ところ変わって、一行は気絶したザムザを連れてデルムリン島に来ていた。
ザムザの一連の行動は、各国的に特に問題にはならなかった。理由は幾つかある。ザムザが特に大会のルール違反をした訳でもないこと。勇者達との戦いは大会優勝者の願いを使用しただけということ。その後の戦いで誰も死者を出していないこと。勇者達が勝ったことも大きい。そして、見た目がほぼメタルキングで占められていた為に、見ただけで邪悪さが感じられなかったことも要因だ。観客達はエキシビションマッチを勇者達の危機だと思わず、普通に楽しんでいた。さらに、似たようなメタルキングが登場して締めたことで、もはやただのパフォーマンスだったのではと思った人達もいたほどだ。そして最後に、勇者達が責任を持つと指導者達に言ったことで決まりとなった。
「で、どうすんだこいつ」
ポップが目の前で正座しているザムザ、もといザムリィを見て呟く。それを聞いてザムリィはびくりとしながら恐怖の表情を浮かべた。ちょっと前までの不敵な笑みはどこにいったのだろうか。可哀想に。彼……いや、彼女はメタルンによって上下関係というものを
「く、殺せ……!」
「ピギィ」
――くっころいただきましたありがとうございます。
「と言っているよ。くっころってなに?」
ダイは知らない方がいい。そのまま純粋に成長してほしいものである。
「ていうか、なんで女の姿になってんだよ。その方がオレ達の同情を買えるとでも思ってんのか?」
ポップが女性の姿に化けているザムリィを睨みつけながら圧力を掛ける。確かに、痩せ気味で目つきの悪い魔族の男よりも、何故か可愛く美人で胸も大きく目元がぱっちりした魔族の女性の方が同情は買いやすいだろう。
だが、その程度で心を動かされるほどこの場の面子は甘くはない。そもそも、元々の姿であったザムザの外見や、今や真の姿となってしまったメタルザムザを見ているのだ。今更女性に化けたところで同情したりはしないだろう。
「い、いや、そういうわけではなく。通常の言語を扱うためには人間に化ける必要があるのだが、人間に化けると何故かデフォルトでこうなってしまうのだ……。メタルキングの欠片を取り込んでからこうなったから、それが原因だと思うのだが」
『ああ……』
メタルンを除く全員がザムザ……もといザムリィになってしまった彼女に同情した。
「ピギギィ」
――なるほどね。私の性別に引っ張られた結果かな。
「と言っているよ。メタルンって女の人だったんだね……」
メタルンと出会って約十年。ダイが驚愕の真実を知った瞬間であった。
「ピギィ? ピィギィ~。ピギィギィ……」
――言ってなかったっけ? 転生する前も今も、ずっと女性だったよ~。本当に殆どずっとね……。
「と言っているよ。メタルンどうしたの?」
何故か落ち込んでいるメタルンを見てダイが心配する。まあ気にする必要はないだろう。自分の運のなさと世界の理不尽を嘆いているだけだ。世界からはお前の方が理不尽だろと言われそうだが。
「いや、移植した組織の性別なんぞ、超魔生物への変化に影響が出る筈もないのだが……?」
『メタルンだぞ?』
ザムザの疑問に対し、ほぼ全員からツッコミが入る。メタルンは解せなかった。
「ていうか、お前って超魔生物に改造したから魔族の姿には戻れないんじゃねぇのか?」
「オレは魔族の肉体を捨て、超魔生物となった。それは間違いない。この姿はあくまで超魔生物から人間に近しい見た目に化けただけの結果だ。魔族の身体に戻ったわけではない」
例えば、人間の姿に化ける魔族や魔物がいるが、人間の姿に化けたからといって人間になったわけではない。あくまで中身は魔族であり、外見だけが変化したに過ぎない。
それと同じことを超魔生物となった後にしただけの話であり、魔族の身体はとうに失われ、超魔生物と化していることに変わりはないのだ。本体はメタルザムザであり、人間として活動する時のみザムリィの姿に変身しているわけだ。
「……もしかしてハドラー親鋭騎団ってアルビナス以外も女性じゃねぇよな?」
「そ、そんな事はない……はずだ」
メタルン素材を使ったら全員女性になるのかというポップの疑問に、いまいち自信がない返答しか出来ないハドラーであった。なお、アルビナス以外はちゃんと男性人格である。そもそも性別自体が存在しない。
「それで、彼女はどうするの? 私としては殺したくはないのだけど……」
「ひぃっ!」
マァムがザムリィを憐れむような目つきで見る。ザムリィは殺すという単語でびくついていたが。くっころの精神はどこにいったのだろうか。
心優しいマァムとしては、ザムリィを殺す必要はないと思っていた。そもそも、ザムリィが何かしたわけでもない。戦いはしたが、彼女に殺意はなかった。ただ自分の強さを確かめたいという思いがあっただけだ。
「ピ~ギィ。ピギピギィ」
――ふぅむ。ザムリィは人間を殺したいとか思ったりする? 魔王軍の敵討ちをしたいとか。地上を破壊したいとか。
「と言っているよ」
「思いません! 思うわけがない! お、オレはただ、自分の研究が正しかったと、父より優れているんだと認められたかっただけだ……それだけ、なんだ……」
自分でそう言いながら、ザムリィは誰に認められたかったのか悩んだ。既に父はいない。例えいたとしても、超魔生物の完成を認めてくれはしただろうが、あくまでそれは自分の道具が良い働きをしたというものだ。
そうではない。そうではないのだ。ザムリィが認められたいのは、そういうことではなかった。だが、それを言葉にして説明することが、ザムリィには出来なかった。
「優れてるもなにも。お前、あんだけオレ達を苦戦させてるんだぜ。間違いなくお前の親父よりすげーよ」
なお、ポップはザムリィの父親であるザボエラを何も知らない。
「え?」
ポップの呆れを含んだその言葉に、ザムリィは放心する。父親よりも、あのザボエラよりも自分の方が凄い? それは、本当に自分が言われた言葉なのだろうかと疑った。
だが、ザムリィを認める声は更に続いて、この場の全員から紡がれた。
「そうだよ。皆がいなきゃ勝てなかったよザムリィ」
ダイが、嘘偽りない純粋な言葉をザムリィに掛ける。なおダイなら戦闘中に成長し、その内独力で倒せていた可能性があったりする。流石は竜の騎士と王族のサラブレッドである。
「ああ。間違いなく、お前はオレ達が戦った敵の中で最強だった」
ダイ達は真・大魔王バーンとは戦っていないのでヒュンケルの言葉は間違いではない。メタルンは敵ではないのでこれも間違いではない。嘘は言ってない。嘘は。
「自分のスペックを扱いきれていない貴様に言うのは腹立たしいが、一対一での勝率は低いと言わざるをえん……」
ラーハルトが本当に腹立たしそうにそう言う。勝ち目がないとは言わないところが、彼のプライドの高さを示していた。
「そうよザムリィ。貴女は本当に凄かったわ。だから、自分を無価値かのように思わないで」
マァムが聖女のような微笑みを浮かべながら、慈しみを以てザムリィを諭す。
「ふん。ザボエラなんぞの血を引いているとは思えんな。あんな小物と自分を比べるなど、無駄なことは止めておけ」
ハドラーのその冷徹な言葉の裏には、ザムリィを認めているという真意が籠っていた。
「ハドラー殿の言う通りだ。ザボエラは確かに魔法力と知略ではオレ達軍団長の中でも抜きん出ていたが、自分から矢面に立つことは少なかった。だがお前は違う。自分の力で、自分の意志でオレ達の前に立ちふさがり、オレ達全員を一人で倒そうとした。そんなお前が、ザボエラよりも劣るわけがない。もう少し、自分を認めてやれ」
超合金ピンクワニが誰よりも良いことを言っている。流石クロコダインである。この場の誰よりも人格者なのかもしれない。
「お、お前たち……」
自分達を狙って来た敵だというのに、何故こうも優しい声を掛けるのか。甘い、甘すぎる。ザムリィにとっては都合が良いが、甘いと言わざるを得なかった。
だが、その甘さがザムリィには心地よかった。まともな愛を受けずに育ったザムリィの心に、初めて光が差したかのようだった。
「ピギピギィ」
――うんうん。仲良きことは美しきかな。まあザムリィも悪いことはしていないし、これ以上罰を与える必要はないんじゃないかな。
「め、メタルキング……」
ザムリィを許そうと言っているメタルンの言葉に、ザムリィもほっとする。他の誰が許そうと、このバグルキングに許されなければ意味がないことは、既に十分過ぎるほど
「お前普通にメタルンの言葉理解してんな」
「これ以上罰を与えなくてもいいんじゃないって言ってるよ。やっぱりメタルンの一部を取り込んだからかな」
「……お前は取り込んでないんだよなダイ?」
「取り込まないよ……」
ダイの翻訳を介さずともメタルンと会話出来ているようなので、どうやら人間形態でもメタルン語は理解出来ているようだ。
「ピギギィ」
――とはいえ、放置するという訳にもいかないかな。だから、当面はザムリィの面倒は私が見るよ。
「と言っているよ」
「逃げろザムリィ。ここはオレ達が時間を稼ぐ」
「ふ、死に場所はここか。いいだろう。だが、ただでは死なん……!」
「ああ、せめて貴様に傷の一つでもつけてやるぞメタルン!」
「前哨戦は終わった。後は本番というわけだなメタルン!」
「オレ達が何としてもメタルンを抑える。お前だけでも無事に生きろザムリィ」
ポップ・ヒュンケル・ラーハルト・ハドラー・クロコダインがザムリィの前に立ち、死を覚悟してメタルンに立ち向かう。
「ピギィ?」
――茶番は終わりでいい?
『……』
十数秒後、デルムリン島の砂浜には奇怪なオブジェが複数出来上がっていた。本人たちの名誉のために、誰がどのようなオブジェになったかは不明とする。
「あはは。もう、みんなメタルンと遊ぶのが好きなんだから」
「そ、そうね」
ダイはポップ達のノリをメタルンと遊ぶためのものだと思っており、マァムはそんな純粋なダイを見つつ、砂浜でオブジェ化している仲間達に黙祷を捧げた。
なお、ポップ達の半分はノリである。これは本当だ。残り半分は本気でメタルンに勝とうとしているのだが。まだまだ力不足であった。
「あ、あいつらをこんなにあっさりと……」
ザムリィは、自分を倒した勇者一行――ダイとマァムを除く――をあっさり倒したメタルンの戦闘力を客観的に見たことで、メタルンへの畏怖を更に高めていく。
「ピギピギィ! ピ―ギピギィ」
――ザムリィの戦いを観てたけど、全然駄目だね。駄目駄目だね。力の使い方が全然なっちゃいない! そこら辺も含めてしっかり指導していくから、ちゃんと付いてくるんだよザムリィ。
「は、はい! わかりましたメタルン様!」
「ピギィ」
――よし。じゃあ、とりあえず一旦今日はデルムリン島で泊ろうか。指導はまた今度からで。
「はい!」
そういって、メタルンとザムリィはその場から立ち去っていった。
残されたダイ達がポップ達を救出しつつ、ダイがぽつりと呟いた。
「……翻訳しないでいいってのも、なんだかしっくりこないなぁ」
翻訳が癖となっているダイにとって、メタルン語を翻訳しないでも良い状況というのはどうにも馴染まないようであった。哀れ。
◆
ダイ
今回の一件を皮切りに、レオナと以前よりも頻回に会うようになった。レオナの方がアプローチは積極的であった。
ダイが成人した暁に、レオナと婚約することとなる。レオナが王位を継いだと同時に結婚。パプニカ王となり、慣れぬ政務をレオナの教えを受けながらどうにか熟した。
二十数年後の悩みは末の娘がハドラーを気に入っていること。二人が結婚の許しを貰いに来たときは、ちょっと久しぶりに本気で戦った。政務の合間に修行はしていたので、それはもう凄まじい戦いを繰り広げたという。なおお爺ちゃん(最強の竜の騎士)も参戦したのは言うまでもない。
最終的には娘が怒ったので許した。神々が作り出した最強の生命体二人組も、娘には弱かったようだ。
ポップ
人間最強の大魔導士。三界含めても魔法力で勝てる者は僅かだろうと謳われる。本人にその自覚はあんまりない。
メタルザムザに通用した重圧呪文を更に磨き上げ、メタルン相手に披露する。試しにわざと受けてみたメタルンに普通にダメージを与えた。これにはメタルンもびっくり。
なおその後は光の闘気を全開にして重力場を無理やり突破したメタルンによって倒された。命中しさえすれば相手が誰であれダメージを与えられる最強の呪文だと、メタルンも保証した。後々更に発動時間が短くなるよう修行を課せられたのは言うまでもない。
なんだかんだでマァムと仲良く一緒にいることが多く、念願叶って結婚に至る。大体かかあ天下だったが、そのおかげかずっと仲睦まじかったようだ。
マァム
武神流を短期間で修めた天才。だが、自分を超える強者を何人も知っているので慢心することなく、平和になった後も修行を欠かさなかった。
そのおかげか、純粋な肉体の性能では人間最強となる。素手ではヒュンケルも勝てないと言っていたほどだ。
ポップのことは男というより弟という風に見ていたが、長年一緒にいたためか、ポップが自分を好きだと気付く。それに気付いた後は少しずつポップに対する見方が変わっていった。
今回の一件から数年後にポップと付き合うようになる。メタルンからはようやくかと突っ込まれていた。
ヒュンケル
今回の一件が終わった後、またふらりと修行の旅に出る。時折デルムリン島にやって来てはラーハルトと雌雄を決したり、メタルンに戦いを挑んだりしている。
人間最強の戦士だが、それに満足することなく貪欲に強さを求めた。彼自身には女性と結婚するという考えはなかったが、行く先々で色々あって多くの女性に惚れられたりしている。中身も外見もイケメンだから致し方ない。
生涯の目的は打倒メタルン。
ラーハルト
自分よりも先にメタルンにダメージを与えたポップのことを心底認めた。当然、負けず嫌いなので次は自分だと修行に精を出している。
なお、ポップと試合する時は必ず圧倒的な速度で先手を打って呪文を使う隙を与えずに倒すことを心掛けている。認めているからこその結果ではあるのだが、大人げないっちゃ大人げない。
生涯の目的は打倒メタルン。
レオナ
今回の一件で、ダイにもっと会いに来てとど真ん中どストレートをぶん投げる。流石の行動力である。
父王への根回しも長年に渡って行っており、相手が竜の騎士にして勇者アバンの弟子というのもあって、有力貴族や賢者を婿候補にしていた父王も根負けし、ダイとの結婚を許した。
そのおかげもあって、ダイが成人したその日に婚約発表を行うに至る。行動力の化身……。ポップはもう少し見習った方がいい。あとどこぞの童貞王も。
アバン
カール王として国の発展に力を注ぎつつも、国の枠を超えて世界の平和に貢献し続けた偉人。
人間国と魔国の融和にも尽力した。彼がいなければ魔国との交流は数十年は遅れたと言われる。
一国に一人アバンが欲しいという言葉も出たほど。人力チーターアバン。大体アバンのおかげ。
ハドラー
武道大会を通じて、地上の人々に若干認められる結果となった。ダイ達と力を合わせて戦う姿が衆目に晒されたのが要因となった。
各国の主導者達も、警戒は怠らないがハドラーが人間に歩み寄ろうとしていることは確かかもしれないと認め出していた。
そうして魔国と人間国の間を行き来している間に、ダイとレオナの末の娘と出会う。祖母であるソアラに似た性格のその娘を気に入り、そして娘もまたハドラーと過ごす時間を楽しみにしていた。
娘が成人した暁にダイに結婚の許しを請うが、娘を守れる強さがないと人間がほとんど住んでいない魔国には嫁がせられないと言われて死闘を繰り広げることに。二対一(ダイ&バラン)は聞いてないと全力で抗議したのは言うまでもない。
生涯の目的は打倒メタルン。
クロコダイン
魔国最強の戦士として名を馳せる。人間国にもその勇猛さは轟いており、魔国と人間国の交流が増えてくると、各国の軍や騎士団などと模擬戦を頼まれたりもしていた。
その豪放磊落な性格により、もっとも多くの人々に親しまれた魔物だと謳われることとなる。そしてその働きと人柄で、魔国と人間国の摩擦を大きく軽減させることに貢献し続けた。
生涯の目的は打倒メタルン。
でろりん
第一回武道大会で準優勝――相手があれだったため、実質優勝ともいえる――したため、世界的に有名になる。大分調子に乗った様子。
なおメタルンに褒められ、その後諫められた。調子に乗れたのは僅か一か月程度だった。残念。だが、頑張ったご褒美としてメタルン特注の武具を授かった。これにはでろりんも感無量だったという。
第二回武道大会は第一回とは違い願いを叶える権利はなかったが、代わりに上位入賞すると賞金が出ることになったため、参加を決意。
残念ながら準決勝でノヴァに敗北。三位決定戦でへろへろに勝利し三位となる。メタルン製の武具を使えば優勝出来ていたかもしれないが、それはメタルンに禁止されていたため無念の敗北を喫した。
だが仕方ない。メタルン製のでろりんの武具は、合言葉で全身に甲冑が展開する特殊な武具であり、その甲冑が展開している間は圧倒的な防御力を得て、ほぼ全ての攻撃呪文を防ぐ上に、スピードまで高められるという副次効果があったのだ。もう反則である。なお合言葉は
武道大会で負けはしたが、それでもその実力の高さは世に認められ、多くの国々から幾度もスカウトされる。本人は高い地位や責任を負う立場に興味はなく、仲間達と共に世界を冒険して楽しく過ごした。
へろへろ
その類まれなるパワーを活用し、武道大会で活躍する常連選手となる。
巨体に見合わぬスピードとテクニックも携えており、当たれば相手が何であれ倒せる攻撃力は多くの大会参加者を恐れさせた。
でろりんと同じく多くの国々からスカウトされるも、そんなことより皆と気楽に過ごす方が良いので断った。
ノヴァ
修行を重ね、第二回武道大会にてでろりんに雪辱を果たす。だが、その戦いで多くの体力と魔法力を消耗したため、決勝戦でホルキンスに敗れてしまった。
でろりん・ホルキンスとは実力が拮抗しており、その後も両者と何度も雌雄を決することになる。
ホルキンス
カール王国最強の騎士。その剣の技術は高く、純粋な剣術のみならば人間では最強クラス。ただしヒュンケルは除く。
第二回武道大会で念願の優勝を果たす。その際、尊敬するアバン王から褒められた事で感涙する。
なお、優勝者はその後行われる勇者一行同士のエキシビションマッチ――勇者一行に武道大会に参加する権利がなかった為、第二回から行われるようになった――に参加する権利が与えられ、参加する。が、初戦でラーハルトと戦い瞬殺されてしまう。相手が悪かった。
その後は修行不足を嘆き、カール王国最強の騎士の名に相応しくあろうと努力を惜しまなかった。
ゴメス
武道大会常連者として名を馳せる。が、上位キャラみたいなへろへろのせいであんまり目立たなかった。
各国の主導者
武道大会で味を占めた。四年に一度開催し、多くの収益を得る。
魔国王ハドラーと対面したことで、その人柄を多少なり理解する。警戒は怠らないが、一方的に敵視することは少なくなった。
元々穏健派だった指導者の国は、数年後に魔国との交易を開始することとなる。強硬派もそれに遅れてハドラーとパプニカの第二王女が結婚した事を切っ掛けに、交易を開始した。
バラン
登場はしていないが、ソアラと一緒に二人で仲良く武道大会のお祭りを楽しんでいた。表情には出さなかったが、久しぶりに妻と二人きりで過ごしたので内心とっても喜んでいた。
ダイ達とメタルザムザの戦いを実は見守っていた。万が一があれば乱入しようと思っていたが、予想に反してザムザに悪意がなかった上に、普通にダイ達が勝ったためその機会はなかった。 むしろ乱入したメタルンを止めるために自分も乱入しようか悩んでいた。
ソアラ
夫と二人で仲良く過ごせて幸せいっぱいのソアラさん。今度は家族全員で行きたいと思っている。
指摘することはなかったが、夫が内心でとっても楽しんでいるのに気づいていた。
メタルンが面倒を見るザムリィを新しい家族として受け入れた。その懐の深さは三界一かもしれない。メタルン・バラン・ダイ・ラーハルトが唯一勝てない存在。ある意味最強。
◆
武道大会から半年の月日が流れた。
メタルンはでろりんに作った武具の性能がロン・ベルクに認められたことで、免許皆伝となりデルムリン島に帰って来た。
なお、帰る前にロン・ベルクに大量のメタルキング素材を要求されたりする。今のロン・ベルクの倉庫の中には、大量のメタルキング素材が眠っていた。
遥か未来、もしかしたら無数のメタルキング製のベルクス装備――ベルク一族が作った魂が宿った武具にして、使い手を操るようになったはぐれ武器の総称、もはや呪いの武器――が世に蔓延っているかもしれない。地獄かな?
デルムリン島に帰って来たメタルンは、早速ザムリィの面倒を見ることにした。
ザムリィの生い立ちを聞き、今のザムリィには地上の人間達と共に生きる為の倫理観や常識を教え込む必要があると思ったメタルンは、時に厳しく、時に優しく、ザムリィを教育した。
間違っていることをしたら、何故それが駄目なのか教え、叱り。正しい事や教えた事が上手く出来ていればたくさん褒めた。
修行も当然行ったが、元々は研究職だったザムリィに無理な修行はさせず、たくさん食べ、たくさん動き、たくさん学び、たくさん寝るという健康的な修行を施した。地獄を味わっているポップ達からは大層羨ましがられたそうな。
母親は物心つく前に死別し、父親が
そうして、メタルンに備わっている母性を全開に発揮してザムリィの面倒を見た結果――
「母上!」
「ピギィ?」
――どうしてこうなった?
こういうことになった。どうしてこうなったかって? お前がそうしたんだよ。
ザムリィは、それはもうメタルンに懐いた。ザムリィの年齢は184歳であり、圧倒的にメタルンより年上――今世のみの計算――である。だが、彼、もとい彼女は長命の魔族であり、その年齢を人間に換算すると、十代半ばが良いところだ。
しかもザムリィは幼少期からあの
そんな記憶しかないザムリィが、初めて愛情というものを受けたのだ。悪いことをしたからといって殴られたりせず、しかしちゃんと叱られ、良いことをしたら褒められて我が事のように喜ばれ、これまで食べたことがないような食事をたくさん振るまわれた。その食事は、今までザムリィが食べた中で何よりも美味しく、暖かかったという。ザムリィがこうなるのも必然というものだった。
「母上に叱られて思ったんだ。何だかお母さんみたいだって……。私の母は私が物心付く前に亡くなってしまったから、母親の思い出はないけど……だからこそ、あれが母親なんじゃないかって思ったんだ」
「ピィグゥィー?」
――なんか昔どっかで聞いたことあるようなセリフなんですけど?
数千年前に聞いたことがあるようなセリフにデジャブを感じつつ、メタルンは今まで発したこともないような声を出して唸った。母上と言われても、自分は子どもなど生んだ覚えは欠片もない。大体この場合の父親は誰だ? 百歩譲ってバーンならまだいいが、話に聞く
そうして頭を捻るメタルンを、ザムリィがめっちゃ懇願するような顔で見ている。まさに親に見捨てられるのが不安な子どもの表情だ。メタルンの庇護欲と母性が滅茶苦茶くすぐられた。
結果、メタルンは負けた。
「ピ、ピギィ。ピギギィ!」
――い、いいですよ。私があなたのお母さんです!
「母上!」
「ピギィ!」
――ザムリィ!
ヒシィッ、と二人は抱き合った。こうして、デルムリン島で新たな親子が誕生した。良きかな良きかな。
なお、二人の戦力ならば三界を滅ぼすことも容易かったりするが、それはまあどうでもいいことである。もともとメタルン一人でも出来たことなので。
◆
ザムリィ
メタルンから愛情をたっぷり受けて世話をされたため、メタルンに母親を感じた。元々肉体の組成がメタルン成分多めなのも理由かもしれない。
メタルンに子どもとして認められてから、男としての意識はほぼなくなり、女として生きていくことに違和感を感じなくなっていった。
ソアラからも家族として受け入られており、彼女も母親のように慕っている。ザムリィにメタルン成分がなければソアラを母親としていたかもしれない。
メタルンから修行を受けたりしているが、そこまで本格的なものではない。メタルンは悪人矯正以外で無理矢理修行させることはたまにしかないのである。ザムリィは悪人判定されなかったようだ。
ただし、超魔生物学のような禁忌の研究は禁止された。命を弄ぶのは駄目である。……やってた事は大分悪人なんじゃねぇか? とはポップの内心である。メタルンが怖いから口にはしなかったが。
ハドラー親衛騎団の面々を姉・兄のように慕う。なお年齢はザムリィが上なのだが、母親扱いであるメタルンが年下なので今更であった。
メタルン
いつの間にか子持ちになってしまった世界最大のバグ。どうしてこうなった?
しかも、ザムリィの存在を知ったハドラー親衛騎団の面々にも、なんで自分達は認知してくれないのかと泣きつかれたため、親鋭騎団の面々も認知することとなった。どうしてこうなった? なおハドラーが父親とは絶対に認めていないもよう。ハドラーも勘弁してくれと懇願していた。
なってしまったものは仕方ないと、認知したからには責任をもって母親として振るまった。
強くなったダイ達全員――バランとハドラー達含む――と戦い、流石に多少苦戦した。神々が生んだ最強の竜魔人バラン、成長し続ける竜の騎士の息子ダイ、世界最強の大魔導士ポップ、人間最強の戦士ヒュンケル、人間最強の武道家マァム、最速の槍使いラーハルト、聖魔闘士ハドラーwithハドラー親衛騎団、超合金クロコダインを同時に相手にしては、流石に苦戦は免れなかったようだ。苦戦で済んでるのがおかしい戦力なのだが。
この結果にメタルンはまだまだ修行が足りなかったと思い、更なる修行に力を入れる。もう十分ですとは誰の言葉か。世界最バグの修行に終わりはないのだ。
これにてダイ大編後日談は終わりです。原作終了後のちょっとした劇場版的な話になりました。
本来はもっと早くに投稿したかったのですが、執筆意欲が完全になくなっていて……ダイ大編の最終話で、あんなこれみよがしな伏線を入れておいてこの体たらくである。
???
誰もいなくなったバーンパレスにて、とあるモノを回収し、その場から消え去った。そして――
これがダイ大編最終話に入れておいた後日談の伏線ですね。この時はすぐに書こうと思っていたのです。ですが、一応のダイ大編完結で無気力症候群となり、そのまま放置してしまいました。
しかもダイ大編を書く前から書きためていた鰤編のネタ――藍染女体化という暴挙――を思いついたため、鰤編の執筆意欲が俄然とわいてしまい……結果、9年も待たせることに。まことに申し訳ない。
しかしポップが使いやすい。何て便利なキャラクターなんだ。ツッコミ良し、強さ良し、会話の取り回し良し。最高ですね。原作でも最推しのキャラです。その次は超魔ハドラーとクロコダイン。
この後日談でも随所にポップ推しの表現があったと我ながら思う。出来るだけ贔屓はしないようにしたかったけど。でも使いやすすぎたんだ……ありがとうポップ。ツッコミお疲れ様。
なおダイ大編最大の犠牲者兼功労者はダイかもしれない。毎度毎度翻訳助かる。と言ってるよbotにしてしまってごめんね。
書きたかったことは終わったので、またしばらく投稿はないです。次の投稿があるかも未定。書きたい原作はあれど、大きなネタが思いつかないのが現状。
ともかく、9年ぶりの続きを読んでくれてありがとうございます! 評価、感想もとても嬉しかったです。誤字報告は本当に助かります。なんで何回も見直してるのに誤字ってなくならないんだろう? 不思議。なお文章や表現の間違いはどうしようもない。私の浅学が原因である。
それでは、次の投稿を期待せずお待ちください。ありがとうございました!