閉じた。

 

 


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