桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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今回もちょっとしたイチャラブがあります。
後半には新展開が始まりそうな予感が…


1-17 マーカスに忍び寄る危機

 

※※※

父島沖

『加賀』艦橋

 

 

『加賀』に戻ると出迎えは村上のみだった、加賀は艦載機整備の指揮に行っているらしい。

 

「村上、情勢はどうだ?」

 

「補給については80%完了している、残りについても逐次実施させている」

 

端末には各部隊ごとの進捗状況が表示されており、ご丁寧に『補給完了』『未補給』と各種自衛艦や艦娘が分類されている。

 

「ぼちぼちといったところか…。

あと2、3時間すれば国会で決議やらが

出る予定だったか?」

 

「うむ簡潔に言えば『進撃』か『撤退』の二択だな」

 

「どっちになっても嫌な予感しかしねぇんだけど?」

 

「それには同感だな」

 

 

……

 

 

その時本土の国会は荒れに荒れていた。

ドヤ顔で作戦案(部外向けに公開可能な大まかな概要だが)を提出した防衛省・自衛隊は野党に弾糾された。

 

 

「イエスかノーかでお答えください!

作戦の立案と総理以下閣僚の指揮監督が悪かったんじゃないんですか?!」

 

「結局無駄金を海に

バラ蒔いただけじゃないか!」

 

「護衛艦や軍艦で軍隊ごっこさせているわけじゃないんだぞ?!」

 

「〇〇政権は日本を軍国化させ国民を戦地に送ろうとしているのではありませんか?!」

 

「小笠原はどうなる?!

南鳥島は深海棲艦に包囲されているらしいじゃないか!!」

 

「戦死者が出た責任をどう取るつもりだ?!遺族への謝罪や見舞金だって必要となるのだぞ!!」

 

野次が飛び交う中、防衛大臣は脂汗が止まらなかった。

 

今まで総理の腹心として真面目に働いてきたのに、その苦労がここで泡となっては不味い。

 

必死に批判をかわし続け、議会は一旦休憩時間に入った。

 

 

……

 

 

「加賀も揃ったから3人で手分けして

艦娘のメンタルケアをするぞ」

 

「了解しました(した)。」

 

 

整備の指揮が終わった加賀も加わったところで引き続き艦娘のメンタルケアに努める。

決して艦娘が打たれ弱いという訳ではないが、空襲で被害を出してしまった事に落ち込んでいる艦娘がいるのは事実であった。

 

流石に艦娘全員に直接会いに行くわけにもいかず、端末に装備されたビデオカメラを使ったテレビ会議を行う。

 

テレビ会議と言っても大抵は雑談の域を越えない程度の体調確認だ。

加賀と村上に元気そうな艦娘を割り当て、

俺自身は落ち込みが激しいと思われる村雨、父島守備艦隊にいた大淀や秋月のケアを実施する。

 

 

……

 

 

…………

 

 

「…またテレビ電話してきてよね!」

 

「『電話』じゃなくて『会議』な。

なんだよもうちっと落ち込んでるかと思ったら女子高生のテンションで話されるから困ったぜ。

でもマジで辛かったら言ってくれよな、

戦闘になったら次はいつ無線以外で話せるかわかんないからな。千代田が無理に笑う顔なんて、皆喜ばないし俺だって嬉しくないぞ?」

 

「全然平気とはいかないけど私は大丈夫よ、それより村雨や大淀、秋月の事よろしく頼むわね」

 

「おう任せとけ、んじゃまたな」

 

テレビ会議と言う名の個別井戸端会議も殆ど終わり、千代田が終わって残りは村雨と大淀、秋月のみとなった。

 

 

……

 

 

…………

 

 

村雨と大淀についてはやはり一筋縄ではいかなかった。

 

村雨は「私が守備艦隊に居れば」とひたすら悔いた。大淀に至っては自嘲するように「私の連合艦隊旗艦なんて所詮御飾りですよ」と笑った。

 

村雨はその場にいなかったとはいえ、護衛艦時代の乗員を助けられなかった。

大淀は奮戦虚しく

戦死者を出してしまった。

 

実戦ではいとも簡単に人が死ぬ。

かつての大戦もそうだったように、

深海棲艦との戦いに於いても全世界では桁違いに死者は増えていた。

 

俺としては飛鷹の時の様に直接会いに行ってあげたかったが、上からテレビ会議機能が有るのだから無闇に離れるなと命令されているため不可能なのだ。

 

それぞれ一時間ずつのテレビ会議であったが、ある程度までメンタルが回復した事から良しとした。

 

 

(あーだこーだ言葉を並べるよりも

ただ抱きしめてあげた方がよっぽど効果があると思うんだがな…)

 

セクハラとか抜きに、抱きしめるという行為はメンタルケアに効果的というのがよくある話だ。

 

また落ち込んでいる人に「頑張れ」と言うのはタブーであるから、どう励まそうか試行錯誤の繰り返しであった。

 

艦娘それぞれに適した言葉と方法があり、

俺は文字通り『実戦で』やるしかなかった。とはいえテレビ通信が切れたら隠していた感情が出る可能性も否定出来ない。

 

 

俺は戦闘指揮よりも艦娘の身上把握ならぬ心情把握に必死だった。

 

 

※※※※

 

 

「最後は秋月か…」

 

あと一人だから頑張ろうというやる気と

最後に『難関』が来てしまったという諦観のような、我ながら名状し難い感情の混沌が心に渦巻く。

 

何故『難関』なのかと言うと…

 

 

「お~い秋月ぃ『無線』に反応しろよぉ~」

 

 

そう、秋月が無線やテレビ会議に応答しないのだ。村雨や大淀とは違う、面会謝絶ともいえる状態か。

 

「不味い、これはとても不味いぞ…」

 

俺用の端末を始め各種無線機器が置かれている司令官室で一人呟く。

 

もう放っておいてくれ、こう言いたいのだろう。秋月は真面目だから過剰に落ち込んでいると推測がつく。

とはいえそのままにしておけるはずもなく、あの手この手でコンタクトを取ろうとする。

 

「秋月お疲れ様!

今加賀が『善哉』作ってるから内火艇で来いよ、いい匂いしてるぞ?」

 

…ダメっぽい。

 

「秋月姉大丈夫、相談乗るよ?」

 

「どうしたの秋月?

この雷様に話してごらんなさい!」

 

心配に思った他の艦娘も無線に混ざるが、

秋月はそれでも応じない。

 

その後も色々やってみたが案の定だめだった。秋月は頑なに拒み続ける。

 

打つ手が無いと諦めかけたが、俺は最後の賭けに出ることにした。

 

 

「おっし無線機が壊れてるんだな、

そんなんだな?!

待ってろ今から泳いでお前のフネまで行ってやっからな!」

 

身につけているものを全て外し始める。

ヘッドセットのマイクを床に置き、

鉄帽、救命胴衣、安全靴、作業服、シャツや靴下をわざと音を立てながら脱ぎ始める。

 

部屋の外には加賀や村上がいるようで

ドアがノックされ始める。

 

静かにドアを開け

「心配すんな、演技だよ演技」

と答える。

 

加賀は俺の顔を見た後視線を下にずらす。

途端に真っ赤になり叫びながら走り去ってしまった。

 

(やべ、パンツ一丁じゃん…)

 

まあいいかと考え床に置いたヘッドセットを手に取る。

 

「真夏とはいえパンツ一丁で海は心細いなぁ…、うおっサメもいるなぁ、でも秋月と話せないなら行くしか無いなぁ…んじゃ『秋月』までちょっくら泳いでくるわ、提督代行は村上よろしこ~」

 

「……ま、ま、待ってください司令ッ!」

 

 

<<ニヤリ>>

 

「おおっとぉ?無線機が直ったのかぁ?」

 

「ぐっ…音声だけでよろしければ応答しますので、海に飛び込むのだけはご遠慮ください…」

 

「そうだよな、もし飛び込んだら『また』戦死判定食らっちまうかもしれないからな、その辺は前回経験した秋月もよくわかっていることだしな」

 

白々しいセリフであるが、秋月を土俵に立たせることができた。

後は俺の手腕にかかっている。

 

脱いだ作業服を着て端末のテレビ会議ソフトを立ち上げる。

秋月はやや遅れて反応したが、やはりあちらの映像は無かった。

カメラにカバーか何かしたのであろう、

だが進展したのは事実。

 

「やあ思い詰めているようだね。

無理に話さなくてもいい、ただ俺の独り言を聞き流すだけでいいさ」

 

そう前置きをして何を話そうか考え込む。二人だけのテレビ会議に沈黙が訪れる。秋月も沈黙に耐えられないようで溜息や息遣いがスピーカーから流れる。

 

(ええーい、ままよッ!!)

 

正攻法が思いつかなかった俺は言いたいことを言うことにした。

 

 

「前回の父島の時に曙や秋月に言ったよな、みんなが好きだって。

それはもちろん恋愛感情としてだ、

出来るなら全員と結婚して幸せな家庭を設けたい、可能であれば平和に暮らしたい。

今は無理でもきっと平和が訪れる時が来る、そうしたら秋月とも結婚していつか元気な子供も産んでもらいたい」

 

「な、な…け、けっこ…?!

こ、こどっ…こどもッ?!」

 

突然の結婚発言に言葉も出ない秋月、

そりゃそうだろうな。

 

「秋月は真面目だし、いつも俺の事をキラキラして目で見てくれている。

『この秋月、関心致しました!』みたいな真面目で天然キャラも可愛いし、なかなか俺としても高評価」

 

「そ、それは…その…」

 

「防空駆逐艦『秋月』、自衛艦隊旗艦も経験した初代護衛艦『あきづき』、二代目『あきづき』と三代に渡って防空艦として生を受け、四代目と呼べるかわからないが再び防空駆逐艦『秋月』として、艦娘として生を受けた」

 

「ですが私は…先の空襲で守りきれませんでした…」

 

「そうだな、それは紛れも無い事実だ」

 

一転して厳しい現実を告げる。

 

「だが被害を抑えようと死力を尽くした事は当時いた護衛艦からも報告が上がっている。

『てるづき』艦長からメッセージをもらったよ。

『同じ名前の妹を守ってくれてありがとう』ってね。

 

『てるづき』に命中確実の魚雷を身を挺した件、本当に秋月はよくやったよ。

俺は何もしてないけど自慢の艦娘だよ全く、直接頭を撫でてあげたいぐらいにね。

 

戦死者を出し、艦隊を守りきれなかったのはどうしようもない。

秋月や大淀、護衛艦もいて艦載機もいたにもかかわらず被害が出てしまったんだ、単純に不可抗力だよ。

むしろ『この程度で済ませることが出来た』と思った方がいい」

 

「この程度…ですか?」

 

戦死者を出しておいてこの程度と発言したことが海幕や国会に知られたら糾弾されるのは間違いないだろう。

しかしこれは事実である、戦場にいる身だからこそ実感できるものもある。

 

「伊勢は守りきれなかったとはいえ、伊勢も秋月には感謝しているはずだ憎まれることなんか有るはずがない」

 

亡くなった隊員には申し訳ないが、任務部隊としても最善を尽くしたのだ。

現代兵器と艦娘の奮戦を以ってしても完全に被害を抑えることは叶わなかった。

 

「司令…」

 

「諺に『いつも月夜に米の飯』というのがある。苦労の無い気楽な生活であってほしいが、現実は上手くいかないという意味だ。

防空駆逐艦の秋月がどれだけ頑張ってもパーフェクトスコアで勝てるわけじゃ無い、ましてやイージス艦がいても被害が出たんだ。

秋月は全力を尽くした、次こそは被害無しに出来るように邁進すればいい。

 

それに自分を責めたところで何も生まれない、この前の俺のようにね」

 

秋月は前回の父島沖海戦で提督が落ち込んでいたのを思い出す。

 

敵水雷戦隊との海戦前に自分たちを好きだと言ってくれた提督が自身を責めた時は胸が張り裂けそうな思いだった。

 

「あの夜は満月だったね、秋月には無茶を言ったけど俺は『月』という存在が好きなんだ。

地球の衛星として周る月、防空艦としての月。どちらも側で守ってくれている気がしてね、オマケなんかじゃなくむしろ月が居てくれるからこそ自分が輝ける、必要不可欠な引き立て役なんだと俺は思う。秋月が居てくれるからこそみんな安心できる、俺だってそうさ。

ここで一つ歌を詠んでみようか。

 

『秋月が 居てくれるからこそ 頑張れる 真面目な後輩 キャラとねんごろ』

どうだ、見事な短歌だろ?」

 

「クスッ…司令の欲望が見事に短歌になっていますね!」

 

「こう見えて中学校の頃俳句や短歌に興味があってな、多少知識があるのさ」

 

秋月の皮肉に普通に返答する。

 

「出港時も昔の俳句を詠んでいらっしゃいましたね」

 

「五月雨がガチガチに固まってたからね、

多少解してあげようと考えたらそれが浮かんだ…ってところかな」

 

「流石です、この秋月感服致しましたッ!」

 

「その言葉を待っていたよ。

秋月には、いやみんなには元気でいてもらいたい。例え辛い未来が待っているとしても…。

目を輝かせ俺の後ろをオプションの様にくっ付いて歩く秋月の可愛い姿を見せてもらいたい」

 

「可愛いだなんて、そんなぁ…」

 

「いいや可愛い。

そんな秋月と次は一緒に歩きたい。

後ろではなく横にいて欲しい」

 

 

秋月(こ、これってもしかしてプ、プロポ…)

 

 

既にプロポーズ的発言はしているのだが、

やはり期待してしまう秋月。

 

 

「…だから帰ったらデートに行こうな!」

 

<<ズコー!>>

 

「今すごい音したけど大丈夫か?」

 

「…大丈夫です、この秋月打たれ強くできていますから」

 

プロポーズかと思ったらデートの誘いというオチにずっこける秋月。

既に先ほど『結婚したい』と言われたことはすっかり忘れている彼女である。

 

「んで、そろそろカメラのカバーを外してもらいたいんだけど?」

 

「だ、駄目です!まだ私の顔をお見せできませんッ!!」

 

秋月の目は赤く腫れ、とても提督に見せられるものでは無い。

彼女は単純に恥ずかしいのだ。

 

「泣いてる秋月も見たいなぁ~?」

 

「今回ばかりは勘弁を…」

 

「しゃあねぇな、わあったよ」

 

秋月はホッと息を吐く。

 

「長10cm砲ちゃん、やっておしまい!」

 

「……(わかったぜ、兄貴)」

 

秋月の側で控えていた長10cm砲ちゃんがヒョコヒョコと秋月の自室の机へと近づき、端末に掛けられていたカバーを砲身で器用に外す。

 

「あっ、長10cm砲ちゃん何をッ?!」

 

俺の命令に従順に従い、目論見通り

彼?はカメラのカバーを外してくれた。

 

画面には目を赤くして驚き硬直する

秋月が露わになる。

 

「チェックメイト、だな」

 

「いや…見ないでぇ…!」

 

思わず顔を手で覆う秋月だったが、

時既に遅い。残念ながら長10cm砲ちゃんや島風の連装砲くんは俺の支配下にあるのだよ。

 

「目の下にクマができてるぞ、

時間が許す限り休むといい。

休むことも戦いの内だぞ?」

 

「は、はいそうします…」

 

特に顔を見たからといって気の利いた事を言うつもりはない。

ただ声だけでは把握できない部分もあるため、顔が見たかったのだ。

 

「秋月の顔が見れて良かったよ、

これで俺は死んでも後悔は無いな」

 

「……え?」

 

「もしこのまま秋月の顔が見れずに

戦闘で死んでみろ、後悔が後悔だけに死んでからも化けて出るぜ?」

 

俺は続ける。

 

「通話が始まって『好きだ』って一方的に言っておいて秋月の顔も拝めないんじゃ俺だけ貧乏くじじゃないか。

明るい顔とか泣いてる顔なんて関係無い、お前にテレビ会議でも良いから会いたかったんだ。

 

戦争では愛する人と会うことも出来ずに死んでしまう、だから俺は幸せ者だよ。戦闘になればこうしてバカを言う余裕も無くなる。

この『加賀』だって秋月が頑張っても絶対の安全は確保できない。それはお前が一番分かっているはずだ」

 

空襲にあってはどれだけ対空火器が揃っていようとも被害をゼロにするのは不可能に等しい、例え現代の護衛艦が居てもだ。

秋月自身先ほどの空襲で嫌という程実感しているのも事実だった。

 

「『次』は無いかもしれない。

この任務部隊だって兵力こそ凄いが深海棲艦の実力も高いし数も桁違いだ。

世界中で攻勢を掛けつつこうして小笠原に侵攻してきている。

不謹慎だが今のところ沈没艦が居ないのが不思議なぐらいにね。

 

ま、こうして艦娘を口説く余裕がある俺も大概不思議だろうけどな!」

 

「秋…は……きます」

 

「ん、なんだって?」

 

「秋月は…守り抜きます!

全部は守れなくても、私の大切なモノだけは絶対にッ!!」

 

秋月の目には決意が見られた。

 

「守れないものを見捨てるのではありません、精一杯守るよう努力をします!

そして大切なモノは必ず、

守り抜きます!!」

 

「そっか…強くなれよ秋月。

今は無理でもいつか全て守れる強さを身に付けるんだ」

 

「了解しました!!」

 

「さて長い話で悪かったな、

少しで良いから体を休めるといい。

寝られなくてもベッドに横になるだけでも違う、いざという時に疲れが残っていたら取り返しのつかない事になるからな」

 

「はっ、休ませていただきます!」

 

画面の向こうで律儀に立ち上がって敬礼する秋月、そんな彼女にちょっとしたイタズラをすることにした。

 

「通話を切る前に一つ命令にしておこう。

俺だけ『好きだ』と一方的に言っていたから、代わりに秋月はベッドに横になって『司令愛しています』と100回唱えてから休むこと!

実行しなかったら長10cm砲ちゃんが俺に密告する事になっている、そんじゃお疲れ~!」

 

<<プツンッ>>

 

「ち、ちょっと待ってください司令!

ってもう切れてる?!」

 

画面に表示された

『通話は終了しました』

という無機質なメッセージが

溜息を生み出させる。

 

「ど、どうしよう長10cm砲ちゃん…」

 

「……(諦めろ秋月、俺は甘く無いぜ?)」

 

「やはり言うしかないのでしょうか…」

 

 

その後渋々実行した秋月は数時間という短い時間であったがとても幸せな夢を見た。

提督が自分を優しく可愛がってくれたり、

リードしてあんな事やこんな事をしてくれた夢であった。

 

「うへへ~、司令そこはぁ…ダメですぅ~。恥ずかしいですぅ~!」

 

一体どんな夢を見たのかは本人のみぞ知る。近くで休む長10cm砲ちゃんにも内容まではわからない。

 

「……(兄貴もなかなかどうして面白い人間だぜ)」

 

 

彼?も満更ではなかった。

主人たる秋月が、変顔で変な事を呟いている他は提督に感謝していた。

 

彼?は人間や艦娘と話すことは出来ないが、それなりの意思疎通はできる為こうして提督と艦娘の橋渡し役として活躍していた。

因みに連装砲くんは島風の側から離れないためフットワークの軽い彼?が提督に抜擢されたという経緯があるとか。

 

 

「……(さて俺も休むとしようか)」

 

秋月と長10cm砲ちゃんは束の間の休息に落ちていった。

 

 

※※※

数時間後

海幕 指揮通信情報部

 

 

内閣情報調査室の部署の一つである内閣衛星情報センターから逐次提供される衛星画像には驚くべきものが映し出されていた。

 

「な、なんだこの大艦隊は…!」

 

一人の分析官がその場にいる全員の心情を代弁していた。

 

南鳥島の西方100kmの地点を深海棲艦の大艦隊が東へ向け航行していた。

 

「これは…戦艦じゃないか?!」

 

「重巡クラスも多数居るぞ!」

 

「それよりもこれを見ろ、輸送艦だ。

奴らはマーカスを占領する気だ!!」

 

その場に詰める陸海空幹部の情報分析官担当者はすぐに関係各所に報告する。

 

10分後には国会にいた総理大臣や閣僚を始め、各省庁に情報がもたらされた。

 

国会で行われていた小笠原空襲の査問会は中断され、国家安全保障会議の一つである『緊急事態大臣会合』が招集された。これは総理の許可を得たうえで統合幕僚長等の関係者を出席させることができるものだ。

 

 

……

 

 

首相官邸

 

 

「統幕長それに海幕長、作戦を教えて欲しい」

 

開口一番、総理が二人に問うた。

 

「まだ作戦らしい作戦は立てておりません…」

 

「海幕としましても情報が少なく、

分析に時間を掛けられていないのが現状です」

 

二人は揃って時間を欲しいと答えた。

 

「とは言うがこのままでは南鳥島が占領されるのは明らかだ。

もし占領されてみろ、政府に対する批判は更に増す。野党の奴らのみならず国民からも不満の声が上がる、これでは政権の支持率は大幅に下がってしまう…」

 

その言葉に多くの人間が怒りを覚えた。

遥か南の海で戦っている者もいるというのに、最高指揮官が政治の心配をしているのだ。

 

「南鳥島とは連絡は付かないのかね?」

 

「現地の電離層が乱れているようで

こちらからの呼び出しに応答しません」

 

つい数時間前まで快晴だったマーカス周辺は急激な天候の悪化に見舞われた。

 

気象庁や自衛隊の気象予報官も首を傾げるほどの気象の変化に『深海棲艦がやったのでは』という声も挙がるほどであった。

 

「とにかく任務部隊と連絡を繋げるんだ、

回線をここに持ってきたまえ。

私が直接指示を出す」

 

幕僚長らは露骨に嫌そうな顔をしたが命令には逆らえない。

 

詰めている関係官僚や幹部自衛官が急いで準備を整える。

 

 

(ここで島を占領されでもしたら

私の…今までの栄光と苦労が無駄になってしまう。それだけは、何としても阻止しなければ…)

 

 

……妙な気合の入った総理大臣による

命令が下されようとしていた。

 

 

 





秋月が可愛い。
ゲームや他小説では健気な彼女ですが実際
落ち込んだら塞ぎ込みそうなイメージ。
前回あたりからくどいようですが、
本作ではこういったシーンを入れています。

未だマーカスに増援を送れていない現状で
ついにやって来た深海棲艦の侵攻部隊。
打つ手…なし。
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