地獄の中で悠々と生きる   作:うどん風スープパスタ

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二十二話 繁華街

 到着した繁華街は、繁華街という言葉のイメージよりも寂れて見えた。

 ゲームセンターやパチンコ店、居酒屋や雑居ビルが建ち並んでいるが、全体的に建物が古い。

 車では進入できないほど狭い道幅もあって、何とも言えない閉塞感が漂っている。

 

 そしてここでもゾンビの被害が出たのだろう。

 建物の壁や道路に血が飛び散った形跡が多数。

 特に道路には頭部分が爆発したような血の人型が多数残っていた。

 

「……」

 

 人がゾンビに襲われた場合、ゾンビは人の部位にこだわらず噛み付くので出血点はバラバラ。集団に襲われればそれだけ傷も多く、全身を噛まれて死に絶える。

 

 だがこの多数の血の人型は、頭部からの出血が著しい。また血しぶきの広がり方からして、返り血まみれのゾンビが倒れたところを鈍器のようなもので潰されたようだ……つまり人が戦闘を行った形跡だ。それが多数ということは、ここでゾンビを駆逐しようとした人間がいた証拠……

 

「とりあえず行くか。谷内、どっちに行けばいい?」

「たしか……」

 

 学校から持ち出した金属棒を肩に担ぎながら聞くと、谷内は近くの路地を指し示した。

 

「よし。骨犬2匹、先行しろ」

「「ワン!」」

 

 続いて俺も指示通りに進み、その後から谷内、熊井。別行動を避けるべく豪徳寺は日村と川本に支えてもらい追従。五十嵐が人間の最後尾で後方警戒を担当し、残りの念獣(犬8+鳥3)が適宜護衛に当たる。

 

「路地を抜けたら右に向かって、しばらくまっすぐです」

「了解」

 

 つい先ほど車中で知った事だが、谷内は以前フロワに行ったことがあるらしく、後ろからだが道案内を引き受けてくれた。おかげで迷うことなく進めているが……

 

「……谷内はここによく来るのか?」

「入学直後にイケイケ系のクラスの子に誘われて一度、それっきりですね。……ぶっちゃけ雰囲気ヤバイでしょ、この辺」

「普通の学生が立ち入るような場所ではないだろうな」

 

 真面目系の熊井と川本はもちろん、五十嵐や日村もそこまで遊んではいないのだろう。

 町の怪しい雰囲気だけで緊張した様子が伺える。

 

 フロワの情報をくれた聖花の友達もそうだったが、このあたりに来る連中はだいぶガラの悪い連中のようだ。谷内も一度目で察し、以後そのクラスメイトと付き合いを絶ったらしい。

 

「あ、そこです」

「店の正式名称はフローラ、確かに」

「あの時は特になにもなかったんですけど、後々部活の先輩に聞いたらその……売春、とか……出会い系とか? そういうお仕事を紹介してくれるフローラっていうクラブだから“フロワ”って呼ばれて――あ、ちょ先輩!?」

 

 念獣とともに建物内に進入。

 防音らしき扉の先は横に長い長方形のダンスフロアに、天井から下がるミラーボール。

 他には……ゾンビに対抗するためか、はたまた混乱したせいか?

 全体的に物が散乱していて、ソファーなども元々どこに設置されていたのか分からない。

 人の気配はないが……“円”が店の奥の壁際に落ちていた物体を捉えた。

 

「その動物がいても、どんどん行ったら危ないですって!」

「うわ、すっげー」

「アタシもこういう所は来たことないんだよな……」

「クラブってこういうところなんですね」

「なんだか落ち着きません」

「でもやっぱり、ここにも血の跡が沢山……藤原君?」

「……当たりだ」

 

 落ちていたのは髪飾り。一昨日の早朝、トレーニングルームに飛び込んできた聖花が身に着けていたあのゴテゴテの髪飾りだ。

 

「それ、もしかして妹さんの?」

「間違いない。このデカい花と蝶。こんなゴテゴテした髪飾りを見間違えるわけがない」

 

 そして一度身に着けて帰ってきていたことから、前日の忘れ物という可能性もない。

 あいつは間違いなく、昨日ここに来ている。

 

「となると後はどこへ行ったかだが……バーになってるスペースに酒が1本もない。同じく食料品も見える範囲では全て漁られて持ち去られている所を見ると、この店はもう生き残りに放棄されたんだろう。妹が生きていればその生き残りの中に……あるいは何かしらの手がかりを持っている人がいるかもしれない」

「生き残り……どう探せばいいんだ? ここまで来る時、誰にも会わなかったよな?」

「それなら問題ない。向こうから来てくれた(・・・・・・・・・・)

 

 俺がそう告げた丁度その時、

 

「動くな!!!」

 

 まるでタイミングを図ったかのように。

 入り口から店内へ、大勢の大人がなだれ込んできた。

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