やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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ガルパン最終章!いよいよ公開!皆様はもう見ましたか?見ましたよね?自分はまだです!なぜなら近場の映画館じゃやってないから(血涙)!!

まぁそんなに日が開かないうちに見に行くとは思いますが自分を含めまだ見てない人も居るとは思うんでしばらくは感想欄等での最終章のネタバレになりそうなコメントは控えて貰えればありがたいです、単純な感想くらいなら…まぁ大丈夫かもしれませんけど。
マナーを守って楽しい戦車道!!


そして比企谷八幡は掴んでいた物を手離す。

戦車ってのは素晴らしい、この一言につきる。

 

強固な装甲、力強く走る無限軌道、そびえ立つ砲身、そこから発射される砲撃、あぁ、素晴らしきかな戦車也。

 

ただ、ただ一つ、そんな戦車の欠点をあげるとするならば…残念な事に、本当に残念な事に基本的に一人では動かせない事にあり、戦車戦はチームで行われる事にある。

 

いや、操縦なら一人でもできるだろうが、それでは戦車である必要がない、車でも充分だし。

 

まさにぼっちに厳しい乗り物…、だが別にこれは戦車に限った話でもない。

 

得てして世の中っていうのは基本的に一人に厳しく出来ている、学校でも社会に出ても、それは変わらない。

 

集団行動というものはどこまでいってもついてくるし、人間関係というものからは逃れられない。

 

そんな中、浮いている者、はみ出している者、馴染めない者は容赦なく攻撃を受ける事になる。

 

俺だって何もしなかった訳じゃない、一通りの行動は起こしていたつもりだし、希望だって持っていた。

 

まぁ友達だと思っていた奴は向こうはそうでもなかったし、女子に話かけられただけで好意に思われていると勘違いしたり、今にして思えばなんとも痛い希望な訳だが。

 

…開き直って諦めたのはいつからだっただろうか?

 

ただ、一度開き直れば一人とはなんて居心地が良いものか。

 

煩わしい人間関係も人付き合いもない、逆に上っ面の人間関係を繋ぎ止めようと必死になっているリア充連中を見て、心の中で嘲笑える。

 

だから、俺は一人で良い、一人が一番気楽だ。

 

今年は生徒会との約束もある、西住にも責任がある、小町の入学の事もある、だからやる事はやる。

 

だが、来年は別に戦車道をやる理由もない、理由がないならやらなくていい。

 

それでもう戦車道チームの連中とも関わりはなくなるだろう、人と人との間柄なんてそんなものだ。

 

だから、今壊すのだって簡単だ。この模擬戦一回で決めてやる。

 

『なっ!我々に盾になれと言うのか!?』

 

『あれ?これってフラッグ戦でしたっけ?』

 

『それじゃあアタックが出来ない!!』

 

予想通り、各チームから異論が出てくるがそれらを全て無視してやる。

 

「いいから言われた通りにやれ、命令だ」

 

とはいえ、開口一番にこんな指示を出されて『はい、わかりました』となる奴はいないだろう。

 

さて、次は何を言ってくるか、まぁ何を言われても反論の言葉は用意しているが。

 

『…仕方ない、ペルシア戦争におけるレオニダス一世になるとするか!!』

 

…え?

 

『よーし!今回はブロックだ!三枚で飛べば相手のアタックだって防げる!!』

 

…は?

 

『また何か変な作戦でも考えたんですね!比企谷先輩!!』

 

…あ?(威圧)。

 

「…いや、ちょっと待てお前ら、不満はないのか?弾除けになれって言ったんだぞ?」

 

『もちろんある、だが…何か作戦があるのだろう?』

 

「いや…それは」

 

『今回は西住隊長に勝ちましょう、比企谷先輩』

 

「…お前らそんなに突撃したいのかよ」

 

表向きこの模擬戦に勝った方の作戦を採用する流れになっている事を考えると、そうか、少し失敗したかもしれない。

 

『む、ヘルマン、それは少し違うぞ』

 

「…あん?」

 

『模擬戦じゃ私達はコーチの敵になる事が多いですが、今回は同じチームメイトです!!』

 

『比企谷先輩、いつも西住隊長に負けてて可哀想って沙希が…、だから私達も頑張ってみます!!』

 

…おい、一年共、なにその悲しい理由。

 

『そういう事だ、安心しろヘルマン、お前にはこの砂漠の狐、エルヴィン・ロンメルがついている!!』

 

「自称だろうが…」

 

「あっはっは!苦戦してるね、比企谷ちゃん」

 

通信を聞いていた会長がそんな俺達のやり取りを聞いて大笑いをしている。

 

「…楽しそうですね、会長」

 

「まぁね、比企谷ちゃんの珍しい顔も見られたし」

 

「そんなにイライラしてますか?」

 

確かに思うように事が進めなくてイライラしているかもしれない。

 

「いや、嬉しそうだよ」

 

「…何言ってんですか」

 

もういい、この人の事は無視しよう。

 

「…全車、突撃」

 

俺の指示で各チームがカメチームの38(t)を守る形で突撃を開始、狙いはもちろん、西住の乗るⅣ号だ。

 

こんなものは作戦とも呼べない、Ⅳ号の砲撃を各チームが盾になりながら進むだけ。

 

そんなやり方だから、試合展開だってあっという間だ、まっすぐに最短ルートで突撃してくる俺達に向けて西住のⅣ号は砲撃を撃つだけで良いのだから。

 

次々と俺達の38(t)の盾になって白旗を上げるが、各チームから不満なんて上がらない。

 

『ヘルマン、後は任せた』

 

『選手交代です!!』

 

『私達の代わりに決めて下さい!!』

 

それどころか散り際にそんな通信まで入ってくる。

 

本当に…なんなんだよ、あいつら。

 

気付けば俺達の38(t)は作戦通りといえば作戦通りだが、俺の作戦通りにはいかなく、無傷で西住達のチームにたどり着いていた。

 

「いやー、辿り着いちゃったね、どうする?比企谷ちゃん」

 

「…いや、どうするって」

 

どうするもなにも、このまま戦っても勝てないのは当たり前だ。言っちゃ悪いが河嶋さんに砲撃が当てられるとも思えないし。

 

「河嶋、そこ変わってね」

 

「はっ!」

 

考えていると会長の一言で河嶋さんが砲手としての席を会長に譲った、会長の腕前ならもうすでに見ている。

 

だが、その事を西住達はまだ知らない、これは身内だからこそ出来る一発限りの不意討ちのようなものだ。

 

…勝てる、のか?西住に?

 

「さて、比企谷ちゃん、どうする?」

 

どうする?どうするも何も決っている、そもそも勝っちゃダメだろ…、せめて作戦くらいは西住の方を通さないとダメだ。

 

「…小山さん、Ⅳ号にピッタリマークって出来ますか?」

 

「うん、やってみるね」

 

「河嶋さん、装填は?」

 

「言われんでもわかっている!!」

 

「…会長」

 

「あいよー、いつでも良いよ」

 

それくらいはわかっている、ただ、それでも。

 

「あ…八幡君」

 

キューポラから顔を出すとちょうど西住が見えた、なるほど、確かにこの方が戦況は見渡しやすい、西住がよく顔を出しているのもわかる。

 

しかしなんであいつ、あんな暗い顔してるんだ?

 

「西住、悪いが…勝つぞ」

 

いや、今はそんな事よりも…試してみたい。

 

「!! …うん!!」

 

いや、そこはうん、じゃないだろ…、しかもなんで急に嬉しそうなの?相変わらずよくわからん。

 

「「前進ッ!!」」

 

38(t)もⅣ号も俺と西住の合図で同時に動き出す。

 

砲身も新しくなり、火力なら向こうの方が上だろうが小回りの良さなら負けない。

 

「発射ッ!!」

 

走り回るⅣ号からの砲撃が38(t)の装甲をかすめる、さすがの五十鈴も行進間射撃ではそう簡単に当てられないはずだ。

 

逆にこちらは一発で決める、向こうは砲手が会長だとは知らないだろう隙を狙う、その為にはもっと近付く必要がある。

 

前を走るⅣ号を追いかける、西住も後ろを振り返りながらこちらの様子を注意深く伺っている。

 

だからこそ見えた、一瞬で幸運であったが西住が首もとに手を当てて指示を送る瞬間が。

 

「小山さん!右に旋回!!んで!全力前進!!」

 

急停止から放たれるⅣ号の砲撃をギリギリの所でかわし、38(t)はⅣ号へと急接近した。

 

正直、自分でも何をやっているのかと思う、最初に考えていた展開とはまるで違うのだから。

 

それでも、歴女チームもバレー部連中も一年共も、生徒会の人達だって、各チームにここまで御膳立てされたのだ。

 

だったら…答えたい、そう素直に思えた。

 

後の事は後で考えればいい、とにかく…今はこのチャンスを逃したくない。

 

距離は充分ーーー。

 

「撃ッー」

 

と、そこで目の前にルノーが現れた、風紀委員、カモチーム。

 

「てっ!!」

 

38(t)の砲撃は至近距離で間に入ったルノーに直撃し、白旗を上げる事は出来たがⅣ号には届かない。

 

いつから…と考えると、たぶん最初からだろう。西住は俺達から逃げ回りながら上手くこの場所に誘導していたのだろうから。

 

Ⅳ号の砲身がこちらに向かう。あぁ…やっぱり敵わねぇな。

 

まぁ、いいか、過程はどうあれ当初の目的はこれで果たせたのだし。

 

「……?」

 

Ⅳ号から砲撃が飛んで来ない、こっちはとっくに耐ショック済みだというのに。

 

「…何してんだよ西住、撃たないのか?」

 

「えっと…その、あのね」

 

再び西住の方を見ると本人はしどろもどろ、目があちらこちらでテンパっている。

 

「た、大変です西住殿ー!砲弾がなくなりましたー!!」

 

と、そこでわざとらしい大声を上げてキューポラから顔を出したのは秋山だった。

 

は?砲弾がなくなった?そんな訳あるか、普通試合前には充分な量を積んどくもんだろ。

 

「もー、ゆかりんの慌てん坊さんなんだから、そんなんじゃモテないんだからね!!」

 

続けて武部が、あきらかな棒読みで話ながら顔を出す、その棒読みでモテれるつもりなの?

 

「ですが、これでは戦えませんね」

 

「あぁ、弾が無いなら仕方ないな」

 

五十鈴と冷泉はいつもと変わらない様子だが。いや、だからそんな訳あるかよ、じゃあこの模擬戦はどうするんだよ…。

 

「八幡君、聞こえたかな?」

 

「つーか…聞こえるように話してたよね?」

 

「そ、そんな事ないけど、えと…つまり、その、私達はもう砲撃が出来ないから、勝つ手段はなくなっちゃったんだけど」

 

まぁ確かに、残る攻撃手段なんて体当たりくらいしかないだろうが。

 

「八幡君はこのまま私達を攻撃する、かな?」

 

「…それは」

 

今さらそんな事をした所で、なんの意味もないだろう。

 

「本当ならさっきのでこっちは負けてんだ、なら…そっちの勝ちだろ」

 

「でもカメさんチームはまだ白旗上げてないよ?」

 

「まぁ…そうだな」

 

「じゃあ…引き分け、になるね」

 

「引き分け…」

 

引き分けって…いいのか?それ。

 

「うん、引き分けだから…、また一緒に作戦、考えないとね」

 

あぁ、そうか…、そういう事か。

 

西住が勝てば慎重にいく作戦、俺達が勝てば突撃案、このどちらを採用するかを決める模擬戦で引き分けとなれば…そうなるのか。

 

…負けさせてもくれないのね、本当に…敵わねぇな。

 

「ちなみに…戦闘続行するならどうするつもりだ?こっちは砲弾まだまだあるんだが」

 

「砲弾が無くなるか時間いっぱいまで逃げる予定だったんだけど…する?」

 

「しません」

 

本当にこの子ならやりかねん…、西住流マジパねぇ、マジ敵わねぇ。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

西住は引き分け…というが事実上、勝敗は俺達の負けだろう、それくらいわかっている。

 

とはいえ、模擬戦は終わった。結局、俺の考えていた当初の計画はどれもこれも失敗に終わったのだ。

 

「八幡君、さっきの戦い方…」

 

戦車から降りると西住が声をかけて来た、心配そうな表情は見ていて心がちくりと痛む。

 

「あぁいう戦い方、もう…しないで欲しいな、どうして…あんな事したの?」

 

あの模擬戦で俺は味方を盾にし、犠牲にしながら突撃した。黒森峰のあの事件のこともあって西住も良い思いはしなかっただろう。

 

だからこそ、あの時の彼女はあぁも暗い顔をしていたのだろう、悪いとは思っている。

 

「…勝つ為に決まってんだろ」

 

だが、俺だって譲れない、今回は失敗したが、まだ準決勝まで少しだが時間はあるのだから。

 

「ううん、八幡君、最初から勝つ気なかったよね?」

 

「そりゃお互い様だろ」

 

搭載する砲弾の数をわざと少なめにしとくとか…あんだけ手を抜くなって言ったのに舐めプにも程がある。

 

「最後は違うよ、八幡君だってそうだよね?」

 

「………」

 

否定は出来ない、あの時の俺はただ勝ちたいと思ってしまったのだから。

 

「あん時素直に勝っときゃ、みんな西住の言う事聞いてたんだ、それで問題無いだろ」

 

「あるよ、だって作戦は私一人で考えてる訳じゃないから」

 

「それじゃ勝てないだろ!!」

 

思わず大声で怒鳴ってしまった、何事かとあんこうチームのメンバーも、他の戦車道チームの連中も集まってしまう。

 

「八幡君…どうしたの?」

 

「ッ…、勝たなきゃ、ダメだろ」

 

これ以上はダメだ、これ以上この話を続けたら、きっと俺は余計な事を言う。

 

「…ううん、戦車道は戦争じゃないから、勝ち負けより、もっと大事な事があると思う」

 

違う…違うんだ西住。

 

「私はこの学校に来て、みんなに会えて、初めて戦車道の楽しさを知れたから、この学校も、みんなも大好きだから…、だから…例え負けても、私はみんなと一緒に頑張りたい」

 

負けたら…その大事な事だって失ってしまうんだぞ。

 

「だからこそ、勝たなきゃダメなんだよ…」

 

あぁ、俺は本当に弱い、つくづく自分で自分が嫌になる。

 

それに比べてうちの生徒会の人達はなんて強い事だろう。この事実を知りながら、今まで隠し続けて来られたあの人達は本当に強いと思う。

 

会長も、小山さんも、河嶋さんも、今まで多少のボロこそ出ていたが、同じ立場になってそれは充分にわかった。

 

…俺には無理だ、こうしてこんな状況になってしまえば、そんな自分の弱さなんて簡単に露見してしまう。

 

先ほどの俺の大声のせいで戦争道チームの連中も集まっている、ここで言うべき事じゃないのはわかっている。

 

でも…止まらなかった。

 

「負けたら…その学校も、この戦車道チームも、無くなるんだぞ」

 

なぜならわかっていたからだ、それはもうずっと前からの事で、ただ俺はそれを認めたくないだけだったのだ。

 

「…え?学校が、無くなる」

 

「…比企谷ちゃんの言う通りだ、この全国大会…優勝しなければわが校は廃校になる」

 

きっと俺自身、それがなにより嫌なのを、ただ認めたくなかっただけなのだ。


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