車好きの少年と、それを理解しようとする少女の物語…
そんな少女はいつの間にか車の世界に飲み込まれていく…


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どうも、Hanrei284です
今回は短編作品を投稿したいと思います。
今回は車が入ってきた幻想郷でのお話
正直あんな終わり方するとは思ってなかった…
シリアスが入ったのも予想外だったんですよ…

そんな感じの『~幻想世界のCar Life~』お楽しみください!


~Fantasy World in Car Life~

 

 

「ふぁ~あ…」

 

のんきな声を上げ、ベッドからもぞもぞと起き上がる

今日もまた新たな1日の始まりか…

そんなことを考えながらリビングルームへ向かう

 

「スバルー!助けてー!」

 

リビングに向かおうと廊下に出ると車のガレージから少女の声が聞こえた

 

俺は『富士宮 昴(ふじのみや すばる)』何処にでもいる車好きだ、皆からはスバルと呼ばれている

俺のことを呼んでいるのはここ『紅魔館』の主であり、俺の恋人、レミリア・スカーレット嬢。

 

朝からお忙しい方だ…寝てたら強制的に起こされていたんだろうか

そう頭の中で考えながらガレージへ向かう

 

綺麗とは言えないが、ある程度は片付いているガレージへ到着するとレミリアが車の下へ潜り、もぞもぞともがいていた

思っていた以上に変な状況だったので、一体何事だろうと車のしたを覗き、レミリアに声をかけてみる

 

「…何してんだ…?」

 

俺がそう問いかけると、必死になって苦しそうに返答してきた

 

「車の下がどんな風になってるのか見ようとして、下に潜ったら出られなくなっちゃったのよー!」

 

そういって足をジタバタさせるレミリア

一体何をどうしたら抜けられなくなるんだ…出れるぐらいの隙間もあるじゃないか

 

よくよく見てみたらベルトをつけていた、しかも何故かその寝板のローラーの下に凹みが出来ていてそこに引っかかっているようだった

なんでベルトなんかつけてるんだ…?ていうか、こんな偶然なんてあるんですかね…?

 

「助けてー!はーやーくー!」

 

そう急かされたので『はいはい…』といって下から引き出してやった

 

 

――――――――――――――

 

 

「どうだ?落ち着いたか?」

 

「えぇ…ちょっとはね…」

 

レミリアの服は車の下に潜っていたせいか、少し黒ずんでいた

そんなレミリアは特に気にも留めずキッチンでさっと作ってきたココアを飲みながらちょっと落ち込んだ様子で話している

 

「…んで?なんで車の下なんかを覗こうと?」

 

これが一番気になった点だ、大して車が好きでもないレミリアが車のことを知りたいなんて…

まぁ車好きの俺としては車好きが増えるのは嬉しいんだがな…

 

「単純な理由よ、スバルがよくこんなことをしてるから私もやってみたかっただけ」

 

何故かちょっとむすっとした顔で言ってきた

そして何故か俺の方を睨むレミリア

…俺なんかしたかなぁ

 

「スバルは車のことになると車ばっかり…一緒に乗ろうって言ってもダメとしか言わないし…だからどんなものか見てやろうと思ったのよ」

 

ココアをすするのを一旦止め、少し寂しそうな顔で話をしてくる

そんな話を聞いて、少し心のなかでグサッというかズキッというかそんな感じがした

罪悪感すごいなぁ…

 

「…悪かったな」

 

そういって頭をポリポリと掻きながらボソッと謝ると、少しレミリアの表情が明るくなった気がした

 

「その代わりといっちゃあなんだが、俺の趣味をわかろうとしてくれたんだろ?そのお礼だ、横に乗ってみるか?」

 

俺がそういうと、とても嬉しそうに『ありがと~♪』といって体を摺り寄せてくる

あぁ…車もいいけどレミリアもいいな…

 

そんなことを考えながら、さっきレミリアが下に潜っていた俺の愛車『スバル インプレッサ セダン WRX STi スペック C (Type-II)'04』の助手席のドアを開ける

レミリアは自分の服が汚れていた事に気がついたらしく、急いで着替えてきていた

セッティングは一応まともな感じに仕上げたはず…ちょっと癖があるような気もするけど…

 

今回はサーキットとかは走ったりはしない、ちょっと『スペシャル・ルート7』を走るだけだ

流石にニュルとかを走ったらレミリアが気絶しちまうからな、段々慣れていってもらいたいものだ

 

「よし、行くか!」

 

そういってエンジンをかける

その直後に水平対向独特のドロドロ音が車内に、そして俺の体中に響きだす

この音だ、この音が俺をやる気にしてくれるんだ

そう考えながら首都高への道のりも楽しんだ

 

 

――――――――――――――

 

 

レミリアSide

 

高速道路についたみたい…

私はボーっとそんなことを考えながら黙って隣に乗っていた

そこまで深く考えて乗ったわけでもない、スバルが乗せてくれるっていうから乗っただけだ

 

車のどこがいいんだろう

音はうるさいし、こんなスポーツカーみたいなのは改造とかすると乗り心地は悪いし…ガソリンとかの臭いも酷い

やっぱりわからない、どうしてスバルがそこまで車のことを気に入るのかが

 

そう黙々と心の中で葛藤していると、スバルがフッとこちらを向いて『ここからが本番だ、しっかり聞いて、しっかり体感してくれ』

そういってスバルはニコッと笑い、その直後に思い切りアクセルを踏んだ、一気にエンジンの物凄い轟音が高速道路中に広がった

 

すごい勢いで過ぎていく景色…

どんどんと高くなっていくエンジンの音…

そしてどんどん体の芯まで伝わっていく車からの振動…

 

何故か胸が躍る、ワクワクしてくる

 

アレ…?もしかして私、楽しんでる…?

 

いつの間にか私は笑顔で助手席に乗っていた

いつの間にか車に乗っていることを本気で楽しんでいたのだ

 

車のことはやっぱりよくわからない

音はうるさいし

振動はすごいし

乗り心地悪いし

 

けどなんでだろう…そう思ってる筈なのに…

 

 

 

 

―――すっごい楽しい!!!―――

 

 

 

 

私が楽しんでいることを感づいたのだろうか、スバルがグッとハンドルを握り『しっかりと摑まってろよ?シートベルトはちゃんとしまってるか?』

そういって少し真剣な顔になった

また新しいことをしてくれるみたいだ

 

クイッと車が曲がり、すごい急カーブに突っ込んでいった

物凄い勢いで壁が近づいてくる

ッ!?嘘ッ!?このままじゃぶつかる!!

 

そう思った次の瞬間…

ブレーキを踏んだのだろうか、体がすごい勢いで前に持っていかれ、体が吹き飛びそうになった

自分だけの力では完全に車外に放り出されていたが、スバルが左腕でとめていてくれた

 

「しっかり摑まってろっていったろ?」

 

そういって笑うスバル

『もぅ…』などと言って頬を膨らませていると、スバルが思い切りハンドルを切り、車の後ろからタイヤと道路が擦れるような凄い音が聞こえ、横滑りになっていた

私の体もかなり横に持っていかれ、世界には本当に重力があるということを二回も感じることになった

先程の出来事は本当に一瞬の事で、私がしっかりと反応できた頃には既に車は普通に真っ直ぐ走っていた

 

私が唖然としているのにも気づかないのか、敢えて気づいていないフリをしているのかは分からないが、お構い無しにアクセルを踏み込んでいた

また高速道路中に轟音が響き渡る

段々と慣れてきたらしい、少しは細かいところへ意識出来るようになった

 

エンジンから響いてくる重低音…だろうか?

よくはわからないが、私が知っている高級車とは全然違う音だ、重々しいのだ

前なら絶対嫌がっていた筈なのに、今ではこの音が気持ちいいぐらいだ

 

これが『車を好きになる』ということなのだろうか?

流石にまだ『この車は美しい』とか『この音がいいんだ』とかまでは言えない、正直言おうとも思わない

けどこれだけは言える

 

 

《意外に車もいいかもしれない》

 

 

スバルSide

 

そろそろ降りるか、そう思って軽く走った後に首都高を降りてきた

ちょくちょく表情を確認していたが、うちのお嬢様も割と気に入ってくれたらしい

 

実際俺もそんな感じだった

親父に首都高に連れ出され、初めて音とか振動とかを感じたときの衝撃は未だに覚えている

 

それまでは大して車に興味はなかったが、それ以来、車を中心にして生きてきた

 

『将来俺はこいつに乗って、勝ち誇るんだ!』とか抜かしてた時期も勿論あった

今ではそこまで考えてはいないが、たまにふと考えたりはする

 

『俺は一体何処まで通用するんだろうか、それ以上に強い奴等とタメを張れるぐらいまでいけるんだろうか』とか…

だから今でも首都高に赴いて、なんとなく相手を探しながら走り回っている

 

そんなことを思いながら休憩ついでに道の駅に入っていった、そして口を開き、レミリアに言ってしまった

 

「なぁレミリア」

 

「どうしたの?そんなに悲しそうな顔で…?」

 

すごい心配そうな顔で見られる

言っちゃダメだ…言ったらレミリアが喜んでいたのにそれを壊してしまう…

そう思っているのに口は止まらなかった

 

「俺の親父がもうこの世にいないのは知ってるよな?」

 

「えぇ…理由はよく知らないけど…」

 

そこからは本当に口は止まらなかった、手をそばに持っていくことすら出来なかった

どんどんと親父のことを話していく

 

――俺の親父は本当に車が好きな人だった

 

毎晩首都高に赴いてはその度に『今日も勝ってきたぞー!』と大喜びで帰ってくるような人だったんだ

 

親父のことをよく思わないやつも勿論いたんだ

 

そんなやつにレースを申し込まれたときだ

 

親父は『勝ってきたぞ!』とか言って来なかった

家にも帰ってこなかったんだ

 

流石の俺もヤバイと思い、そのときはもう免許もとって車も持っていたから、車に乗って親父が行ったところまで急いだ

そのときは涙を流しながら車を運転していた

 

そして首都高に着くと、親父の車はひっくり返って大破していたんだ

多分レースしていた相手が故意にぶつけて事故を起こしたんだろう

 

車をよく見てみたらまだ親父は生きていた

 

車からはオイルがかなり漏れ出し、臭いがすごかった

 

急いで駆け寄って親父を助け出そうとした

 

すごい臭いの中、親父は俺を真剣な眼差しで見て『お前は車が好きだよな…?ならそのまま好きでいてくれ、俺がこんなことになったからって車を嫌いにならないでくれ…それが俺の願いだ…』

そんなことを言い出した

 

そのとき俺は『ふざっけんなよッ!こんなとこで死ぬつもりかよ!そんなの俺は許さねぇぞ!寿命で死ななきゃ俺は認めねぇぞッ!』と叫んでいた

 

親父は俺のことなんか気にも留めず続けた『俺のガレージに一台インプがあったはずだ…それをお前にやる、お前用に組んでいたインプだ…勿論お前が好きにいじってもいい…』

 

そして親父は俺の事を突き飛ばし『逃げろ…後で警察もくるはずだ…こいつもそろそろダメだろう…』

 

その後親父が涙を流しながら、だけど笑いながら、俺に放った言葉は未だに心に焼きついている

 

 

――ありがとう…車を好きになってくれて…俺みたいなバカの息子でいてくれて…――

 

 

そのあと俺の目の前で車と一緒に爆発した

 

それからは涙が止まらなかった

ずっとそこから動かなかった、動きたくなかった

親父がいなくなったことを認めたくなかった

 

けどすぐに警察のパトカーのサイレンが近づいてきたので、俺は泣きじゃくりながらその場を離れた

ここにいたら犯人に仕立て上げられてしまう…

 

帰るときも泣いて、泣いて、泣いて

その一件以来、泣けなくなった、涙が涸れてしまった

 

だから俺は首都高とかで相手を探すものの、それが怖くて、親父の二の舞になるんじゃないかって

親父は俺にはレースをしてほしくないんだとも思った、けどどうしても走りたくなるんだ

 

―俺はアンタの息子だから…車が好きだから…―

 

 

レミリアside

 

あまりにも無情過ぎる話に思わず愕然としてしまった

確かに勝負事は人間関係云々の話は出てくるが、ここまで酷なものとは思っていなかった

もしも相手に恨まれるようなことがあれば故意に車にあてられて殺されるようなことがあるなんて…

 

この話を聞くからに、スバルはその事件のトラウマでレースが出来ていないようだった

レースについてはよく話してくれた『今日も相手を見つけられず帰ってきたんだ』って

 

そんなことじゃダメだ

お義父さんはそんなことは望んでいないはずだ

逆に『俺のせいでお前を縛ってしまっているのか…』そう思うはずだ

 

「ねぇスバル…本当にあなたは走れないの…?単純にお義父さんのことがトラウマなだけなんじゃないの?」

 

私は思わず聞いてしまった

実際聞くつもりなんてなかった

そうしたらスバルはドアを『ドンッ!!』とすごい勢いで叩き、すごく悲しそうな表情をしながらすごい気迫で叫んできた

 

「そんなのわかってるんだよッ!!!俺だって…俺だって走りたいんだ!!けど…けど…あの事件のトラウマが頭の中に蘇る度に怖くなって…ッ!!」

 

一気に言葉を吐き出した後に崩れ落ちたように泣きじゃくるスバル

私はいつの間にかスバルのことを抱きしめていた

 

「お義父さんが最後に残してくれた言葉は『俺の事には縛られず、車を嫌いにならないで、お前はお前の好きなことをやって生きてくれ』そういう意味だと思うの」

 

「わかってるんだ…わかってるんだよ…けど…認めたくないんだ…親父が死んだ事を…首都高へ行くたびにそんな思いが…情景が思い浮かぶんだ…それが俺の走る本能を拒むんだ…」

 

私の胸の中で、すすり泣いているのがわかった

その泣き声を聞くだけで心がキュッと締め付けられているような感覚がした

スバルの搾り出したような言葉の後に私は続けた

 

「私はあなたのことを一生支えていくつもり…もしも事故に遭うようなことがあればすぐに飛んでいってあなたを助けるわ…私はあなたの全てを受け入れられる存在でいたいの…」

 

かなりスバルも落ち着いたみたいで、深い深呼吸をしてこう言ってくれた

 

「ありがとう…ありがとう…俺…親父と自分自身と向き合ってみるよ…」

 

そういってスバルはグッとハンドルを握った

ハンドルを握る姿はいつも以上にカッコよかった、目には何か決心みたいな希望にも似たようなそんなものが浮き出ているのがわかった

 

 

―深夜2時の暗闇の中、またスバルは車を走らせた―




はい、どうだったでしょうか?
今回初めての車系の小説ということで結構苦労しました…
こういった主人公シリアスっていうのもいいですね
因みに、この小説につきましては『割と見てもらえてるのかなー』と思いましたら、このまま連載していくつもりです

感想・意見・アドバイス等ありましたらコメントよろしくお願い致します!

では次の機会まで…ゆっくりしていってね!

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