地獄の中で悠々と生きる   作:うどん風スープパスタ

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今回、グロ描写注意です。


十話 発動する能力

 大音量で音楽が流れる学園で、この放送室だけが静まり返った。

 この放送室だけスピーカーをオフにしたからだ。

 

 この場には、俺と物言わぬ死体のみ……始めよう。

 

 オーラを集めた手を死体にかざし、集中する。

 今日この日のために作り上げた能力。

 これからの世界を想定して考え抜いた能力。

 今日までどんな目で見られようと、研鑽し続けた能力。

 俺がこの世界で最も使えると直感した能力。

 

 その名は

 

「“蟲毒奮闘(ワンマンアーミー)”」

 

 呟きに呼応し、手のオーラが無数の米粒のような形を成す。

 米粒状のオーラは白く染まり、瞬時に質量を持って蠢き始めた。

 それはさながら、無数の蛆虫のごとく腕を這い回る。

 払い落とすと緩慢だった動きが機敏になり、掘り進むように死体を貪り食らう。

 

 くちゃり、くちゃり……

 ごり、ごり、ごり、ごり……

 びちゃ、びちゃ、ぴちゃ……

 

 死体の肉が、骨が、血が、蛆虫に食い破られた穴から小さな咀嚼の音が聞こえる。

 

「そうだ、もっとだ、どんどん食べろ……」

 

 それが俺の力になる。

 

 そうなるように作り出した“念獣(ねんじゅう)”なのだから。

 

 

 

 念獣とはハンター×ハンターに登場する能力の内、動物を模したオーラを具現化して操る能力。例を挙げれば魚やゴリラ、自分の分身を作り出したキャラクターもいた。

 

 同時にオーラで生き物を具現化する具現化系と、それを操る操作系の念を要する高度な能力だと紹介されていたが……この能力を選んだ理由は、俺のオーラが属する“系統”が大きく関係している。

 

 念能力者は原則、自分のオーラが属する系統の能力が最も力を発揮でき、強化、変化、放出、具現化、操作、特質を“六性図”と呼ばれる図形に配置した系統図で自分の系統から遠い系統ほど苦手とする。

 

 念獣が高度と言われるのもそれが原因だが、俺のオーラは系統を調べる“水見式”によると特質系(・・・)。他の系統に分類されない特異なオーラで、具現化と操作と隣り合っているため相性が良いオーラだ。

 

 特質系と知った当初は、何をどうしていいか分からずに困り果てた。

 強化系なら肉体でも武器でも強化するのがいい

 変化形なら何かを変化させる力。

 放出系なら念弾でも撃とう。

 操作系ならゾンビを操作できないか? 

 具現化系なら何か道具を。

 

 他の系統ならある程度の考えはあったが、特質系は他に類を見ない特異なオーラだという知識しかなかったからだ。漫画を参考にしようにも、特質系は数が少なく、状況に合うとは思えない。かといって一から考えようにもよくわからない。

 

 悩んで悩んで悩みぬいた挙句、俺はよくわからない(・・・・・・・)事を能力にする、という結論に達した。

 

 何をどうしてそうなったのかは自分でも説明できないが……しいて言うなら閃いたと言うところだ。

 

 よくわからない事、それは考えて分かる事ではない事。

 科学で証明されていない事、できない事。

 そうしてたどり着いたのが魔法や呪術といったオカルト的な話。

 さらに科学や自然現象で解明できそうにない不思議な話を探して、俺は見つけた。

 

 “蟲毒”

 

 壺や皿の中に多種多様な毒を持つ生物を入れて殺し合わせ、最後に残った一匹を使い人を呪い殺す。漫画などではよく見る話だが、これが不思議と自分に合っていると直感した俺は、一気に構想を練って能力を作り上げていた。

 

 人がゾンビになるなんて、話したって誰も信じやしない。

 世界がこう(・・)なるまでは。

 なってからではもう遅い。

 だから力が欲しかった。

 だから仲間が欲しかった。

 裏切らずに俺と戦う存在ができるだけ多く。

 だから、作れた。

 

 それが“蟲毒奮闘(ワンマンアーミー)”。

 ゾンビにとって“天敵”となる念獣を作る能力。

 

 制約は全部で十二個

 1 念獣製作にあたり、生物の一部とオーラが最低でも自分の腕一本分必要。

 2 動物や他人の死体でも念獣は作れるが、自身の肉体を使用するのがベスト。

   自分の血肉のみで作られない場合は著しく弱く、成長が遅くなる。

 3 自分の一部をまったく使わずに作られた念獣は、命令を一切聞かない。

 4 素材となる死体と念獣の形態は無関係。ランダムに決まり、変更は不可能。

 5 念獣を一匹作るために最低でも五日はかかる。

 6 念獣は食事をすることで存在・活動し続けるが、死体しか食べない。

   死体以外を無理に食べさせても意味はない。

 7 作った念獣は少量のオーラで自由に召喚できるが、

   二十四時間以内にその念獣の体積と同量の死体を食べなければ消滅する。

 8 一度出した念獣は死体を食べさせずに消しても消滅してしまう。

 9 肉体の損壊で行動不能となった場合も同じく消滅する。

 10 消滅した念獣は以後使用不可能。補充には新たに作るしかない。

 11 念獣はいくらでも作れるが、自由に出し入れできる上限は二百匹まで。

   上限一杯の状態で、作った念獣を消すと消滅する。

 12 念獣への命令権は他者に移譲することも可能。

   ただし相手の意思で返還されるまで権利を譲った念獣へ命令ができなくなる。

 

 

 

 これらの制約は能力に“念獣を製作するための条件”“念獣が即戦力にならない”“念獣を扱う際の条件(制限)” “消滅による労力の浪費”という四種類のデメリットを与えている。

 

 そのためこの能力で作り出した念獣はこれまで(・・・・)、素材であり餌にもなる死体の集めにくさから製造が困難かつ労力を無駄にしやすく、即戦力にもならない。成長もさせるのも難しい。数多くの念獣を保持し、少量のオーラで使えることを差し引いてもデメリットだらけの能力だった(・・・)

 

 しかし今は違う。

 

 この死体に溢れた新しい世界なら、素材も餌も容易に手に入る。それも大量に。

 作りたての念獣は変わらず弱いままだが、十二の制約は伊達ではない。

 おかげで餌があれば成長する(・・・・)という特性を与える事ができた。

 これで最初のハンデを補えるだけの餌を用意して育ててしまえばいい。

 そうすれば俺は心強い味方を数多く手に入れられる。

 人間は俺一人、しかし数で言えば軍隊の一個中隊にも匹敵する。

 

 それを思うと、目の前で原型を失っていく死体の様子に心が躍る。

 皮が破れた。内臓が垂れ下がる。腕が落ちる。頭が食べきられた。

 

 まともな精神の持ち主ならきっと嫌悪するだろう。

 無慈悲に貪り食らう念獣の凄惨極まりない動向が、彼らに、俺に、力を与えている。

 それを象徴するように念獣の体は徐々に肥大していく。

、表皮は骨のように硬質に変わり、生物の形を取り始めていた。

 

 この死体を食べさせ終えても、外に出れば餌はまだまだ沢山ある。

 今この時も、自分からどんどんやって来ているはず。この先が楽しみだ。

 

 さて……食べ終わるまで、もう一仕事しておくとしよう。

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