やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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わかってるんだ、八幡の性格上、こういうのは絶対に拒否するっていうのは、でもわかったうえで書いてるのは書きたいからである。


予想通り、比企谷 小町は企んでいる。

「はじめまして皆さん、兄がいつもお世話になってます!妹の小町っていいます!!」

 

「小町さんですか、はじめまして五十鈴華と申します」

 

「へ〜、比企谷にこんな可愛い妹居たんだ、私、武部 沙織、よろしくね」

 

そしてわいわいと始まるはお互いの自己紹介タイム、ちょっと君達、仲良くなるの早すぎない?

 

まぁ小町は俺と違って社交性抜群だしな、 だけど小町の場合は一人の時もそれはそれできちんと満喫出来る次世代ハイブリッドぼっちなのだ。

 

「いやぁまさかお兄ちゃんにこんな可愛らしい知り合いの人達が居たなんて…、戦車道って素晴らしいですね」

 

「えっ?可愛らしい…」

 

武部が嬉しそうに反応する、やっぱりちょろい。

 

「ちょっと性格がアレなんですが根は悪い人じゃないんで皆さん、これからも兄をよろしくです」

 

「お前は俺のかーちゃんかよ…」

 

「お兄ちゃんは黙ってて」

 

酷っ!あと声が冷たい!!

 

「小町殿は今中学生なんですか?」

 

「はい、来年には受験なので大洗を受けようかと思ってます」

 

「私達の後輩ですか、楽しみです」

 

「小町も楽しみです、あっ、皆さん、あちらにゲームみたいなのもあるんで一緒にやりません?」

 

「うん!やるやる!!」

 

小町に連れられて武部達は店にある戦車のシューティングゲームの所に向かった。

 

シューティングゲームとは言ってもようはゲーセンにあるガンシューティング系のゲームの戦車版みたいなもんだけど。

 

「これは簡単な戦車のシミュレーションゲームです、出てきた敵をそちらの照準器で狙って撃ってみて下さい」

 

「へ〜、何か面白そう」

 

「アクティブですねぇ…」

 

「皆さん、もう戦車には乗ったんですよね、どんな感じなんですか?小町気になる!!」

 

「いえ、まだなんです、恐らくは明日からかと…」

 

「はい、明日が楽しみですね!!」

 

「でも戦車道って戦車で撃ち合うんだよね?顔は怪我したくないなぁ…」

 

「大丈夫です、試合では実弾も使いますが、安全には充分に配慮されてますし」

 

確か戦車道の戦車には競技者保護の為の連盟公認の装甲材で覆う事が義務付けられているらしく、車内は特殊なカーボンコーティングがされており、おおむね安全は確保されている、だったか。

 

まぁあくまでもおおむねなんだけどね。

 

「あの子が昨日比企谷君の言ってた妹さんなんだ」

 

そんな四人の様子を見ていると西住が声をかけてくる。

 

「ん?あぁ、妹の小町だ、まぁ基本アホだが何処に出しても恥ずかしくない立派な妹だ、絶対に出さんけどな」

 

「あはは…、兄妹仲が良いんだね」

 

「そうか?茨城の兄妹なんてこんなもんだろ」

 

どこぞの千葉の兄妹には負けるけど、いや、アレはない、さすがに。

 

「ちょっと羨ましいなぁ…、私、お姉ちゃんとーーー」

 

『次は戦車道のニュースです、高校生大会で去年のMVPに選ばれ、国際強化選手にも選ばれた、西住 まほ選手にインタビューをしてみました』

 

「…え?」

 

テレビから流れてくるアナウンサーの声に西住は言葉を遮ってそちらを向く。

 

画面にはアナウンサーと、黒森峰の現隊長であろう、西住 まほが映っていた。

 

『戦車道の勝利の秘訣とは何でしょうか?』

 

『諦めない事、そして、どんな状況でも…決して、逃げ出さない事ですね』

 

「…お姉ちゃん」

 

…あれが西住の姉か、ネットの写真でチラッと見たくらいだったが、こうして見るとやっぱちょっと似てんな。

 

どんな状況でも逃げ出さない事…ね、はっ、戦略的撤退って言葉とか知らんのかね、俺とかいつも戦略的撤退してるまである。

 

俺は近くに置いてあったテレビのリモコンを手に取るとチャンネルを変える、戦車道のニュースとか興味ないし、よく考えたら夕方アニメの再放送の時間だしな。

 

「…比企谷君?」

 

「悪いな西住、見たい夕方アニメの再放送あるんで勝手にチャンネル変えたわ」

 

「…ううん、ありがとう」

 

何が?ひょっとしたら西住もこのアニメ見てんの?いやぁ、昨日の展開は燃えたよな、やっぱ90年代アニメ最高だわ。

 

「みほさーん、みほさんもこっちで小町達と遊びましょう、そんなアニメばっか見てるお兄ちゃんは置いといて」

 

「…うん!!」

 

小町に呼ばれた西住は嬉しそうに武部や五十鈴、秋山達の所に向かう。

 

「あれ、小町さん、それ…」

 

西住がふと目にしたのは小町の購入したボコられグマのボコの新商品だ。

 

「これですか?ボコられグマのボコです、最近ハマってるんですよ」

 

「私もそれ好きなんだぁ!可愛いよね!!」

 

「どんなにボコボコにされても立ち上がる、特にいわれもないのにボコボコにされる、でも喧嘩っ早くて自分から喧嘩を売ってはボコられる、そんな所が最高です」

 

「そんな設定なの…?この熊」

 

「それがボコだから!!」

 

…いや、小町が好きなのは知ってたけどあんま興味なかったからスルーしてたんだけどあの熊のキャラってそんななの?ボコられてばっかじゃねーか。

 

でも西住も好きなら小町の言うように本当に人気なのかもしれない、例え小町が今持ってるやつが新商品のはずなのにワゴンで半額で売られていたのに、だ。

 

「ボコのどこがいいのか正直わからないけど…、みほが楽しそうならいっか」

 

うん、武部の反応を見るとそんなでもなさそう、まぁ西住のテンションが今まで見たことないくらい高いし、本人が好きならば口は挟むまい。

 

「居るよな、こういう好きなジャンルをめっちゃ語る奴」

 

「比企谷がそれを言うの!?」

 

え?何が?八幡全然わかんないんだけど。

 

「比企谷殿もこのお店よく来るんですか?私もなんですよ」

 

「まぁ、たまにな…、や、俺は軽く嗜む程度だから」

 

今もなお、熱心にボコられグマトークをかわす小町と西住と一緒にしないで欲しい。

 

「そうなんですか?あっ!!これはスティングレイ軽戦車のプラモ!!こんなレア物があるなんて…、買いです!!」

 

「ちょっと待て秋山!それは駄目だ、最後の一つだぞ!!」

 

「…同じじゃん」

 

呆れた溜め息をついた武部はとりあえず完全に無視して、俺は秋山とのスティングレイ軽戦車争奪戦へと赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「それで、皆さんはこれからどうするんですか?」

 

「みほの家でみんなでご飯食べる予定なの!!」

 

ひとしきり戦車倶楽部を満喫した俺達は時間もそろそろ…、といった時、小町がふと西住達にそう聞いた。

 

黒森峰から転校してきた西住だ、たぶん一人暮らしなんだろう、そういえばさすがにそろそろ腹も減ってきたな、早くサイゼのパスタが食いたい。

 

「小町、俺らもそろそろ…」

 

「あぁ、それは奇遇ですね、実はお兄ちゃんも今日は晩ご飯ないんですよ」

 

…え?何それ初耳、今晩の俺ご飯抜きなの?つーか外食しに出てきたんじゃないの俺達?

 

「小町は友達の家で食べる予定なんですけどお兄ちゃんがなー、晩ご飯ないんで心配だなー、チラッ、チラチラッ」

 

うぜぇ…、え?てか本当にないの?すぐそこにサイゼあんだけど、安値で腹いっぱい食える学生の強い味方。

 

「あぁ!小町はそろそろ行かないとです、それじゃあ皆さん、また連絡しますね〜、じゃあねお兄ちゃん」

 

そう言って軽やかに小町は一人で戦車倶楽部から出ていった、なんだかよくわからんまま一人取り残されてしまう。

 

「えと…、比企谷さん、晩ご飯ないんですか?」

 

「え?いや、あるけど、サイゼで食うからわざわざ出てきたんだし」

 

「サイゼってそこのファミレス?一人で行くの?」

 

「え?余裕だろ」

 

何で皆そんな驚いてんの?一人ファミレスとか普通でしょ?ドリンクバー取りに行く時に毎回席を開けるんでちょっと不安になるくらいで。

 

ふ、普通…だよね?

 

「えと…、比企谷君も、私の部屋、来る?」

 

「え?ちょっとみほ!?」

 

「だってご飯ないみたいだし…」

 

「は?いやいや、俺はほら、サイゼ行くし」

 

「そうだよみほ、それに男の人を自分の部屋に呼ぶとか、アレじゃん、その…、もしかしてみほって比企谷の事!?」

 

「うん、比企谷君も大事な友達だから…、友達が困ってるなら、ね?」

 

え?友達だったの俺達…、友達?友達って…なんだっけ?俺の辞書にはちょっと載ってないなー。

 

「友達…、あー、うん、そっかー、友達かぁ」

 

「私は西住さんがいいのなら構いませんが…?」

 

「私もです、比企谷殿とはなんだか話が合いそうですし」

 

「何だか腑に落ちない気もするけど…、まっ、いいか、でも比企谷!変な事考えたら通報するからね」

 

「お前はエスパーかよ…、なんで俺の考えてる事がわかんの?つーか行かないから、晩飯くらい適当になんとかなるし」

 

一人サイゼが不評ならラーメンでもいいし、最悪マッ缶でもあれば明日の朝までくらい余裕だ。

 

高カロリーのマッ缶はまさかのこんな自体にも対応できる、アレ?ひょっとしたら神の飲み物なんじゃないの?

 

「えっと…、比企谷君、この間のお礼もあるし、ね?」

 

「お礼?いや、別に礼される事なんて何もやってない訳だが」

 

「ううん、それじゃあ私の気がすまないかな…」

 

よくわからんが西住の方もやけに強情だ。

 

「なら…晩飯をご馳走になる、それでお互いに貸し借り0、それでいーか?」

 

「うん!!」

 

「…やっぱり比企谷って面倒臭い性格してるね」

 

ほっとけ…。

 

何だか小町にはめられた気がするが、今日の晩ご飯は西住邸にて馳走になる事に決まってしまった。

 

…マジか?


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