タイトル通り先輩はアニメ準拠です。ポニテ先輩はいい人ですねと思って頂けたら幸いです。
UA1000オーバー…、こんな駄文を読んで下さりありがとうございます。
アニメと映画で人気が更に上がった中川夏紀先輩に万歳。
今日も学校に行き、眠気と戦う日々が始まる。
今のところ100回戦って100回負けているけれど、私は悪くない。眠気の方が勝手に私の瞼を閉ざして夢の世界に引きずりやがるのだ。
放課後になってもこの戦いは続いている。学生とは、学校で生きていると書く。学校にいる限り、私は戦わなければならない。
たとえ、部活動の最中であってもだ。
そして101回目の戦いが、今
「中川先輩。……皆で、合わせてみませんか」
・・・・どうやら、
「うん。いいよ」
今日は白星を刻むらしい。
『GET OVER』
中学は三年間帰宅部だった。
別に、所謂ボッチだったわけじゃない。友達はそこそこいたし、楽しかった。
でも、
「もの足りない……」
友達と遊んでそれなりでいても、もの足りなさを感じてしまうのは何故だろう。
―――私はあの子のように、何かに熱中した事があっただろうか・・・。
そんな事を、私はいつからか考えるようになっていた。
そして今日も鏡に向かう。
「高校に入ったら、何か部活に入ってみようか」
一人呟く、私。
例えば吹奏楽部とかいいかな。でも正直楽なところがいいな。
◇
「中川の奴、また寝てる・・・」
「まあまあ」
あれよあれよという間に、私は高校2年になっていた。
周りの人は私のことをやる気のない不真面目な奴と思っているだろう。
冷めた目で見られる事は馴れっこだし、こんな事をしていたら風当たりが悪くなる事も勿論知っている。
私は、憧れていたあの子のようにはなれなかった。
先輩に食って掛かって勇猛果敢に戦う事もできない。部を辞める友達を引き止める事もできない。演奏だって、ろくにできない。
所詮は、そんな敗者なのだ。
「……?」
ピカリと光を反射する物が視界に入った。
ユーフォニアム。敗者である私が、選んだ楽器。
―――お前も残念だったね、こんな人間に選ばれちゃってさ。私がこの部からいなくなったら、良い奴に吹いてもらいなよ。
「諦めちゃうの?」
冷たい何かが、私の背中を触れる。
瞬時に眼を開けて声のした方を向くと、同級生二人が眼を丸くしてこちらを見ていた。
「お、やっと起きたか中川」
「聞いてよ夏紀。卓也ったらせっかくお金貯めて買おうって決めたのに、違うのを買うって言い出すんだよ?」
「別にいいじゃないか。そっちの方が値段安いし気が変わったんだよ」
「はあ…、所詮諦めきれる物だったのね…」
「……何だ、後藤の事か」
何故だろう。 心臓がいつもより早く鼓動している。
諦めきれるモノ。そうだよ、私にとってこんな楽器なんて部活なんて
「・・・・・・・・」
静かに金色に光るユーフォニアム。
一応手入れは欠かさずしていた、私のユーフォニアム。
『諦めちゃうの?』
諦めきれるモノなら、最初から興味も持たないはずだ。
だって、忘れられるモノなら必要さも感じないから。
「…今日はもう帰る」
「夏紀? 楽器持って帰るの?」
「たまにはね」
◇
学校に行って、勉強をして、部活をして、友達と遊んで。
学生生活といえばこれだ。この4つをこなしていれば、いっぱしの学生だ。
「もの足りない…」
鏡を見つめながら呟く。
高校2年になっても、この感情は消えなかった。
―――楽しいことだけ選んで生きても、その先には何も見えない。
鏡を見つめる私に、私がそう言ったような気がした。
◇
「上手いね。……ユーフォ始めたの、いつって言ってたっけ?」
初めてできた、部活の後輩。しかもユーフォニアムを吹く子。
「小4からです。姉につられて何となく…」
えへへと笑う。
私に声をかけてくれた、私と違って度胸のある後輩。
「そりゃ、差もつくかぁ」
大事な後輩達。
大丈夫だろうけど、この部を去年のような雰囲気にはしたくない。
柄にもなく、不安と勇気が背中合わせになっている。
だけど今なら、今度こそ、この手で。
◇
「あんた、後輩の面倒見いい方だったのね」
「何さ、急に」
「よく話してるみたいじゃない。低音だけじゃなく、いろんなパートの1年と」
「別に。先輩なら普通の事でしょ?」
「あんた中学時代ずっと帰宅部だったのに……。あ!何?もしかして本でも読んでいい先輩面できる方法でも勉強したぁ?」
「上等だよデカリボン。そのリボンをとっぱらって没個性先輩ってあだ名を流布してやる。
あ、没なのは前からだったか。胸とか胸とか背とかぁ?」
「――――!!! こっちの台詞よこのポニテェ!!!」
そういえばこいつとも長い付き合いになる。何かと私に突っかかってくる、気持ち悪い奴だ。
「―――ぜぇ、…ただ単に、去年の私みたいにはなってほしくないだけよ」
「―――ぜぇ、…何ですって?」
先輩が怖かった。意見なんてとてもできなかった。引き止められなかった。
『―――あんたら、性格ブスだね』
そんな事を今の後輩が思っているなんて知ったら、私。
「先輩として、後輩には伸び伸びと部活してもらわなきゃね。あんたもそう思うでしょ?デカリボン先輩?」
「殊勝な事ねポニテ先輩。…つかあんた、まさかまだあの子のこと」
「失くしたくないっていうモノに、自分を懸けてるだけよ」
そう、ただそれだけ。
「―――気持ちわる!クサ!ポニテだし!不器用だし!」
「OK、第二ラウンドのゴングってわけね。かかってきな」
◇
分かってる。
自分が不器用な事くらい。器用だったら去年から上手くやっていた。
……ユーフォだって、もっと。
「ユーフォニアムの合格者は田中あすか、黄前久美子。以上2名」
黄前ちゃんが恐る恐るといった風で私を見る。
…オーディションの結果は前々から分かりきっていた事だった。どう頑張ってもあすか先輩はおろか、黄前ちゃんに勝てるわけがなかった。
純粋な実力の差があったのだ。結果には納得してる。
悔いは、悔いは・・・・・。
「黄前ちゃんっ。今日さ、練習終わった後ちょっと時間ある?」
「はい!?」
「話あるからちょっと付き合ってよ。奢るからさ」
「は、はい」
「じゃ、ま~た後でね~」
・・・上手く誘えたかな。正直不安だ。
自分のユーフォニアムを見つめながら、ため息と笑顔を一つずつ。
「次は、もっと上手くあんたを吹いてみせるよ」
「ごめんね、奢るって言ってこんなもんで。シェイク、ストロベリーでいい?」
「はい、ありがとうございます」
「よかった。…まあ私チョコ派だから、嫌だって言っても飲んでもらってたとこだけど……」
―――そんな目をしないでよ、黄前ちゃん。
「あ~あ!オーディション落ちてしまったあ………」
困ってる後輩を支えてやるのが、先輩の仕事の1つってやつさ。
◇
その日の帰り道、私は泣かせてしまった久美子ちゃんを思い返していた。
『先輩…』
『ありがとね。 黄前ちゃんのお陰で、少し上手くなれた気がするよ』
―――これで良かったのだ。
もし昔の自分だったら、後輩を気遣うなんてしなかった。いや、後輩すらできなかっただろう。
今も帰宅部のままで、鏡に向かって何かぶつぶつ言っていたと思う。
そういえば最近、もの足りないなんて言わなくなったな。
「しかし何であんなに泣くかな~~……」
泣きたくなるのはこっちの方だっての。
『―――先輩はいい人ですね…』
…久美子ちゃん、私はいい人なんかじゃないよ。
世の中には、後悔とか過ちとかをする人がいっぱいいる。私もその一人。
過ちは無かった事にはできない。後悔はどれだけしてもしきれない、取り戻せない。
そんな奴がいい人なわけがない。
…もしかしたら、いい人なんてこの世界にはいないのかもしれない。
・・・・あれ?
―――じゃあ何で?
「先輩、」
何で人は、私は、それでも
「夏紀先輩!」
それでもと、過去をのり越えていこうとするのだろう?
「く、久美子ちゃん?」
目線を声のする方に向けると、真剣な眼差しをした、さっき別れた後輩がいた。 涙目だけど。
「私、頑張ります。金賞、とってみせます!」
「え……」
「絶対に、です!!!」
泣きながらそう語る後輩は、未来に突き進んでいるようで、眩しかった。
まるで、どこかの物語の主人公のようで。
傷ついて壊れそうな日も、涙を流しそうな日も、後悔も過ちも越えていくのだと。
生きていくのだと。
誰より、上を目指すのだと。
「うん、頑張れ後輩。 信じてるよ」
◇
今日も学校に行き、眠気と戦う日々が始まる。
放課後になってもこの戦いは続いている。学生とは学校で生きていると書く。学校にいる限り、私は戦わなければならない。
たとえ、部活動の最中であってもだ。
今のところ200回戦って100回負けているけれど、私は悪くない。眠気の方が勝手に私の瞼を閉ざして夢の世界に引きずりやがるのだ。
そして、201回目の戦いが、今
「久美子ちゃん。皆で、合わせてみよっか」
・・・どうやら、
「はい。いいですね!」
今日も白星を、刻むらしい。