桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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お待たせしております。
現在、海外出張しているのですが、とあるアクシデントが発生。出国前にスマホのSIMロック解除を失念しており2ヶ月ほどスマホでインターネットが使えない状態でした…。現地wifiも何故か利用できず浦島太郎クンでしたが先ほど接続できましたので投稿いたします。
国内は台風の被害が激しかったというニュースを知り、何もできない自分に不甲斐なさを感じてしまいました。ですが今の私にできること、己の仕事を全うすることが日本の国益になると信じ帰国の日まで頑張ります!


2-10b 烈火の反撃 中編1

南鳥島沖 深海棲艦部隊

 

 

「やはりそう簡単には倒せぬか」

 

 

一昨日、人間共の奪還部隊に差し向けた爆撃隊が全滅したのは周知の事実である。その時の戦闘データを分析していたフレッチャーはさも当然だと言わんばかりに呟いた。

 

 

「島をあと半日早く占領できていれば、基地航空隊ももっと製造できていたでしょうね。でも流石にあの日の荒れた海模様では上陸は不可能でした…」

 

 

ヒラヌマは自らに非がないにもかかわらず申し訳無さそうに言った。

深海棲艦が南鳥島を占領したのは当初の予定より1日遅れてのことだった。その前日の天候は快晴であったものの、何故か海上模様は大時化。決行は明朝に延期されていたのだ。ヒラヌマを始めとした水上艦による艦砲射撃により、南鳥島航空分遣隊の庁舎や滑走路は破壊され原型を留めるものは無かった。

砲撃中に波浪が深海艦隊を襲ったため一旦海域を離脱するという事象もあったが、人間側が島から逃げたとしても逃げ切れるはずもない。もし仮にゴムボート等で逃げたとしても燃料が切れて餓死するだろう。事実、島に近接したところ転覆したゴムボートが発見され、付近に人影はなく恐らく逃げようとした人間は海に放り出され溺死したのだろうと判断された。

 

また、数多の砲弾によって破壊された庁舎内を調査したところ、大量の血痕や包帯などが発見された。島内にいた人間が負傷し、治療を行っていた形跡であろう。その後、島内を隈なく捜索したが人影は無く、死体や肉片も見つからなかった。

指揮官であるフレッチャーは全員跡形も無く四散したのだろうと判断し、当初の予定通り島に航空基地を設営することにしたのである。

 

 

「やはり40機程度の小部隊では多勢に無勢であったか。出撃した者たちには失礼だがこれでは戦果も期待出来ない、か…」

 

「私たちは戦争をしているんですフレッチャーさん。感傷に浸るよりも、今後の損害を抑えて如何に戦うかを考えるべきです。そうですね……ひとまずは完成した爆撃機を送り出せただけでも良しとしましょう。こちらに爆撃機という航空戦力が有ると知ったからには、敵も空襲を恐れ、無闇に艦隊を近づけることは避けるはず。

貴女が仰ったようにこちらは爆撃機が無くなってしまいましたが、捉えようによっては戦力で劣っている我々として好都合です。人間側は補給や休息の限界を考慮して戦わねばなりませんが、こちらは時間が経てば経つほど航空戦力を増やしていけます。。つまるところ、敵は“強いが短期戦型”で我々は“そこそこだが不退転型”の我慢大会といったところでしょうか。

それに飛行場面積も広いとは言えません、敵空母群の空襲を凌ぐには到底足りません。当初の予定通り“彼女”には戦闘機を製造することに専念させ、我々は攻勢に出るよりも防勢に重きを置き防空体制の強化を図るべきかと」

 

「“マーシャ”には更に頑張ってもらわねば…」

 

 

フレッチャーとヒラヌマは島の中心辺りにいる“彼女”に目をやる。

人間の様な体格であるが肌の色も身体の作りも異なる深海棲艦だ。そんな彼女、離島棲鬼である“マーシャ”は錬金術師のように、集積された各種資源をどす黒い航空機のようなモノへと“変換”させていく。どうやら爆撃機よりも戦闘機を作る方が容易らしく、駐機場には航空戦力が着実に増えつつあった。

 

 

さて、奪還艦隊に飛来した40機の爆撃隊は如何にして飛行場に湧き出たのか?答えは単純、海底から採取された有り余る資源を以って、深海棲艦の幹部である彼女が“製造”したのだ。ゲームでいうところの“開発”と考えてもらっていい。

 

占領からまだ数日程度しか経っていないため、爆撃機40機という深海棲艦にしてはスローペース製造になってしまったが、これは予定通りであった。敵に被害を与えられずに全滅してしまったのは無念だが。

戦闘機については現在、少しずつではあるが製造している。単純な航空戦力ではやや劣勢なのは否めないが、島内の防御陣地は飛行場以外の陸地に鉄壁といえるほどの規模を構築しつつある。

 

 

「我が方の爆撃隊は全滅といえど、人間共も少なからず消耗している。例え目立った被害を与えられなくとも弾薬を使わせたとなれば、奪還時の戦闘では敵による此方への火力の全力投射がし辛いのではないか?」

 

「はい、ヒラヌマもそう思います。

それに島内の要塞化も着実に進んでいますし、もし敵航空戦力がこの海域に襲来したとしても損害を与えられるのは明らかです。フレッチャーさんが考えた案は有効ですし、敵も動揺を隠せないでしょうね」

 

「———戦争というものは、目的を達成することが最優先される。卑怯とか狡いなどと仲間からも非難を受けようとも、敵に打撃を与えることだけを考える。それが私なりの覚悟と戦いだ」

 

 

美しかった島はその面影を残しておらず、陸地の表面は黒く不気味なモノに覆われていた。妖気なのかそれとも黒煙なのか定かではないが、島全体とその周辺には只ならぬ雰囲気が漂う。

よく見てみると離島棲鬼が作り出している戦闘機は、これまで現れているF4F戦闘機の他にもあるようだ。陸上戦闘機型もあれば、なんと零式艦上戦闘機らしき黒い色をした機体もある。

 

「小笠原ヤ島ノ近海カラ見ツケタ機体ヲ再構築シテ、飛ベルヨウニシタワヨ。元々 ハ 錆ビテイタケド新品同然。沈ンダ艦船ト同ジヨウニ、残骸ニ遺ッテイル怨念ガ強イ。キット戦力的ニモ役ニ立ツハズヨ」

 

島にいたマーシャには2人の声が筒抜けだったようで、製造状況を報告してきた。

 

「なるほど、概ね順調というわけか。だがこの前も言ったように私に与えられていた機動部隊は上層部の勝手な判断によって壊滅してしまっている。この島周辺の制空・制海権確保は厳しいかもしれぬ、私の詰めが甘かったとしか言い訳できん…」

 

「ソンナニ 悔ヤムコト ハ ナイワ、貴女ハ最善ヲ 尽クシタモノ。深海棲艦 ト 人類、ドチラカ ガ 倒レルマデ 戦争ハ終ワラナイデショウ…。

所詮、私タチ ハ“駒”ダカラ…イツカ ハ 沈ム。

デモネ、ソレヲ使ウ者 ガ 命ヲ預ケルニ 足リル存在ナラ、私 ハ 喜ンデ 戦ウワ…?」

 

そう言うとマーシャは戦闘機の製造作業を再開した。彼女なりの覚悟を決めたということだろう。

そのマーシャの言葉に、フレッチャーは心を痛める。

 

(戦略目的は海底資源の確保及び南鳥島の確保であった筈だ、しかし結果はどうだ…?

ニホンの軍隊もどきであるジエイタイは予想を裏切り武力行使に踏み切っている。そして上層部の『ニホンの政治家も事なかれ主義を貫くだろう』などという安易な分析を信じてしまった。確かに私も功を焦るあまり、作戦立案に粗があったのかもしれぬ…。

そしてなにより———その立案に掛かる前、私の提案に賛同した集団が居た。今になって思えば恐らく彼奴らは私の失脚を狙っていたのだろう。人間と争う以前の問題だ、地球上の軍隊と戦わねばならぬというのに内部抗争に精を出すなどッ…!)

 

 

「———退却しますか?今なら間に合います。ここで“無駄死に”するくらいなら臆病者のレッテルを貼られた方がマシです。

…ただ、言わせてもらいます。

ヒラヌマは戦うのが怖いのではありません、戦うべき時に戦えない又は守るべきものを守れない、そんな運命を受け入れなければならない。そんな自分の弱さが怖いのです」

 

「ヒラヌマ……ッ!」

 

 

フレッチャーは何か言おうとしたが、ヒラヌマの言葉の裏に秘められた静かなる決意に発言を躊躇われた。

 

(コイツは———いや、ヒラヌマは普段の言動に似合わぬ強い意志を持っている。私が撤退すると言えばそれを全力で支援してくれるだろうし、逆も然り。もしも、ここで撤退して海底の基地に戻ったとして私はともかく、ヒラヌマがどんな扱いを受けることか…!)

 

 

フレッチャーは悩んだ。

確かに撤退すれば次の作戦を練ればいいだろう。だがそれは、私が今と同じ程度の権力を保持できていればの話だ。敗軍の将、いや、ボロ雑巾のような扱いすらも生温い、言葉に表せぬほどの畜生扱いが待っている。

良くて、次の戦いにおける捨て駒あたりであろうか…?

 

 

(私たちは一体どうすればよいのだろうか……)

 

 

「———“伊香保(いかほ)ろの 沿()ひの榛原(はりはら) ()もころに (おく)をなかねそ まさかしよかば

ですよ、フレッチャーさん」

 

「……は??」

 

 

ヒラヌマの突如発した言葉に頭を傾げるフレッチャー。

 

(イカホロ?ハリハラ?ヒラヌマのかつての姉妹艦か何かだろうか…?)

 

 

「何処かの国の山を詠んだ歌らしいですよ。意味はたしか……“これから先の事なんか気にせず、今が良ければいいのではないか?”みたいな感じらしいです。

深海棲艦も含め、軍艦というモノは戦っている時が一番輝いていると思います、例えそれが自分が…沈む負け戦であっても。ここで撤退すれば、確かに次の戦いに備えることができるでしょう。

ですがヒラヌマには違う結末が待っていると思うんです———出撃すべき時機を失し、侵攻してきた敵に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です…。

何故そうなるのか、何故海底にある味方の基地に敵が攻め込んでいるのかはわかりません。もしかしたら“過去”の記憶が蘇りつつあるのかもしれませんし、只の考え過ぎなのかもしれません。仲間が斃れ、姉妹艦が皆沈んでいき、そして最後に残った自分も……。ヒラヌマは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

聞いていたフレッチャーも、また、言った本人のヒラヌマ自身も最後の言葉には気が付かなかった。やはり無意識の内にかつての記憶が戻りつつあるのだろう。

 

 

「ありがとうヒラヌマ。

実を言うとだな———私は戦艦という存在に憧れているのだ…。大きな大砲、大きな船体そして高くそびえる艦橋。もし戦えばきっと私のような駆逐艦程度では生き残る確率はかなり低いだろう。

だから貴様が艦隊に居てくれてとても心強い。心配せずとも貴様を無駄死にさせる指揮は取らぬ。敵が幾万有りとても最善を尽くすさ。これでも伊達に“駆逐棲姫”をやっている訳ではないからな、それなりに采配は任せておけッ!」

 

「改めてよろしくお願いします、駆逐棲姫“ブリザード”フレッチャーさんっ♪」

 

「……だからその呼び方はやめろと言っているッ!!」

 

 

フレッチャーは自信満々そうに声を張る。それは慢心とかヒラヌマを安堵させるための誇張ではなく、自らのチカラを心の底から信じていることの表れであった。

 

“無駄死にさせない”

 

死ぬことを前提としつつも生きている間は思いっきり暴れてやろうじゃないか。フレッチャーのコトバには、彼女たちがかつて所属していた国家の精神性が現れているのかもしれない。

 

 

☆☆☆

 

———深海棲艦とは何処から現れ、何故人類に敵対するのか…?

 

その理由は人類も、当の深海棲艦たち自身にもわからない。ただ一つ言えることは、生まれた時から人類という存在を憎み、地球上から消し去ってしまいたいという願望を持っているということ。

 

先述のようにフレッチャーたちが一方的虐殺ともいえる南鳥島占領を果たした際に感じたの虚しささえ、きっと人間を目の前にしたら一転して狂気の殺意へと豹変するだろう。まるでそれが使命なのだとプログラムされた殺人マシンのように、敵である人類を地球上から滅亡させるまで止まらないかもしれない。

 

 

…だがもう一つの事実もある。

 

 

彼女たち深海棲艦は、かつては人間が生み出した艦船だったということ。それは深海棲艦たちも無意識に共有している不文律の事実なのだ。

 

☆☆☆

 

 

雲龍ら空母4隻から攻撃隊が発艦する数時間前。即ち、日付が変わって間も無く、硫黄島からは先行偵察機として画像情報収集機であるOP-3Cが既に飛び立っていた。本機はその航続性能を活かした長距離偵察を実施して、艦隊及びその攻撃隊の作戦をサポートしていた。なお、空自の戦闘機については戦闘半径外のため、硫黄島や父島周辺の防空に専念させている。

 

母体であるP-3譲りのターボプロップが生み出す高速性と旧式プロペラ機には不可能な高高度性能を駆使すれば、敵の戦闘機や対空砲火に撃墜される可能性は低いという判断だ。偵察衛星を使った偵察ができないなら人間が直接見に行くしか選択肢は無い。当然その任務は危険が伴うため、航空隊司令部は正規のクルーをそのまま乗せずに一般哨戒機クルーからも志願を募ることにした。

正規クルーからは反対の声が挙がったが、同時に心の底では安堵する者も少なくなかった。結果、半数の一般クルーが志願した。そして志願しなかったもう半分の搭乗員には、ある想いがあった。

 

“偵察任務で出撃したら敵艦隊を攻撃できないじゃないか”

 

志願した者たちも「言われてみればそのとおりだ」と笑った。それを隠れて見ていたのだろう。ボスである特設航空隊司令が現れ、偵察も立派な任務だぞと言うと隊員たちを激励した。

そして最終的に選抜クルーによって、同機はマーカスへ向け飛行中である。

 

 

「レーダーに反応なし。付近に敵影なし」

 

「ラジャ。予定通り偵察を実施する。各種機器の最終チェックを行え」

 

「ラジャ。……SLAR(側方画像監視レーダー)作動良好、引き続きLOROP(長距離監視センサー)のチェックを行う」

 

「ラジャ」

 

淡々とした声が飛び交う。機内は敵地に向かうとは思えない静かさである。戦争映画にあるような絶叫シーンなどは実際においては稀なケースである。

以前、海自哨戒機が他国艦艇から射撃レーダーを照射された事件があった。その際の動画でも公開されているように、搭乗員同士の意思疎通や命令の確逹の為だったり、指揮官である機長が部下の士気を下げない為に敢えて落ち着いた口調で会話している。

 

 

リコメンド(意見具申)Heading 249,(機首方位249度、)

Climbing Flight level 250.(高度25,000ft(約7,500m)に上昇されたい。)

 

「ツーフォアーナイナーのツーファイフズィロね、ラジャ」

 

島の北東方向から侵入するコースだ。

風向風速は弱くはないものの、偵察に支障が出るほどではない。

 

「さて、撮るもの撮って艦隊の支援をしてやろうじゃないか。深海棲艦サンたちへのお土産は無いが…奴さんは大歓迎してくるぞ、対空砲がこの高度まで飛んで来ないことを祈るしかないな」

 

「第二次大戦時の対空砲ってFC(射管レーダー)を照射されるよりかはマシなんすかね?」

 

「FCが狙撃銃のレーザーポインターとするなら、対空砲はお前の近くで手榴弾が爆発するようなもんだ」

 

「うへぇ、どっちも無理ゲーっすね…」

 

「怖かったらここでベイルアウトしてもいいぞ」

 

「それこそ絶対嫌っす…」

 

軽口を叩き合う選抜された搭乗員たち。

彼らが目の当たりにするのは、一体何なのだろうか…?

 

 

※※※

 

0518i 

南鳥島西方200km地点

 

 

発艦作業はスムーズに終わった。

攻撃隊は大編隊を組まず、敢えて中規模の複数編隊にて飛行する。先鋒の戦闘機隊に斥候として敵状を掴ませるためだ。そしてもしも敵が此方を上回る強固な防空体制で待ち構えていたならば…。

 

「よし、全機反転して即収容。作戦を水上打撃に切り替えてゴリ押しだっ!」

 

「不吉な事を言わないで。不測の事態を想定するにしても声に出したら妖精たちの士気が下がるでしょ?」

 

雲龍が冷静にツッコミを入れる。

 

「ごめんにゃしぃ…」

 

叱られてしゅんとした提督の言葉が終わると同時に、最後に発艦していった97艦攻の機影が遠くの空に消える。

攻撃隊総指揮官や各中隊長との交信チェックは既に終了し、やや雑音が混ざっていたが許容範囲内だ。僅か200kmといえど深海棲艦による電波妨害もあり得る。音声通信やモールスによる無線電信が使えなくなることも考慮しなくてはならない。

 

「硫黄島が飛ばした偵察機からはまだ連絡は無いのか?」

 

「はい。最後の通信で『間も無く突入する』と言ったきりでそれからは…」

 

提督は手近にいた妖精に確認するも状況を得ず。

 

(予定では0530までには艦隊上空に飛来だったはずだ。レーダーにも反応が無いとなると、撃墜されたと考えるべきか…?)

 

額を一筋の汗が滴り落ちる。

 

(偵察機はOP-3Cなんだぞ?戦闘機である零戦よりも高速なのに、それが撃墜されたとなると…島はどうなってやがる?!)

 

静かに脳内で愚痴るが現実は変わらない。

 

「攻撃隊から何か報告は無いのか?無いなら問い合わせてみろ」

 

「了解しました!」

 

提督は通信士にそう伝え、電信妖精にコンタクトを取らせようとした。だが、それと同時に一通の電信が飛び込んで来た。

 

「先程発艦した第三集団、蒼龍所属の97艦攻から入電ッ!

“スミレ” ハ 天保山 ニ サク。枯レル 時期 ハ 皐月 ナリ、ですッ!!」

 

 

スミレ、即ちOP-3Cを指したものである。これが意味するのは———

 

「前方にいる駆逐艦に通達ッ!OP-3Cが損傷を受けている。これを海面に不時着させ、乗員と偵察データを回収しろ!!」

 

『『了解ッ!』』

 

事前に決められていた通信符号を聞くや否や、提督は艦隊前衛にいる白雪ら特型駆逐艦の3隻に命令する。

反攻作戦に先立って符号を用いた電信(モールス)の実施が決められ、各艦隊や硫黄島、航空部隊間の連絡に用いられることになっていた。

同機は硫黄島まで帰投不可能であるから奪還部隊にて収容してもらいたい旨を意味する電信が攻撃隊から入電する。

 

提督の乗艦する雲龍を始め、艦隊内側にいる駆逐艦や護衛艦らは味方機不時着後の救助作業の準備を開始した。

 

「“天保山”、たしか意味は…機体は損傷により帰投不可能 。南鳥島で敵の反撃に遭ったのかしら?」

 

「恐らくな。だがそれは予想されていた。問題は損傷した原因は敵の地上の対空陣地なのかそれとも戦闘機によるものなのかという点だ。可能なら攻撃隊に敵の詳細を伝えないといけない…」

 

レーダーにも同機の反応が映り始める。

 

「上空の直衛機に命令、Violet(OP-3C)02に近接して不時着誘導をするよう伝えろ!」

 

矢継ぎ早に指示をした提督、だが攻撃はまだ始まっていないのだ。この事態は、後の作戦の結果を暗に示していたのかもしれない。

 

 

……

 

15分後

 

 

「バイオレット02、着水。漣と雷の作業艇が近接します!」

 

「よし、搭乗員を収容したら雲龍に横付けるように伝えろ」

 

同機のクルーは全員救助できた。現場からの情報では負傷者はいるのの、重傷者はいないらしい。クルーらは可能な限り機体から偵察データを運び出そうとしたが、沈み行く機体から記憶媒体等を搬出することは叶わなかった。

 

「漣、雷の作業艇が着く、後部!」

 

「雲龍、艦橋は任せる。俺は後部に行く!」

 

「ええ任せておいて。」

 

雲龍の返事を聞く前に提督は走り出していた。

後部に着くと、既に医務長を始めとする衛生妖精らが救助された搭乗員へ手当をしていた。

 

「101護隊の菊池3佐です、マーカスの状況はどんなでしたかッ!?」

 

「そ、それが…」

 

クルーが語った言葉に提督たちは絶句した。

 

 

※※※

 

マーカス付近上空

 

 

「さっきの偵察機穴だらけで煙が出てたけど大丈夫かな?」

 

「さぁな。艦隊宛の救援要請を傍受してから無線はなにも流れてねえし…」

 

とある99艦爆の搭乗員妖精らが話す。

 

「やっぱりマーカスは敵が防空体制を整えて待ち構えてると見るべきだな」

 

「せめて敵に戦闘機がいるかどうか程度の情報が欲しいが…もうそれも入ってきそうにねぇし。後は我らが攻撃隊総隊長を信じて突っ込むだけのことよ」

 

「予想していたとはいえやっぱビビるな。島に近付いたら通信機が使えなくなるなんて…」

 

「他の機体も同様ってことはやっぱ電波の使用自体が不可能なんだろう。お前は無線機の心配なんかしてないで前方や上方を警戒しとけ」

 

「わかってるさッ!」

 

案の定、というべきか。

南鳥島に近付くにつれて無線機の雑音が酷くなり、音声通信はもとよりモールス通信も使えなくなってしまった。機体同士の連絡手段はジェスチャーか手旗、信号弾に限られてしまい、素早く正確な意思疎通が図り辛くなってしまった。

攻撃隊総隊長である雲龍所属97艦攻の妖精は、当初の予定通り攻撃実施を指示している。それが今行うべきことであり、何としても敢行させねばならないことだからだ。

 

高度5000mには制空隊の零戦がおり、一部の先行隊は島の上空に差し掛かろうとしている。彼らが敵戦闘機を見つけていないということは、警戒すべきは対空砲火のみということか。

その先行隊が信号弾を放つ。意味は…上空に敵戦闘機無し。

総隊長は「全機突入」の信号弾を放ち、速力を最大まで上げた……。

 

 

……

 

 

 




如何でしたでしょうか。以上が投稿していいか悩んでいた話です。修正すべき点をご指摘いたたければ幸いです。

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