やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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なぜこの準決勝にわざわざアリクイさんチームを登場させ、さらには劇場版仕様なのか?最大の理由がここにあります。
最終章で更に筋肉に磨きがかかった彼女達の今後の活躍にも期待したいです、たぶん装填力ならガルパンチームで一位なんじゃないかな…。


そして、戦車道全国大会準決勝に決着がつく。

「………」

 

IS-2に乗り込んだノンナは大洗フラッグ車、アヒルさんチームの八九式中戦車を狙う。

 

初弾はわずかに横へと着弾し、八九式の戦車内を揺らした。

 

「なんなのよアレ!反則よ!校則違反よ!!」

 

そど子が声を荒げるがもちろん反則でも、ましてや校則違反でもない。

 

弾着による修正すらなく初弾でこの距離から狙ってくる、ノンナの砲手としての実力の高さがわかるというものだ。

 

「わわっ、どうしよう!!」

 

「私達はいいから、アヒルさん守らないと…」

 

西住みほからの指示はフラッグ車であるアヒルさんチームの防衛である、敵の強力な砲手からどうにかしてフラッグ車を逃さねばならない。

 

敵からの砲撃の嵐から逃げながら一年、ウサギさんチームは大慌てである。

 

「ねぇねぇ、この状況ってなんか一回戦の時に似てない?」

 

ふと、大野が思い出したように呟いた。

 

「一回戦の時は一応、私達がフラッグ車追いかけてたんだけど…」

 

「そうじゃなくてね、ほら…あの鼻の長いやつ」

 

「ファイアフライ!!」 

 

そう、状況こそ違うが相手側の有力な砲手に狙われている今の状況は一回戦、サンダース戦のナオミとの戦いに似ている。

 

「…もしかしたらアレができるかも」

 

ウサギさんチームのメンバーは車内でコクりと頷き合うと、カモさんチームとアヒルさんチームに通信をいれる。

 

「カモさん、アヒルさんをお願いします」

 

『え?ちょっと!何するつもり!?』

 

ウサギさんチームM3リーは旋回して後方から追いかけてくるプラウダの戦車に向かった。

 

「よし、みんな行くよ!これが私達の…」

 

「「「『消しカス作戦』!!」」」」

 

「違うでしょ!『ちょっかい作戦』なんだから!!」

 

狙いは一回戦のサンダース戦にてファイアフライに乗るナオミ相手にアヒルさんチームが仕掛けた相手の砲撃を徹底して邪魔する作戦である。

 

「今こそやるときだよ、桂利奈ちゃん」

 

「よっしゃあー!!」

 

彼女達は気合い十分、ノンナの乗るスターリンに体当たりをぶちかました。

 

「やった!あとはこのまま足止め出来れば…」

 

味方の逃げる時間が稼げる、M3リーはそのままスターリンと押し合いながらその進軍を止め続ける。

 

「鬱陶しいわね、払いのけなさい!!」

 

「ーーー(訳:はい、カチューシャ様)」

 

だがカチューシャもすぐに周りの車両に指示を送る、真っ先に動いたクラーラが砲撃を放ってウサギさんチームに直撃させた。

 

僅かではあるが相手の足止めには成功したがウサギさんチームM3リーは白旗をあげる。

 

「やるわねクラーラ、このカチューシャが誉めてあげるんだから」

 

「ーーー(訳:感謝します、クラーラ)」

 

「ーーー(訳:いえ、突撃してくるのは予想外でしたが)」

 

「だからちゃんと日本語で話しなさいって言ってるでしょ!!」

 

相変わらずロシア語でやり取りを続けるノンナとクラーラの二人にカチューシャが怒鳴る。

 

「ーーー(訳:どうやらまだカチューシャは気付いてないみたいですね)」

 

それは自分の日本語による指示を理解して真っ先にクラーラが動いた事についてである。

 

「ーーー(訳:そんなカチューシャ様も可愛いです、さぁ…ノンナさん)」

 

ほっこりとした表情を浮かべながらもクラーラはノンナにまたロシア語で語りかける。

 

「ーーー(訳:わかってます、カチューシャの為にも必ず)」

 

ノンナは再びスコープから逃げる大洗をとらえる、先行するフラッグ車とその後ろについて盾になっているカモさんチームのルノーだ。

 

『カチューシャ隊長!こちらフラッグ車発見されちゃいました、どーしましょー!!』

 

と、そこでカチューシャにプラウダのフラッグ車から連絡が入る。

 

『そちらに合流してもいいですか?てか合流させて下さい!!』

 

M3リーの件もあってもたついていた間に、プラウダ側もフラッグ車を発見されてしまったのだ。見つけたのは偵察に出た秋山である。

 

「ニェット!単独で広い雪原に出たら良い的になるだけよ!!」

 

「ほんの少しの時間さえ頂けたら…必ず、仕留めてみせます」

 

「という訳だから、外に出ずにちゃかちゃか逃げ回って時間稼ぎして!!」

 

ノンナの言葉を聞いたカチューシャはフラッグ車に指示を送る、彼女はノンナの実力を信頼している。

 

「頼れる同士の前に引きずり出したっていいんだから」

 

そう、プラウダのフラッグ車にはKV-2を護衛につけている、そう簡単にはやられないはずだ。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「フラッグ車発見!追うぞ!!」

 

あんこうチームとカバさんチームが偵察に出た秋山から得た情報を元にフラッグ車を発見、現在こちらも追走中である。

 

先ほどから砲撃を続けてはいるが相手フラッグ車の操縦はかなりのもので集落を駆け回る。

 

「えぇえ!回る砲塔が欲しい!!」

 

突撃砲の宿命か、固定砲塔のⅢ突ではなおさら捉える事が難しくエルヴィンとカエサルが不満を漏らしている。

 

と、そこで相手フラッグ車が曲がりそれを追いかけてⅢ突も曲がった瞬間だった。

 

「ギガント!!」

 

そこに居たのはKV-2、ほぼ出会い頭から放たれた砲撃は直撃こそなかったが運悪くⅢ突のすぐ近くに着弾。

 

建物も巻き込んで吹き飛ばされたⅢ突から白旗があがった。

 

「ッ!カバさんチームの皆さん、怪我は!?」

 

『我々の事は良い!それよりもギガントを!!』

 

KV-2最大の弱点はその砲弾重量の為の装填の遅さである、一度発射されれば次にまで時間はある。

 

「もっとも装甲の弱い所を狙って…」

 

五十鈴は無防備となったKV-2のウィークポイントを狙い撃ちし、撃破に成功、これで残るはフラッグ車だけ。

 

『カモチーム撃破されました!アヒルさんチームの皆さん、健闘を祈る!!』

 

「あとはアヒルさんだけだよ!!」

 

「…うん」

 

だが、向こうもウサギさんチームとカモさんチームがやられ、これでフラッグ車の防衛は居なくなってしまった。

 

「アリクイさんチームの皆さん、準備はいいですか?」

 

『大丈夫だにゃー』

 

「ではこれより、もう一度もぐもぐ作戦をお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「あと一つ…」

 

フラッグ車の盾となっていたカモチームのルノーを撃破したノンナはそのままアヒルさんチームの八九式を狙う。

 

ノンナだけではない、カチューシャも、クラーラも、プラウダの車両が次々と八九式に砲撃を放っていく。

 

「もうダメかもぉ…」

 

「泣くな!涙はバレー部が復活したその日の為にとっておけ!!」

 

そのあまりの状況に弱音をはいてしまう佐々木をキャプテンの磯辺は鼓舞する。

 

「大丈夫!こんな砲撃、強豪校の殺人スパイクに比べたら全然よね」

 

「そうね…、でも今はここが私達にとっての東京体育館、あるいは代々木第一体育館!!」

 

「「「「そーれそれそれそれ!!」」」」

 

再び気合いを入れ直したバレー部の彼女達はプラウダの砲撃の嵐から孤軍奮闘逃げ回る。

 

「ちまちま逃げ回って…じれったいわね!!」

 

『カチューシャ隊長、こちらフラッグ車、KV-2やられました、今Ⅳ号に追われてます!!』

 

「Ⅳ号だけ…他のは?」

 

『Ⅲ突ならKV-2が撃破しましたけど』

 

居なくなった車両は三両、それでもまだ数が合わない。

 

三式中戦車がまだ姿を見せていない…となると。

 

「甘く見られたものね、このカチューシャに同じ手は何度も通用しないって思い知らせてあげるわ」

 

カチューシャはすぐに大洗の狙い打ちに当たりをつけた。

 

「向こうはまた雪の中に隠れてるかもしれないわ!不自然な雪山があったら避けて通りなさい!!」

 

『了解しました!!』

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「バレー部…」

 

プラウダ側からの砲撃の嵐をジグザグに動きながら必死にかわしていく八九式、相変わらずとんでもない根性ではあるがこのままだと時間の問題なのはあきらかだ。

 

序盤の順調さが嘘のように次々とやられていく大洗の戦車、これがガチになったプラウダという訳かよ。

 

つーかノンナさんちょっと戦闘マシーンすぎませんかね?グレートなマジンガーに乗っていても違和感ないレベルですよあの人。

 

大洗も秋山のおかげでプラウダのフラッグ車を見つける事は出来たが瞬間最大火力なら最高のⅢ突もやられた。

 

大洗、プラウダ共にお互い、別々の場所でどちらが先にフラッグ車を撃破できるかの勝負となった、未だ大洗が不利なのは間違いないが。

 

「このままでは大洗は…比企谷殿、何か策はあるんですか?突撃ですか?」

 

西はどうやら大洗の方を応援してくれているらしい、ありがたいけど残念ながら突撃はしません。

 

「こっちの勝機なんて不意討ちくらいだ、もう一度【靴隠し】作戦でいくはず」

 

「…あなたのさっき言った大洗の勝利の秘訣の中にあった作戦の事ね」

 

「んん…っ、こんな格言を知っていて?」

 

咳払いしてダージリンさんの真似をしてみる、そういやさっき邪魔されたし、あれ?なんだかんだ俺も格言言いたいのかな?このままじゃ格言おじさんになっちゃう!!

 

「天才は初太刀で殺す、これが鉄則…!」

 

「えと…、ペコ、これは?」

 

「すいませんダージリン様…、これもちょっとわかりません」

 

ふっ…、どうやら少年誌はある程度カバーしてきたみたいだけどまだまだ甘い、今度やたらと鼻とアゴの尖った漫画を見る事をオススメしよう。

 

「…またローズヒップに聞いてみましょうか?」

 

というかお嬢様なこの人達が漫画格言の知識をどこで仕入れたのかと思ったら情報ソースはローズヒップかよ…いや、むしろ納得なんだが。

 

「天才は初太刀で…、それならあの雪の中に戦車を隠す作戦はとっておいた方が良かったかもしれないわね、カチューシャに同じ戦法は二度も通じないわよ」

 

「でしょうね」

 

大洗を罠にかけようとしたり、大胆に見えてもきちんと慎重さも持っているカチューシャさんだ、今度は雪山にも警戒してくるだろう。ちなみに、身長は持ってない模様。

 

「えー、わかってるのにもう一度例の靴隠し作戦なの?」

 

「あぁ、だって靴って一足で2つあるだろ?」

 

だからこそこの作戦名は靴隠し作戦がぴったりだ、もぐらが二匹でもぐもぐ?そんな可愛らしい名前であってたまるか。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「近付いてきます!!」

 

集落に一つある高い建物の上から秋山は双眼鏡で敵のフラッグ車の動きを観測する。

 

「あと一つ右折してくれれば」

 

「わかりました、ありがとうございます。華さん、機銃で上手く右の道へ誘導できますか?」

 

携帯で西住みほに現在のフラッグ車の位置を知らせそれを受け取ったみほは更に指示を送る。

 

「やってみます」

 

Ⅳ号の機銃が敵フラッグ車を右に誘導させる、その先にはもぐもぐ作戦であり靴隠し作戦であるアリクイチームの三式中戦車が待機中のはずだ。

 

「入りました!H43地点まで50メートル!!」

 

「撃ち方用意!!」

 

西住みほが指示を送る。プラウダのフラッグ車の前には不自然に積まれた雪山、普段なら気にもとめないだろう。

 

だが、先ほどのカチューシャからの忠告からフラッグ車の車長はそれをしっかりと見つける事ができた。

 

「これだな!かわすべ!!」

 

フラッグ車は雪山を避ける、その為に急ではあったが目についた細道へと入っていった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「もらった…」

 

スターリンに乗るノンナが照準を八九式に合わせ、砲撃を放つ。

 

着弾、そして煙が上がり八九式の姿はまだ確認できない。

 

だが決着はついた、フラッグ車に白旗があがる。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「今だっちゃ!!」

 

プラウダのフラッグ車が雪山を避ける為に入った道、そこに待ち構えていたのはアリクイさんチームの三式中戦車。

 

ほぼ零距離からの不意討ちによる出会い頭の一発はフラッグ車の装甲を貫通させ、白旗をあげさせた。

 

『試合終了、大洗学園の勝利!!』

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…ふぅ」

 

深く、ため息が出てきた。気付けば寒さも忘れてモニターに注目している。

 

モニターには履帯も剥がされボロボロになりながらも、それでもなおガタガタと動く八九式が映し出されている。すんでの所で直撃をかわし、耐えてくれたのだ。

 

「なるほど…二度目は雪山が囮、という訳ね」

 

「えぇ、だからこそ最初の作戦が生かされたはずです」

 

雪山に戦車を隠しての不意討ち、そんな事をされれば相手はきっと警戒する。

 

それなら好きなだけ警戒すれば良い、おかげで誘導がやりやすくなった。

 

「一つ疑問なんだけど…」

 

「はい?」

 

おやダージリンさん、この人が疑問を浮かべるとは珍しい、いつもはなんだかんだと涼しい表情をしているのに。

 

「最初の作戦の時もそうだったんだけど…あの短期間に雪山なんてどうやって作ったのかしら?」

 

あぁそれですか、うん、そりゃそうだよね。戦車が隠れてる事が出来そうな雪山を短期間で作るなんて普通ならまず無理だ。

 

だが今の大洗になら…、具体的に言えば大洗の一チームになら可能なのである。いや、本当に信じられないけどやれちゃったものは仕方ない。

 

「筋肉…ですかね」

 

「ねぇミカ、それって…」

 

「………」

 

継続の二人はすぐにわかったみたいだ、そりゃそうか、一度間近であれを見てますもんね。

 

どうやって作ったと聞かれれば…アリクイさんチームが一晩もかけずにやってくれましたと言うしかない、筋肉マジぱねぇ。

 

「あの…マックスさん、私達真面目に聞いているんですが?」

 

真面目に答えてるんだよなぁ…、しかしバレー部といい自動車部といい、うちの生徒も大概規格外な連中だな。

 

これ廃校にするのちょっともったいなくないですか?文科省の皆さんもう一度考え直してみてはどうでしょう?


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