やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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記念すべき100話がこんな話で良いのかと自問自答…、まぁ八幡らしいといえばらしいですけどね。
最終章やらゲームやらで盛り上がりを見せるガルパンですけど俺ガイルの12巻も今月ですね!…もう延期しないよね?

最近あまり執筆の時間が取れない上に本編の内容が内容なので更新に悪戦苦闘、投稿遅れ気味で申し訳ない。



そして彼は、ふりだしに戻る。

「みほ様、よろしければ今日の晩御飯は私が作りましょうか?」

 

「本当!久しぶりの菊代さんのご飯、すごく楽しみ!」

 

菊代さん、西住家に仕えるだけあって料理もやっていたようだ、そう考えると西住からすれば大洗に来て以来の久しぶりの実家の味ってことか、本当に嬉しそうだな。

 

ふと気になったんだが、西住の母ちゃんは料理とかするんだろうか?なんか西住の話を聞いたら相当怖い人らしいのでイメージがわかない。

 

まぁ会った事ないしどんな人かも知らんけどね、つーか怖いらしいから会いたくない、いや…さすがに会う機会なんてないだろうが。

 

「八幡君もどうかな?菊代さんのご飯、とっても美味しいよ」

 

「いや…何が?」

 

唐突に始まった西住による菊代さんの自慢話、これは将来専業主夫目指している俺への挑発かな?

 

「えっと…、傘のお礼もしたいから、晩御飯、一緒にどうかなって」

 

うん、やっぱり聞き返しても西住が何言ってるかよくわかんないや、駄目だぞ西住、使用人とはいえ身内の人が居る前で男子をほいほい部屋に入れちゃ。

 

「俺はいい、もう帰るからな」

 

ただでさえ見られたくない所を見られたのだ、これ以上誤解される前にさっさとこの場から撤収しよう。

 

「え?でも…」

 

「今日たまたま傘を忘れた西住に、たまたま傘を持ってた俺が貸しただけだしな」

 

「そうだけど…、誰に言ってるの?」

 

そりゃ当然菊代さんに決まっている、今日はたまたま変な偶然が重なっただけなんですよ?本当に。

 

「久しぶりに会ったんだ、積もる話もあるだろ」

 

「うん…」

 

よし、これでクリアだ、後は若いもんに任せてさっさと帰るとするか、比企谷八幡はクールに去るぜ。

 

「…ところでみほ様は普段は自炊をしているんですか?」

 

…おや?唐突に菊代さん、何を聞いているのかな?

 

「え!?も、もちろんだよ、菊代さん」

 

それに対しての西住の動揺っぷりが半端ない、どう見ても普段自炊してる人の反応じゃないんだけど。

 

「まさか…コンビニのお弁当や冷凍食品、カップ麺で済ませている、なんて事はありませんよね?」

 

菊代さんがニコニコと微笑む、怖い怖い、ちょっとー、この人も十分怖いんだけど。

 

普段自炊してるのかは知らんが、確か西住はコンビニ大好きなんだよな…、料理出来る出来ないは別にしても例えばコンビニ弁当の新商品とか出てれば興味持ちそうではある。

 

「あ!私ちょっと部屋片付けてもいいかな?ごめん、菊代さん、八幡君、ちょっと待ってて!!」

 

早口で捲し上げて伝えると西住は慌てて部屋に向かった、証拠隠滅に向かったな、これはもうほぼほぼ黒だろ…。

 

「…コンビニ好きは続いてるみたいですね」

 

その様子に菊代さんもため息をついている、もう今さら慌てて証拠隠滅した所でバレバレじゃねーか。

 

「あいつ、実家でもそうなんですか…」

 

「えぇ、コンビニのお弁当は身体に悪いので控えるようにして欲しいと家を出る前に念を押したんですが…」

 

西住のやつ、どんだけコンビニ好きなんだろうか…。

 

ん?あれ?菊代さんと二人きりになっちゃったぞ…、元々帰る流れだったのに、この人が急に変な事言い出すからタイミングを逃してしまった。

 

「さて比企谷さん、良い機会なので少し聞きたい事があるんですが?」

 

良い機会って…、この人絶対こうなるとわかってて言ったんだろう、部屋にコンビニ関連の物があると確信されてた西住ェ…。

 

「えと…なんですか?」

 

あのタイミングで西住を部屋に戻したのだ、どうやらこの人は俺を逃がしてくれるつもりはないらしい、となればこちらも直接話して誤解を解くのが一番だ。

 

「では単刀直入に…、あなたとみほ様の関係について聞かせて下さい」

 

本当に単刀直入だな、つーか確か前にも姉住さんに同じ事を聞かれたな、西住どんだけ愛されてるんだよ。

 

…って事は姉住さん、西住の事は実家にはまだ話してないんだな、いや、今は黒森峰の学園艦に居るだろうから単純に帰ってないだけかもしれないが。

 

あの人の考えはわからんが、そこら辺は俺としても西住としてもありがたい。

 

「西住が大洗で戦車道再開したのは知ってるでしょう?俺も戦車道の手伝いやらされてるんで、関係なんてそんくらいですよ」

 

姉住さんに聞かれた時と同じように返す、変に付き合ったりとか言わない辺り、姉住さんと違って余裕を感じる。

 

「それで、二人で一緒の傘で帰ったという訳ですか?」

 

やっぱりそこですよねー、決定的瞬間見られちゃったよ、菊代さんは西住家に仕える家政婦みたいな人だろうけどやっぱり家政婦って決定的瞬間見ちゃうものなの?ミタさんなの?

 

「だからたまたまですって…」

 

「それに、みほ様が男性の方と一緒に居るのも珍しいんですよ」

 

「いや、それは黒森峰が女子校だからでしょう?」

 

「そうでしょうか?私はみほ様を小さい頃から見て来ましたが、男性の友達というのはおそらくあなたが初めてだと思いますよ」

 

いや…知らないけど、そもそも友達じゃないんだし。

 

つーか西住を小さい頃から見て来たって、この人いったいいくつなんだろうか?見た目は結構若いと思うんだけど。

 

「ふふっ、女性の年齢を探るのは感心しませんね」

 

え?なんでわかるの?やっぱり西住流の人ってエスパータイプじゃない?

 

少しだけいたずらっ子のように微笑む菊代さんだが、やがて雪の降り続ける空を見上げた。

 

「大洗の活躍は奥様、…みほ様のお母様の耳にも届いてます」

 

「………」

 

やはりというか、今日このタイミングで西住流の人である菊代さんが来た事も偶然ではないのだろう。

 

大洗の話を知ってるなら当然、隊長である西住の事ももうバレているだろう、そもそも自分の娘が転校した学校なのだから当たり前だ。

 

「…みほ様を支えて上げて下さい、比企谷さん」

 

「それ、どこの馬の骨ともわからん奴に言う言葉じゃないと思いますよ」

 

「その点は心配いりません、あなたはみほ様が友達と言った方なのですから」

 

いや、それはどうだろうか…、そもそもあれは単に西住が優しいだけなのだ、その辺をあいつも勘違いしている。

 

「き、菊代さん、もう大丈夫だよ」

 

そんな話をしていると西住が階段からひょこっと顔を出した、どうやら証拠隠滅も終わったらしい、もう菊代さんにはバレバレだけど。

 

「…んじゃ、俺はもう行くわ」

 

「…あ、うん、またね、八幡君」

 

さて、今度こそ本当に帰るかと閉じていた傘を開いて再び歩き出そうとする、やっぱり傘は一人で使うのが一番だな。

 

「比企谷さん、最後に一つだけよろしいですか?」

 

「え?あ、はい?」

 

と、その間にまた菊代さんに声をかけられた、まだ何かあるのだろうか?

 

「…みほ様と友達以上の関係になりたいなら、覚悟した方がよろしいですよ?」

 

うわ怖ッ!今日一番の良い笑顔で何言ってるのこの人は!!

 

「えと…何の話してたの?」

 

「ふふっ、秘密です」

 

そして涼しい顔して西住と階段を上がっていく菊代さん、やっぱりあの人も西住流関係者、この溢れ出る強キャラ感…。

 

「…さて」

 

帰る…のはもちろんだが、帰りがてら少し確認しなければならない事が出来た。

 

俺は傘を片手にポケットから携帯を取り出すとアドレス帳の一覧をタップする。

 

アドレス帳からお目当ての相手を探し…、よくよく考えたらこの連絡相手を探す作業ってわりと新鮮だな、だって前は連絡先は親と小町ぐらいしかなかったし、え?俺の携帯って簡単携帯だったの?

 

「…あったあった、ん?」

 

見つけた連絡相手をタップしようとするとその前に俺の携帯が着信を知らせた。

 

ちなみに今日の砲撃音クイズはブラックプリンス、わかった人いるかな?正解者に拍手、え?聞こえないって?

 

さて、俺に連絡して来た相手だが、実はちょうど俺から連絡しようと思っていて今さっきまでアドレス帳を開いて探していた相手だ、これは運命を感じる、嫌な運命だけど。

 

「…もしもし」

 

『比企谷、今少し時間はあるか?』

 

はい、そんな訳で姉住さんである、この人の方から連絡してきたという事は…ほぼ決まりか。

 

「大丈夫ですけど」

 

『そうか、なら君に頼みたい事がある』

 

「…なんですか?」

 

『菊代さん、私やみほの知り合いなのだが、今大洗にいるらしい、見かけたらよろしく伝えて欲しい』

 

うん…もうちょっと早く教えてくれたら良かったのに、そうしたらあの瞬間も見られずにすんだだろうし。

 

そもそも何で俺に言うのかね…、いや、西住にはまだ連絡しづらいんだろうけど。

 

「それなら今さっき会いましたよ、今は西住の家に居るはずです」

 

『そうか…』

 

短くそれだけ答えるが姉住さんは電話を切らない、まだ何か用があるんだろうが言い淀んでいるようだ。

 

たぶんそっちが本命の用件であり、それこそ俺が最初に連絡して聞こうと思っていた事と同じ用のはずだ。

 

「俺からも少しいいですか?聞きたい事があるんですが…」

 

さて、鬼が出るか蛇が出るが…、どちらにせよ良い話は聞けそうにないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…はぁ」

 

家に帰るなり部屋に直行し、カバンも適当に床に置くと着替えも忘れてベッドに寝転んだ。

 

…疲れた、最近いろいろありすぎてどうにも頭が回らず、ぐちゃぐちゃだ、小町も心配そうな顔をしていたが俺の事を気遣ってか深くは聞いてこない。それが本当にありがたい。

 

結局小町にもまだ廃校問題の話は出来ないでいる、大洗に合格する為に頑張って受験勉強してるあいつにそんな話はできない、…そう思うと生徒会の人達の考えもわかるな。

 

本当にここ最近はいろいろありすぎた、少し…状況を整理しとくか。

 

維持費のかかる学園艦全体の数を見直す為、近年生徒数が減少し、目立った活動もない大洗学園は来年廃校が決まった。

 

それをうちの生徒会が、今年の戦車道全国大会で優勝すれば廃校を撤回すると、文科省と約束したらしい。

 

生徒会があそこまで西住の勧誘に必死になっていたのも、戦車道を大々的に復活させたのもその為だ。

 

つまり負ければ大洗学園は廃校だ、準決勝まで勝ち進んで来て十分な成果を出してはいるが、それでも負ければ廃校なのは変わらない。

 

大洗学園を存続させる為には優勝しかないのだ。

 

…小町は来年、大洗に通って戦車道をやりたい為に受験勉強を頑張っている、兄として、もちろん叶えてやりたい。

 

西住みほは来年も大洗で戦車道をやりたいと言った、彼女の優しさにつけこんで戦車道に引き戻した俺にはその責任がある、彼女がやりたいと言うなら責任はとるべきだ。

 

他の奴らだってきっとそうだ、例えば一年の大野だって「負けても次がある」と言っていたが、これはあいつらが来年もまた戦車道を続けるつもりがあるからだろう。

 

さて、そこで俺だが、俺はどうだろうか?

 

考えるまでもない、だって俺は来年戦車道をやる理由が無いのだから。

 

今戦車道を手伝っているのだって、生徒会に言われているからで来年はあの人達も卒業する、それは大洗学園が廃校になってもならなくても同じ事だ。

 

生徒会に関する一切と関わらなくて済むなら、当然戦車道だって同じ事だ、大洗学園が廃校になってもならなくても、俺に戦車道を続ける理由は無い。

 

だから今の戦車道メンバーとも、どうせ来年からは関わらなくなる、いずれなくなる程度の関係なら今どうなろうと構わないだろう。

 

…そもそも、今だって怪しいもんなんだけど。

 

生徒会の人達は大洗が負けたとき、廃校の責任を彼女達が負わないように真実を伝えていない。

 

それはもちろん悪い事じゃない、何もせずにいたら廃校になる事に対し、最後の足掻きとして戦車道を選んだ彼女達が、取ろうと考えた責任だ。

 

だが、それを知らない現状の大洗メンバーの皆は負けても来年があると、来年同じメンバーで戦車道を続けられると思っている、この考え方の違いではどうやったって軋轢を生むだろう。

 

なら…どうやって集団をまとめるか、さて、ここで一つ問題を出そう、とても簡単で、残酷な問題だ。

 

言葉っていうのは″何″を言うかじゃなくて、″誰″が言うかが一番重要なのだ。

 

例えば…そう、みんなに好かれている奴と嫌われてる奴、二人の言う事がバラバラだったなら、みんなはどっちの言う事を聞くでしょうか?


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