もう片や、出来の良い妹に地位を奪われ、居場所を失くし、力を求めた少女。
もし、最強の少年と地位を奪われた少女が奇特な運命を経て出会ったら。
血に塗れた出会いをしたら、の話。
前にTwitterでボヤいた落第騎士のSSです。
原作を一〜九巻まで読んで、想像に火が付いて、一気に書き上げました。
だから、クオリティが御了承下さいm(__)m
そこは荒廃した砂漠だった。
しかし、そこには明らかに自然とは異なる異物が紛れ込んでいた。
––––それは死体
––––それから漂う血の臭い
そこから察するに、明らかに平和とは言い難い地に立つのは二人。もっと明確に言えば、相対するは二人、だろう。
「貴様––––も、《
相対する片方。黒髪の長身少年は確かめる様に言う。
《
それは自身の魂を
生涯において、必ずと言って良いほどに歴史に名を刻めるだけの力を持つと言われるランクA。相対する二人は両者共にランクAなのである。
しかし、ランクAと言う格付けが同じだとしても、異能の相性や実力を鑑みれば、自ずと差が開くものだ。現に––––
「そうよ。でも、アンタ、程に………ぶっ壊れでは無いわ」
相対するもう片方。深赤髪の少女は地に膝を折りながら、言葉を連ねる。
「まさか、《
「御託は良い。さっさと霊装を構えろ。俺は強い奴と戦いたい」
少年はそう吐き棄て、手にした野太刀の切っ先を向ける。
瞳に宿る光は何処と無く鈍色で穢れている。ただひたすらに力を求めている戦士の瞳だ。
その期待に応えるべく、少女は死に体の身体を無理矢理鞭打ち、引き上げる。
そして、
「迸れ––––《
起動句を詠み、
蒼く煌めく光は姿を変え、収束。長剣の姿を模すと少女は右手でグッと握り、振り抜く。
顕れたのは、青みを帯びた輝きを放つ白銀の聖剣。
そして、左手にも光は収束し、剣を顕すが、こちらは光の姿のまま。
「ほう………二刀流か。片方の剣は光のままだが、それで良いのか?」
「本来、私の霊装は長剣一本だから。この光の剣は
「すなわち、貴様の異能は『光』か」
少年の言う通り、少女の異能は『光』に準ずる物だ。
「ならば、その力で己の傷を癒せ。それ位の時間はくれてやる」
「そんな見え見えの嘘に乗ると思った? アンタ、斬りこむでしょ、そんな事したら」
「その満足に動くのも辛い状態で戦われても、俺が得る物は一切無い。だから、早くしろ」
「………優男が」
少女は若干、機嫌を損ねたが、ここで治癒の時間を設けてくれるのは非常に有り難かった。
光という物は万物の祖に当たる。
全ての物体は光から出来ていて、その維持にも光を要する。
人間の体内時計を正確に調整するにも太陽の光は必要となるし、植物の生命活動を継続するにも必要だ。
故に人の傷を癒す事も可能だ。治癒に長けている水の異能に比べれば、少しばかり見劣りするが。
と言っても、満足に動く分の治癒で良いなら、然程時間はかからない。
少女は身体が正確に動くのを確認すると、二刀の長剣を構える。
「準備、出来たわ」
「そうか………ならば、行くぞッ‼︎」
「掛かって来いッ‼︎」
砂漠を駆け回る二人。その練度たるや、並大抵の者では近付くに叶わない。
互いの異能による遠距離戦や剣術による近距離戦も殆ど互角。
だが、互いの得意距離が同じな為、戦闘は自然と近接戦となる。
少年が振るう野太刀の一撃は砂漠を割る程の火力を秘めている。マトモに喰らってはひとたまりも無い。
それを一刀目で察した少女は戦法を双剣で一撃を去なし、手数で押し切る様にしたのだが、
「(流石に硬い………)」
双剣の猛攻自体、効いているとは思えなかった。
少年の異能は『風』。自身の周りに張っている結界さながらの暴風は強固と言わざるを得ない。
それに加え、その風霊結界をすり抜けて、素肌に傷を刻み込もうとしても、斬る感触は正に鋼。全ての斬撃を跳ね返す。
「どうした? 貴様もAランクだろう。この程度とは言うまいな」
「くっ………やっぱり、知られてたのね。色んな意味で光栄よ、《風の剣帝》」
「貴様の方も俺を知っていたか、《閃光の織姫》」
「殆ど太刀筋からの考察だけどね」
「それは俺も同じだ」
高速の剣戟に身を投じながら、二人は会話をする。
《風の剣帝》。
《閃光の織姫》。
それは二人の異名である。
互いに生まれた国は違うとは言え、世界ではよく知られた存在だったが、今はこんな紛争地域で戦闘に興じるとは人生も奇である。
そんな中、少年は勢い良く野太刀を振り被る。そこから繰り出される一撃は間違い無く、重い。
少女は今まで通り、去なそうと思い、構えを取ろうとするが、砂に足を取られた。
「(踏み込んだ場所が悪かったッ‼︎)」
冷静に判断し、双剣を交差させ、一撃を防ぐ戦法に変更。
少年が片手で振るった野太刀は物凄く重く、双剣を支える腕から少女の芯へと痺れが伝わる。
まるで隕石を落とされた様。しかし、そこでは終わらない。
「旭日一心流・剛の極 《
そう唱えられ、少年は空いたもう片手を己が持つ野太刀の峰に向けて、思いっ切り打ち下ろす。
感じる重量は異常な程に重たく、少女の腕が軋む音がする。純粋に骨が折れるのでは無く、粉砕される予感がし、少女は極限の力加減を加えて、野太刀の起動を反らす。そして––––
「お返しよッ‼︎ 《閃刃烈破》ッ‼︎」
光を宿した双刃で少年の脇腹を光速で斬り刻む。
一見、双剣を薙ぎ払っただけの様に見えるが、実際は都合八連撃を見舞っていた。
その斬撃は少年から鮮血を吹かせるに充分だったが、それは勿論、異能の補正有りきで、の話だ。普通の斬撃では、刃が通らないのは証明済みなのだから、当然と言える。
「ほう……これが貴様の剣か」
「今の一撃だけで、私の剣の本質を読み解いたのね。流石の観察眼だわ」
少女の剣は異能の補正を基にしている。
『光』から速度のみの概念を抽出し、武器に憑依。そこから神速の剣を叩き込む。
斬れ味が良い少女の霊装に加速すら視認させない剣技の組み合わせの威力は計り知れない。
しかし、そんな一撃必殺の剣でさえも少年は斃れない。
文字通り、化物の身体だ。
「にしても、アンタの身体は硬すぎるわね。
「今や、並の
「なら––––これはどうッ‼︎」
光の速さの概念を身に纏い、光速で後ろに跳ぶ。その行動に
「《
魔力によって編まれた無数の閃光弾が少年へと飛び、爆ぜる。
眩い閃光の目眩しに加え、普通では考えられない質量を持った光が少年を襲う。
「(光に質量を持たせる事で俺の身体を潰しに来るか……だが、この程度はペテンに過ぎんぞッ‼︎)」
少年は身構え、
「《天龍具足》ッ‼︎」
身体中に集めた大気の塊で己の身を纏い––––光を跳ね除けた。
光自体に質量を含ませているのだから、それを物理的に跳ね除けるのは、そう難しい事では無いが、それでも全方向から掛かる力を跳ね除けるのは至難の技だ。
しかし、そんな至難の技でも少年は息をする様に当然に跳ね除ける。流石は《風の剣帝》。
閃光は晴れ、視界が元の砂漠へと戻る中、少年は見た。
少女が双剣を天に仰ぎ、決死の覚悟で魔力を流しているのを。
「やっぱり、あの程度じゃ、足止めにもならないか」
「……分かった上での選択か。愚かにも程があるぞ」
「でも––––おかげで私の最大の
少女の魔力は正に陽光の如き、閃光を迸り、双剣を巨大な光剣へと姿を変える。
凄まじい威力だ。
喰らわずとも感じざるを得ない。
少年はそう思い、一瞬だけ竦む。
「(……ここまでの恐怖は《暴君》以来か………恐怖の系統は違うとは言え、流石の一言に尽きる)」
普段なら、絶対にしないであろう賞賛を少年は内心でする。
しかし、こんな所で立ち止まるつもりは毛頭無い。
家族とも縁を切り、母国をも捨て、ただひたすらに強くなろうとした己が立ち止まる事を許さない。
ならば、この光剣をも撃ち穿つ必要がある。
「そうか……それがお前の本気か。ならば、俺も全霊を以って相手しよう」
野太刀を天に掲げ、風を集める。
少年の異能が引き出され、竜巻が吹き荒れる。その全てが野太刀へと収束して行き、巨大な竜巻の剣が形成された。
二箇所に聳え立つ巨剣。互いの発する力は戦いの場である砂漠を吹き飛ばす様に錯覚させる程に高出力だ。
「何回も言うけど、流石ね。《風の剣帝》の二つ名に恥じないだけの実力じゃない」
「それを言うなら、貴様もだ。《閃光の織姫》の名は誇張では無かったのを今実感している」
互いに互いの事を褒め合う。これは今だから出来る事。全てが決する一撃の前なのだから。
「《
「《
互いの込める魔力が高まり、暴力が周囲にばら撒かれる。砂漠に砂嵐が巻き上がる。
そして、魔力が最高潮になったのを確認すると、お互い同時に振り降ろす。
「––––
「––––
全力の
二人の額には盛大な汗が浮かぶ。
「やあああぁぁあぁぁああッ‼︎」
「ハアアァアアァアァアアッ‼︎」
二つの巨剣が交わり、砂漠にクレーターが出来る。
しかし、二人が放つ力の奔流は止まる事を知らずに火花を散らし続ける。
甲高い音が耳朶を打ち、耳を塞ぎたくなるが、この状況でそんな愚行に至ろうものなら、問答無用に斬り落とすし、斬り落とされる。
それを理解しているからこそ、一歩も引けない。引いてしまえば、敗走の未来しか見えないから。そして、それは二人にとって、あってはならない事だから。
だが、地形をも変動させる超常火力が完全に拮抗する事は有り得ない。
「(拮抗はしないけど––––)」
「(力の方向が荒れ狂うぞ……)」
そして、その予想は当たってしまった。
光の奔流と風の奔流が交錯する点から––––力が暴れだした。
「なっ……ッ‼︎」
「グッ……ッ‼︎」
驚愕の表情を浮かべる二人だが、膨大な力に呑まれ––––意識がそこで途切れた……
「––––ぁ……」
少女は途切れた意識を覚醒させる。
最初に目に映ったのは、仮説テントの天井だった。
そして、状況を判断しようと周りを見渡すと––––そこには、先程まで戦っていた少年が少女の寝ているベットに腰掛けていた。
「––––ッ‼︎」
その光景に少女は全力で引く。
うら若き少女が寝ているベットに少年が腰掛けている。そこから察するに不埒な事をされたと考えても何ら問題無いだろう。
しかし––––
「馬鹿か。俺は貴様なんぞの身体に興味は無い」
との少年の言葉に安堵するのでは無く、少しカチンと来た。
「あ、アンタッ‼︎ それは流石に言い過ぎでしょッ‼︎ 自分で言うのも何だけど、私ってスタイル良い方だとは思うわよッ⁉︎」
現に少女のスタイルは良い。
全体的に細いし、顔立ちも中の上はある。
とは言え、ある部分は少しばかり慎ましいが。
「そうだとしても、俺は女の身体になんぞ興味は無い」
更に頭に来た。
そして、少女は思った。
こいつにだけは絶対負けないと。
こいつよりも強くなって、絶対に異性として振り向かせてやろうと。
こんな屈辱は忘れない。だから–––
「よっと」
ベットから降り、少年をビシッと指差す。
「アンタ、《風の剣帝》なのよね。名前は?」
「二つ名を知っているのなら、本名も知っているとは思っていたが」
「ここは名乗れっ‼︎ そういう流れだからッ‼︎」
どういう流れだ、と少年は苦笑しながら、少女の前に立つ。
身長差が如実に現れ、少女が少年を見上げる形となっている。
「俺は黒鉄 王馬。日本人唯一のAランク学生騎士だ」
「黒鉄………王馬、ね。分かったわ、覚えておくわ」
少女はそう言い、立ち去ろうとするが、王馬は肩を掴み、それを許さない。
「俺だけ名乗って、お前が名乗らないのは可笑しいだろ。せめて、名乗れ」
「えー………私も名乗るのか………………」
明らかに面倒くさそうに言う少女は王馬の方を向き、己の名を伝える。
「私はレイ・ヴァーミリオン。出来の良い妹に地位を奪われた悲劇の皇女よ」
これが後に『七星剣舞祭』に名を轟かせる事となる二人の邂逅だった。
はい、如何でしょうか?
原作通じて、好きになったのがエーデルワイスと王馬だったので、王馬×女オリ主で書いてみたいなぁと思って、書きました。
まぁ、アニメだけなら理解出来ない気がしますがね………
評価や感想によれば、続きを書いて連載型にするかもしれませんが、このまま短編のままにしておくつもりです。結局のところは感想によりますが………
それでは( ̄▽ ̄)