気が乗ったら続けるかもしれません
組み合わせには相性というものがある。
赤ワインに牛肉、ビールに枝豆と単体でも十分なものが組み合わせるとさらに真価を発揮するといった具合だ。
だが逆を言えば組み合わせた結果酷い変化を起こす場合もある。
気になるならば高級な刺身と三ツ星シェフの作ったカレーを混ぜて食べてみるがいい。
きっと後悔するだろう。
……本題に入ろう。
今回話すのはせっかくの組み合わせがカオスな結果になった例だ。
あるところに一人の男がいた。
そして死んだ。
死因などどうでもいい、さして重要ではない。とりあえずトラックか隕石か小麦粉か何かだろう。
ともかく男は死に、そして神により転生する結果となった。
転生の理由もどうでもいい。死ぬはずがなかったか暇を持て余した神々の遊びか記念すべき今年1万人目の死亡者だったとかだろう。
そう過程はどうでもいい。重要なのは結果である。
さて、理由云々のもろもろの説明を終えた神は転生への条件へと話を移していった。
「君に転生してもらう世界だけど『インフィニット・ストラトス』の世界に転生してもらうよ」
「はあ、そうですか」
「おや? 知らないかい? 君の世界のラノベでアニメにもなった作品だけれども?」
反応がいまいちな男に対し神は首をかしげる。
まったく知らぬ世界ならばそれはそれでいいかと神は思っていたが「いえいえ」と男は手を振り否定した。
「見たことはないから詳しくは知りませんけどどういったものかくらいは知ってます。確か女の子がいっぱいいて男は一人だけの学園バトルものですよね?」
「そうそう、知っているなら話は早い。ちなみに付け加えると舞台は女尊男卑の風潮があるのと話の根幹をなすISというパワードスーツみたいなのがある以外は君の生きてた世界と変わらないから割とすぐなじめると思うよ」
「……女尊男卑、ですか」
どうやらその言葉が気に障ったのかむう、と顔をしかめた男だったが文句は言わなかった。
確かに男の立場からしてみたらあまり面白いものではないのだろう。
苦笑しながらも神は話を進めていく。
「まあ安心して、っていうのは変かもしれないけどその世界へ転生する男の子は大抵そんなことに関係なく女の子にモテるようになるから君も頑張るといいよ
さて、次に転生特典だけど何がいいかな? 転生先は諸事情でこっちで決めたけど特典ならよほど無茶なものでなければかなえてあげるよ」
「特典っていうと、所謂チートみたいなのですよね? ちなみにどこまでなら無茶じゃないんです?」
「そうだねえ。まあ『王の財宝』とか『ベクトル操作』とか『命七乱月』くらいなら問題ないかな」
「なんかマイナーなのありましたけど成程。しかし特典か……」
うーん、と男が悩み始めたが神は急かさなかった。男の次の人生の重大な力になるのだからそのくらいは当然である。
むしろどんなことをいってくるのかなー、出来ればマイナーなのだと面白いなーと期待しているふしさえある。
悩むこと数分、ぽん、と思いついたように男が手を鳴らすと
「あの、仮にですけどある作品のキャラの容姿とか能力とかをそのまま引き継ぐことって可能ですか?」
「憑依するみたいな感じかな? よほどのキャラじゃない限りはできるよ」
成程キャラになりきりたいのかー、まあ永遠にやるコスプレみたいだし若い子は好きだろうねー、と微笑ましく思っていた神だったが
「じゃあ■■■の■・■■にしてください」
「……は?」
男の発言に耳を疑った。
「あれ? 知りません? かなりかなり有名な格ゲーのキャラだと思うんですけど」
「いや知ってるよ。確かに有名だろうけどよりにもよってなぜその人? ラノベ的な世界に行くんだよ? ぶっちゃけバトルするか女の子ときゃっきゃするのが主な目的みたいな世界だよ?」
「何か問題が? 思いっきりバトルに向いてるじゃないですか?」
「分かった。女よりも戦うのが好きというならそれでもいいけどそれにしたって他にいるでしょ? 同作にイケメンキャラだっているわけだし」
「俺の持ちキャラでしたし格闘するとなったとき一番イメージしやすいの彼なんですよね。それに女尊男卑っていうなら男の中の男の力を見せつけてやりたいですし」
とどこかワクワクしながら言っている男を見てこれは説得は不可能だなと神は悟った。
まあ本人が望んでいるなら是非もない。望み通りに転生をさせてあげよう、と神は男の言ったとおりに特典を与え無事に男は来世へ旅立っていった。
そして……
IS学園。
物語の主な舞台であり主人公、織斑一夏が女性にしか動かせないパワードスーツ、インフィニットストラトス、通称ISを起動させてしまったがために入学することとなった学園。
本来ならば例外である男性は一夏のみでありその他は全て女性という思春期の男性には羨ましいんだか恐ろしいんだかわからない境遇になるはずだった。
しかしこの世界では異なる。一夏が起動させたことで他にもいるのでは、と全世界が調べたところ一人該当したのだ。
当然その人物もまた、IS学園に入学することとなる。
もうお分かりだろうがそのもう一人こそ転生した男である。
なるほど、これから物語が始まっていくのか、と教室の一番前の席に座りながら感慨深い気持ちになっていた男と異なり原作主人公たる織斑一夏はどうすればいいのか悩んでいた。
背後からは女生徒たちの好奇な視線。見世物パンダ状態というだけでも辛いというのに一夏の心労の大部分を占めているのは隣に座る同じ境遇のはずの男だ。
なぜこの状況でこの男は悠然としているのだろうか
「よお、なんかお互い大変なことになっちまったな、俺は織斑一夏、一夏でいいぜ!」と爽やかに挨拶して友好を深めればいいのだろうか?
〝この男と?” 正直言って全然想像できない。ていうか仲良くなれるのか? ほぼ女子高状態に男性がいる時点で違和感ばりばりなのはわかっているがこの男は仮にここが普通の学校でも異常だろう。
よく辺りを観察してみれば女生徒達も自分には割と好意的な興味を含んだ視線が多いが男に対してはどうしていいのかわからない、という戸惑いの視線だ。
気持ちはわかる。というかこの状況で平然としているあののほほんとした女の子は何者だろうか。
男を挟んだ反対側には久しぶりに再会した幼馴染が座っているからなんとかコンタクトを取りたいのに男が邪魔で〝姿すら見えない”
どうしたものかと頭を抱えているうちにいつの間にか教室に入っていた胸がふくよかな教師が挨拶を済ませており自己紹介の流れになっていた。
不意打ち気味で指名され何を話していいか考えてなかった一夏は自身の名前を告げた後、『まさかそれだけじゃないだろうな?』という周囲の圧迫に耐え兼ね「――以上です!」と力強く言い切り女生徒たちの肩を抜かすこととなる。
直後、一夏の頭にパアン、という鋭い音とともに衝撃が響く。
「ほう、なかなかの一撃」と何かに感心するような声が隣から聞こえてきた気がしたが一夏からすればそれどころではない。
激痛に耐えながら何事かと背後を見やればそこにいたのは一夏の姉である織斑千冬だった。
自分の姉がここの教師であり担任だということやその姉に対してのクラスメイト達の少々引くレベルの黄色い悲鳴に驚いていると「静かにしろ」と千冬の一喝が教室に響く。
「まったく、挨拶もまともに出来んのかお前は。まあいい、まだ自己紹介は続いているのだろう。さっさと続けろ。ああ、せっかくだから本田、お前も挨拶しろ。騒がしくなるのならば一度に終わらせたほうが手っ取り早い」
「む、わかったでごわす」
そう言って立ち上がった男へと自然と皆が目線を上げる。
まず、デカい。身長は180を超えるのは間違いないが彼を巨大だと思わせるのはその体格だ。
細身な一夏とは比べるまでもなく巨大な巌を思わせるような体つき。足の太さなど目視でも女生徒の腰くらいある。
もとより男性用などなかったため特注で作られた制服は一夏のMサイズのいくつ上だろうか。XLなど優に超えているだろう。
それでいてただの肥満とは言わせない筋肉を含んだ肉体は最早一種の芸術である。
それだけならただの?巨漢で済んだかもしれないが彼を異常たらしめているのが他に2つ。
頭部には大銀杏と呼ばれる髷が結われており顔面には歌舞伎役者のごとき隈取。
たたでさえ貫禄のある風格がはっきり言って何かの冗談にしか見えない。
そんなことは本人はおかまいなしにえへん、と息をついた男はおもむろに自己紹介を始める。
「エドモンド・本田でごわす。国籍は日本。スリーサイズは上から212、180、210。好きなものは風呂とちゃんこ鍋とティラミス。将来の夢は全世界に相撲の素晴らしさを伝えISと相撲を融合させたIS相撲を競技化させることでごわす。みんな一年間よろしくのう!」
一夏と違いしっかりとした自己紹介だったにも関わらず反応は鈍かった。
クラスメイト達の胸を占めていたのはどこから突っ込めばいいのかというある種の現実逃避だった。
誰がスリーサイズを言えといった、このクラスの一番の巨乳じゃないか
なんでそこまで漢らしいのに好きなものがティラミスなんだよギャップ萌えか
仮にも高校生の語尾がごわすっていいのか
IS相撲ってなんだよマワシどこいった
そもそも相撲取りなのか歌舞伎役者なのかはっきりしろ
ぐるぐると頭の中を渦巻く突っ込みを吟味している一夏をよそに何かに気付いたE・本田は「ああ」と一言付け加えた
「ちなみに歳は15でごわす」
「「「「嘘だ!?」」」」
クラスが一つになった瞬間だった。
こうしてE・本田の物語は始まる。
これはハーレム系ラノベとガチなマッチョな相撲取りとが組み合わさった結果起きたカオスな結果である
ちなみに思い浮かんだある姿とは
「体にぴったりと張り付くISスーツをエドモンド本田みたいな巨漢が着たらどうなるんだろう?」
です
きっと股間の富士山はR-18不可避でしょう