やはり俺の戦車道は間違っている。【本編完結済み】   作:ボッチボール

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おいおい、ドリームタンクマッチの小梅ちゃん可愛すぎだろ、こんな子が劇場版のエンディングクレジットで名前出てないとかどうなってんの?
蝶野教官って出身校はサンダースらしいですけど西住流なのかな?でもあの大雑把さだとしほさん怒んない?


そして、赤星 小梅はその一歩を踏み出す。

あー、あー、本日は休日なり。

 

そんな訳で今日は休日であり仕事とは無縁のウキウキ健全休日ライフを送るはずだった、はずだったんだよ…。

 

「さっさと元副隊長の住んでる所に案内しなさい」

 

「へいへい…」

 

なんでこうなっちゃうかなぁ…しかもこれ、仕事相手が黒森峰の現副隊長と来たもんだ、言ってみればクレーマーだ、クレーマー。

 

ちなみに黒森峰のヘリだが、現副隊長さんと赤星を降ろして再び離陸した。まぁそのままだと見つかっちゃうしね、帰りはまた迎えに来る手筈らしい。

 

つまり今俺達は三人、無言で西住の住む寮へと歩いている訳だが、これはどう考えても気まずい。

 

とはいえ仕方ない、こちらにメリットが無い訳ではないし、余計な事を言った手前、俺に責任が無いとも言えない。

 

しかし…本当にこの二人を会わせても良いのだろうか?

 

チラリと後ろを歩く赤星を見る。

 

彼女が去年の決勝戦、氾濫した川に転落し西住によって助けられた戦車の乗員の一人なのだ。

 

試合の勝敗を決したのは西住がフラッグ車から飛び出した事であろうが、その要因を作ったのが彼女達という訳だ。

 

現副隊長からの頼み事、それが彼女と西住を会わせる事であり、そうすれば西住も黒森峰への負い目が少しは軽くなるかもしれないと思ったが…。

 

下手すればなんかまた一悶着ありそうで、西住がまた気を病んでしまいそうだな…だってねぇ?あの黒森峰だし。

 

「あ、あの…」

 

「ん?」

 

考えていると赤星から声をかけられた、現副隊長さんと同じくまた文句でも言われるのだろうか?だってほら?あの黒森峰だし。

 

「今日は私の為に、わざわざありがとうございます」

 

そう言って深く頭を下げてくれる赤星、やだ!この子超良い子じゃん!!

 

いや、だってほら、今までの俺の黒森峰のイメージって姉住さんとそこの現副隊長さんくらいだったからさ。

 

『一回戦はサンダース大付属と当たるんでしょ?無様な戦いをして、西住流の名を汚さない事ね』

 

とか。

 

『…ふん、それはご苦労様ね、わざわざ負ける試合見に来るとか、あなたも暇ね』

 

とか。

 

『もう時間の問題ね、まぁ無名校にしてはよくやった方じゃないの?』

 

とか、そんなんしかない訳よ。…よくよく考えたら現副隊長さんばっかりだな、そりゃ俺の黒森峰に対するイメージもこうなる。

 

「おかげで私、みほさんに謝る事ができます…、その、本当にありがとうございます」

 

「あぁ…まぁ、その、気にすんな、こっちにもメリットはあるからな」

 

むしろ天使じゃんこの子、心配して損したくらいだ、これなら西住に会わせても問題はないだろう。

 

「いいのよ小梅、こんな奴にお礼なんて言わなくて」

 

出たな現イメージダウンさん…、これではせっかくの黒森峰イメージアップが台無しである。

 

「あ、あの…名前を教えて貰っても?」

 

「え?名前?比企谷 八幡だけど…」

 

「比企谷さんですね、よろしくお願いします」

 

「つーか今日会うんだし、名前くらい事前に教えとけよ…」

 

チラリと現副隊長を見る、なんか改めて名乗るのってちょっと恥ずかしいんだよ、わかる?

 

「仕方ないでしょ、あなたの名前なんて口に出したくもないもの」

 

「人の事名前を言ってはいけないあの人みたいな扱いすんの止めてくんない?」

 

インペリオくらわせんぞ、コラ。

 

「だいたいお前知らねぇの?戦車道は礼に始まり礼に終わんだぞ、少しは礼儀ってもんを知ったらどうだ?」

 

「うるさいわね!あなたが戦車道について語らないで欲しいわ!!」

 

…む、まぁ確かに、それはそうか。

 

「今のって蝶野教官のお言葉…ですよね?お知り合いなんですか?」

 

「知り合いってか…、たまに訓練見に来るくらいだけどな」

 

まぁやって来てもあの人の指導って、ズバーッとかドガガガンッって少年漫画の擬音混じりでぶっちゃけ良くわからんものばかりだが。

 

「…蝶野教官」

 

その言葉を聞いた現副隊長さんがなにやらげっそりとした表情をみせる、おや珍しい。

 

「なんだ?お前らも知り合いか?」

 

そういえばあの人、西住の事を西住師範の娘さんと呼んでいたし、西住流とも縁が深い人なのだろう。

 

「前に一度訓練を指導しに来てくれた事があったんですが…、みんなついて行けなくて」

 

あぁ…黒森峰でもあんな感じなのね、あの人。

 

「小梅、あれは私達が未熟だっただけよ、その証拠に隊長はきちんとついて行ってたでしょ?」

 

マジかよ…、さすが姉住さんと言いたい所だけど、あの二人がどんな会話するのか気になってしまう。

 

「ずいぶんと素直なんだな…」

 

「…蝶野教官の実力は認めるしかないもの」

 

え?この現副隊長さんが素直に認めるとかあの人そんなにすごいの?

 

まぁ年は知らないがあの若さで陸上自衛隊の一等陸尉なんだし、そりゃそうか。

 

「高校時代の単騎駆け15両抜きは今でも伝説ですからね…」

 

…思ったよりずっと化け物だった。一騎駆けてこそ戦の華よ、とはどこの前田慶次郎さんですかあの人。

 

「だからってあなたを認めた訳じゃないわ、いくら教官と知り合いだからっていい気にならないでよね」

 

「そんなんでいい気になるかよ…、まっ、他人に認められないのには慣れているけどな」

 

「相変わらず口の減らない男ね…」

 

「生憎だが普段からあんまり使う機会がないからな、そのぶん減らないんだよ」

 

俺がクラスであまり人と喋らないのは温存してるんだよ、たぶん、きっと。

 

「あ、あの…お二人はどういう関係なんですか?」

 

「怨敵よ」

 

「なんか前よりバージョンアップしてねぇか…」

 

知らん間に恨みのパワーが上がってしまったらしい、やだ怖い、地獄通信に書き込まれないかしら?

 

「…なんか、息が合ってる気がするのは私だけかな?」

 

赤星が何やらボソッと呟いた気がしたが気のせいだろう。つまり、赤星の考えている事も気のせいである。

 

「そろそろ街中に出るぞ、西住の住んでる所までもう少しだ」

 

「今さらだけど、あなたなんで元副隊長の住んでる所知ってるのよ?あの子のストーカーじゃないの?」

 

「本当に今さらだな…、戦車道の仕事でちょっと知ったんだよ」

 

真実は違うがだいたい似たようなもんだ。あと、こいつはどうあっても俺を悪者にしたいのかね…。

 

「比企谷さんは大洗の戦車道を手伝っているんですよね?黒森峰は女子校なので男の人が手伝うってあまり想像できませんけど」

 

「弱小校は大変ね、あなたみたいな人の手を借りるなんてよっぽど人手が足りてないのかしら?」

 

「まぁ人手が足りてないのは事実だけどな、文字通り猫の手も借りたい状況ってやつだ」

 

思い返すは生徒会からの強制労働の日々…、いずれ訴えてやろうか、戦車裁判だ!…戦車裁判って何?

 

「あら、自分がまるで猫より上みたいに言うのね?」

 

どんだけマウント取りたいんだよこいつ、そっちがその気なら俺の方もささやかながら反撃させて貰おうか。

 

「まぁな、俺を頼って写真を送ってくれって頼んで来た奴もいるからな、おかげで猫よりは仕事が出来るって自信も持てたわ」

 

「ち、ちょっと!その話は…」

 

「えっと…写真?」

 

「なんでもないわ!小梅!!だいたいあの写真だってあんたが写ってるじゃない、あんなの心霊写真みたいなものよ!!」

 

「確認しなかったお前が悪いだろ、だいたいあの写真なら俺の妹も写ってるんだけど?」

 

あと、心霊写真扱いはちょっと酷くないですか?中学の頃、クラスの集合写真でクラスの連中がちょっと俺から距離を置いてたの思いだしちゃうだろ。

 

「…あなたの妹には罪はないもの」

 

「遠回しに俺には罪がある、みたいに言うの止めてくんない?」

 

「…この二人、本当にどういう関係なんだろ?」

 

まぁ、見ての通りの関係です。

 

あの戦車喫茶でのやり取りから今に続く長き因縁は、歴女グループから言わせれば甲賀と伊賀みたいなもんだ。続編なんて無かった、いいね?

 

「…と、着いたぞ」

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

寮、西住の住んでいる部屋の前で赤星が1人緊張した表情で立ち、それを俺と現副隊長さんは階段からこっそりと覗いていた。

 

「すぅ…はぁっ」

 

赤星は胸に手を当てて深呼吸を何度も繰り返す。何この子、殺伐とした黒森峰に舞い降りた天使か何かなの?

 

「あぁもう…さっさとしなさいよ、じれったいわね」

 

…それに対して俺の横はなんでこいつなのか。

 

やがて意を決した赤星はインターホンを鳴らし、西住が扉を開けて出てきた。

 

「…あ」

 

「みほさん、あの、突然お邪魔してすいません!!」

 

二人は部屋の前で会うと赤星がまず西住に頭を下げた。

 

「小梅さん…」

 

「…あの時はありがとう、みほさんのおかげで…私達」

 

「そ、そんな…私は別に、か、顔を上げて!?」

 

「あの後…ずっと気になってたんです、私達が迷惑かけちゃったから」

 

顔を上げた赤星は目に涙を溜めていた。

 

去年の戦車道の試合が原因で西住は黒森峰から去った。

 

試合後の黒森峰がどんな状況だったのかは知らないが、赤星はずっとお礼も、謝る事も出来ずにいたのだろう。

 

そんな彼女が、今日…ようやく話せる時が来た。

 

「…みほさんが、戦車道を辞めないで良かった」

 

涙を流しながらも嬉しそうに、赤星は微笑む。

 

「…私は、辞めないよ」

 

そんな彼女に西住も優しく微笑んで言葉を返した。

 

「そうだ、せっかくだから部屋に入って」

 

「良いんですか?」

 

「うん、わざわざ来てくれたんだし…、あれ?でも小梅さん、どうやってここまで?」

 

「え?あっ!あの…偵察とかそんなんじゃ…」

 

「えと…そうじゃなくて、黒森峰からここまで、それに私の部屋も…」

 

「それは…その」

 

そのまま二人で会話を続けるが何やら雲行きが怪しくなって来た…赤星、なんとか上手く誤魔化せよ。

 

「………」

 

そんな二人の様子を見ていた現副隊長さんは無言で階段から降りて行く。

 

…まぁ、そうだな。ここは邪魔する場面じゃない、意外と空気が読める所もあるじゃないか、逸見 エリカさん。

 

現副隊長さんの後を追って階段を降りる、今のあの場所、この時間はあの二人のものだ。

 

「…そうですね、少し素直じゃない二人のおかげ、です」

 

去り際に後ろからそんな声が聞こえてきた。少し?はて?俺はともかく現副隊長さんはそんなレベルじゃないだろうに、いったい誰を指しているのか。


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