……なんだっけかな。
『おはようございます!! 武闘大会2日目は、個人部門本戦です! 私は楽しみで昨日全然眠れませんでしたー!』
翌日、目の下に本当に隈を作ってきたモナに、観衆から苦笑がもれた。が、気持ちは分かるといった風でもある。
『それでは、選手入場ー!!』
声と共に2つの扉が開き、左右から5人の選手が現れた。3人が剣士、1人は魔道士、1人は槍使いらしい。アシュレイの姿は、ない。
『ルールを説明します! ルールと言っても簡単、5人で戦って、最後に残った1人が第二次本戦に進出です! 負けの判定は降参、あるいは石舞台のしたのくぼみに落ちることとします! ただし、魔道具は使用禁止! 使ったら反則ですからね~。また“降参”の意を示した相手に更に攻撃を加えても失格ですよ。……それでは準備はよろしいですか? では、よーぅい…始め!』
『【唸れ猛雨の吹雪】!』
直後、会場の中心が爆発した。属性は水。魔道士である。それを皮切りに、他の3人が動き出した。爆発は彼らも巻き込んだはずだが、どうやら苦にならなかったらしい。先制攻撃でダメージを少しでも与えたかった魔道士が舌打ちした。試合会場の周りにずらっと拡声魔道具があるので、試合中の彼らのつぶやきも、舌打ちも全て観客には筒抜けなのだ。
わっと観衆が沸く、と同時に、ユーゼリアは誰かに肩を叩かれた。
「よっ」
「アッシュ!」
「どうしてここに?」
「俺の順番は4回戦目でな、それまで自由にしていいとのことだったから、戻ってきた。まあ、席はなさそうだから通路に立ってるが」
申し訳なさそうな顔をするクオリに、笑って「気にするな」と言うと、そのまま戦闘を観戦し始める。
試合は魔道士の圧倒的不利だった。剣士たちと槍使いが、まずは遠距離攻撃のできる魔道士を4人で潰しにかかったからだ。魔道士の方も必死に攻撃を避け、下級魔法の連弾で距離を稼ごうとしていたが、流石に4人の近接戦闘員を相手取るのは厳しいようだ。
『【氷の乙女】!』
「…なるほど。そうきたか」
「何が?」
「あの魔道士の戦法だよ」
詳細を求めるユーゼリアには「まあ見てろ」と言うだけに留まり、アシュレイ自身も再び会場に目を向ける。
その場の気温がスッと下がる。範囲はちょうどフィールドよりやや小さい程度だ。
『うわっ』
『くそっ』
剣士たちが悪態をついた。ひとりは尻餅をついている。
「始めに仕掛けた水の爆発はこのための布石だったというわけだ」
乾いた土を凍らせるより、水を撒いて湿らせた土を凍らす方が使う魔力は格段に減る。そして凍りついたフィールドでは、下手に動けば滑って転んでしまい、魔法の格好の的になってしまう。
戦況は逆転、一気に魔道士有利となった。
『大逆転! Bランク水魔道士、アイン・シティ選手が一気に形勢有利に!』
『いい戦略ですね。始めの爆発をあえて中央に設定したのは、このためだったというわけです』
『なるほど!』
結局このまま魔道士がごり押しで勝利、やんややんやの大喝采となった。
その他の試合では他に魔道士は勝ち抜いておらず、やはりこのような“場”になると、魔法士は不利なのだろうと思った。
「さて、次か」
「頑張ってください」
「そうだ、アッシュ!」
「ん?」
「今日の大会が終わったあと、外でご飯食べてきましょ! お店はチェックしてあるから!」
「ん、分かった」
「優勝の前祝いですね!」
「はは、気が早いよ」
「勝つのよ!」
「はいはい、お姫さまのおっしゃる通り」
「アッシュ!」
「わかってるって。んじゃ、勝ってくる」
ぽんぽんと銀色の頭を叩くと、コートのポケットに手を突っ込んで、いかにも気だるげに階段を上っていった。
「まったく」
「ふふ。仲よろしいんですね」
「ん、仲が悪かったら護衛になんて雇ってないわ。まあ、彼ならちょっとくらい仲悪くても、有能だから手放さないけどね」
「そういうのじゃなくて…」
困ったような顔で苦笑するクオリ。ユーゼリアは首を傾げた。
「あはは…やっぱりなんでもありません」
「なあに?」
「こういうのは静かに見守っておいた方が、当人たちのためですからね」
「?」
再度首を捻るユーゼリアに笑って誤魔化すと、クオリはそれよりも、と試合会場を指差した。
「アッシュさんが来ました。応援しましょう!」
『続いては第4回戦! 先ほど赤グループで高度な技を見せたアシュレイ選手もいます。なんと選手情報を見るかぎりランクはF! 一体今度はどんな動きを見せてくれるのでしょうか! 他に青グループで1対4の勝負を勝ち取った大剣使いのBランカー、ロートス選手にも注目ですね、カエンヌさん!』
『そうですね。また司会席側から出てきたのは女性ながら重い一撃を放つ槍使いBランカーのリーメイ選手、素早く懐に入り急所に叩き込むダガー使いBランクのシュウ選手、手数で敵を圧倒する双剣士B-ランカークライン選手です。5人とも前衛の近接戦闘担当、魔法が使えるという情報はありませんから、競うは己の剣技ということになりますね』
『なるほど。ええ、この5人のレートですが、Bランカー:リーメイ選手が1.7倍、おなじくBランカー:シュウ選手は1.5倍。B-ランカー:ロートス選手が1.9倍。B-ランカー:クライン選手は1.8倍、ただ1人Fランカーにて参加したアシュレイ選手は…に、29.9倍です』
(桁が違うな)
それだけで如何に自分が期待されていないかが伺えた。きっと金を賭けているのはユーゼリア達だけに違いない。
『では準備も終わりましたようなので、第一次本戦4回戦目、よぅい……始めッ!!』
瞬間、双剣士クラインと槍使いリーメイが風のような速さで同時にシュウへと斬りかかった。だが防具を貫通せんとした槍は空を突き、唸りをあげた双剣はダガーで止められた。
キィィン!!
硬い金属音が響き、クラインを弾き飛ばした。
「やるな!」
宙で一回転しつつ余裕をもって着地するクラインを見届けると、シュウは油断なくダガーを構えた。
「リンチはやめてほしいんだがね…」
「そりゃ、無理な相談ってね!」
リーメイが長いリーチで槍を横凪に振るう。シュウが飛んで回避すると目の前でクラインがニヤリと笑っていた。
「ぐっ!」
片方は防いだものの、双剣の片方を腕に喰らい、その場で落下。前転して勢いを殺すが、利き腕を傷つけられ思わず顔が歪んだ。
「何せ、アンタがこの中で一番ランクが高いもんだからな」
「そこの女がいるだろ!」
再び地を蹴り、息も止まるような連撃を繰り出した。が、リーメイは全てを完璧に叩き落とす。今度は彼女の方が後ろに跳び、距離をもった。と同時にまたクラインが前に飛び出す。リーメイが息を整えながらニヤリと笑った。観客も思わず唾を鳴らす。
「おなじBランカーでも、あたしゃか弱いオンナノコだからね」
「はっ! 笑わせるぜ!」
苦い顔をしながらも、シュウはクラインに向かって地を蹴った。
対してもう一組、アシュレイとロートスからは、剣が剣を受ける金属音さえ鳴っていなかった。
『Fランカーアシュレイ選手、流石にB-ランカーロートス選手の猛攻撃を避け続けるのはつらいのでしょうか、押されています! しかしなんとか紙一重でかわせているようです! ただ危うい! 見ている方がヒヤッとするようなギリギリ崖っぷちの避け方! やはりFランカーの下剋上は無理なのか!?』
子どもの背丈はありそうな大剣を縦横無尽に振り回すロートスの攻撃を、アシュレイは目と鼻の先でかわし続けていた。ギリギリの戦いに観客が沸き立つ。
(さっきからFランカーFランカーって……連呼されると恥ずかしいんだが)
まだ登録して1月なのだから仕方ないことではあるが、今回の参加者の中ではダントツの最下位ランク(そもそもFの下にはF-しかないが)であるため、ちょっと苦い顔のアシュレイなど放っておき、モナは実況を続けた。
『どうやら4回戦では1対1の戦いを同時にやるようです!』
『まあ、魔道士のいないグループならそれが定石でしょう。しかし…アシュレイ選手は本当にFランカーなんでしょうかねえ?』
『確かに、ギリギリとはいえB-ランカーであるロートス選手の攻撃を避け続ける技量には、目を見張るものがあります!』
『……まあ、見ていましょう』
若干の含みを持たせた声でカスパーは言い、それきり口を噤んだ。リーメイとクラインの方のコメントに移る。
試合開始から十数分。
リーメイ、クラインに延々追い掛け回されたシュウは息も切れ切れなのもうなずける。当の2人は僅かに息を切らしているものの、まだまだ余力があるのに対し、アシュレイに対峙していたロートスの方は、既に肩で息をする程体力を消耗していた。
否、正確には「
『おやぁ!? 一体どういうことでしょうか!? 押していたように見えたロートス選手、既に体力は限界のようです!!』
(顔に似合わずズバッと言うな、あの司会)
思わず苦笑するアシュレイは、当然息一つ乱してはいない。これには観客も大盛り上がりだ。
「くっそぉ、クソクソッ! なんで当たらねえんだよ!!」
苛立ちも露わにロートスが怒鳴る。
片や吹き荒れる風のような連撃を全て受けられ、片やクライン程の速度でないものの、並の冒険者ならば一撃で
どちらも相手にダメージを負わせていないのに変わりはないが、精神的に追い詰められるのは圧倒的に後者だ。当たった、と思う斬撃がことごとくかわされる。如何なB-ランクまで上ってきた剣士であろうとも、むしろB-ランクの優秀な剣士だからこそ、それが数十分にも続けば苛立ちは押されられない。自分の剣に自信を持っているからだ。
そして内心でくすぶり続けた苛立ちの火は、やがて焦りとなって振るう剣に表れる。
(当てたい。一発あたりゃあ奴はあの軽装だ、アバラの2,3本は持っていける。一発でも当てれば…!!)
その気持ちから、無意識にロートスは剣をより大きく振り上げた。狙うはアシュレイの左肩。
この時、ロートスは気付かなかった。
今の今まで、自身の振るう大剣を全てかわしてきたアシュレイが、無防備にその足を止めたこと。その意味を。
(いける…!!)
意地と怒りにまかせて振り下ろした鉄塊は、だが獲物を食らうことは叶わなかった。
ふと気が付けば、ロートスはなぜか空を見上げていた。
(……え…?)
34歳B-ランク大剣使い、ロートス・ブランデーが次、穏やかに目を開けたのは、日付が変わったあとだったとは、彼を治療した医療魔道士見習いの談である。
『おォっとぉ!? これはどんなどんでん返しだ!! なんとロートス選手が地に臥し、動きません! ロートス・ブランデー選手、敗退です!』
扉が開き、駆け足で数人の医療魔道士がロートスを運んでいく。観客も予期せぬ勝者に沸き立つ。
「やった! アッシュー! 頑張れー!!」
「あわわわわ、分かっていてもヒヤッとさせますね。まったく心臓に悪い…」
一番はしゃいでいるのはこの2人かも知れない。
アシュレイはしっかりユーゼリアの声援の声を拾い上げてそちらに向くと、ニコリと笑って手を振った。彼らの延長線上にいた女性客が浮き足立つ。
あまり言及されたことはないが、アシュレイも十分整った顔立ちをしているのだ。思わずドキッとしてしまうのも、まあ無理はない。
モナがキラーンと目を光らせた。
『おやおやおやぁ? なにやらアシュレイ選手、余裕の笑みで観客に手を振っていますが!?』
『はいはい、時間は推してますから寄り道はなしですよ。さて、3人になった今、リーメイ選手とクライン選手はどう動くのでしょうか』
アシュレイとしては間近でB系ランカー同士の試合を観戦したかったのだが、どうやらそうは問屋が卸さないらしい。
いつの間にかシュウの姿がない。どうやらあのあと体力切れで場外に突き落とされたようだった。
リーメイとクラインは自分とほぼ変わらないランクであるロートスがいともあっさり敗れたのに危機感を持っていた。それも、見たところ年齢はまだ20になっているかどうかといった若者にである。2人とも互いの実力はもう分かっている。そう大きな差はないだろう。
ならば問題視すべきは、素性の知れない目の前のFランカーだった。
クラインとリーメイは戦いを一時休戦、2対1でアシュレイを相手取ることに決めた。
「気ィ抜くんじゃないよ…」
「わぁってらぁ!」
2人同時に駆け出す。得物の差か、クラインが先にアシュレイの間合いに入った。
『なんと、B、B-ランカー達が、Fランカーを袋叩きだぁ! これはマズいんじゃないでしょうか、カエンヌさん!?』
『さて、どう逃げきるでしょうか。楽しみですね』
カエンヌはニヤリと笑いながら試合場を見下ろした。その目には何かを確信している光があった。
「うりゃあ!」
威勢の良い声と共に突き出される片手剣をしゃがんで避けると同時に脚払いをかける。連撃を見舞う予定だったクラインはバランスを崩し、尻餅をつくかと思われたが、そこはB-ランカー。危なげ無く剣を握ったまま逆立ちし、バック転の要領でアシュレイと距離をとった。
「先走るんじゃないよ! こいつはあたしの獲物だ!」
「へ、だぁれがお前に譲ってやるもんかよ。こういうのは…早いもん勝ちだ!!」
左右からハサミのように首を狙って放たれた双剣を、髪を数本斬られつつも回避、サマーソルトでクラインの手から片方の剣を叩き落とす。
間髪入れずに降ってくる槍の嵐を後転直後後ろに跳びずさって避けた。
緩慢な動作で、
(どんな馬鹿力だよ、あの野郎)
胴体部分に比べれば薄いものの、クラインは長手袋型の手甲をしている。“軽くて丈夫”が売りの高級金属、
にもかかわらず通った、それも重い打撃。驚愕だった。
(本当にFランカーかっての)
「…おい」
「分かってるよ。…舐めてかかったら、こっちが危ない」
クラインの左手を視界に収めたリーメイが、静かに腰を落とす。
もちろんこの小声のやりとりも観客席には丸聞こえで、観客はざわめいた。ユーゼリアとクオリなどは、してやったりと顔を見合わせた。
『どうやらアシュレイ選手、Fランカーという肩書きに合わない実力者のようです! さて、それでも2人のB系ランカーの攻撃をかわすことはできるのでしょうか!?』
「やああ!!」
ダッとリーメイが飛び出した。遠心力で槍を横薙ぎに振るう。しゃがんで避けると読んでいたかのように完璧なタイミングで片手剣がアシュレイを襲った。
「ん、」
眉を上げつつ体をひねり剣を避け、振り向き様クラインの目にフィールドの砂を叩きつけた。
「うわっぷ!」
ここでクラインにたたみかけようとするも、それは正確にアシュレイの膝を狙って放たれた槍によって叶わない。
「チッ」
舌打ちと共に腕を動かす。クラインを狙っていた剣は槍の穂先に当たり、僅かにその狙いを逸らせると音を立てて真っ二つに折れた。
「ぬがー!!」
「我慢をし! 助けてやったんだから、寧ろ礼が欲しいね!」
奇声を上げたクラインに、リーメイが地面に突き刺さった槍を抜きながら怒鳴った。ぷるぷると震えながらクラインはアシュレイを指差す。
「……ずうぇええったいに、勝ぁつ!!」
この大会では、例え試合中に武器が破損しても、対戦選手に賠償請求をすることは出来ない。しかし実際のところ、選手たちは武器の賠償をしたりしなかったりしている。大会はそれを黙認している形だ。
“勝ったら賠償請求可”
つまり、勝てば官軍。請求金額が本来の半分だけのときもあれば(およそこれは低ランカーに優しい措置である)、しっかり全額受け取る場合も、ちゃっかり“手数料”と銘打って倍額請求することもあるとか無いとか。ただ、全額請求が一般的ではある。
閑話休題。
つまりクラインからすれば、勝たねばFランカーに負けた初戦敗退者(予選はカウントしない)のレッテルを張られるばかりか武器まで片方無くし、その上賞金も賠償請求すらできないという正に泣きっ面に蜂、七転八倒の処遇を受ける他無いのだ。今頑張らずしていつ頑張るというのか。
気合い十分に剣を掲げると、その場で詠唱を始めた。
「……」
『あれは身体強化系の補助魔法! クライン選手、実は魔法も使えたということですか!?』
『といっても、彼は根っからの剣士ですから、多分1発で魔力総量的には限界でしょうね。持って10分といったところでしょうか。まあ、身体強化魔法程度なら覚えている剣士も少なくありませんし、特に驚くことではないですよ』
そうはさせじとクラインに迫るアシュレイだが、寸前で首に殺気を感じ横に跳んだ。数瞬前に首があった場所に恐るべき勢いで槍が通過する。もし当たっていたら並みの人間なら首を骨折、下手をすれば頭が潰れるだろう。アシュレイであっても浅くない傷を負うのは間違いない。それは大会のルールに反する。リーメイは敵選手であるアシュレイが避けると確信していたのだ。
『あっっぶなぁぁい!!!! スレッスレでした!!! 今のって完全殺しにいってませんか!!?』
『アシュレイ選手なら避けられると確信していたんでしょう。事実、彼は軽く避けましたし。完全な死角からの攻撃を』
『むむむ、戦闘に素人だと危なっかしくて見ていられません!!』
事実、観客席は皆一斉に息を呑んでいた。何人か目を覆っているものもいた。筆頭は、ユーゼリアである。
「アッシュのバカぁ~」
「し、心臓に悪いなんてもんじゃありませんよ…」
思わず背もたれにぐったり横たわる2人を後ろの男性観客達が心配そうに見る、と同時に、彼女達の連れであるに違いないアシュレイに嫉妬の視線を向けていた。
「……大分暗くなったな」
ここで初めて、アシュレイが喋った。視線は空を見上げている。つられて皆空を見た。会場に屋根は無い。そのため会場は魔道士達による光球によって照らされていた。周りが明るすぎて星はあまりよく見えないが、それでもいくらか特に明るい恒星は見えた。日が沈んで半鐘くらいは経っているかも知れない。
慌てて視線を戻したクラインが、油断なくアシュレイを睨みつけた。目を逸らしたところを突く作戦かと思ったようだ。
アシュレイが視線を空に固定したまま言った。
「悪いがこれから予定が入っていてな…」
「何言って――!!?」
ドンッ!!
瞬間、クラインが壁に叩きつけられた。受け身を取る間もなく頭を強打、白目を向いて倒れる。
「約束してしまった以上、うちのお姫さまたちを待たせるわけには行かないんだよ。…悪いね」
きゃあ、とどこかで黄色い声がした。
「な!?」
クラインがいた場所で悠然と立っているアシュレイに、リーメイが驚きを露わにしていた。
素早くクラインに接近し、その腹を殴った。
たったそれだけの単純な動きが、リーメイの目には追いつかなかった。気が付いたらアシュレイが消え、同時にクラインの前に出現、殴打。クラインが場外に吹っ飛ぶのを見ているしかできないなんて情けないことだが、それでも身体強化を施したクラインでさえ手も足も出なかった今のアシュレイには、到底勝てると思えなかった。
あるいは、ロートスとシュウも合わせて4人で始めから殺すつもりであれば、一撃くらいは通ったかも知れないが、終わった後それを言っても詮無きことである。
「さて…降参すれば痛い思いはしなくて済むが……」
「抜かせ!」
Bランカーの意地。降参するわけにはいかなかった。声を上げてアシュレイに突進する。
「だろうな。……だが」
想像通りの答えに嘆息するもニヤリと笑うと、
「それでこそ、戦士だ」
リーメイの目の前から、その幻影だけを残して、消えた。
沈む意識の中、モナが高い声でアシュレイの勝利を叫ぶのが聞こえた。
******
「えー、それでは我らが財布の運命を握っているアシュレイの第一次本戦突破を記念してー」
「「「乾杯!!」」」
「プレッシャーはかけないでほしいんだが…」
「まあいいじゃないの。ふふ」
試合が終わったあとから妙に機嫌が良いユーゼリアに内心首を傾けるが、まあご機嫌斜めよりかはよっぽどいいので、放っておくことにした。
「このまま優勝したら賞金っておいくらなんでしょう?」
両肘をたててエールをちびちびと飲むクオリが独り言のように尋ねた。
「1000万よ! 3人できっかり分けたとしても、1人330万と端数貰えるわ」
「さんびゃくさんじゅう……」
「おまけに少なくとも今日アッシュが勝った分は確実に賭けに反映されるから、10万の29.9倍の…ふふふふふふ」
「にひゃくきゅうじゅうきゅうまん……ふふふふふふ」
「お、おい。2人とも、正気に戻れ! 目が怖い! 怖いって!」
「このままアッシュが勝ち続ければそれだけで……ふふふふふふふふふふ」
「一体魔導書が何冊…いや何十冊買えることか……ふふふふふふふふふふ」
そのとき、虚空を見つめていた蒼と金の瞳が同時にアシュレイを見た。頭ごと。オノマトペで言えば“ぐりゅん、ギロッ”と。
何が言いたいかって、
(こ、怖い……)
ノーアに抱く生命の根源的恐怖とは違うが、それに劣らない程怖かった。何か身の危険を感じた、と、後に彼は語った。
彼女達が正気に戻ったのは十数分後、食事が運ばれてきた後である。
>うちのお姫さまたちを…
作者が書いてて引いた。どん引いた。これリアルでやられたら引くわー
戦闘描写って、作者の語彙力と文章力を試されると思う。
描写がマンネリ化してきた気がしないでもない、ボキャブラリーの無さを痛感した今回。自分で自分の文章に飽きるってどうよ。
まて、このまま進んで平気なのか…!?
もしかしてもしかしなくとも武闘大会に突入したのはマズったですか!!?
>マズった
ですよねー(泣