「ねぇねぇ、スタイリッシュ。この子、もらっていい?」
そして北方へと向かう道すがら、メリエルはスタイリッシュにお願いしていた。
彼の持つ強化兵。そのうちの耳という呼称の少女を、メリエルはモノにしようとしていたのだ。
「いえ、メリエル様、さすがにそれはその……」
彼としても少なくない時間や費用を掛けている為、さすがにおいそれとは手放せない。
「じゃあ、こんだけあげるから」
メリエルはスタイリッシュを取り囲むように金塊を出現させた。
明らかに、強化兵1体を作って余りある金額になる量であった。
「……メリエル様の熱意には負けましたから……好きにして下さい」
そう言って、スタイリッシュはいそいそと他の強化兵達にそれらを持たせる。
「耳、今日からあなたはメリエル様のものよ」
そうスタイリッシュが告げると、耳と呼ばれた少女はスッとメリエルの前で跪いた。
「何なりと、この身をお使いください」
その様子にメリエルは満足げに頷きながら、虚空から塗り薬を取り出した。
チューブ状のものだ。
「その耳は確かにチャームポイントで可愛らしいけど、微妙に動きづらいだろうから、性能そのままに小型化してあげる」
スタイリッシュは耳を疑った。
そして、当の少女もまた耳を疑った。
しかし、メリエルはそんなことはおかまいなしに、チューブから何やら透明な粘体を手に出して、それを少女の巨大な両耳へ塗りたくる。
ひんやりとした感触に少女は小さく悲鳴を上げるが、メリエルはひたすらに満遍なく塗り続けた。
すると、どうだろうか。
巨大な耳はみるみるうちに小さくなり、やがて常人と変わらぬ大きさとなった。
「どうかしら?」
メリエルの問いに、少女は耳を澄ませてみると、巨大であった頃と変わらずに音を聴き取れた。
「聴き取れます……」
信じられないといった顔で告げる少女。
これまた信じられないといった顔のスタイリッシュ。
「この塗り薬はスモール・マスターって言ってね。まあ、生物だろうが無生物だろうが、なんだろうが、性能そのままに小型化するのよ。引っ越しとかに便利よー」
Yggdrasil時代の初期に色々とお世話になったアイテムの一つだった。
これを使えば嵩張るものであっても、インベントリに大量にスタックできるようになった為だ。
「そ、それ売ってくれない!? すごく欲しいんだけど!」
スタイリッシュは目を血走らせて、メリエルに詰め寄った。
「スタイリッシュ、金塊を簡単に作り出せる私に売って欲しいってどういうことか分かるかしら?」
ニヤニヤと悪どい笑みを浮かべるメリエル。
スタイリッシュは気がついた。
金銭では到底動かない。
かといって、こんな素晴らしいものを持っているなら、きっと他にも想像を超えるものを持っているに違いない。
がっくり、とスタイリッシュは項垂れた。
対価を用意できないのだ。
無理矢理に奪うなんぞ、最初から考えてもいない。
そんなことをした日には1分とかからずに自分が血祭りに上げられているだろうと容易に想像がついたからだ。
「耳じゃ呼びにくいから、そうねぇ……あなたはこれからエリーと名乗りなさいな」
そう言って、メリエルは耳ことエリーの頭を撫でてやる。
その様子にスタイリッシュはあることに気がついた。
「……あのー、メリエル様? もしかしてですけど、その耳……女と思ってません?」
スタイリッシュは恐る恐ると尋ねてみた。
「え? 違うの?」
「……教えてあげなさい」
スタイリッシュは目を逸しながら、そう言った。
すると、エリーは小さな声で言った。
「私は男です」
「嘘ですよね!?」
予想外のところから声が聞こえた。
セリューだった。
ある意味、この面々の中では一部分を除いて、もっとも常識的な感性を持っているのが彼女だ。
「あ、そうなの? まあ、それはそれで燃えるからいいわね」
とはいえ、メリエルからすれば大した意味はない。
基本男の娘もいけるクチだ。
「……メリエル様はこういった子が好みかしら?」
「ええ、そうね。漢らしいのはダメだけど、こういう可愛い子だったり綺麗だったりすれば。まあ、ぶっちゃけ見た目が女の子ならいけるわ」
「あら、方向性は違うけど同志だったのね。それなら話は早いわ。そういう子や女を定期的にあげるから、くれないかしら?」
「それに加えて共同研究という形で、私のお願いを聞いてくれるなら」
「勿論いいわよ。契約成立ね」
スタイリッシュの言葉にメリエルは頷き、手を差し出す。
彼はその手を握ってがっしりと握手。
「あ、それと私、両性具有だから。早い話、男でも女でもあるから問題ないわ」
「まあ、それは素敵ね。羨ましいわ」
笑い合うメリエルとスタイリッシュにセリューはちょっと引いてしまった。
メリエルは絶対の正義と信じちゃったセリューであっても、さすがのこれはちょっと頂けなかった。
「クロメさん、なんか怖いです」
「……気にしたらダメだと思う」
そんな感じで一行は賊がいるという村が一望できる高台へとやってきた。
高台から村までの直線距離は数百m程度であり、隅々まで確認できた。
一見したところ、極々普通の村だ。
「……なんか、普通の村っぽいですけど」
基本的には無益な殺生はしないセリュー。
しかし、メリエルは目ざとかった。
「いいえ、当たりね。住民をよーく見てみなさい」
その言葉にセリューはよく住民を観察してみた。
そして、あることに気がついた。
「子供があんまりいない。男が多い……」
「おまけに、ところどころ偽装してあるけど、武器庫っぽいところがあるわね」
あそことあそことあそこの納屋見てみなさい、とメリエルが指差した方向を見るセリュー。
それにつられて見るクロメとスタイリッシュ。
「不自然に男達がたむろしていますね」
「でしょ? まだまだ甘い、ヒヨッコゲリラ共ね。昔、私が相手した連中はもっとヤバかったわよ」
「どうしますか?」
「セオリー通りにいくなら、夜を待って浸透、重要拠点を破壊の後に速やかに離脱だけど、まあ、あいにくと真正面から強襲しても皆殺しできるだけの戦力あるから、お手並み拝見」
メリエルはとても手慣れた様子で指示を出し、自分は高みの見物とばかりにどこからか椅子を取り出して、そこに座った。
「……メリエル様って、何やってたんですか?」
「私にとっての正義と自由に楯突く馬鹿共を皆殺しにする仕事」
「さすがです!」
セリューが目を輝かせるが、スタイリッシュは別のことを考えた。
メリエル様基準で楯突く相手って、それもう超級の危険種とかじゃないの、と。
「セリューとクロメで突入して皆殺し、スタイリッシュは強化兵を周囲に伏しておきなさい。残党狩り。ああ、取り囲むんじゃなくて、一方向だけは緩めておきなさい」
おっそろしい、とスタイリッシュはその指示に肩を竦める。
完全に包囲しては死を覚悟して猛烈な反撃に遭う可能性が高い。
しかし、一方向でも穴を開けておけば、もしかしたら助かるかもしれない、という可能性に縋り、覚悟は緩む。
「それと女と可愛い男の子はなるべく生け捕りに。ああ、腕の一本二本くらいならいいから。とりあえず生きてればいいわ。まあ、殺してもいいけど」
「そこ、こだわるんですか?」
「当たり前じゃない。セリューが私の気を静めてくれるというなら別にいいけども」
そう言って手をワキワキさせるメリエルにセリューは小さく悲鳴を上げる。
「じゃ、というわけでサクッとヤッてきちゃって頂戴」
メリエルの何とも締まらない号令で、攻撃開始となった。
「おー、おー、やってるわねー」
セリューがぶっ放し、クロメがぶった斬る。
高台から動かず、メリエルはすっかり観客と化していた。
彼女の傍にはエリーが控えており、時折メリエルに頭を撫でられる等のスキンシップを受けていた。
更に、その横には強化兵達に指示を出し終えて暇なスタイリッシュ。
「帝具って大規模な破壊ってできるものないの? 帝都を一撃で消し飛ばせるとかそういうの」
「……いや、さすがにちょっとそれはないわよ」
「大軍相手じゃ使えないわね。所詮は個人戦力といったところかしら」
スタイリッシュは冷や汗をかく。
帝具に対してそういう評価を下す輩はこれまで見たことがなかった。
「おまけに聞くところによると、帝具使うと消耗が酷いらしいじゃないの。短期決戦で1対少数専用とか汎用性低すぎない?」
「いわゆる暗殺部隊とか精鋭部隊のような、そういった存在向けのものだと思うわよ」
「あー、なるほどね」
メリエルの視界の中でクロメが5、6人纏めてぶった斬った。
「ところでクロメって、ドーピングとかしているの? 暗殺者養成機関ってそういうことしてるってあったんだけど」
「しているわよ。やりすぎて廃人一歩手前。ま、長く生きられないでしょう」
「かかった費用と時間が無駄じゃないの? 正直」
「……正直ね。まあ、上からの指示だし。そんなことやるより人間爆弾とかの使い捨ての方がよっぽど楽で安いのにね」
「あ、それ私も思った。クロメを私大好きっ子にしたいんだけど、どうすればいい?」
「そうねぇ……アレも結構歪んでるから、まあ、無難に長生きさせて、一緒にいるとかそういうことをしてあげればいいんじゃないの? アカメっていう姉がいたんだけど、捨てられて云々って感じだから」
なるほどー、とメリエルは頷きながら、ゆっくりと立ち上がる。
「どうかしたの?」
「私の予想が確かなら、森のあたりに拠点をいくつか分散して配置している筈よ。強化兵達はちょっと行動せずに、その場で待機させて」
そう言いながら、メリエルは逃げる敵を注意深く観察してみる。
村から出てすぐは逃げる方向はバラバラであったが、村から少し離れて彼らはある一方向を目指し始めた。
「なるほど、あっちね」
メリエルはおもむろに片手を前へと突き出した。
そして、唱えた。
アースサージ――
変化は劇的であった。
大地が波打ち、まるで巨人にすくい上げられたかのように、膨大な土砂が波のように立ち上がり、ゆっくりと森へと倒れていく。
メリエルが予想した、ゲリラの隠し拠点があったと思しき森は根こそぎ土砂に埋まった。
「……は?」
スタイリッシュは間の抜けた声を出した。
信じられない光景であった。
天変地異の如き現象を難なくやってのけた当人は別に何も感じていない。
「ま、こんなものかしらね。スタイリッシュ、生き残りがいないかどうか、念のために見ておきなさい」
「アッハイ」
生返事しか返せなかったスタイリッシュを責めることは誰にもできないだろう。
「あ、それとそろそろ村へ行くわ」
「……な、何ですかあれ!? 津波ですよ! 土の津波ですよ!?」
セリューは村へとやってきたメリエルを見るなり、興奮した様子で詰め寄った。
「はいはいコーフンしないで。それで、ちゃんと指示通りにやってくれたみたいね」
血の臭いが充満し、あちこちに死体が転がっているが、その程度ではメリエルは動じもしない。
それよりも、注目は目の前に両足を切断されて転がされている3人の少女だ。
あまりの痛みに涙を浮かべているが、舌を噛んで死ぬようなことはしないらしい。
「まあ、痛そうね」
メリエルの素直な感想に1人が叫んだ。
「お前達がやったくせに!」
ごもっとも、とメリエルは頷きながら、それじゃあ治しましょう、と大治癒《ヒール》を唱えた。
すると、どうだろうか。
瞬く間に出血は止まり、両足の切断面が淡い光に包まれる。
やがて光は消え去った後には両足がくっついていた。
痛みも消え去り、足がある感覚にその少女は何度も足を見て、手で触った。
「嘘、でしょ……」
「さて、他の2人も治してあげる」
同じく大治癒を唱えれば、残る2人もまた同じように両足が戻った。
「そんな、ありえないわ!」
スタイリッシュが叫んだ。
「あら、この世にはあなた達の理解の及ばない領域があるのよ。ちなみにだけど、殺した女はいる?」
「ちょっと待ってて」
メリエルの問いに、クロメは答え、てくてくと歩いていく。
数分程で、1つの死体の首を掴んで引きずってきて、メリエルの前に置いた。
女だった。
脳天を一突きにされたらしく、即死だ。
「こういうこともできます」
メリエルは虚空から強制的にデスペナ無しで蘇らせるアイテムを使うと、頭に空いた傷が瞬く間にふさがり、ゆっくりと女性は起き上がった。
彼女は信じられないといった表情であたりを見回す。
「し、死者蘇生……そんな、本物の神だとでもいうの!?」
スタイリッシュが再度叫んだ。
なんという人智を超えた存在なのだ、と。
「さて、今度はもうちょっと便利なものを」
そう言って、メリエルは一番に治癒を施した少女へと手を向ける。
「支配《ドミネイト》」
たった一言で、一瞬、手を向けられた少女はがくっと崩れ落ちるが、すぐにそのまま姿勢を整え、地面に頭をこすりつけた。
「メリエル様、何なりとお申し付けくださいませ」
「じゃあ、賊……まあ、革命軍だろうけど、それについて諸々の知っていることを全部教えて頂戴」
「はい、畏まりました」
その言葉に呆気に取られていた少女2人と女性は慌てて止めに入ろうとするが、スタイリッシュがすぐさま強化兵に指示を下し、取り押さえた。
そんな様子を尻目に、ペラペラと少女は平伏したままに情報を喋っていく。
「唱えたものから察するに、洗脳系かしら?」
スタイリッシュの問いに、メリエルは軽く頷く。
「ぶっちゃけた話、私がこの魔法を帝国の首脳達に掛けてまわればたぶん1日くらいで帝国掌握できるわよ」
「……そりゃそうよねぇ」
スタイリッシュは遠い目になった。
苦労して洗脳処置を施している身からすれば、たった一言唱えるだけでこうも簡単にできるなんぞ、やってられない。
「ちなみに帝国消し飛ばすだけなら1分くらいでできる」
「……メリエル様、絶対やらないでくださいね? できることなら何でも協力しますから」
「あら、ありがとう。協力的な人って好きよ。やってもらうよう、お願いする手間が省けるし」
笑うメリエルにスタイリッシュは冷や汗を流す。
死者蘇生なんぞできるのだから、これ以上無いほどに無茶苦茶に嬲り殺して、その後にまた蘇生して協力してもらえるようになるまで何度でもやるのだろう。
エスデス将軍よりも怖いんじゃないか、とスタイリッシュは確信した。
少なくとも、一度死んだらとりあえず再度蘇生させられる心配はない。
「死はこれ以上苦痛を与えられないという意味で安息よ。だから、悪いヤツはなるべく生け捕りにして、自らの罪を悔い改めるまで拷問しないといけない」
「なるほど、確かにそうですね。今まで私は殺してましたが、これからは生け捕りにします」
セリューは目を輝かせながら、そう言った。
ヤバイ方向へと導いたが、誰も止める輩はいない。
「じゃあ、他の子達も、知ってることまるっと教えてもらいましょうか」
とても無邪気な笑顔で、メリエルは支配《ドミネイト》を唱えた。
支配した少女達と金塊を抱えた強化兵達は帝都へと送り、メリエルらは北へと向かう。
「で、どうするの? あの子達」
スタイリッシュの問いに、メリエルは即座に答える。
「私の庇護下で、永遠の繁栄を与えたいと思うの。不老不死とか余裕だし?」
「……あっさりと人類の夢を叶えないで欲しいわ。あと永遠の繁栄って何よ?」
「性別変化薬というのがあってね、それで両性具有化して私による私の為の私だけの牧場でもしようかなと」
「……要するに、エロなのね」
「まあ、平たく言えばそうね。あ、でもでもこれ、実は私が考えた超ゴイスーな人類侵略計画の一環でね? 私のペットを増やしていけばやがて人類の総数を上回るから、それでこう、全人類をエロ化しようかなと」
スタイリッシュは困惑した。
勿論、セリューやクロメも困惑した。
なんなんだ、人類エロ化って、と。
嘘なのか本当なのか分からなかった。
「まあ、私ってほら、たぶん寿命ないから、ぶっちゃけ100年でも1000年でも計画立てられるしね。それこそ今生きてる人間達がぜーんぶ死に絶えるまで待てるくらい」
「……壮大過ぎて理解が追いつかないわ」
コメカミを押さえながら、スタイリッシュはそう言った。
「要するに、私の暇つぶしよ。あなた達人類はもっと私を楽しませる必要があるわ」
「あれかしらね、これが神との対話とかそういうのになるのかしら。神というには俗物過ぎるけど」
「あ、私は神じゃないんで。全知全能じゃないからセーフ」
何がセーフなのよ、とスタイリッシュは呆れ返った。
死者蘇生、不老不死の秘薬とおよそ人類が欲するものを簡単にできる。
それで神じゃないならなんだというのか。
「あ、そうそう。不老不死といえばクロメ、ちょっと治したげるわ」
「え?」
クロメは首を傾げる。
「スタイリッシュ曰く、長く生きられないって話だけど、私の超ゴイスーな魔法とアイテムでパパッと治したげる。その代わり、私に永遠の忠誠を誓って、私と共に永遠を歩みなさい」
超ゴイスーって言い方、気に入ったんだな、とスタイリッシュやセリューは思ったが、下手に口を開くと面倒なので口を挟まない。
「あ、う、うん。できるなら、いいけど……」
クロメは戸惑いながらも了承した。
すると、メリエルはそれはもう悪魔も逃げ出す程の邪悪な笑みを浮かべた。
それを見て、クロメはちょっとだけ後悔した。
「はいはい、じゃ、状態をチェックしましょうね~まずはお洋服を脱ぎ脱ぎしてクダサーイ」
「ただの変態じゃないですか!? ダメですよ、メリエル様!」
慌ててセリューがメリエルを後ろから羽交い締めにする。
「……仕方ないわねぇ。じゃあ真面目にやるから」
メリエルの言葉にセリューは拘束を解除する。
そして、改めてメリエルはクロメに向き直る。
彼女はにこりと微笑んで、どこからか一つの指輪を取り出し、それを装着した。
その様子にクロメが首を傾げた瞬間だった。
メリエルを取り囲むように、立体的な魔法陣が展開される。
「な、何なのこれぇ!?」
スタイリッシュの言葉はクロメやセリューの心を代弁していた。
「クロメの身体を一切の後遺症や傷跡なく、まったくの健康体にそのままの力を維持したまま治し、不老不死にしなさい。ウィッシュ・アポン・ア・スター」
メリエルがそう言った直後、光が周囲に溢れかえった。
1分と経たずに光は消えてなくなった。
一見したところ、クロメに変わった様子はない。
「……うん、治ってる」
しかし、クロメ本人には理解できた。
身体は羽のように軽い。
「じゃあ、対価をもらうわ。とりあえず、うりゃ」
メリエルはクロメに抱きついた。
そのまま背中に手を回し、その感触を存分に堪能する。
「……あったかい」
拒否しようかクロメは困惑したが、予想外の暖かく、柔らかい感触にそのタイミングを完全に逃してしまった。
「うわっ、うわぁー」
セリューはガン見であった。
クロメは美少女であり、メリエルは超がつく程の美少女だ。
そんな美少女同士が抱き合っている。
「セリュー、後ろから抱きついていいわよ」
まさかのメリエルのお許しに、セリューはゆっくりとジリジリとメリエルの背中に近づいていく。
やがて背中の前まで到達し、ごくりと唾を飲み込んだ。
「せ、セリュー・ユビキタス、いっきまーす!」
その声と共にセリューはメリエルの背中に抱きついた。
暖かく、柔らかい感触。
セリューは背中に顔を埋めて、それを思いっきり堪能する。
私はノーマルノーマルノーマル……
念仏のように心の中では唱えているが、はかない抵抗であった。
「……青春っていいわねぇ」
スタイリッシュはうんうんと頷きながら、元耳ことエリーの肩にポン、と片手を置いた。
エリーもまたガン見していた為にハッと我に返って、スタイリッシュを見る。
「良かったわね、あんな子がご主人様で。あなたきっと搾り取られるわよ」
エリーは慌てて視線を逸らす。
興奮していることを隠そうとしているのが丸わかりであった。