やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
やはりぼっち同士は引かれ会う。
「…あ?」
「え?」
昼休み、いつものベストプレイスで昼飯を食べていたところ、そいつはひょこっと現れた。
海の上を進む学園艦に建てられた大洗学園、その学園の中でもこの場所は昼休みの後半に吹く潮風が心地よく、その風を味わいたくて昼飯はここで食うと決めているのだ。
べ、別に教室に居場所がないとか、そんなんじゃないからね!!
そんな俺のベストプレイスを侵略して来たのはクラスメイトの彼女、名前は確か…西住 みほだったか?
最近転校してきたので印象には残っている、中学の時、クラスの女子の名前を覚えていただけでキモいとかストーカー扱いされたので基本、クラスの女子なんぞ顔も名前も記憶に残さないのだが、彼女は別だ。
何を隠そう彼女、転校してからいまだにクラスで誰かと親しく話しているのを見たことがない、簡単に言えばぼっちである。
集団において一人はみ出ている者というのは悪目立ちするものだ、俺のようにもっとステルス能力を磨かないとエリートぼっちの道はまだ先である、え?目指してない?デスヨネー。
訓練されたエリートぼっちである俺はステルス能力をマスターしているのだ、例え同じクラスでも向こうは多分、俺の事なんぞ知らないだろう。
ならば今は知らないフリしてやり過ごすのが得策か、つーか気まずいでしょ、この状況。
ぼっちが二人集まった所でぼっちとぼっち、1+1は1、だいたい、クラスで一度もマトモに話した事がない女子と会話なんぞ出来るか。
向こうもそこら辺は理解して…。
「あ、あの…、比企谷君、ですよね」
…なかった、ぼっちの風上にも置けない奴だ。
「お、おぅ…、えっと、西住?」
声をかけられてはさすがに無視する訳には行かない、そんな事をすれば女子の間で調子に乗ってるとか言われかねないからな、女のネットワーク怖い、西住にそのネットワークがあるか知らんが。
「つーか、転校して間もないのによく一度も接点のない俺の名前知ってるな」
ひょっとして俺の事好きなの?やめて、勘違いして告白してフラレちゃうから、フラレちゃうのかよ。
「はい、比企谷 八幡さんですよね、誕生日は8月8日、…ですよね?」
「え?いや、合ってるけど、え?何で知ってるの?」
何この子怖い、一回も会話したことがない男の子の誕生日知ってるとか、ひょっとして俺の事好きなの?…もういいか。
「えっと…、その、いつクラスの人と友達になってもいいように名前と誕生日は皆の分覚えていて…」
「お、おぅ…」
どうやら西住はぼっちではあるが俺とは違い、友達を作る努力とかしてるらしい、正直、誕生日まで覚えるのはやり過ぎてる気もするが。
「えっと…、そんでその、俺に何か?」
「あ、あの…」
見ると西住の手元には弁当箱があった、なるほど、教室で一人で食べるのも限界が来たのでこうして外で食べれる所を探していた、か。
「比企谷君、いつもお昼教室に居ないですけど、もしかしてここで食べてたんですか?」
「まぁ、そうだけど…」
「じ、じゃあ、私もーーー」
西住がそう言い終わらないうちに、俺は残っていたパンを強引に口にねじ込むと噛みながら立ち上がる。
「んじゃ、飯も食ったし、俺は行くけど?西住も早く食えよ、昼飯食う時間なくなるぞ」
そしてさっさとその場から立ち去るべく、西住の返事も聞かずに歩きだした。
比企谷 八幡はクールに去るぜ、何度も言うが、ぼっちが二人揃おうがそれはぼっちとぼっちになるだけなのだ。
第一に西住は友達を欲している、そこにクラスのはみ出し物代表の俺と関わっても友達なんぞ出来まい。
…しかし、ベストプレイスを追い出された、昼休み、どこでこの残り時間を潰そうか。
そう頭を悩ませていると不意にピンポンパンポンと校内放送が聞こえてきた。
『普通一科2年A組、比企谷 八幡さん、至急、生徒会室に来て下さい、繰り返します…』
「…げっ」
午後までの暇潰しに頭を悩ませる必要はなくなった、けれどももっと頭を悩ませる事になってしまった。
生徒会室かぁ…、あの生徒会長苦手なんだよなぁ、あと広報の人が怖いし。
よし、バックレよーーー。
「比企谷ちゃ〜ん、どこ行くの?」
「…げっ、あ、いえ、なんでもありません…」
バックレの決意も虚しく散り、俺の前には腕を組ながら不敵に微笑む生徒会長様が居た。