やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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いきなりですがテンション高いです!
なぜなら!今から!!大洗に旅行に行くのだ!!

…どこから回ろう?全然わかんねぇや(笑)


邪道と言われても、彼はそれを肯定する。

「比企谷殿!大洗学園の決勝進出おめでとうございます!!」

 

西がキリッとした表情で敬礼をしてくる。

 

「いや、まぁ、それ俺に言われてもな…」

 

なんともむず痒いというのが本音である。その言葉を聞くべきなのは、あの場で戦った彼女達なのだから。

 

「風が無いと風車は回らない、そういうものだよ」

 

「…はぁ、そういうもんですか?」

 

つまりどういうもんなのだろう?それは俺が風みたいな空気くらいの存在とでも言いたいのかな?

 

何はともあれ、これで決勝進出か…毎度ギリギリながらよくここまでこれたものだ。

 

「大洗の戦い方、いろいろと勉強させて頂きました!!」

 

「…ちなみにどの辺が勉強になったんだ?」

 

隊長に任命された西は大洗の強さの秘訣を知るべく、単身この試合を見に来たらしい。大洗の強さの秘訣はわからんが何か掴んだ顔をしていた。

 

「そうですね…どれも勉強になりますが、やはり包囲網を突破する際の突撃、特に38(t)の単身突撃は素晴らしかったです!!」

 

「あぁ、そう…」

 

いや、確かに素晴らしい事は素晴らしいし、それが結果的に大洗の勝利に繋がったから否定は出来ないんだけどね。他にもうちょい見る所なかったかな?

 

まぁ西がそれで良いと言うなら構わないんだが。知波単学園に妙な影響与えちゃったかもしれん。

 

勉強といえば…。

 

「ミカさん達も、…まぁ、いろいろと助かりました」

 

「これは君達が掴んだ勝利じゃないかな」

 

継続高校の得意とする神出鬼没のモッティ戦術、ゲリラ戦のような戦い方はこの試合にピタリとハマってくれた。

 

試合前にいろいろと教わった事もあるし、うちの三式中戦車を無断で持ち出したにしてもおつりがくる…、いや、よくよく考えたらねーよ、さすがに。

 

「ところであの三式中戦車なんですが、元々うちにあったやつですよね?」

 

「どうだろうね?私達はただ掴みとっただけだから」

 

何一つ上手い事は言っていない。

 

まさかこの人達、他の高校の戦車も鹵獲…つまりかっぱらってたりしてないだろうか。なにそれすごい、今度俺も混ぜて貰おう。

 

そもそも前に継続三人が大洗に乗ってきたBT-42だって元を辿ればソ連のBT-7を鹵獲して改造したものな訳だし。

 

「一応聞いときますけど、継続高校の戦車って他にも…」

 

「さて、そろそろ帰ろうか?アキ」

 

「なんでそこで急にさっさと帰ろうとしてるんですか…」

 

「風は一つの所にはとどまらないものだからね」

 

なんて涼しい顔ですっとぼけたことを言えるのだろう…、いっそ清々しいが怪しい事この上ないんだが?

 

まぁうちの戦車はこれ以上奪いようがないだろう、数も数なんですぐにわかる。

 

なのでもし鹵獲するなら黒森峰の戦車とかどうですかね?現副隊長さんの乗ってるティガーⅡとかオススメですよ。

 

しかしそんな継続高校がどうしてわざわざ三式中戦車を持ってきてくれたんだろうか、本当に単なる気まぐれだったのか?

 

「…あの、ダージリンさん」

 

試合も終わり、聖グロリアーナのこの人達も撤収するんだろうが後片付けがいろいろと残っているだろう。

 

つーか椅子とか屏風とかよく毎度毎度持って来るよな…、なんかせっせと観戦の準備してる所を想像しちゃってちょっと微笑ましいんだけど。

 

「わかってますわ、彼女達の所に行くのでしょう?」

 

「…まぁ、そんな所です」

 

チクリと少しだけ罪悪感のようなものを感じてしまうが、丸っきり嘘だという訳でもないし。

 

試合は終わった、しかしまだ仕事は終わっていない。

 

…マジで仕事って終わりが見えない、てか終わらせても終わらせても次々やってくるのが仕事なのだ、無限ループって怖くね?

 

あぁ…働きたくねぇな。

 

「勝者の進む道を遮るのは無粋というもの、私達はもちろん構いませんわ」

 

「…すいません」

 

そんな大袈裟な事じゃないと思うけどありがたい、なんせこっちはまたあの人達に会いに行かねばならんのだ。

 

ようやく苦労してラスボス戦が終わったと思ったら第二形態があったとか。昨今のロールプレイングゲームではさして珍しいものではないけど、もうちょいゲームバランスなんとかして欲しいです。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「………」

 

さて、ダージリンさん達と別れ俺一人。俺の向かう先は大洗メンバーの居る所ではなく、観客席の中を歩いている。

 

最後に一つ、確かめなければならない事がある。

 

「…どうも、西住の奴、勝ちましたよ」

 

ようやく西住流の三人を見つけ後ろから声をかけると、姉住さんと菊代さんがこちらを振り返った。

 

「勝ったのは相手が油断していたからよ」

 

背中を見せたまま振り返らず、しほさんはピシャリと俺の言葉に返す。

 

「でしょうね」

 

そこを否定する事はない、事実としてプラウダが大洗を潰せる機会はあったのだから。

 

「でも、勝ちは勝ちです」

 

だが世の中結果が全てだ。どんな展開であれ最後に勝った者が正義である、西住流が勝利史上主義ならばこれに文句は言えないだろう。

 

「…あんなものは邪道」

 

「そうですね」

 

強力な戦車、練度の高い搭乗員による完璧な戦術、西住流の戦い方はまさに王道だ。そして今回の西住の戦い方はそんな王道とはかけ離れたものなんだろう。

 

「でも…邪道で何が悪いんです?」

 

「…どういう意味かしら?」

 

しほさんがこちらを振り返った、その目には凄みというか…思わずごめんなさいと謝ってしまいそうになる、マジ怖い。

 

怖いが、ここは譲る訳にはいかない。

 

「戦車も力量も遥かに向こうが上、そんな相手に王道の戦い方なんてやってもまず勝てないでしょ」

 

これは別に、戦車道だけの事を言っている訳じゃない、世の中とは得てしてそういうものになっている。

 

王道なんて持っている者の台詞だ、力のある者だけが許される戦い方だ。

 

力のある者とない者が同じように戦った所で、ある者が勝つに決まっている。

 

なら…力の無い者が勝つにはどうしろというのだ。そんなものは決まっている。

 

邪道でもなんでも、少しでも勝ちの目が見えるなら、その手法を取るのは間違っていないはずだ。

 

「相手の油断につけこむ、不意討ちをかます、作戦を練る、これらを邪道の一言で片付けるなら…」

 

王道なんてくそ食らえだ、卑屈でも陰湿でも最低でも、やれる事をやらないと言うのなら…。

 

「弱い方は…どうやって勝てって言うんですか?」

 

本当に、もし他にやり方があったのなら教えて欲しい。

 

「…邪道は決して王道には勝てないもの」

 

しほさんが立ち上がり、モニターを見つめる。そこには他のメンバーと嬉しそうに笑い合う西住が映し出されていた。

 

「まほ、決勝戦では王者の戦い方を見せつけなさい」

 

「…はい、西住流の名にかけて」

 

しほさんからの言葉を受け取った姉住さん、…いや、まほさんは表情を変える。

 

そこにはもう、西住流の後継者の一人としての彼女しか居なかった。

 

「必ず、叩き潰します」

 

決勝戦、最後の相手は戦車道全国大会9連覇の常勝黒森峰に西住流後継者の西住まほ。

 

トーナメント表を見た時から薄々わかっていた事だが、やはり最後はこうなるのか。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「すごいです西住殿!!」

 

「やったぁ!!」

 

「みんな…ありがとう」

 

試合が終わり、集まって喜びを分かち合っている大洗メンバーに声をかける。

 

「まぁ…その、お疲れさん」

 

「うん、八幡君もありがとう」

 

「…いや、お礼を言われる事はなんもねぇけど」

 

なんかついさっきまであの母ちゃんと姉ちゃんと一緒に居たから、つい西住の顔をボーッと見てしまった。

 

西住も将来あんな感じになるんだろうか…?普段は小動物かと思うくらいなんだけど実は獰猛な肉食獣だったり?

 

「え?えと…なに、かな?」

 

顔を赤らめて慌てている西住を見てるとさすがにないか…ないよね?時々ちょっと怖いんだよねこの子も。

 

しほさんも姉住さんと菊代さんを連れてあのまま帰ってくれたところを見るに、西住の勘当の件はとりあえず保留となってくれたようだ。

 

まぁこの事をわざわざ西住に知らせる必要は無い、なくなったのならそれで良い。西住も実は母親と姉の前であんこう音頭踊ってたなんて知りたくもないだろうし。

 

「せっかく包囲の一部を緩くして、そこに引き付けてぶっ叩くつもりだったのに」

 

ふとプラウダ側からカチューシャさんとノンナさん、それとクラーラがやって来た。例によってカチューシャさんはノンナさんに肩車されている。

 

「まさか包囲網の正面を突破できるとは思わなかったわ」

 

あの状況で正面突破だもんね。大胆不敵というか…やっぱり西住流じゃないか!この子!!

 

「私もです」

 

「…え?」

 

「あそこで一気に攻撃されてたら…負けてたかも」

 

「それはどうかしら、もしかしたら…と、とにかく、あなた達、なかなかのもんよ」

 

もしかしたら…なんだろうか?ちょっと気になったがカチューシャさんはそっぽを向いたので教えてはくれないだろう、ツンデレなの?

 

「言っとくけど!悔しくなんかないから!!」

 

べ、別に悔しくなんてないんだからね!やっぱりツンデレじゃないか。

 

「…ノンナ」

 

「はい」

 

言われてノンナさんがカチューシャさんを地面に降ろす、降ろされたカチューシャさんは西住に手を差し出した。

 

「…あ」

 

西住もそれに応じて二人で握手をかわす。

 

「決勝戦、見に行くわ、カチューシャをがっかりさせないでよ」

 

「…はい!!」

 

なんだろう…?早くも決勝戦の観戦組にフラグというか、予約みたいなものができた気がする…。

 

だがダージリンさんには申し訳ないが決勝戦はすでに一緒に見る約束をした相手がいるのだ、それも可愛い女の子と。

 

いやー、マジリア充ですまない、今から小町と一緒に見るのが楽しみだ。

 

は?何か文句でも?小町と一緒に見るとか最高のリア充だろ。

 

「…それと最後、なんで雪の中に戦車隠さなかったの?」

 

「えと…それは八幡君の提案で」

 

ん?来るべき小町と一緒の戦車観戦を心の中でイメージしていたら、なんか西住とカチューシャさんがこっち見てない?

 

ちなみにイメージの内容は誇らしげに戦車について解説する俺にポイントがぐんぐん上昇する小町だ、…ないかな?ないなー。

 

「…あんた、名前は?」

 

「もうさんざん名乗ってるんですが…」

 

え?まだ覚えてくれてなかったの?さすがに興味なさすぎでしょ…、別に悔しくなんてないんだからね!!

 

「いいから名乗りなさい!!」

 

「…比企谷 八幡ですけど」

 

「ふぅん…そう、ならハチューシャ、あなたに聞いたげる」

 

「いや、なんですハチューシャって?」

 

「カチューシャがそう呼ぶって決めたの、なんか文句でもあるの?」

 

「いや…まぁ、その」

 

いや、文句というか、ただ単に気になっただけなんですけど、たぶんあれかな?俺の名前覚えるの面倒だから自分でつけたのかな。

 

聖グロリアーナのマックスコーヒーといい、サンダースのエイトボールといい、比企谷八幡君はどこに行っちゃったのだろうか?

 

「カチューシャの決定に何か?」

 

ふと声をかけられると…怖い怖い怖い!なんかノンナさんとクラーラがめっちゃこっち睨んでる。

 

もし先にしほさんとのやり取りがなかったら間違いなく逃げてたね。てか今日は【にらみつける】されてばっかりでいい加減俺の防御力下がりきってるんだけど。

 

おいおい、たかがにらみつけると馬鹿にするなよ、伝説の鳥ポケモンだって覚えるんだからね、あれ。

 

しかし…なんでノンナさんとクラーラにここまで警戒というか敵意を向けられてるのか。

 

「それでハチューシャ、最後雪の中に戦車隠さなかったのはなんでかしら?」

 

「逆に雪の中に戦車隠してたらフラッグ車に逃げられてうちは負けてましたよ、八九式もあれ以上は逃げ続けられませんし」

 

「…私が雪山を怪しまなかったらどうするの?」

 

もっともな意見ではあるが、そんな事は最初から考えていなかった。

 

「怪しみますよ、だってカチューシャさんは去年、あの常勝無敗の黒森峰に土をつけたんですから」

 

「ふんっ、カチューシャをさんざん馬鹿にしてよく言えるものね」

 

それに関してはお互い様とも言えるんだけどね、まぁ…さすがにいろいろとやり過ぎた所はある。

 

「プラウダ高校は強いですから、その…少しでも大洗が有利になればと、いろいろすいません」

 

「…わかってるじゃない」

 

カチューシャさんが満足げに微笑む、どうやら試合前のいろいろなやり取りの意味に気付いたのか。

 

「…それで、その、私に何か言う事はないかしら?」

 

「…?」

 

はて、何かあったかしら?無礼だった事については謝ったばかりだし。

 

「えと…試合、お疲れ様でした?」

 

「違うわよ!ほ、ほら、試合前に…ロシア語で言ってくれたでしょ…あ、あれよ!!」

 

…あ。

 

「いや…その、あれは」

 

なんと言ったらいいか、そういえばすっかり忘れてしまっていた。

 

「私も詳しく聞きたいと思っていました、教えていただいてもよろしいですか?」

 

「ーーー(訳:えぇ、聞かせて貰わないといけませんね)」

 

ノンナさんと…ロシア語で何を言っているのかさっぱりだがクラーラがめっちゃ食い気味にこっちに来てる…、なんかヤバい。

 

どうする?なんとかして誤魔化せないものだろうか?

 

「あっ!そうだ西住、継続高校の連中も見に来てたぞ」

 

我ながら苦しい、てか苦しすぎるが他に話題になりそうなものもない。

 

「え?ミカさん達も来てたの?」

 

「あぁ、あとダージリンさん達と、知波単学園からも一人、来てたな」

 

「ハチューシャ!今の言葉本当なの!?」

 

「え?知波単ですか?」

 

「違うわよ!継続高校の連中の事よ!!」

 

ざわざわと騒ぎだすカチューシャさんとノンナさん、ん?この人達ミカさんとも知り合いなんだろうか?

 

「あいつら今どこにいるの?」

 

「いや、もう帰ったんじゃないですか?」

 

なんか急にさっさと帰り支度始めてたし…。

 

「追うわよノンナ!ちっちゃい方のかーべーたんを取り返してやるんだから!!」

 

「はい」

 

なんだか知らんが助かったらしい、しかしかーべーたんって…KV-2の事か?いや、ちっちゃいって事はKV-1の方か。

 

あれ?継続高校の持ってる戦車の中に確かKV-1があったような…、取り返してやる?。

 

…あっ(察し)。

 

本当にとんでもない、やっぱりがルパン三世じゃねぇかあいつら…。

 

「で、比企谷、約束覚えてるよね?」

 

慌てて継続高校の方々を追う準備を始めるプラウダ高校の皆さんの健闘を祈りつつ眺めていると武部に声をかけられた。

 

「約束?なんかあったか?」

 

「比企谷殿がご飯奢ってくれるんですよねー」

 

とりあえずしらばっくれてみたが効果は驚くほどになかった…。

 

「せっかく勝ったんですから、このままお祝いにどこかで食べて行こうかという話になりまして」

 

「私はケーキのある所がいい」

 

君達さ、そういうのって勝手にどんどん話進めるもんじゃないよ、そもそも奢るのだって俺がいつOKだしたのよ?

 

でも、まぁ…勝ったお祝いというなら、たまには…いいか。

 

「ちゃんと領収書持ってこいよ…」

 

「へ?領収書?」

 

「なんだ武部、領収書ってようはレシートな、難しい言い方してごめんな」

 

「なんかすっごく馬鹿にされてない!?」

 

「あの…八幡君、どうしてレシートが必要なの?」

 

え?どうして必要かって…そんなの決まってるだろ。

 

「そりゃ後で金払う為に決まってんだろ。あっ、あんま高い店行くなよ、オススメはサイゼだな、他には…サイゼとかどうだ?」

 

「「「「「…………」」」」」

 

え?なにこの沈黙?あんこうチームの全員がなんかお互い顔を見回して唖然としているんだけど。

 

「そういう所だよ、比企谷ちゃん」

 

「え?何?俺なんか悪い事してるの?」

 

飯奢ってやるというのに、この罪悪感はなんだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

いや、そもそもの話だけどね、女子達に混じってどっかの店でご飯食べるとかメンタル的にちょっと無理でしょうよ…。

 

…誰に見られるかもわかったもんじゃないんだから。


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