やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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さて、いよいよガルパン最終章の公開まで1ヶ月、新作ゲームも発売されるわでノリと勢いにのってますね!
皆さんゲーム買いますか?映画見に行きますか?つーか映画、うちの近くでやるかどうかが一番不安なんですけど本当に頼むよ!fateはやってないとか酷くない?


やはり、思い出と書けばそれはトラウマと読むものである。

「………」

 

怖い夢を見た…、いや、わりとガチで。

 

懐かしい…というにはわりと最近の思い出ではある。そういえばあの時は知らなかったとはいえ、会長には少し悪い事をしたかもしれない。

 

思い出…と書けば聞こえは良いが、俺の場合は思い出と書けば大抵の事にトラウマとルビを振る事になる。

 

そのせいか、俺にとって思い出とはそれほど価値があるようには思えない。いや、それはきっと当人達にとってもさほど変わらないだろう。

 

学生達が宣う思い出作りなんてものも、せいぜいその後の『あの頃は若かったなー』程度の話の種になるくらいだろう。

 

すぐに風化し、忘れ、時には黒歴史として自分を辱しめる結果になる事もあるだろう。

 

特に普段からコスプレしてる歴史好きなあいつらとかね。将来、過去の自分を思い出して悶えながら床を転がり回る姿が今から想像出来そうだ。

 

「……?」

 

あぁ…うん、なんでかね?なんでここで急に歴女チームの連中の事が出てきたのか不思議でならない。いや、インパクトある連中なのは間違いないんだけど。

 

そもそも普段から歴史人物のコスプレ集団だし、一般的なものとはタイプが違うが、ジャンル的にはあいつらも厨二病のカテゴリーに入るだろう。

 

だいたいなんだよあの最初の戦車のカラーリング、歴史好きで共通してるとはいえ各人好きな歴史はバラバラ、だからってその全てをごちゃ混ぜにしたカオスな色合いに旗まで付けやがって。

 

しかも後に聞いた話じゃ、その旗のせいで聖グロリアーナとの練習試合の時、隠れてた位置がバレて撃破されたらしい、アホだな。

 

まぁ…それに反省したかは知らんがⅢ突のカラーリングも戻し、旗も回収した彼女達は戦車道全国大会においての大洗の栄えある初撃破を果たし、2回戦では練習の成果を発揮してフラッグ車の撃破まで果たした。

 

Ⅲ突という火力に秀でた戦車に乗っているというのももちろんあるが、試合において必ず相手一両は撃破している、大洗にとって彼女達の火力は必要不可欠だ。

 

そういやカエサルも普段はアレだけどカルパッチョと絡むと普通の女子高生っぽい所もあるんだよな…。

 

左衛門佐がどこからか持ってきたのか、真田こねつけ餅を頂きながらエルヴィンと戦車談義をやった事もあった。いや、おりょうが多めに食ってた気がするが。

 

まぁ…そんな事もあったってだけだが。

 

時計を見るとまだ朝早い、珍しく今日は朝練が無いので冷泉を起こす必要も無い、なのでこんなに朝早く起きる必要は無いのだが、そこは日頃の習慣というのか。…悲しい習慣になったな、おい。

 

だがそれ以上に悲しいのはうちの両親が早勤でもうすでに仕事に行っている事だろう、社畜って本当に悲しいなあ…。

 

まぁいい、小町も夜遅くまで受験勉強をしているんだ、朝飯くらい用意してやるにはちょうど良い時間だろう。

 

適当に着替えて台所でちゃっちゃと朝食の用意をする、小町ほど凝った料理は作れないが安心して欲しい、これでも専業主夫希望なのだ、料理漫画だって読んでるからね。

 

おあがりよ!と誰もいないテーブルに簡単な朝飯を並べる、うん、普段小町が作ってくれてるのとは比べるのも失礼な出来だな…。

 

本当によく出来た妹だ。そんな小町が大洗で俺の後輩になれば妹属性に後輩要素まで加わって最強に見えるまである!…中学の時、学校ではあんまり話かけないでって言われたのは内緒だよ☆

 

後輩…後輩かぁ、そういや戦車道チームの一年共は後輩と言えるのかね?西住達からすればそりゃ同じチームのメンバー同士なんだし先輩後輩の仲と言えるだろうけど。

 

そもそも最初の頃、あいつら俺に怯えてまともに関わって来なかったからな。せっかくネットでさりげなく『ググレカス』と教えてやったというのに…、一応言っとくけどその後の『まず服を脱ぎます』って書き込んだのは俺じゃ無いからね?

 

一年共の乗る戦車、M3リーはウサギ小屋で発見されたのもあってその小屋のウサギの面倒は彼女達が見ているらしい。

 

なんの縁か、そのウサギこそ俺が大洗入学の日に病院送りとなった原因のウサギなんだけどね、そういや見に行った事はないな…、行く必要もないと思うけど。

 

こいつら最初の練習試合では試合中にトランプで遊んでやがったし、あまつさえ戦車を放棄して敵前逃亡してしまうようなゆとりっ子集団だ、これは軍法会議物である。

 

とはいえ…、西住達あんこうチームがやられた中、ダージリンさんのチャーチルとの一騎討ちに戻り、試合後はきちんと自分達の行いを反省し、謝りに来てた。

 

全国大会が始まってからはサンダース戦では逃げる事なく、ちゃんとフラッグ車の防衛に務め、アンツィオ戦ではあんこうチームとの連携で相手戦車の撃破にも成功した。

 

思ったよりずっと向上心があるというか…、そういや俺もオススメの戦車映画を教えてくれって言われた事あったな。

 

あと、なんかセコい作戦教えて下さいって聞かれた事もあった。なんだよセコい作戦って、普通に作戦教えて下さいって聞けば良いんじゃないの?なんでセコいってつけた?

 

まぁ聞き方はアレだが澤なんかは真面目に聞いてくれるし、大野と山郷は結構ノリノリで戦術ノートなるものに書き込みながら話にのってくれる。

 

阪口とは他にもアニメやラーメン店の情報交換を行ったり、…女子高生とする話題じゃねぇな、同じ妹を持つ身として阪口の兄ちゃん達の心労が見えるようだ…。

 

というか、いまだに丸山の声を聞いた事がないんだけどどういう事なの?逆に宇津木は油断できない声してるので勘弁して頂きたい所である。

 

まぁ…そんな事もあったってだけだが。

 

「……?」

 

いや、あれ?なんでいつの間にか一年共の話になってるんだ?小町の事考えてたのに。

 

まぁ俺が本気を出して小町の事を語り出したら一万文字は軽く越えるだろうからな、たぶん心が自重してくれたんだろう。

 

そもそもその小町とだって今は顔を合わせづらい、大洗廃校の話を聞いたは良いが、その手の話題を小町に伝える事も出来ないでいる。

 

大洗入学の為に受験勉強をしている小町に来年その大洗が無くなる話なんて出来ない、任せとけ、と大見得切ったは良いが事は俺一人でどうにかなる問題ではないだろう。

 

そんな俺のギクシャクした雰囲気は小町にも伝わっているだろうが、何も聞いて来ないのは今はありがたい、本当によく出来た妹だと思う。

 

廃校か…、今思えばスケールを小さくして考えれば磯辺達バレー部連中なんかもいちいち元バレー部とか呼ぶの面倒なだけで、バレー部自体はもう廃部を宣言されてんだよな。

 

そう考えると生徒会や俺なんかよりもずっと早く、自分達の居た場所がなくなる事を経験しているのだ。

 

だが、彼女達はそんな自分達の状況を根性の二文字でなんとかしようとしている。

 

スポ根魂というか、不屈の魂というか、早朝、誰もまだ使っていない体育館で他の部が来るまでバレーの朝練をし、戦車訓練をし、授業が終わっても残って練習に励んでいる。

 

自分達の乗る八九式はお世話にも強いとはいえない、だが、サンダース戦においてナオミのファイアフライを抑え込んで見せたのも、アンツィオ戦にてCV33相手に無双したのもそんな彼女達の努力の成果だ。

 

バレー部復活に向けて努力する彼女達だが、大洗が廃校になればバレー部復活なんて出来ないだろう…、その努力も無駄になってしまう。

 

だが磯辺、さりげなくバレー部復活の申請用紙に人の名前付け加えるのは止めろ、いつから俺はバレー部員になっちゃったの?

 

たまに練習に付き合えとか言われるけど、近藤のジャンプサーブとか河西のアタックとかコートの外から見てても受けたくない。バレーとかあんまりルール知らないけどあれ間近で受けるの?無理じゃね?

 

あ、でも佐々木のブロックの瞬間とか間近で見たい気がする、胸がね…、ほら、よーし、八幡ハイキューっちゃうぞー!!

 

まぁ…そんな事もあったってだけだが。

 

「……?」

 

あぁいや、今度はバレー部?なにこれ?八幡の苦い思い出をまとめたメモリアルなの?

 

やはり思い出と書けば大抵はトラウマとルビ振る事になるのだろう、まぁ、どれもいずれは忘れてしまうものばかりだ。

 

今こうして戦車道に関わっている分あいつらが強く出ているだけで、来年にはまた一人で悠々自適に過ごす事になる。

 

大洗が廃校になってもならなくても…。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

さて、都合の良い事に今日の戦車道の授業は準決勝へ向けての作戦会議、つまりミーティングである。

 

一回戦、サンダース戦の前にも使用した空き教室に今回も戦車道メンバーを全員集めた。ガヤガヤとして緊張感に欠けるのは今もあの時も変わらないが…。

 

違う点を上げるなら…そう、初めての公式試合であった一回戦と比べて大洗が勝ち進んでしまった事だ。

 

そもそも戦車道自体、初めてやる素人ばかりだ。それが変に勝ちに慣れてしまえばどうなるか?

 

「準決勝の規定では相手の数は15両です。とにかく、相手の数に呑まれないように冷静に行動して下さい」

 

今度も西住が教壇に立ち、今回の作戦を説明する。西住に関してだけ言えば、一回戦に比べると隊長として風格が出ている気がする。

 

「フラッグ車を守りながらゆっくりと前進して、まずは相手の動きを見ましょう」

 

プラウダは引いてからの包囲殲滅戦が得意らしい、今回もそれで来るのなら、西住のその作戦には納得だ。

 

だが…周りはどうだろうか?

 

「ゆっくりも良いが…、ここは一気に攻めたらどうだろう?」

 

「うむ」

 

「妙案だ」

 

「先手必勝ぜよ」

 

まず最初に意見を述べたのはカエサルだった、他の歴女チームの三人もそれに同意する。

 

「…え?気持ちはわかりますが、リスクがーーー」

 

動揺する西住がなんとか反論しようとするが。

 

「大丈夫ですよ!!」

 

「私もそう思います!」

 

「勢いは大事です」

 

「是非、クイックアタックで!!」

 

だがそれは磯辺達バレー部の連中によって抑えられてしまう、意見としては歴女チームと同意見のようだ。

 

…やっぱり、こうなってくるか、兆候は前々から感じてはいたが。

 

戦車道全国大会を突破し、勝ちに慣れた彼女達は簡単にいえば慢心しているのだ。

 

自分達なら出来るという、一種の集団心理のようなもの。

 

「なんだか負ける気がしません!」

 

「ぎゃふんと言わせてやりましょうよ!」

 

「えー!良いね!ぎゃふん!!」

 

「よーし、ぎゃふんだね!!」

 

「ぎゃふん!!」

 

こうなるともう止まらないだろう、一年共もその勢いに便乗してぎゃふんと連呼している。お前らが言ってどうすんだよ…。

 

「よし、それで来まりだな」

 

「勢いも大切ですもんね」

 

「孫子も言ってるしな、兵は拙速なるを聞くも未だ功の久しきを観ず、だらだら戦うのは国家国民のためによくない、戦いはちゃちゃーと集中した方がいいんだよ。ね?西住ちゃん」

 

生徒会の人達は…どうなんだろうな?特に会長はどう考えているか読めない、廃校問題について知っているこの人だからこそ、みんなの意見を尊重しているのかもしれない。

 

そう、これがみんなの意見である、集団で生活する上で最も強く、最も厄介で残酷な数の暴力。

 

「西住殿…」

 

「………」

 

さすがにあんこうチームはそんなみんなの意見には乗らないようだが、大洗戦車道メンバーの大半の意見は決まってしまった。

 

風紀委員のそど子さん達も沈黙してはいるが、これは初めての作戦会議でまだ勝手がわからないからだろう、これは意見以前の問題だ。

 

一気に攻める…といえば聞こえはいいが、そんなものは単なる突撃だ。それも引いてから攻めるのが得意なプラウダには一番の悪手とさえいえる。

 

だが、このみんなの意見で一番厄介なのはそこじゃない。

 

隊長は西住だ、だからみんなの意見がどうであれ、あくまでも作戦の最終決定権は西住にある。

 

だが、ここでそれを否定してしまえばどうだ?大多数の意見を無視してしまえばそれは士気の低下に繋がる。

 

出す意見こそ無茶なものだが大洗戦車道メンバーの士気は高い、それを通して無謀な突撃をするか、否定して士気を下げるか。

 

どちらにせよ、勝ち目なんて見えない、ほぼ詰みだ。

 

「………」

 

西住が迷いながらチラッとこちらを見ているのが見えた、さすがにこの状況を掌握するには西住には荷が重いだろう。

 

姉住さんならどうするだろうか?ふと少し気にはなったが、今考えてもしょうがないか。

 

…俺はこのみんなの意見が嫌いだ、昔からずっとこれに痛い目に遭わされてきたのだから。

 

少数者は問答無用で多人数に押し潰されるのが世の末である。それが心優しい西住なら尚更、どちらを選ぶかはわかりきっている。

 

「…わかりました、では一気にーーー」

 

「西住、まだ俺の意見聞いてないだろ?」

 

西住の言葉にわざと被せて俺も意見を伝える。

 

幸いだが、俺はまだみんなの中に居る、意見を言う権利だってあるはずだ。

 

「あ、う、うん!八幡君!!」

 

いや…、そんな嬉しそうにしないでね?心苦しくなっちゃうから。

 

みんなの意見なんて正直クソ喰らえ、俺は俺の意見、俺のやり方でいかせてもらう。

 

「俺も一気に攻める方に賛成だ」

 

「…え?」

 

俺の言葉が予想外だったのか、西住が戸惑った表情を見せるので今のうちに言葉を進める。

 

「意見が別れたな。…会長、今日この後戦車って動かせますか?」

 

「…大丈夫だけど、どうするの?比企谷ちゃん」

 

「そりゃ模擬戦に決まってますよ、どっちの作戦でいくか決めるならうってつけじゃないですか?」

 

「あ、あの…八幡君、私も…」

 

「んじゃさっさと準備しましょうよ、大会までもうあんまり日もないんだし、西住、手は抜くなよ」

 

「う、うん…」

 

声をかけてくる西住にそう念を押してさっさと席から立ち上がる。

 

後は今から始まる模擬戦で西住に精一杯ボコボコにやっつけてもらおうか、これであいつらも少しは目が覚めるだろうし。

 

俺の意見の的外れっぷりと無能さも輝くというものだ。

 

…新しい思い出作りとなりそうだ。


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